カーリングは女子世界選手権の真っ最中ですが、そんな時期にもう1ヶ月前のことになるミラノ・コルティナ五輪の事を書きます。
オリンピックのテレビ中継では、日本が出場していない試合も多数放送されました。というわけで、そんな試合の中から自分が印象に残ったシーンを、久しぶりに局面図を使って紹介します。
男子予選 イギリス-イタリア
1エンド:とんでもないショットに
まだ大会序盤の予選の試合。イギリスは2勝0敗の3試合目。イタリアは1勝0敗の2試合目。
1エンドのラストストーン。この前のイタリアのスキップ、ジョエル・レトルナスのタップがナイスショットで、黄が良い位置にナンバー2を取りました。イギリスはどうやって2点取るのかと見ていたら、イギリスのスキップ、ブルース・モアトはセンターライン右のガードの赤を見ている。
なるほど! 斜めに飛ばして黄を2つテイクして、飛ばした赤が残れば3点か! 危険はあるが、モアトならこの距離感なら決まりそうだ、と思って見ていたら……。

狙いがズレて、黄ではなく自分の赤に向かってしまいました。ちょうど3つの赤が全部出ていって、動かした黄も左に残って、なんと4点スチール! 1エンド目からとんでもないショットが出てしまいました。モアト呆然(という顔に見えた)。
しかし、この後イギリスはこの大会で銀メダルを獲得します。そのチームにしてこれですから。致命的な失敗というのは、カーリングにおいては基本的な要素です。
9エンド:1点アップ後攻の選択
この試合はこの後イギリスが追い上げますが、さすがに4点スチールは大きく、イタリアがリードを保ったまま終盤へ。9エンド、7-6の1点リードでイタリアが後攻。ラストストーンで作戦選択の場面を迎えます。

ヒット・ステイで1点取るのは簡単で、それなら10エンド2点リード先攻となります。それでも十分有利ですが、イタリアのスキップ、ジョエル・レトルナスは平行の赤のダブルテイクしての2点を狙っています。2点取れば10エンド3点リードとなるのでさらに有利です。
しかし、ダブルテイクはわずかに失敗。左の赤が出きらず、赤の1点スチールとなり、10エンド同点後攻となりました。
この選択、どうだったでしょう? 10エンド同点後攻でも十分有利ですが、さすがに10エンド2点リード先攻と比べたら、勝率は後者の方がははっきり高いと思うので、ここはヒットステイで1点で良かったんじゃないかなあ? とはいえ、このダブルテイクがどれくらいの確率で決まるかというのも重要な要素で、それは見ている側からはわからないことですが。
男子予選 スイス-カナダ
1エンド:シュワルツのタップ

ここからこの記事は、最近の自分のイチオシ選手、スイスのフォース、ブノワ・シュワルツ・バンベアクルのナイスショット集になります。ようするに、これが書きたかったからこの記事を作った(^_^;) 男子のスイス戦は3試合もテレビ放送されて大満足。
予選のスイス-カナダ戦。金メダル候補の対決。お互いに予選3戦全勝で迎えた4試合目。
1エンド。手前の赤にかなり隠れていて、ライン・ウェイトともギリギリのタップバックですが、シュワルツはこともなげに決めます。1エンドから精度の高いショットを決めて2点。シュワルツは表情を変えない。
3エンド:ここから2点取れる?

3エンドのスイス(赤)のフォース、シュワルツのラストストーンの投球前でこの状況。
1の黄をテイクしたいが、ゆっくりしたウェイトで黄の左側に当てて右下に押し出すというテイクは無理のようだ。だとすると、2点取るのは結構難しくない? どうやっても赤に当たって残ってしまうような……。どうするのかな?と思って見ていたら……。解説は両角友佑。
両角「自分の石を1個犠牲にして、2点をしっかり取ろうというような」

後ろの赤に当てて黄を外に押し出して2点。冷静な判断と正確なショットで2点にした。そして、クールな無表情を崩さないシュワルツがたまらん(^_^;)
小宮山アナ「ここもシュワルツ・バンベアクルは表情は変えません。いま投げたシュワルツ・バンベアクルは本当にクールで、表情を変えないんですよね」
両角「どんなに良いショットが決まっても、なかなか変わらないですよね。たまに喜んでるショットあるんですけども、そういうショット見るとものすごいショットの事が多いので」
思えば、ピョンチャン五輪の頃からこんな感じでした。
- (from:y_koutarou) シュワルツ - 検索 / X
https://x.com/search?q=%20(from%3Ay_koutarou)%20%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%84&src=typed_query&f=live
4エンド:意味不明のショット

4エンド。先攻(赤)スイスのラストストーンの投球前でこの状況。1は赤ですが、2・3が黄で、このスイスのショットによってはカナダに複数点チャンスが残りそう。赤はどうすれば黄の複数点を防げるか。あなたならどうしますか?
スイスはハウスに集まって話し合いますが、シュワルツは意味ありげな笑みを浮かべた。
両角「そのショットを狙うって言ったときに笑ったのかもしれないですね」

