日本カーリング選手権2018女子で優勝した富士急の名シーン

 もうすぐ平昌五輪が開幕しますが、その前に第35回日本カーリング選手権が開催されました。今年は五輪代表チームであるSC軽井沢クラブLS北見が出場しないし、NHKの中継は3試合しかなかったけれど、やはり始まってしまうと見てしまうね。YouTubeの中継も少しは見れました。

 そしてこの大会、女子は富士急が優勝しました! 強気な若手スキップ・小穴桃里選手とベテランの闘将・西室淳子選手がおもしろくて、個人的に以前から注目していたチームです。そのチームがついに優勝。まあ、過去の3大会は3位・2位・3位だし、今回はLS北見が出場していないのだから、意外な結果と見るべきではないかもしれません。しかし、過去の予選リーグは4勝4敗でギリギリ通過だったり強豪相手には負けていたりするので、順位の割には強いチームという印象がありませんでした。強豪相手には序盤から連続スチールされて差を付けられた試合も多かったし……。今回も、予選リーグは中部電力北海道銀行の強豪2チームに負けて6勝2敗の3位通過。期待はするけど、プレイオフを勝ち抜くのは難しいかなと思っていました。それが優勝。

 というわけで、この大会の富士急のハイライトシーンを、局面図を使って振り返ってみます。

レイオフ3位-4位

 プレイオフ初戦は予選3位と4位の対戦。富士急-青森Jr。青森Jrは予選リーグ最終戦中部電力を破って、大逆転でのプレイオフ進出。勢いに乗っていて怖い相手でした。試合はクロスゲームのままエキストラエンドまでもつれる接戦の末、7-6で富士急が勝利、準決勝進出を決めました。

女子プレーオフ3位-4位 青森Jr - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 EE
青森Jr   0 1 0 2 0 1 0 0 1 1 0 6
富士急 2 0 1 0 1 0 1 1 0 0 1 7

準決勝 中部電力-富士急

5エンド

女子準決勝 中部電力-富士急 05エンド 黄・先攻富士急 スキップ2投目

 迎えた準決勝の相手は中部電力。3エンドにスチールされますが、4エンドに3点取って一気に逆転。とはいえ、試合はこれから。

 5エンド。先攻・黄・富士急のスキップ小穴桃里の2投目、相手のナンバー1をはじき出して投げた黄はハウス入り口の味方の石の裏、というヒットロールを完璧に決める。ナンバー1・2・3・4まで取る。

 中部電力はラストストーンを青に入れないとスチールされるし、手前のガードに引っかけようものなら4点スチールもあり得るプレッシャーのかかるドロー。実際、手前のガードにかすってナンバー4を取るにとどまり、富士急が3点スチール! 6-2となり一気に大優勢となりました。

7エンド

女子準決勝 中部電力-富士急 07エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 6-3の富士急リードで試合は7エンド。後攻富士急のラストストーンは、相手の石をテイクして投げた石は残れば2点取れる場面。ここでまさかのスルー! 思わずテレビの前で「ああーーーーーー」って声を出しましたよ。これを決めてれば勝ってたのに……。決まっていれば2点のところが、逆に1点スチール。差し引き3点を失うショットになってしまった。ここで、すかさずコーチ席にいる西室淳子のおかんむりな表情(←かなりバイアス入ってます)を抜いたNHKの中継はナイス。

実況「西室淳子選手も、なんでそのショットになってしまったんだろうという、悔しそうな顔をしていました」

 しかし、冷静に見れば6-4の2点リードで8エンド後攻だから、まだだいぶ有利。この後、むしろ中部電力の方にミスが出たりして、きわどいシーンもなくそのまま富士急勝利、決勝進出となりました。

女子準決勝 中部電力 - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
中部電力 0 1 1 0 0 1 1 0 1 - 5
富士急   0 0 0 3 3 0 0 3 0 - 9

