『死の罠の地下迷宮』ピット・フィーンド戦を回避した方が良いのか?

 この記事はかなりネタバレになるので、最初に『死の罠の地下迷宮』をこれからプレイする方に伝えたいことである、この記事の最終段落を引用しておきます。

やはり、このゲームブックは『ゲームブックの楽しみ方』にも書いてあったとおり、ゲーム開始時の原技術点を決めるサイコロが、1・2なら10点、3・4なら11点、5・6なら12点としてプレイした方が良いと思います。

 というわけで、以下はかなりネタバレです。『死の罠の地下迷宮』を未プレイの方は読まないことをおすすめします。

攻略のコツはピット・フィーンド戦を回避すること?

 『死の罠の地下迷宮』は難度が高いゲームブックです。必要なアイテムを探すという迷路的な難度もさることながら、単純に敵が強いという“オーバーキル”な作品でもあります。有名な真の道の記述*1は誤りであると言わざるを得ません。

 しかし、サイコロ運が良ければそれで勝てるというわけでもありません。最善手を取らないと、技術点12・体力点24・運点12の最強冒険者でも話にならない(即死トラップは避けたとしても)。きちんと手がかりを集めて、戦闘を避けたり、体力の消費を避ける行動を取る。すると、技術点12ならまずまず、技術点11ならなんとか、技術点10でも運が良ければ、クリアできるというバランスになります。このあたりが『死のワナの地下迷宮』の好きなところです。

 最大の攻略ポイントは、技術点12・体力点15のピット・フィーンド*2との戦闘を避けること

 回避に必要なアイテムはロープ・鉄鈎・猿のお守りの3つ。鉄鈎・猿のお守りの入手は「たった一つの成功への道」*3を通っていれば簡単。ロープは入手は簡単だが、巨大偶像を登る際に使用して、回収するには運だめしが必要。そして、ピット・フィーンドとの対決で猿のお守りを投げた際に運だめしが必要。

 また、続く忍者戦の前の運だめしに失敗すると技術点-1を食らってこの後の戦闘がきつくなるので、この運だめしも成功したい。ついでに、水たまり通過時の運だめしも失敗すると保存食をすべて失うので、できれば成功したい。

 すると、成功したい運だめしが4回もあるので、選択するポーション幸運のポーション一択。絶対失敗したくない運だめしの前――巨大偶像でのロープ回収前か、ピット・フィーンドとの対決で猿のお守りを投げる前のどちらか――に使う。コレクション版ではポーションは2回使えるので、その2つか、忍者戦前のどれか2回に使う。このプランで決まり。

 ……だと思っていました。コレクション版をプレイする前までは

コレクション版では技術点-1が避けられない

 ところが、コレクション版では鉄鈎を入手する際のペナルティが変更されました。社会思想社版では運だめし吉で体力点-1、凶で体力点-3だったのですが、コレクション版ではマイナスされるのが体力点ではなく技術点になっています。

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 運だめし失敗時の技術点-3は言うに及ばずですが、成功しても技術点-1というのが非常に痛い。ピット・フィーンド戦を回避しても、このあと、忍者(技11・体9)、ブラッド・ビースト(技12)、マンティコア(技11・体11)の“終盤3連戦”を勝ち抜く必要があります。この3連戦を、技術点-1を抱えたまま迎えることになります。

 また、鉄鈎入手時の運だめしに失敗すると技術点-3を食らって致命的なので、この運だめしにも失敗できません。成功したい運だめしが1回増えて5回になったので、どれかに失敗する危険も増します。

 こうなると浮上するのが、ピット・フィーンド戦を回避しないというプランです。これなら鉄鈎を入手する必要がないので運だめしをする必要がないし、技術点マイナスもありません。そして、ロープ回収と猿のお守り投擲も必要ないので、成功したい運だめしは水たまり通過時と忍者戦前の2回だけになります。終盤3連戦がピット・フィーンド戦を加えた“4連戦”になりますが、技術点-1の状態で終盤3連戦を勝ち抜くより有利では……? 選択するポーションは幸運のポーションか体力のポーションか。どちらも考えられます。

 また、技術のポーションを選択してピット・フィーンド戦を回避するというプランも考えられます。これだと“終盤3連戦”を技術点マイナスなしで迎えられます。また、鉄鈎入手時と忍者戦前の運だめしは失敗してもよくなります。ロープ回収と猿のお守り投擲の運だめしは自力になりますが、それに成功する前提ならこれが一番有利かも……?

ピット・フィーンド戦を回避するメリット・デメリット

 条件を整理してみましょう。まず、終盤に登場する強敵との戦闘内容が以下の通りです。ピット・フィーンドと戦う場合は4連戦、回避する場合はその下からの3連戦になります。

『死の罠の地下迷宮』“終盤4連戦”
項目 怪物名 技術点 体力点 備考
245 ピット・フィーンド 12 15 ロープ・鉄鈎・猿のお守りで回避可
312 忍者 11 9  
172 ブラッド・ビースト 12 10 こちらの攻撃が2回当たれば勝ち*4
196 マンティコア 11 11  

 また、重要な運だめし(ピット・フィーンド戦を回避するために必要、または後半で必ず行う)と運の増減は以下の通りです。

『死の罠の地下迷宮』重要な運だめしと運の増減
項目 イベント 成功 失敗 備考
89 運だめし:ロープ回収 ロープ回収成功 ロープを失う。ピット・フィーンド戦を回避できなくなる ピット・フィーンド戦を回避しないなら失敗してもよい
121 第一の試練失敗 - - 2Dで8以上で失敗。技術点-2か運点-2
378 運だめし:水たまり 保存食-2 保存食全滅、アイテム1つ消失 必ず行う
228 運だめし:鉄鈎入手 技術点-1 技術点-3 ピット・フィーンド戦を回避しないなら行う必要がない
175 レプラカーンの歯入手 - - 運点+2
361 運だめし:猿のお守り投擲 ピット・フィーンド戦回避 体力点-5、ピット・フィーンドと戦闘 ピット・フィーンド戦を回避しないなら行う必要がない
181 運だめし:忍者遭遇 変化なし 技術点-1・体力点-4 必ず行う

 まとめると、ピット・フィーンド戦を回避しない事による影響は以下の通りです。

  • メリット
    • 終盤3連戦を技術点-1なしで迎える
    • ロープ回収の運だめしに失敗しても良くなる
    • 鉄鈎入手時・猿のお守り投擲の運だめしを行う必要がない
  • デメリット
    • ピット・フィーンドに勝つ必要がある

