カーリング日本選手権2020、女子決勝の名シーン

 2020年2月8日から16日まで第37回日本カーリング選手権大会が行われていました。今年も熱戦が繰り広げられていたわけですが、中でも女子決勝、ロコ・ソラーレ-中部電力がとてもおもしろい試合でした。ナイスショットもあり、ミスショットあり、作戦面やタイムアウトの場面などでも見所が多く、最後まで接戦でどちらが勝つかわからない展開。

 だからなのかどうかは分かりませんが、2月27日(木) 19:00から『熱戦凝縮!「カーリング日本選手権2020」』という番組が放送されるそうなので、どんな取り上げ方をされるのか楽しみです。

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 と言うわけで、例によって今回も局面図を交えながら、女子決勝の名シーンを振り返ってみます。

1エンド ヒットロール一発で逆転

 お互いにまだアイスの状態が読めていないのか、カマーもヒットロールもいまいち決まらない立ち上がり。後攻ロコ・ソラーレのセカンド鈴木夕湖2投目で、残っていたガード2つをテイクしてブランク模様かと思った。

カーリング図 1エンド 先攻中部電力・フォース北澤2投目 ヒットロールを決める

1E 先攻(黄)フォース2投目

 しかし、そんな単純な作戦は採らない両チーム。ハウス左上にガードの位置で黄が残ったのを見て後攻ロコ・ソラーレ、スキップ藤澤五月2投目はすかさずカマーに行く。しかしこれがガードにかすって丸見えでハウスに入る形になって、図の投球前の局面。

 ここで先攻(黄)中部電力、フォース北澤育恵2投目。距離のあるヒットロールを完璧に決める。解説はおなじみの石崎琴美

石崎「途中まではロコ・ソラーレ、ブランクにできるなと思ってたんですけど、逆転しましたね」

 ロコ・ソラーレは仕方なくドローで1点取る。ブランクになりそうだったエンドを北澤のショット一発で逆転した。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1                   1
中部電力   0                   0

3エンド 再び北澤

カーリング図 3E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤1投目 赤のポケットの前にフリーズを決める。

3E 先攻(黄)フォース1投目

 2エンドは中部電力が1点。1-1で3エンド。

 早くも吉田夕梨花のウィックが炸裂したりして、右上にガードのかたまりを残したまま進む。ハウスの中の赤2つは、ロコ・ソラーレのサード吉田知那美の2投で作ったもの。この2投のヒットロールとカマーがともにナイスショット。このエンドはロコ・ソラーレが複数点を取るかと思った。

 しかし、ここで先攻(黄)中部電力のフォース北澤1投目のショットが決まる。北澤はこの試合初めて投げるドローだったが、ぴったり赤2つの前にフリーズしてこの黄は出せない。再び北澤のナイスショットで追いついた。

 この後はお互いに難しいショットを決めきれず、4フット付近の石はこのまま動かず。ロコ・ソラーレが1点取るエンドとなった。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1               2
中部電力   0 1 0               1

5エンド ダブルロールイン失敗

カーリング図 5E 後攻(赤)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目 ダブルロールインに失敗。

5E 後攻(赤)スキップ2投目

 4エンドは中部電力が2点を取って、3-2で中部電力がリードして5エンド。

 ハウスに石がない状態でロコ・ソラーレ(赤)のラストストーン。スキップ藤澤はダブルロールインを狙ったが、当たり薄すぎて惜しくも失敗。2点取る狙いが1点取ってしまう結果となった。

 実は、この局面になる直前の北澤2投目は、センター付近の赤のガードの裏にカマーを狙ったが、まるでラインが合わず、赤のガードにまともに当たって少し押すというミスショットだった。このミスショットがあったためにダブルロールインを狙いやすい形になって、ダブルロールインを狙ったためにロコ・ソラーレは1点取ってしまった。もし、このミスショットがなかったとしたら、簡単にブランクになっていたかもしれない。ミスしたことがかえって良い結果をもたらすということはカーリングではよくある。ミスした結果どうするかも含めてカーリング

 この試合は、ここまで藤澤のショットがいまいち決まっておらず、中部電力が優勢かと思ったのだが……。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1           3
中部電力   0 1 0 2 0           3