小宮山アナ「ちょっとが上がった! ワン・ツー、赤スイス」
左の赤から奥の黄を経由するラインで、ぐるっと回って4フット右下にピタリ収まる。これなら確実に1点取らせ。
このショットは、この大会で自分が一番意味不明だったショットです(^_^;) なぜこのショットが良いのかわからないし、なぜこのショットが思いつくのかわからない。結果、フォースの形になったのは理解できるけど、べつに1の赤の前にガードで良かったんじゃないかなあ……。それだといろいろ狙われる筋が残るのかなあ……。そして、これを完璧に決めるシュワルツ。
小宮山アナ「このショットの難しさというのはどのくらいなんですか?」
両角「いや……、どうでしょうね。たぶん人によると思いますけど、まあ言われたところにそのウェイト投げりゃ決まるんでしょって思っているシュワルツのような選手にとっては、もはや簡単なショットと思ってるかもしれないですね」
男子予選 スイス-スウェーデン
1エンド:ダブルテイクアウト・ロールイン
大会日程は進んで予選も後半へ。スイスはここまで5戦全勝。対するスウェーデンも金メダル候補でしたが、ここまで1勝5敗と苦戦続き。カナダとの試合では、カナダ選手によるダブルタッチをめぐる暴言事件を引き起こし、波紋を呼びました。

1エンド、ラストストーンで、シュワルツのスーパーショットが出ます。
この1つ前、スウェーデンのスキップ、ニクラス・エディンのヒットロールがナイスショット。黄を縦に並べました。自分は試合を見ていて、1の黄は手前の黄からテイクできるけど、そうすると手球がハウスに入らないから1点しか取れなくなったなあ、と思いましたが、もちろんそんなわけがない。
速いウェイトでダブルテイクアウトしつつ、手球はロールしつつもハウス右上に残すロールイン。1エンドからナイスショットで2点にしました。
このあとはスウェーデンのショットが冴えず、7エンドでコンシードでスイス勝ち。本大会のスウェーデンの不調を象徴するような内容でした。
男子3位決定戦 ノルウェー-スイス
7エンド:超速テイク
その後、スイスは7戦全勝で予選を1位で通過しますが、一発勝負の準決勝でイギリスに負け(´・ω・`) 3位決定戦に回ります。相手はノルウェー。4-1とスイスがリードして、7エンドの後攻フォース1投目。リードした後攻としては、とにかく相手の石を減らして、ブランクまで行ければ理想的。ここでシュワルツのこのショットが出ます。

ショットとしてはただの(?)クアドラプル・テイク(4石テイク)ですが、投げたストーンが見た事のない速さでした。解説は両角友佑、実況はテレビ朝日の山崎弘喜アナ。
両角「5.5秒。速いですね」
山崎アナ「両角さんでどれくらいなんですか?」
両角「いやー、普通にトップと呼ばれるコントロールして投げるウェイトで6秒前半、6秒2・3くらいなので、それより0.7秒速い計算なので。ちょっとコントロールを無視してしっかり押せばそのくらいという感じですかね。これはしかもすごい高い精度でシュワルツ選手投げてくるので」
山崎アナ「(画面にシュワルツとシュバラーが並んで映っている)左側がシュワルツ・バンベアクルなんですが、体格が大きいというわけではないんですけれどもね」
両角「ただ、ストーン速く投げるのは意外と、何というか、タイミングというか、ウェイト速く蹴れるので、その辺がうまいんでしょうね」
このエンドは狙い通りブランクになり、その後もノルウェーを圧倒。最後はノルウェーのスキップ、マグヌス・ラムスフィエルのぐるぐる回りながらデリバリーするSPIN-O-RAMAで決着。スイス銅メダルとなりました。おめでとうございます。
- SPIN-O-RAMA | カーリング女子 ロコ・ソラーレ オフィシャルブログ「ロコ・ログ」 Powered by Ameba
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女子決勝 スイス-スウェーデン
8エンド:これがカーリング
女子の試合も1つだけ。自分がこれがカーリングだ!と思う場面があったので紹介します。
決勝戦のスイス-スウェーデン。7エンド終わって3-4で8エンドはスイス後攻という大接戦。

先攻(黄)スウェーデンのスキップ、アンナ・ハッセルボリのラストストーンは、ガード狙いがハウスに入ってしまうミスショット。相手に2点チャンスを与えてしまいます。
このエンド、スウェーデンはリード2投目でセンターへカマーを投げた以外は全部ガードでした。ナンバー1の黄を守り通す作戦でしたが、最後の最後で痛すぎるミスが出てしまいました。ハッセルボリはブラシの柄を叩きつけた。解説は石崎琴美。
石崎「入れちゃいけなかったんですよ」

スイス(赤)のフォース、アリーナ・ペーツのラストストーン。ダブルテイクを狙いますが、飛ばした黄が左に出きらずナンバー1で残る! スウェーデン、スチール。接戦の8エンドスチールは非常に価値が高い。この後、9エンドでスイスは2点取って同点に追いつきますが、同点後攻の10エンドでスウェーデンが1点取って、スウェーデンが金メダルとなっています。
スウェーデンにミスがあったためにスイスに2点チャンスが生まれて、2点を狙ったためにスウェーデンの1点スチールとなった。スウェーデンがしっかりハウス前にガードを置いていれば、スイスはラストストーンでウェイトを抑えて1の黄を少し押すショットで1点を取っていたでしょう。ミスしたためにかえって良い結果となるということが、カーリングではよくあります。ミスした結果をどうするかがカーリング。
とはいえ、スイスはランバックのチャンスが再三あったので、どこか1回は決めておかないといけなかった。左のコーナーガードとして残っている赤の数が、ランバックに失敗した回数を示しています。*1
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*1:1つは自分で置いたコーナーガードですが。