 メリットの中で一番影響が大きいのは「終盤3連戦を技術点-1なしで迎える」ことです。逆に言えば、ピット・フィーンド戦を回避する場合は、終盤3連戦を技術点-1の状態で勝ち抜く必要があるということになります。

 要するに、技術点マイナスなしのピット・フィーンド戦を含めた“4連戦”と、技術点-1での“3連戦”のどちらが有利か?という選択です。そこで、終盤の戦闘で、技術点が何点ならなら体力点を平均何点失うかを計算してみます。

終盤の戦闘で失う平均体力点
自分の技術点 12 12-1 11 11-1 10 10-1 12
戦闘する相手 4連戦 3連戦 4連戦 3連戦 4連戦 3連戦 3連戦
ピット・フィーンド 16.0 - 26.5 - 44.4 - -
忍者 6.0 10.0 10.0 16.6 16.6 27.8 6.0
ブラッド・ビースト 4.0 6.6 6.6 11.1 11.1 19.1 4.0
マンティコア 7.2 12.0 12.0 19.9 19.9 33.3 7.2
失う体力点合計 33.3 28.6 55.1 47.6 92.0 80.2 17.3

 技術点の“12-1”などの-1は、鉄鈎入手時の技術点マイナス1を負ったまま戦うという意味です。また、この表では忍者戦前の運だめしは成功する前提です。

 技術点別に失う体力点を比較すると、次のようになります。

  • 技術点12の場合:4連戦で失う体力点33.3、3連戦で失う体力点28.6
  • 技術点11の場合:4連戦で失う体力点55.1、3連戦で失う体力点47.6
  • 技術点10の場合:4連戦で失う体力点92.0、3連戦で失う体力点80.2

 いずれの場合も、4連戦の方が失う体力点は多いですが、大差ではありません。この数値は戦闘での運だめしを使わない場合です。ピット・フィーンド戦を回避しないなら、回避のために必要な運だめしをピット・フィーンド戦に回せます。このくらいの差だと、どちらが有利か微妙なところです。

 また、技術点11と10の差が大きいことが分かります。ゲーム開始時の保存食や体力のポーションの回復分を合わせた「持ち体力点」は、体力のポーションなしなら原体力点+40、体力のポーションがあれば原体力点*3+40点と考えることができます。すると、技術点12と11の場合は平均的な運で終盤の連戦は勝ち抜けることになります。技術点11以上あれば、運だめし失敗の一回で崩壊する危険が多いピット・フィーンド戦を避けるプランより、ピット・フィーンドと戦うプランを採って平均的な運で勝つというのはあり得る戦略だと思います。

幸運のポーションと体力のポーションの選択

 幸運のポーションと体力のポーションの選択も迷うところです。

 敵の技術点が高いほど、自分の技術点が低いほど、戦闘での運だめしの価値は上がります。それでも、体力のポーションの体力全回復と比べると、戦闘での運だめしの効果はそこまでではありません。戦闘の事だけを考えれば体力のポーションを選択した方が良いことがほとんどです。

 幸運のポーションを選択するメリットは、絶対に失敗できない運だめしの成功率を上げられることです。特に、ピット・フィーンド戦を回避しようとすると、絶対に失敗できない運だめしが3回あります。回避しない場合でも、水たまり通過時と忍者戦前の運だめしは失敗したくありません。これらの運だめしを成功させることを考えると、幸運のポーションを選択したくなります。

 しかし、運点は回復できる機会が多いです。特に、ピット・フィーンド遭遇前の175番で2点回復できるのが大きい。必要な運だめしのみを行えば、先ほど挙げた5回の運だめしをすべて行う場合でも、すべて原点か原点-1の状態で行うことできます。原運点が十分に高ければ幸運のポーションなしでも成功が見込めます。

 ただし、体力のポーションを選択した場合に問題となるのが、第一の試練です。サイコロ2個振って8以上が出ると失敗。つまり、能力値関係なく41.7%失敗します。失敗すると技術点-2か運点-2を選ばないといけません*5。技術点-2は致命的なので運点-2を選択することになりますが、体力のポーションを選択していると、このマイナスをフォローできません。特に、ピット・フィーンド戦を回避したい場合は痛烈です。

 というわけで、どちらを選択した方が良いかは微妙です。ピット・フィーンド戦を回避する場合は幸運のポーション、回避しない場合は体力のポーションを選択するのがかみ合っている感じがしますが、原技術点・原体力点・原運点の組み合わせによっては逆を選択するのもあるかもしれません。

技術のポーションを選択するプラン

 もう一つ、技術のポーションを選択するプランもあります。技術のポーションを選択する最大のメリットは、鉄鈎入手時の技術点マイナスを回復できることです。よって、ピット・フィーンド戦を回避するのは絶対です。そして、鉄鈎入手時の運だめしと忍者戦前の運だめしに失敗しても技術点を回復できます。終盤が3連戦になる上に、確実に技術点マイナスなしで3連戦を迎えられます。技術点が12の場合、終盤の戦闘で失う平均体力点は17.3点です(「終盤の戦闘で失う平均体力点」の表の右端)。技術点11でも28.6点(技術12-1の3連戦の場合と同じ)。十分勝てる数字です。技術点12でピット・フィーンド戦を回避して終盤を3連戦にできるのは、技術のポーションを選択した場合だけです。

 問題は、運だめしがすべて自力になることです。鉄鈎入手時と忍者戦前の運だめしは失敗できますが、ロープ回収と猿のお守り投擲時の2回は失敗できません(できれば水たまり通過時も)。また、第一の試練に失敗した場合に(運点-2ではなく)技術点-2を選択できますが、その場合は忍者戦前の運だめしも自力で成功する必要があります。

 原運点が高い場合限定のプランなのか。どうせどうやっても厳しいのだから、運だめし成功に賭けてこのプランを選択する価値があるのか。これも微妙なところです。

プランまとめ

プラン1:幸運のポーション、ピット・フィーンド戦回避

  • 必須運だめし:ロープ回収、鉄鈎入手時、猿のお守り投擲、忍者戦前の4回。できれば水たまり通過時も。どれか2つの前に幸運のポーションを使う。

  • 鉄鈎入手時に技術点-1を食らう。

  • 終盤3連戦で必要な体力点:技術点12-1で28.6点、技術点11-1で47.6点、技術点10-1で80.2点。

  • 《寸評》一番オーソドックスだが苦労は多い。運だめしに失敗すると台無しになるので戦闘での運だめしを使いにくい。“終盤3連戦”を技術点-1の状態で勝ち抜く必要がある。