6エンド テイク失敗でスチール

カーリング図 6E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 テイクに失敗してスチールを喫する。

6E 後攻(黄)フォース2投目

 しかし、続く6エンドは中部電力にミスが出てしまう。

 後攻中部電力(黄)のラストストーン。北澤はガードをかわしてのテイクを狙ったが、当たりが薄すぎて赤が残ってしまう。ロコ・ソラーレが1点スチール。ここまでナイスショットを連発していた北澤だが、ここで痛いミスが出てしまった。これで試合の行方は分からなくなった。

 スチールは最悪で、テイクは確実に決めてせめて1点取らないといけなかった。と言いたいところですが、これまでの北澤を見ていたら、このブランクも成功しそうだと思って見ていました。これは決めてほしかった。ショット前には「しっかりは出したいね」「芯で、1点取る」という話もしていたのだけど。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1         4
中部電力   0 1 0 2 0 0         3

7エンド ダブルテイクでブランクか、ドローで1点か

 中部電力が1点ダウンの後攻で迎えた7エンド。ここも中部電力は2点パターンを作っていたが、フォース北澤1投目のドローがショートする痛いミス(右上の黄)。ハウス内に黄がなくなって図の局面。中部電力(黄)のラストストーン。残った赤をダブルテイクしてシューターも出ていくブランクも狙えるが、どうする? 中嶋と北澤が作戦会議。

カーリング図 7E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ダブルテイクでブランクを狙うか、ドローで1点を取るか。

7E 後攻(黄)フォース2投目前

中嶋「難しいかなこれ」
北澤「ここに当たれば、行きそう」
中嶋「ステイとかだとちょっとまずい」
北澤「後攻がいいんだったら……」
中嶋「ここにする?」
北澤「1点取って、8エンド相手後攻……」

 松村と石郷岡もやってきて話し合いに加わる。

北澤「ブランクにするか、1点取るか」
松村「ブランク楽そう?」
中嶋「ちょっとね外当たればいいんだけど、芯とかだとこっちの方が近くなっちゃうんだよね」
松村「まあ行くは行く」
中嶋「ブランクにして8エンド目で、そっちの方が流れ的には良さそうだよね」
松村「ラインがどう?」
北澤「そうなんだよね。ドローする?」
松村「それでいいと思う」

 最後の方までどちらになるのかわからない話の流れだったが、最後はあっさり決まってドローで1点と取るという選択になった。同点の8エンドを後攻で迎えたロコ・ソラーレが優位に立った。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0       4
中部電力   0 1 0 2 0 0 1       4

8エンド 中部電力タイムアウト

 同点、ロコ・ソラーレ後攻で8エンド。先攻(黄)中部電力、フォース北澤の2投目を前に図の形。 ハウス側に中嶋と北澤、投げ手側に松村と石郷岡で作戦会議。

カーリング図 8E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目の投球前 ガードの赤を飛ばすランバックが2通りあって防ぐ手段がない。

8E 先攻(黄)フォース2投目前

中嶋「これと、これは相手もいじれないね。あとドローくらいしかないか? 前にする?」
北澤「これと?」
中嶋「こっちからドローと、こっちと。それか前にする」
松村「ボードとかハック系で黄色触るのは微妙?」
北澤「そうだねー、これがね出てきちゃう。この黄色が」
松村「あー、簡単に2点になっちゃうかい」
北澤「あと、これと、これが(左の赤からとセンターの赤からのランバック)があるんだけど」
中嶋「でもこれやってここ止まれば、そしたらさ、もうちょっと隠れるからさ……でも相手ピールでもよくなっちゃうか。そっか。これ微妙か?」
石郷岡「それ出しておけば2点?」

 松村もやってきて作戦会議に加わる。

中嶋「自分のこういう感じで」
松村「ここに止まりたいね、だったらね。バックラインとかじゃ遅いか」
北澤「これがね、出したいよね、2点でいいんだったらパーンってやりたいけどね」
松村「でも2点だったらしょうがないよね」
中嶋「取るか。うん、取ろう」
松村「タイムアウトお願いします」

