『モンスター誕生』の謎?

2つのリプレイ

 自分の感想などをつらつら書く前に、まず『モンスター誕生』の傑作リプレイを2つ紹介したい。

 デッドエンド時の状況のみを書いた短い文章とイラストが心に刺さる(^_^;) これこそ『モンスター誕生』! 大したネタバレはないので、未読で『モンスター誕生』がどんなゲームブックなのか興味がある方が読んでもよいと思います。

 こちらは、「真の道」を知っている状態で最低能力値でプレイ。これでもこんなに大変なのか……。不可避戦闘は多いので、技術点7だとさすがにつらいか。本作はダメージは1点(2点ではない)で即死ルールもありますが、それでも戦闘になれば技術点が一番大事。あと、複数相手の戦闘ルールがデフォルトで同時戦闘なのも微妙に厳しい(そして面倒)。

 こちらはネタバレなので、未読の方にはおすすめしません。


 以下は自分が『モンスター誕生』をプレイしての疑問・感想などを書きます。かなりネタバレなので、未プレイの方は注意して下さい。

日の光を浴びる?

 277番でコウモリに左目を傷つけられた事による技術点-1は「日の光を浴びる(外に出る)ことができれば、この技術点の減少は回復する」とされています。わざわざ括弧書きで「外に出る」と書かれていますが、最初に外に出る項目である442番は夜の描写です。回復条件は「日の光を浴びる」だから、この時点ではまだ回復しないと解釈するべきでしょう。というわけで、技術点が回復する項目は、朝を迎える362・162・324番のどれか。忘れないように。

金貨を入れておく袋?

 197番の「戦闘用の盾」入手時に「盾についている袋に、これから拾う金貨を入れることができる」と書かれているが、これの意図は? この文からは、この袋がない限り金貨は持ち運べないとも解釈できますが、そういう意図とはとても思えないなあ……。

 金貨が入手できる項目は5つ*1。多くの金貨は袋付きで入手できるし、袋付きではない91番と125番でも袋がないと持ち運べないというような指示はないので、見つけた人は普通に持っていってしまうでしょう。

 また、250番で入手できる茶色の袋は「文章にどれか一つしか持っていけないと書かれていても、見つけたものはすべて持っていくことができる」という効果がありますが、今後そんな場面はないような……。380番の花を、項目を行ったり来たりして全部持っていけるということなのかなあ……?

一生無限ループ?

 もう1つ、197番の「戦闘用の盾」の話。この盾には「扉を壊すことによって体力点を一点失うと書かれている場合も、体力点を失わずにすむ」という効果があります。ありがたい効果ですが、349番ではこれが仇に。無限ループ中の体力点-1も無効になってしまうので、いつまでもゲームオーバーになれない。読者自身が無限ループを一生読み続けるハメになります!

木箱の中身は?

 15番の工作室の木箱。開けただけで強烈な呪いを喰らうが、中身は一体何なのだろう? 

 また、その呪いを喰らった後の処理がおかしい。「足がひとりでに動き、きみは東の扉から部屋の外に出ていった」と書かれているのだから、436番ではなく49番へ行くべきでしょう。もっとも、436番経由でも何事もなく49番へ行くのは確定ですが……。

 そして、何よりも謎なのが、木箱を部屋の窪みから下に落とすという行動ができること。てっきり後半のフラグかと思ったら、ゲーム上は何の意味もない。これはいったい……。

運点無限アップ?

 237番で「隠し扉を発見するたびに、きみの運点に一点を加えることができる」と指示されます*2。実際に隠し扉を発見した項目では運点アップの指示はないので、忘れずにもらっておきましょう。

 そして、隠し扉を発見する項目である40番と233番は双方向移動ブロックにあるので、隠し扉を通過せずに戻れば再び“発見”することができます。これを利用すれば運点を無限に回復させることができます。やるかどうかはプレイヤー次第。これは気が引けるという向きも、40番と233番の運点アップを両方もらっておくくらいは良いでしょう。

墓から離れる?

 地上に出たすぐ後に行ける198番の墓所。「すぐにその場から離れる」で67番に行ってしまうのは理不尽だと思う。67番は、226番では「あえて残りの墓を調べてみる」で行く項目だし、離れるはずなのに「きみはそのなかでも一際大きいものに近づいていった」と書かれていて行動としても不自然。

 ここは261番へ行くの間違いじゃないかなあ?