プラン2:幸運のポーション、ピット・フィーンドに勝つ

  • 必須運だめし:忍者戦前の1回だけ。できれば水たまり通過時も。

  • 終盤4連戦で必要な体力点:技術点12で33.3点、技術点11で55.1点、技術点10で92.0点。

  • 必須運だめしが少ないので幸運のポーションを戦闘に使える。

  • プラン1で始めて、ロープ回収に失敗したらプラン2に切り替えるというパターンもある。

  • 《寸評》ピット・フィーンド戦で幸運のポーションをつぎ込んで、できるだけ体力点を残して勝つ。他の運だめしはできれば自力で成功したい。

プラン3:体力のポーション、ピット・フィーンド戦回避

  • 必須運だめし:ロープ回収、鉄鈎入手時、猿のお守り投擲、忍者戦前の4回。できれば水たまり通過時も。すべて自力で成功する必要がある。

  • 鉄鈎入手時に技術点-1を食らう。

  • 終盤3連戦で必要な体力点:技術点12-1で28.6点、技術点11-1で47.6点、技術点10-1で80.2点。

  • 《寸評》運だめしがすべて自力になる。また、第一の試練が鬼門。やや中途半端な印象だが、運だめしに成功する前提ならあり得るか?

プラン4:体力のポーション、ピット・フィーンドに勝つ

  • 必須運だめし:忍者戦前の1回だけ。できれば水たまり通過時も。

  • 終盤4連戦で必要な体力点:技術点12で33.3点、技術点11で55.1点、技術点10で92.0点。

  • 《寸評》力押しプラン。忍者戦前の運だめしが自力なので、その前のピット・フィーンド戦で運だめしを使いにくい。偶然性が少ないので技術点が高くないと無理。逆に技術点が高ければ有利か?

プラン5:技術のポーション、ピット・フィーンド戦回避

  • 必須運だめし:ロープ回収、猿のお守り投擲の2回。できれば水たまり通過時も。自力で成功する必要がある。

  • 終盤3連戦を技術点マイナスなしで迎えられる唯一のプラン。

  • 終盤3連戦で必要な体力点:技術点12で17.3点、技術点11で28.6点、技術点10で47.6点。

  • 第一の試練に失敗できる。ただし、忍者戦前の運だめしが自力になる。

  • 《寸評》一番安定感はある。技術点と運点が高ければこれが一番有利か。逆に技術点が低い場合も、ピット・フィーンド戦を回避して技術点-1を食らうより、このプランで運だめしは全部成功することに賭けた方が可能性はあるかも?

あなたはどのプランを選択する?

 5つのプランはどれも有力です社会思想社版はあきらかに地底怪獣戦を避けるのが最善手でしたが、コレクション版では鉄鈎入手時の技術点マイナスがあることで、必ずしもピット・フィーンド戦を避けるのが良いとは限らなくなりました。戦略の幅が広がって、攻略法を楽しみが増えました。

 また、技術のポーションを選択するプランが有力なのも注目。技術点マイナスは基本的に間違った選択肢を選んだ場合に食らうものなので、クリア狙いで技術のポーションを選択することはほとんどないと思います*6。というか、自分はいままで、技術のポーションを選択した事は一度もなかったかも……。『火吹山の魔法使い』の改造版で選んだくらいかなあ……。だいたい、幸運のポーション7割、体力のポーション3割くらいだったと思う。

 ただ、難度は社会思想社版より上がってしまったと思いますが……。魔法のポーションは2回分使えますが、それより技術点-1の方が影響は大きい。社会思想社版では技術点10でも、厳しいながらも運が良ければクリアできましたが、コレクション版は技術点10だと相当運が良くないとクリアできません。やはりこのゲームブックは、『ゲームブックの楽しみ方』にも書いてあったとおり、ゲーム開始時の原技術点を決めるサイコロが、1・2なら10点、3・4なら11点、5・6なら12点としてプレイした方が良いと思います。

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*1:社会思想社版のFFシリーズの多くの作品に書かれていた記述。「ただ一つの真の道の危険度は最小限で、どんな人でも、最初のサイコロの目がどんなに悪くてもかなり楽に通り抜けられます」。

*2:社会思想社版では“地底怪獣”。

*3:社会思想社版での「真の道」のこと。

*4:ブラッド・ビーストの情報を知らない場合は、戦闘にならず運だめし+技術ロールで通過できます。技術点や体力点が低い場合などはこちらを選んだ方が通過率が高い場合もあります。しかし、その場合はさすがに次のマンティコア戦がどうにもならないと思いますので、ここでは考慮しないことにします。

*5:ちなみに、社会思想社版では技術点ではなく体力点-2でした。これも厳しい変更です。

*6:まだ始めたばかりで最善の選択肢がわからない時に、少しでも先の展開を見るために技術のポーションを選択しておくというのはあり得ますが。実は『死の罠の地下迷宮』こそ、序盤の技術点マイナスが多いので技術のポーションを選択するべきかも……。

『死の罠の地下迷宮』各版の比較

 『ファイティング・ファンタジー・コレクション』の『死の罠の地下迷宮』を読んでいると、社会思想社版の『死のワナの地下迷宮』からいくつか変更点があることに気がつきました。翻訳文が異なるのはもちろんですが、ゲーム的に影響がある部分も変更されています。ゲームの難度・攻略法にも少なからぬ影響があります。