 話し合いが続いた末にタイムアウトを取る。両角友佑コーチが降りてくる。

両角「こっちからカマーとかフリーズだとさ、逆にランバックで止まる石が増えちゃうじゃん。後ろもさ、何かウチのキャッチャーになるんだったらいいけどそうでもないでしょ。それだったらこっちから1個出しとくというのは1つ手かもしれないなと、いまの話聞いてると思う。
 それでさ、いま言ったさ、ウェイトの話なんだけど、しっかり出しといた方が。最低でもあの黄色よりはさ、赤が出てないと意味がないから。すごく、薄い、8、9、の方がいいと思う。8、ノーマルの辺り、かなって思うな。8、9だと2センチ当たれば余裕で出る。俺この前さ、あっ……、コンサとの予選のさ、これくらいのこうやって出したの覚えてる? あれ8秒で1センチくらい当たってるんだよね。それで十分出てるから。8秒であればかなり薄くても。
 あとはラインの選び方ね、それだけ慎重に。まずはしっかり出す。あとはなるべく狙い通りのとこに」

 時間いっぱい使って具体的なアドバイスを送る両角コーチ。自身がTM軽井沢の選手として出場したコンサドーレ戦の経験も踏まえた話も出た。

カーリング図 8E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ガードをかわして黄に薄く当てて赤を出すテイクアウトに成功。

8E 先攻(黄)フォース2投目

 黄に薄く当ててのテイクアウトを選択。狙い通りの場所に当てて、赤はしっかり出して黄はほぼ動かずナンバー1キープ。しかし、赤には2点チャンスが来ている。

 この場面、自分が最初に見たときは「長い作戦会議をしたのに、ロコに2点チャンスを与えてしまったなあ」と思ったんですが、この局面、中部電力は3失点のピンチだったんですね。ランバックで12時方向の赤に触ると黄は簡単に出てしまう。ランバックに使える赤は2つある。両方を防ぐ手はない。そして、どこに黄をドローしても、少しでもずれたらやはり3失点ピンチだし、かえってランバックで飛んできた赤が出ていくのを止めてしまうかもしれない。それだったら、確実に赤を出しておけば悪くても2点で済む。そして確実に赤を出すならウェイトは……。というタイムアウトの話だったんですね。

 このあと、ロコ・ソラーレ藤澤のラストストーンは、黄に当てて押し出してシューターは残って2点というショットを狙ったが、わずかに右にそれて、黄にかするだけでほぼスルー。中部電力の1点スチールとなった。この試合、まだ藤澤のショットが決まらない。同点の8エンドをスチールして、逆に中部電力が優位に立った。勝負の行方はまだわからない。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0     4
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1     5

9エンド ガードでも良かったのでは?

カーリング図 9E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ドローが短くなって相手にダブルテイクのラインを残してしまった。

9E 先攻(黄)フォース2投目

 後攻(黄)中部電力、フォース北澤2投目。センターガードの裏へカマーだが、やや短かったのが致命的。相手にダブルテイクのチャンスを与えてしまった。このドローを投げるなら、少なくともハウス後方の赤よりも内側まで持ってきてナンバー1・2・3を作らないといけなかった。

カーリング図 9E 後攻(黄)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目 距離のあるダブルテイクアウトを決めて2点。

9E 後攻(赤)スキップ2投目

 ロコ・ソラーレ(赤)藤澤のラストショットは狙い通りのダブルテイクを決めた! ブラシを掲げて笑顔の藤澤。ここまでショットが決まっていなかった藤澤だが、土壇場でビッグショットを決めた。

 この場面、黄は1・2持っているので、ダブルテイクのラインをふさぐガードという選択もあったと思います。9エンド1点リードの先攻。1点スチールの価値も確かに高いが、1点取らせの価値も高い。何より3失点は良くない。藤澤のダブルテイクはナイスショットでしたが、もう少しで3点の可能性もありました。ガードで確実に1点取らせができるならその方が良かった気がします。もっとも、ガードを選択して、そのガードがずれて同じダブルテイクを決められていたら、3失点どころか4失点になっていましたが……。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2   6
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0   5

10エンド 2点目を取る手段はあるか?