 この大会の富士急は、結成時からチームを支えていた西室淳子がリザーブに回っていて(大会期間中に妊娠中であることが明らかになった)、チームに加入して間もない現役高校生、小谷有理沙がリードに入り、その影響で石垣真央がリード→セカンド、小谷優奈がセカンド→サード、小穴桃里がサード→フォースと玉突き式にポジションを変更していました。同じオーダーで臨んだ軽井沢国際は、内容は悪くなかったようですが、結果は4戦全敗。「さすがに西室抜きで難しいか」と思っていたので、準決勝に進出してテレビで中継が見られただけでもう満足という気持ちでした(^_^;) それがもう1試合見られることになって嬉しい……(←まだ優勝できるは思っていない)。

決勝 北海道銀行-富士急

3エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 03エンド 赤・後攻北海道銀行 スキップ2投目

 富士急名シーンと言いながら対戦相手のナイスショットも紹介します。先攻・富士急のスキップ2投目でハウスの入り口をふさぐ石を置き(ハウス上部の右の黄)、センターガードの赤を使う道もない。北海道銀行のラストストーンは角度のある難しいランバックを狙うしかない状況。「こんなの決まるわけがない」と思って見ていたら、これが決まってしまう。2点スチールもあり得た大ピンチで2点を取るビッグショット。さすが小笠原歩、ホントに劇場型スキップだなあ。

4エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 04エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 後攻・富士急スキップ小穴のラストストーン。ナンバー1・2・3を見せられたプレッシャーのかかるドローだったが、見事にナンバー1を取る。

9エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 09エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 8エンドは2-2の同点。後攻・北海道銀行はラストストーンでブランクもできたが、1点取る方を選択する。

 9エンド1点リードで後攻の富士急。ここはブランクにするか、2点以上取りたい。1点取らされて10エンド同点先攻になってしまうと不利。

 しかし、このエンドは北海道銀行のショットが上回っていて、ラストドローで1点取るしかない、むしろ1点取るのも難しい展開になってしまう。それでも、失敗すればスチールされてしまう厳しいドローを、これも完璧に決める。

10エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 10エンド 黄・先攻富士急 スキップ2投目

 同点で最終エンド。先攻の富士急が勝つにはスチールするしかない。

 先攻・富士急スキップ小穴桃里の2投目。最後のドローの場所を狭くするハウス内ガードを完璧に置いた。

 このあと、北海道銀行はプレッシャーのかかるラストドローをいま置かれた石に当ててしまいナンバー1を取れず、富士急がスチール。富士急優勝。

 4エンドや9エンドもそうだったけれど、今回の富士急はこのような重要な状況でのドローを決めた場面が何回かありました。それまで何回も決めていたドローが、プレッシャーがかかるここ一番で失敗するという場面はカーリングでは頻繁にあります。テイクアウトのような派手さはないけれど、こういうプレッシャーのかかるドローショットカーリングの醍醐味だと思います。今回の富士急はそのドローショットを、チーム内でコミュニケーションを取ってよく決めていました。

女子決勝 北海道銀行 - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道銀行 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 3
富士急   0 0 0 1 1 0 0 0 1 2 5

 ところで、この試合の最後は、先にも書いたとおり北海道銀行のラストストーンがナンバー1になれず試合が決まりました。その際、ナンバー1・2が富士急なのは明白なので富士急優勝はストーンが止まった瞬間にわかりましたが、ナンバー3がどちらの石か微妙だったので、選手がその確認をしていました。しかも、実況アナがその状況をうまく伝えることができず、「やったー! 優勝だー!」という感じにならない。もやっとした終わり方になりました。

富士急は世界選手権へ

 日本選手権に優勝した富士急は、3月15~25日にかけて行われる女子カーリング世界選手権にも出場することになりました。あの富士急が世界選手権に出場するとは、楽しみでなりません。今回の世界選手権は、アジアの国が最下位になってしまうと次回の世界選手権のアジア出場枠が1つ減ってしまうそうなので、最下位だけは避けてほしいと思いつつ、世界を相手にどこまでやれるのか楽しみでありつつ。五輪が終わっても忙しくなりそうですね(^_^;)