 というわけで、この2つと、HJ文庫Gで発売された『デストラップ・ダンジョン』*1を含めた3つの版のゲーム的に影響がある部分の変更点を表にして見ました。

 ややネタバレです。

『死の罠の地下迷宮』各版の変更点
   
社会思想社 現代教養文庫

HJ文庫G

ファイティング・ファンタジー・コレクション
  タイトル 死のワナの地下迷宮 デストラップ・ダンジョン 死の罠の地下迷宮
  初版発行日 1985年11月20日 2009年1月1日 2022年7月31日
項目 出版社 社会思想社 ホビージャパン SBクリエイティブ
ルール 食事をいつ取れるか 戦闘中以外いつでも 文中でそう書いてあるとき*2 戦闘中以外いつでも
ルール ポーションの使用回数 1回分 2回分 2回分
223 木の棒を踏む 運点-2 運点マイナスなし*3 運点-2
151 巨大偶像での戦闘:ロープあり 技術点-3 技術点-2 技術点-2
166 巨大偶像での戦闘:ロープなし 技術点-3 技術点-2 技術点-3
271 盾を失う 技術点-2*4 技術点-1 技術点-1
206 スロムへのお礼の品 食料一食分 食糧を少し*5 ポーションを一本
26 Sの錠剤を飲むと 体力点-2 技術点-2 技術点-2
169 男に与える保存食 食料*6 いくらかの食糧 一食分の保存食
306 持ち去られた品 (ザックの)中身をそっくり奪って 所有物は残らず持ち去られた 保存食のすべてを持ち去り
150 鉄鈎入手時:運だめし成功 体力点-1 技術点-1 技術点-1
33 鉄鈎入手時:運だめし失敗 体力点-3 技術点-3 技術点-3
  • 社会思想社版と比較して変更されてる点を太字にしています。

 コレクション版では魔法のポーションは2回分使えます。これは重大な変更。忘れずに、ありがたくもらっておきましょう。ちなみに、『火吹山の魔法使い』では逆に社会思想社版は2回分、コレクション版は1回分でした。『盗賊都市』は社会思想社版・コレクション版ともに1回分。

 151番と166番。巨大偶像での戦闘時の技術点マイナスの数値が変更されています。各版とも微妙に異なる。社会思想社版での空飛ぶ番人戦は、序盤から実質技術点11の相手との戦闘で、『死のワナの地下迷宮』の高難度の象徴の一つとなっていました。HJ文庫G版の怪鳥戦はこのマイナスが3から2に軽減されて楽になりました。そして、コレクション版のフライング・ガーディアン戦は、ロープありの場合となしの場合で異なるマイナスとなっています。

 206番。スロムに助けてもらった際に渡すお礼の品も各版で異なる。コレクション版はなんとポーション1本を渡すことになっています。保存食1食分とはえらい違い。命を助けてもらったとはいえ、ポーション1本はやり過ぎでは……。

 26番はSの錠剤のペナルティが体力点から技術点に変更。社会思想社版では体力点-2で済むのでどうということはなかったのですが、コレクション版は厳しい罰を受けることになります。第一の試練は、能力値関係なく失敗する可能性がかなりあるのでこれは痛い。

 そして、150番と33番の鉄鈎を入手する際のマイナスも体力点から技術点に変更されています。これは極めて影響が大きい。体力点マイナスなら損害は軽微でしたが、このあと強敵との連戦が控えているのに、運だめしに成功しても技術点-1というのは痛烈。これにより、コレクション版ではピット・フィーンドとの戦闘を避けない戦略まで視野に入ってきます。

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その他、指摘しておきたい点

 変更点ではないですが、コレクション版『死の罠の地下迷宮』を読んでいて気がついた点をいくつか書いておきます。

 191番の第一の試練。サイコロ2個の「合計が八より少なければ一五二へ。八よりも大きければ一二一へ。」となっていて、合計が8だった場合の行き先がありません。イベントの趣旨を考えれば「合計が八より少なければ一五二へ。八か、八より大きければ一二一へ。」と解釈するべきでしょう*7。84番も同様で、「合計が八よりも大きければ一五二へ。八か、八よりも少なければ一二一へ。」と解釈するべき。

 324番。「きみは足の不自由な競技監督の召使いと話をしただろうか?」という分岐の立て方は不適切だと思います*8。この書き方だと、話だけをして情報を得てない場合(367番から109番を経由)も「話をした」と解釈できてしまいます。「きみは足の不自由な競技監督の召使いから○○の話を聞いただろうか?」などと書くべきでしょう。

 しょうもないことだけど、どうしてもひとこと言わせてほしい。238番、綱渡りの帰り道。「ロープの上を歩く危険はもう犯したくないと思ったきみは、その上を這って進むことにする」。じゃあ行きもそうしろよ!

参考にしたページ

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*1:いわゆる“萌えFF”。

*2:……と書かれているが、ゲーム中食糧を食べるという指示は206番しかない。ルールが誤っているとみなして良いでしょう。

*3:なお、避けようとして触れてしまった場合(246番)はすべての版で運点-2。

*4:なお、217番で盾を失う場合はすべての版で-1点。

*5:具体的に何食分かは書かれていない。

*6:341番の選択肢にも「食料をいくらか」としか書かれていない。

*7:ちなみに、社会思想社版では「八かそれより上だったら」、HJ文庫G版では「8以上なら」という表現になっています。

*8:なお、社会思想社版とHJ文庫G版も同様の表現になっています。

『死の罠の地下迷宮』の手描き地図&テキストマップ

 『ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活』の『死のワナの地下迷宮』をクリアしたので、FFコレクション第1弾のときと同じく、お手製の手描き地図と、罫線素片などを組み合わせて作ったテキストマップをアップします。

 ややネタバレなのでこれからプレイするつもりの方は注意して下さい。

手描き地図

 例によって、社会思想社版の『死のワナの地下迷宮』*1をプレイした時に、A6のメモ用紙にシャープペンで描いたマップです。紙は3枚ですが、射水路を滑り落ちた先の90番以降の最終盤部分だけ、2枚目の紙の一部のスペースを使って描いています。

終盤

『死のワナの地下迷宮』手描きマップ:終盤

中盤+最終盤

『死のワナの地下迷宮』手描きマップ:中盤+最終盤

序盤

『死のワナの地下迷宮』手描きマップ:序盤

テキストマップ

「決死行」

 ダンジョン物なので空間のつながりを重視した地図です。『死の罠の地下迷宮』のダンジョンはほぼつながっているので、テキストマップはすべて1枚の地図につなげてみました。

 最初、大きく3つの道に分かれるので『火吹山の魔法使い』のような大きな分岐が組み合わさった構造かと思いきや、それ以降は大きな分岐は2分岐と3分岐が1つずつあるだけ。しかも3分岐はうち1つがあきらかにこれが正解という長い道のりのルート。分岐から合流して必ず通るイベントもかなりあるので、実質的には一本道に近い印象があります。普通に描くとかなり縦長のマップになってしまうので、縦の部分は雰囲気を出しつつもできるだけ詰めるように心掛けました。