 6-5で後攻中部電力の1点ダウン。10エンド後攻1点ダウンはカーリングで最も際どい点差。終盤フリーズ合戦になって、先攻(赤)ロコ・ソラーレ、スキップ藤澤2投目を前に図の形。ナンバー1の黄は強いが、ナンバー2の赤も強く、黄は2点目を置くスペースがない。赤としては黄が2点取る手段を消したいが、黄が2点取るにはどんな手があるか? タイムアウトを取って考えるが……。

カーリング図 10E 先攻(赤)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目の投球前 ボタン付近にスペースがない。

10E 先攻(赤)スキップ2投目前

鈴木「隙間はちょっとある」
藤澤「ここから2点はね、うちらが何かしない限り」
知那美「ない?」
藤澤「ない」
鈴木「これ、こうは?」
知那美「触らなくていいんじゃないかな。ガードじゃない?」
藤澤「でもガードって言ってもさ、これで相手2点取るの何があると思う? これか」
知那美「でも狙うかい? こっちに当たったら終わりで」
鈴木「これじゃない?」
藤澤「でも、ガードしてもさ意味なくない?」

 小野寺亮二コーチが降りてくる。

知那美「何もないんだよね、相手ここから」
小野寺コーチ「これで相手がどうなったら2点があるか」
知那美「うちらが余計なことしたら」
藤澤「余計なことするか、赤のノーズ? だけど黄色に行ったら終わり」
知那美「いやガードでいいと思う」
藤澤「いやどこにガードするか」
小野寺コーチ「ゆっくり考えよう」
知那美「センターでいい? こっち見せていいもんね。これバーンとやったところでさ、何もないもんね」
小野寺コーチ「何があるか」
藤澤「相手赤のノーズしかないんですよ」

 結局、中には触らないという選択。他に有効な手もないので、一応ランバックと左からのドローラインをふさぐガードを置いた。

 そして中部電力のラストストーン。相手のストーンが止まるや否や「何かある?」から始まって、中嶋、北澤、松村がハウスに3人集まって作戦会議。石郷岡は投げ手側から見ている。

カーリング図 10E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ボタンの隙間のないところに押し込むドロー。惜しくもナンバー2は取れず1点。

10E 後攻(黄)フォース2投目

北澤「アウトターンからいけそうじゃない? 半分……3分の2でしょ? ちょっと中に」
松村「これは絶対こっち側にはなるからさ。ギリギリ狙って。それか外からドロー?」
石郷岡「黄色の内側の隙間はありそうだけど」
北澤「ちょっと押せないとダメだね」
中嶋「ちょっと内側、ここって感じ?」
松村「絶対抜けることはないから、相当速くない限り」
北澤「ここに当てたい」
松村「ギリでこれかわせば」
北澤「ちょっと狭めにとってこれに当たってもいいや」

 右からガードをかわしてボタンに入るドローを狙う。ボタンに石が入ってくる! わずかにナンバー2は取れず! 同点でエキストラエンドへ。

 こんなラインがあったのか。これがあるならロコ・ソラーレはこのラインをふさぐガードを置くべきでしたが、どうだったんでしょう? 手前の赤もギリギリかわしたし、これが精いっぱいだったかもしれません。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2 0   6
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0 1   6

11エンド 対照的なアドバイス

 エンドの序盤にちょっと珍しいシーンがあった。吉田夕梨花の1投目はウィックだが、ガードに厚く当たって押してしまった。黄がバックラインギリギリまで下がって越えたかどうか。

藤澤「お、ほほー、びみょー」

 審判が三角定規のような物を持ってきてラインを越えているかどうか判定する。選手から「初めて見た」という声が聞こえた。

石崎「わたしも初めて見ました、これ」

 結果はラインに乗っていないという判定でウィック失敗。この後、2投目もウィックを狙うが、これも厚く当たってシューターがセンターライン付近に残ってしまう。珍しく、吉田夕梨花がウィックを2投とも失敗した。中部電力チャンスかと思ったが、ここから後のガード外しはロコ・ソラーレも失敗せず、スチール形にはさせない。