                400覇者 \400 /                      
                     │ │                      
                   ┏━┷■┷━┓                    
                   ┃ ○ ○ ┃             ┌─┐    
             364最後の試験┃  364  ┃ ┌───┐←───── ▼252│    
                   ┃ ○ ○ ┃ │ ┏━▼─┐     │ │    
                   ┃     ┃ │ ┃ 127 ┃     │ │    
                   ┃ ○ ○ ┃ │ ┃○ ○┃     │ │    
            134マンティコア┃  134  ┃ │ ┃ 181 ┃181忍者  │ │    
                   ┃ ○ ○ ┃ │ ┃○ ○┃     │ │    
                   ┗━┓ ┏━┛ │ ┗┓ ┏┛     │ │    
                    /   \  │  ┃214┃214赤い線  │ │    
                   /     \ │  │ │      │ │    
                   │     │ │  │248│      │ │    
                90血獣│  90  │ │┏━┷□┷━┓    │ │    
                   \     / │┃     ┃    │ │    
                    \───/  │┃     ┃    │ │    
  ┌─┐                 ↑    │┃     ┃┏━━━┫ │    
  │29▼───────→┌───────→└────┘┗━┓━┏━┛┃   ┃ │    
  │ │        │      ┏━━━┓  315怪獣│□│  ┃ 372 □218218宝石 
  │ │  ┌───┐ │      ┃   ┠─────┘315│  ┃   ┃ │    
  │ │  │  291▼─┘ 360アイビー┃ 360 □305|li    │  ┗━━━┫ │    
  │ │  │ ┌─┘        ┃ ● ┠───────┘      │ │    
  │ │  │ │          ┗━━━┛ 305吠え声         │ │    
  │ │  │ │            ↑187編籠             │ │    
  │ │  │ │           ┌─────────────────┘280│    
  │ │  │ │           │○187              386 183│    
  │ │  │ │           │ ┌───────────────┐207│    
  │ │  │ │         ──┘ └──          386障壁│ │    
  │ │  │ │                             │ │    
  │ │  │ │         ──┐86┌──             │ │    
  │ │  │ │           ├■┤               │ │    
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  │ │  │ │          /  \/\             ┃ ┃    
  │ │  │ │        //      \            │ │    
  │ │  │ │        \   ☆   \            ┃ ┃    
  │ │  │ │        /   230   /         368竹馬┃368┃    
  │ │  │ │        \/\    /             ┃ ┃    
  │ │  │ │393綱渡り       \  /230穴居人の住処       │ │    
  │ │  │ ┣━━━━┓  ┏━━━┫ │               │ │    
  │ │  │ ┃  ■ ┃  ┃   ┃ │               │ │    
  │ │  │241 393 ■ ┃  ┃  93□292│93木箱            │ │    
  │ │  │ ┃  ■ ┃  ┃   ┃ │               │ │    
  │ │  │ ┣━━━━┛  ┗━━━┫ │               ┃◎┃    
  │ │  │ │           ┃目┃            262噴水┃262┃    
  │ │  │ │           ┃192┃192鉄格子           ┃ ┃    
  ┃ ┃  │ │      /─\/\│ │               │ │    
  ┃ ┗──┘ │      \  170  356│170エルフ女          │ │    
  ┃49 296  316│      /   /│ │               │ │    
  ┗━━──┐ │      \/\/ ┃378┃         310二つの扉┏□□┷┓   
  296笑い声 │ │           ┃●┃              ┃ 310 ┃   
       │ │           ┣━┫         14蜘蛛の巣┃ 14 ┃   
       │ │           ┣━┫              ┃   ┃   
   ┏━━━┫ │           ┃●┃188水たまり         ┗┓ ┏┛   
   ┃   ┃ │           ┃188┃               │ │    
   ┃ 200 □43│200カーテン      │ │               │ │    
   ┃   ┃ │           ┃24┃24鳥の椅子     108巨大昆虫│ │    
   ┗━━━┫ └───────────┘ └─────━━━───────┘ │    
       │           322 224 109      59       108 213│    
       └─────────────────────━━━─────┳-┓ │    
                             59足音     ┃394┃ │    
                                     ┗━┫ │379復讐 
             369洞窟トロール     /\/\221鍾乳石     ┏┷∞┷┓   
           ┌───━━━──────/    \/\──────┨ 379 ┃/─\
           │    369          221          □ 60 S  │
           │ ┌─━━━──────\      /──────┨   ┃\─/
           ┃194┃194二冊の本      \    /    60試練┗━∞━┛   
           │ │            \/\/        /  \    
           │○│                       /    \   
           └─┘                   55闘技場│  55 │   
   ┏━━━┓ 22同行↑ 282ライバル                  │    │   
   ┃   ┗───━━━─━━━─━━┓               \    /   
   ┃325 70│    ●22  282   388┃388貼り紙            \──/    
   ┃   ┏───━━━─┓ ┏─━━┛                        
   ┗━━━┛       ┃338┃338先行者                        
  ┌────────────┘ │                            
  │           277 142│                            
  │ ┌──────────┐ │                   ┃◎┃      
 ┌┘176└┐         │ │78管                 ┃217┃217大岩   
 │― │―│         │78=====               ┃ ┃      
 │- │-│122階段      │ ┣━━━┓               │ │      
 │‐ │‐│         │ ┃   ┃               │ │      
 └┐122┌┘74ミラー・デーモン│136□ 210 ┃210囚人            │ │      
 ┏┛ ┗┓  ┏━━━┓  │ ┃   ┃               │ │      
 ┃   ┃  ┃   ┃  │ ┣━━━┛               │ │      
 ┃ 74 ┃  ┃ 153 ┃  │ │         128キノコ   381骸骨│ │      
 ┃   ┃  ┃   ┃ ┏┷□┷┓35落とし戸  ┏━━━┓  ┏━━━┫ │      
 ┗┓ ━┻──┻━□━┻─┨   ┃ ┌─────┛   ┗──┨   ┃ │      
  │       263   □ 124●┃←│○35|li    128  il|  381 □100│      
  └───────────┨   ┃ └─────┓   ┏──┨   ┃ │      
       153クロスボウ ┗━━━┛    /\ ┗━━━┛  ┣━━━┫ │      
                       \ \       ┃   ┃ │      
                       /317/       ┃ 12 □237│12石像の庭 
                       \ \       ┃   ┃ │      
                ┏━━━───━ ━───────┻━━━┛ │      
              117鏡┃117     352   135 267  68■    │68穴とロープ
                ┗━━━───━━━───┐ ┌─━━━───┘      
                      352岩ウジ   │ │ /\/\         
                             │ │/   /         
                             │107□ 168 \168ウジ虫と短剣  
                             │ │\    \        
                             / / \/\─/        
                         344光の柱\344\              
                             / /              
                         ┏━━━┫ │              
                         ┃   ┃ │              
                      102敬意┃ 102 □239│              
                         ┃   ┃ │              
                         ┗━━━┫ │              
                          /\/   \             
            【「決死行」】       \      \  299惨状       
                           /  ☆  \ ┏━━━┓      
                      37巨大偶像\  37  / ┃   ┃ 326    
                            \   /  ┃ 299 ┃ モーニング
                             │ │   ┃   ┃   スター
                             │ └───┻━□━┻───━━┓
                             │32 83    164      326┃
                       110木の棒  │ ┌───────┳━━━┓ ┃
                     ┌──━━━──┘ │       ┃   ┃ ┃
                     │   110  313 279│  197プレート┃ 171 □197┃
                     │ ┌━━━──┐ │       ┃ 208 ┃ ┃
                     │ │     ┃298┃298背負い袋  ┗━━━┫ │
                     │ │     │ │       182熱気┃182┃
                     ┃ ┃     │ │387ケイブマン     │ │
                  264喧嘩┃264┃     ┃387┃        13竹筒┃13┃
                     ┃ ┃     │ │  66足跡      │ │
                     │ └─━━━─┘ └─━━━━━─━━━─┘ │
                     │362  137   293    66 119  56◎   │
                     └───━━━─────━┓ ┏━─━━━───┘
                         137鐘       │ │  56スポンジ  
                                  ┃ 1┃1六つの箱     
                                  │ │         
                                 /   \         

*1:社会思想社版のタイトルは『死のワナの地下迷宮』と“ワナ”がカタカナ書きです。

『危難の港』で保存食を持ってスタートするか問題

ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活~』も少しずつプレイしています

 『ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活~』が発売されていて、前回に引き続き今回も少しずつプレイしています。現在、1冊目の『死の罠の地下迷宮』を一通り終えて、2冊目の『危難の港』に入っているところです。

 『危難の港』は2017年、シリーズ2度目の復活を果した際に発売された、ファイティングファンタジーとしては“新作”となる作品です。もちろん今回初邦訳。あの重厚な世界観と大味なゲームバランス*1で有名なイアン・リビングストンが、2017年になってどんなゲームブックを書いたのか。期待して読み始めました。
 しかし、ゲームのルールと冒頭の「背景」を読んでいるとさっそく違和感が……。これ、ルール合ってますか?

ルールには保存食を持っていると書かれているが……

 『危難の港』のルールには次のように書かれています。

ゲームの開始時にきみは一〇食分の保存食を持っている。(p. 306)

 保存食を10食分持ってゲーム開始というルールは、FFシリーズの第1作『火吹山の魔法使い』から存在するルールです。保存食を食べると体力点が4点回復します。多くの作品でこのルールは採用されており、FFシリーズの標準ルールの一つになっています。『危難の港』もこのルールが採用された形となっています。

 しかし、冒頭の「背景」では、今回の主人公である“きみ”に関して次のように書かれています。

空腹で疲労困憊のまま、ここチャリスに到着することとなった。(p. 10)

交易商人が放置した残飯をあさり、路地での寝泊まりを余儀なくされる。(p. 10)

この後も、生ゴミの山をあさったり、もらった食べ物を即座にむさぼり食ったり、背負い袋の中をかき回して食べかすを探したりなど、今日食べる物にも困っている様子がたびたび描かれています。

 保存食を10食分も持っているのに、そんなことする必要あるかなあ? かなり違和感を覚える記述です。当初は、保存食は“冒険用”であって街中では手を付けないという冒険者魂なのかな?とも思ったのですが、街を出て旅を始めてからもひもじい思いをしているようだしなあ。

 本当は食糧なんて持ってないんじゃないの? 本当に保存食10食持ってスタートしていいの?

保存食なしが“ハードモード”

 というような感想をTwitterに書いたところ*2安田均先生からこんなレスをいただきました。

 10食分の保存食を持ってスタートするのはイージーモード保存食なしでスタートするのがハードモードとの見解です。

 これは自分としては結構衝撃的でした。疑問は持っていましたが、そうは言ってもルールにはっきり“持っている”と書かれている以上、持っているのは動かせないかなと思っていました。書いてあるルールが正しいかどうかから疑わないといけないとは。

 確かに、言われてみれば思い当たる節もあります。『危難の港』ではゲーム開始直後の1番のパラグラフで「体力点を一点加える」という指示があります。ゲーム開始直後なので当然、体力点は満タンです。ゲーム的には無意味な指示です。訳者もさすがにどうかと思ったらしく、次のような注釈が付けられています。

(訳注:当面、原体力点を超えてよいでしょう)

妥当な処理だと思いますが、このゲームブックは、ゲーム的には一目でナンセンスだと分かる指示を平然と行うということです。ゲームとして厳密にルールを考えているとは思えない。「状況に合うようにそっちで適当に解釈してよ」という作者の声が聞こえてきそうです。

 そもそも、FFシリーズ自体がわりとルールが曖昧なところがあるからなあ……。これまで自分も、『盗賊都市』での食事を取れるタイミングの問題だったり、鎖帷子を入手すると技術点マイナス2を喰らってしまう問題だったりを取り上げてきました。自分は、ゲームの有利不利に関する部分はきっちりかっちり厳密に、少しでも確率的に有利になる選択を考えるのが好きなので、ルールの解釈も厳密に考えてしまうのですが、ちょっとやりすぎだったかもしれません。ゲームブックのルールはそういうもんじゃねーだろ。まず文章があって、状況説明があって、それに合うようにルールを解釈する、と考えるべきかもしれません。

 往年の名著『ゲームブックの楽しみ方』に次のような記述があります。

日本でのゲーム・プレイヤーを見ていると、《中略》サイコロを使うゲームときくと、サイコロをふるだけが嬉しくて、なにも考えずにただ向かっていく(戦う)だけの人と、逆に勝ち負けにこだわって、数値面の有利不利にだけこだわる人の二つのタイプがかなり多い。(p. 29)

 自分はあきらかに後者タイプなので、ゲームブックのルールは必ずしも厳密に考えるのではなく、状況、雰囲気、難度などによって柔軟に、“ゲームブックを楽しむ”ことを第一に考えよう、と反省しました。