 そして中部電力(黄)フォース北澤1投目を前に図の形。すかさずタイムアウトを取る。 

カーリング図 11E 先攻(黄)中部電力 フォース藤澤1投目の投球前 センターラインが空いた状態でガードをどこに置くか。

11E 先攻(黄)フォース1投目前

両角「まだガードでもいいと思う。どっちにしろガードは、払わないわけにいかないじゃん。自分たちでもそうするじゃん。一番大事なのは最後ドローを置く位置だよね。こういうときの鉄板は、4フット半分掛けた、Tライン上だよね。右か左か。たぶんインアウトのテイク狙うんだよね相手は。絶対どっちか狙うんだけど、俺のオススメはアウトターンを残す。だからここのドロー、かなって思ってる。
 いずれにせよ次はガードでいいじゃん。やっばりセンターガードは絶対必要だからね。ああ距離は全然、いまの赤の並びかでいいと思う。こっちの方が、最後にアウトターン相手に残す方がいいんじゃないかな。
 (見えててもいいってこと?)全然見えててもいい。だってテイクしてもちょっとやな位置じゃん。隠すってのが目的じゃなくて、どれだけテイクもしにくくてドローも狭くするかというのが一番大事」

 8エンドに続いて、時間いっぱい使って具体的なアドバイスを送る両角コーチ。

 ショットの選択はセンターガード。センターライン上で赤の少し下あたり、やや長めのガードになった。アドバイスの中で「赤の並びかでいいと思う」という話もあったので狙い通りだと思うが……。

 続いてロコ・ソラーレもスキップ1投目すかさずタイムアウト

知那美「相手がここに置いて来たとしたら」
鈴木「こう取る?」
知那美「結構難しいもんね」
藤澤「これロングじゃん。最悪こっちになって、相手決められたら……」
鈴木「ああ打てばいいもんね」
知那美「ああそうかそうか。じゃあここにするか」
梨花「こっちが最悪だもんね」

 作戦会議はコーチが来る前から結論が出そう感じ。降りてきた小野寺コーチは開口一番「終わったか?」。

知那美「相手のガードがロングだから、ウチら先に入れて、後ろになっちゃって相手がいいとこあれても、ロングだから出せるんで」
小野寺コーチ「最後の投げるやつをどうするかだけイメージして、よし行こう」

 中部電力とは対照的に、うなずきながら選手の考えた作戦を聞き、アドバイスは短く終わる。ショットの選択は、ガードピールではなく、カマー。左のラインからセンターガードの真裏、Tライン前でボタンに止めるナイスドロー。この試合の前半はショットが決まっていなかった藤澤だが、終盤の勝負所で決めてきた。小野寺コーチも笑顔。

 このカマーがあるなら、中部電力のガードの位置がどうだったか。もっとハウスに近いガードでないといけなかったのかもしれません。

 この後、中部電力北澤2投目はガードをギリギリかわしてその赤をテイクしてナンバー1を取るが、わずかに右にロールしてガードから半分見えてしまった。最後は藤澤がその黄を芯でテイクして1点。ロコ・ソラーレの優勝となりました。笑顔で涙を流す藤澤。ナイスゲーム。

 試合後のインタビュー。

藤澤「私の最終ショットの前のショットで相手の前の石を開いて、最後にドローショットを投げるというのが一般的な作戦ではあるんですけど、投げたくなくて(笑)。プレッシャーがすごすぎて、ちょっとごめん先に投げさせてほしいというのをみんなにお願いして」

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2 0 1 7
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0 1 0 6

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日本女子カーリングの主な大会の出場チームと成績
オリンピック 日本選手権優勝 世界選手権
2020 - ロコ・ソラーレ ロコ・ソラーレ(?位)
2019 - 中部電力 中部電力(4位)
2018 LS北見(3位) 富士急 富士急(10位)
2017 - 中部電力 ※不出場
2016 - LS北見 LS北見(2位)
2015 - 北海道銀行 北海道銀行(6位)
2014 北海道銀行(5位) 中部電力 ※不出場
2013 - 中部電力 中部電力(7位)
2012 - 中部電力 ※不出場
2011 - 中部電力 ※不出場
2010 チーム青森(8位) チーム青森 チーム青森(11位)

女子決勝以外の名シーン

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