Twitterアンケート作ってみました

 しかし、そうは言っても『危難の港』の場合はルールにはっきり「保存食を持っている」書かれています。これを覆すのは相当です。多くのプレイヤーは、文章描写に違和感を覚えつつも、保存食を持っていることにしてプレイするんじゃないかなあ?*3

 「保存食なしでやるのがハードモード」という見解を知った上で、さあ、どうするか。かなり迷うところだと思います。

 というわけで、Twitterでアンケートを作ってみました。

 現在(2022/08/10(水) 20:30)のところ、2票差で「保存食10食分持ってスタート」がリードと、かなり票が割れている状態です。まだ『危難の港』を始めていないという方も、もしプレイするとしたらどうすると思うか、ぜひ投票下さい。

 自分は現在、2周目から保存食なしでスタートしました。厳しさは感じないけれど、まだ前半戦だからなー。リビングストン作品でハードモードか……。不安だ(^_^;)

リンク集

 本文で取り上げた以外で、この問題について言及してあるツイートを集めてみました。

*1:リビングストン先生は指セーブ公認ですから……。

*2:

*3:自分としても、そもそも「食事を取って体力点回復」というルール自体が極めてゲーム的な処理なので、保存食は“食糧”とは別に純粋に回復アイテムとして扱うという解釈もありかな……とも思います。

『モンスター誕生』の謎?

2つのリプレイ

 自分の感想などをつらつら書く前に、まず『モンスター誕生』の傑作リプレイを2つ紹介したい。

 デッドエンド時の状況のみを書いた短い文章とイラストが心に刺さる(^_^;) これこそ『モンスター誕生』! 大したネタバレはないので、未読で『モンスター誕生』がどんなゲームブックなのか興味がある方が読んでもよいと思います。

 こちらは、「真の道」を知っている状態で最低能力値でプレイ。これでもこんなに大変なのか……。不可避戦闘は多いので、技術点7だとさすがにつらいか。本作はダメージは1点(2点ではない)で即死ルールもありますが、それでも戦闘になれば技術点が一番大事。あと、複数相手の戦闘ルールがデフォルトで同時戦闘なのも微妙に厳しい(そして面倒)。

 こちらはネタバレなので、未読の方にはおすすめしません。


 以下は自分が『モンスター誕生』をプレイしての疑問・感想などを書きます。かなりネタバレなので、未プレイの方は注意して下さい。

日の光を浴びる?

 277番でコウモリに左目を傷つけられた事による技術点-1は「日の光を浴びる(外に出る)ことができれば、この技術点の減少は回復する」とされています。わざわざ括弧書きで「外に出る」と書かれていますが、最初に外に出る項目である442番は夜の描写です。回復条件は「日の光を浴びる」だから、この時点ではまだ回復しないと解釈するべきでしょう。というわけで、技術点が回復する項目は、朝を迎える362・162・324番のどれか。忘れないように。

金貨を入れておく袋?

 197番の「戦闘用の盾」入手時に「盾についている袋に、これから拾う金貨を入れることができる」と書かれているが、これの意図は? この文からは、この袋がない限り金貨は持ち運べないとも解釈できますが、そういう意図とはとても思えないなあ……。

 金貨が入手できる項目は5つ*1。多くの金貨は袋付きで入手できるし、袋付きではない91番と125番でも袋がないと持ち運べないというような指示はないので、見つけた人は普通に持っていってしまうでしょう。

 また、250番で入手できる茶色の袋は「文章にどれか一つしか持っていけないと書かれていても、見つけたものはすべて持っていくことができる」という効果がありますが、今後そんな場面はないような……。380番の花を、項目を行ったり来たりして全部持っていけるということなのかなあ……?

一生無限ループ?

 もう1つ、197番の「戦闘用の盾」の話。この盾には「扉を壊すことによって体力点を一点失うと書かれている場合も、体力点を失わずにすむ」という効果があります。ありがたい効果ですが、349番ではこれが仇に。無限ループ中の体力点-1も無効になってしまうので、いつまでもゲームオーバーになれない。読者自身が無限ループを一生読み続けるハメになります!

木箱の中身は?

 15番の工作室の木箱。開けただけで強烈な呪いを喰らうが、中身は一体何なのだろう? 

 また、その呪いを喰らった後の処理がおかしい。「足がひとりでに動き、きみは東の扉から部屋の外に出ていった」と書かれているのだから、436番ではなく49番へ行くべきでしょう。もっとも、436番経由でも何事もなく49番へ行くのは確定ですが……。

 そして、何よりも謎なのが、木箱を部屋の窪みから下に落とすという行動ができること。てっきり後半のフラグかと思ったら、ゲーム上は何の意味もない。これはいったい……。

運点無限アップ?

 237番で「隠し扉を発見するたびに、きみの運点に一点を加えることができる」と指示されます*2。実際に隠し扉を発見した項目では運点アップの指示はないので、忘れずにもらっておきましょう。

 そして、隠し扉を発見する項目である40番と233番は双方向移動ブロックにあるので、隠し扉を通過せずに戻れば再び“発見”することができます。これを利用すれば運点を無限に回復させることができます。やるかどうかはプレイヤー次第。これは気が引けるという向きも、40番と233番の運点アップを両方もらっておくくらいは良いでしょう。

墓から離れる?

 地上に出たすぐ後に行ける198番の墓所。「すぐにその場から離れる」で67番に行ってしまうのは理不尽だと思う。67番は、226番では「あえて残りの墓を調べてみる」で行く項目だし、離れるはずなのに「きみはそのなかでも一際大きいものに近づいていった」と書かれていて行動としても不自然。

 ここは261番へ行くの間違いじゃないかなあ?

コーヴンの村の食料品店

 32番、コーヴンの村の食料品店での一幕。怪物が店に入ってきて隅で震えていたら、怪物が金貨を差し出してきた!というほのぼのイベント。大好きなシーンですが、しかしここを通ると必須イベントを逃してデッドエンド確定なシーンでもある……。

標識が修理された?

 130番の標識。

北東が〈ドリー※※〉、南が〈コーヴン〉、北西が〈かえる沼(ブ・フォン・フェン)〉

となっていますが、社会思想社版では

南が〈ドリー※※〉、北西が〈コーブン〉、北東が〈ブ・フォン・フェン〉

となっていました。

 大抵のプレイヤーはここはカエル沼へ行きたいはず。社会思想社版では、ここからドリーの村へ着いてしまって絶望したプレイヤーは多いだろう。

 「真の道」を通っているプレイヤーはコーブンの村が南にあることは分かっているはずなので、標識の向きが間違っていることを読み取るという謎解きかと思っていたのですが、修正されたのですね……。

オフィディオタウルスを乗りこなすには?

 127番のオフィディオタウルスに乗ろうとする場面。サイコロ2個で技術点を目標とするロールを行います。こういうロールは大抵は技術点以下の目を出せば成功ですが、ここでは技術点より小さい目を出さないといけないという微妙に厳しい判定になっています。しかも成功しないとデッドエンド確定。後半で一番の難所。

訓練所の罠?

 デッドエンド確定のイベントと言えば、訓練所が丸々デッドエンド確定ブロックになっているのは大トラップですよね。いかにも正解っぽいルートがあるのにそれもダメで、しかもイベントが結構続くのがタチが悪い。このあたりのデッドエンドブロックをさまよってプレイ回数を費やしたプレイヤーは多いでしょう。

 どうせなら、スカル藻をドリーの三姉妹の元に持ち帰った(141番)のちに飛ばされる項目を、423番ではなくて191番あたりにすれば良かったのに。それなら訓練所も「たった一つの道」に取り込めるので、訓練所経由でデッドエンドを重ねたプレイヤーも報われるだろう。逆にオフィディオタウルスの意味がなくなってしまうが、このイベントは技術チェック一発でデッドエンド確定の理不尽イベントなので、むしろこの方が難度は下がるかもしれない。

目的のある人生

 訓練所での82番。毎食のホビット・シチューで体調を整えつつ、訓練で技術点の原点も上げつつ、サグラフを暗殺する機会をうかがって、ついに実行に移すという場面。

 しかし、43番によると毎食のホビット・シチューには操り草が入っているはずなのに、サグラフの暗殺なんて実行できるのか。操り草の効果も大したことないな。そう考えると、43番はそれほど悪い結末には見えないな。

わざと罠にかかる?

 341番。わざと罠に掛かってガレーキープに潜入する場面ですが、なんでここでは反撃できるんだろう。罠に掛かったばかりでまだ元気いっぱいということなら、336番だって同じ事じゃん。

天候の魔法使い?

 158番。ガレーキープの中にあって、問答無用のデッドエンドではなく扉の選び直しの機会を与えてくれる、慈悲深き“天候の魔法使い”ニンビカス。いったい何者なんだろう? 『トロール牙峠戦争』にも出てこなかったし……。 

序盤でデッドエンドになる確率

 『モンスター誕生』の象徴とも言える、序盤の行動をサイコロで決められてしまう場面。プレイヤーが選択する余地がまったくないというゲームブックにはあるまじき展開。しかも、サイコロで選ばれた選択肢だけでデッドエンドになってしまう可能性が結構あります。具体的にはどれくらいの確率でデッドエンドになるのか?

 399 148 72 165  確率     行動
┳1-3 ━━━━━━━━18/36(50.0%)直接西へ。
┗4-6┳1-2━━━━━━ 6/36(16.7%)木の扉を開けずに引き返す。
   ┗3-6┳1 ━━━━ 2/36( 5.6%)木の扉を破ってから引き返す。
     ┗2-6┳4-6━ 5/36(13.9%)鉤爪獣の部屋から西へ。
        ┗1-3━ 5/36(13.9%)鉤爪獣の部屋から北へ。

 一番下まで行ってしまうとデッドエンド確定。つまり、5/36(13.9%)の確率でサイコロの選択だけでデッドエンド確定となります。

 さらに、205番でホビット(技術点5・体力点6)を3ラウンド以内に倒した場合は運だめし失敗で終了。倒せなかった場合はサイコロ1個振って1-4なら終了。技術点と運点にもよりますが、10%以上はここでデッドエンドになると思う。

 合わせると、4回に1回近くは序盤のサイコロ運だけで、382番の理性の煙にもたどり着けずデッドエンドになるということになります。

 ……やってられるか。

『モンスター誕生』の魅力とは?

 というように、とにかく「ひどい」のが『モンスター誕生』の特徴というのは間違いなく事実。序盤のサイコロで行動を決める部分以外でも、「たった一つの道」を辿っていても運だめしなどのサイコロ運だけでデッドエンド確定になってしまう場面がいくつかある。「たった一つの道」の発見も非常に困難。基本的にノーヒントの総当たりで探索するしかない上、単純に枝分かれするような構造になっていないので分岐を把握するのも難しい。総当たりで探索した結果、すべてデッドエンドに繋がっていて任務達成にはまったく関係ないというデッドエンドブロックも多い。極めて意地悪。正直言って、ゲームとしては破綻していると言ってもいいと思います。

 しかし、だから『モンスター誕生』が面白くないかというとそんな事はありません。むしろ、だからこそ『モンスター誕生』は面白いゲームブックだと思います。

 『モンスター誕生』は、開始前の「背景」で17ページもあるなど文章量が多いことからもうかがえるように、物語指向が高いゲームブックです。物語指向が高いゲームブックというと「選択肢は申し訳程度で、低難度でほぼ一本道」というような構成が思い浮かぶかも知れません。ところが、『モンスター誕生』は高難度で道筋も非常に複雑なのは先ほど書いたとおりです。

 このような高難度は、一見物語を楽しむ為には邪魔なようにも思えます。しかし、『モンスター誕生』では、選択肢の選択方法や複雑な道筋、難度も物語の演出に一役買っています。序盤の選択決定は、サイコロでなければいけない理由がある。このモンスターが、理性を獲得し、言葉を理解し、人生の目的を得ていく過程が、そんな簡単であるはずがない。この物語はこの難度でなければいけない。この高難度は、ゲームとしては破綻していても、物語上は大きな意味がある。

 『モンスター誕生』は、“ゲームブックを利用した小説”として、ゲームブックの最高峰の作品だと思います。

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*1:金貨が入手できる項目。

  •  2 12枚(集会所のホビット
  • 412 2D枚(3人の冒険者
  • 249 2枚(狂獣の部屋の人間の死体)
  •  91 3枚(ハーフ・オークの死体)
  • 125 2枚(グロッグからもらう)

序盤のドワーフ冒険者も金貨を持っているが、入手できるという描写はない。

*2:なぜか290番ではこの指示はない。所詮ハズレルートだから運点アップに値しないということだろうか……。