コーヴンの村の食料品店

 32番、コーヴンの村の食料品店での一幕。怪物が店に入ってきて隅で震えていたら、怪物が金貨を差し出してきた!というほのぼのイベント。大好きなシーンですが、しかしここを通ると必須イベントを逃してデッドエンド確定なシーンでもある……。

標識が修理された?

 130番の標識。

北東が〈ドリー※※〉、南が〈コーヴン〉、北西が〈かえる沼(ブ・フォン・フェン)〉

となっていますが、社会思想社版では

南が〈ドリー※※〉、北西が〈コーブン〉、北東が〈ブ・フォン・フェン〉

となっていました。

 大抵のプレイヤーはここはカエル沼へ行きたいはず。社会思想社版では、ここからドリーの村へ着いてしまって絶望したプレイヤーは多いだろう。

 「真の道」を通っているプレイヤーはコーブンの村が南にあることは分かっているはずなので、標識の向きが間違っていることを読み取るという謎解きかと思っていたのですが、修正されたのですね……。

オフィディオタウルスを乗りこなすには?

 127番のオフィディオタウルスに乗ろうとする場面。サイコロ2個で技術点を目標とするロールを行います。こういうロールは大抵は技術点以下の目を出せば成功ですが、ここでは技術点より小さい目を出さないといけないという微妙に厳しい判定になっています。しかも成功しないとデッドエンド確定。後半で一番の難所。

訓練所の罠?

 デッドエンド確定のイベントと言えば、訓練所が丸々デッドエンド確定ブロックになっているのは大トラップですよね。いかにも正解っぽいルートがあるのにそれもダメで、しかもイベントが結構続くのがタチが悪い。このあたりのデッドエンドブロックをさまよってプレイ回数を費やしたプレイヤーは多いでしょう。

 どうせなら、スカル藻をドリーの三姉妹の元に持ち帰った(141番)のちに飛ばされる項目を、423番ではなくて191番あたりにすれば良かったのに。それなら訓練所も「たった一つの道」に取り込めるので、訓練所経由でデッドエンドを重ねたプレイヤーも報われるだろう。逆にオフィディオタウルスの意味がなくなってしまうが、このイベントは技術チェック一発でデッドエンド確定の理不尽イベントなので、むしろこの方が難度は下がるかもしれない。

目的のある人生

 訓練所での82番。毎食のホビット・シチューで体調を整えつつ、訓練で技術点の原点も上げつつ、サグラフを暗殺する機会をうかがって、ついに実行に移すという場面。

 しかし、43番によると毎食のホビット・シチューには操り草が入っているはずなのに、サグラフの暗殺なんて実行できるのか。操り草の効果も大したことないな。そう考えると、43番はそれほど悪い結末には見えないな。

わざと罠にかかる?

 341番。わざと罠に掛かってガレーキープに潜入する場面ですが、なんでここでは反撃できるんだろう。罠に掛かったばかりでまだ元気いっぱいということなら、336番だって同じ事じゃん。

天候の魔法使い?

 158番。ガレーキープの中にあって、問答無用のデッドエンドではなく扉の選び直しの機会を与えてくれる、慈悲深き“天候の魔法使い”ニンビカス。いったい何者なんだろう? 『トロール牙峠戦争』にも出てこなかったし……。 

序盤でデッドエンドになる確率

 『モンスター誕生』の象徴とも言える、序盤の行動をサイコロで決められてしまう場面。プレイヤーが選択する余地がまったくないというゲームブックにはあるまじき展開。しかも、サイコロで選ばれた選択肢だけでデッドエンドになってしまう可能性が結構あります。具体的にはどれくらいの確率でデッドエンドになるのか?

 399 148 72 165  確率     行動
┳1-3 ━━━━━━━━18/36(50.0%)直接西へ。
┗4-6┳1-2━━━━━━ 6/36(16.7%)木の扉を開けずに引き返す。
   ┗3-6┳1 ━━━━ 2/36( 5.6%)木の扉を破ってから引き返す。
     ┗2-6┳4-6━ 5/36(13.9%)鉤爪獣の部屋から西へ。
        ┗1-3━ 5/36(13.9%)鉤爪獣の部屋から北へ。

 一番下まで行ってしまうとデッドエンド確定。つまり、5/36(13.9%)の確率でサイコロの選択だけでデッドエンド確定となります。

 さらに、205番でホビット(技術点5・体力点6)を3ラウンド以内に倒した場合は運だめし失敗で終了。倒せなかった場合はサイコロ1個振って1-4なら終了。技術点と運点にもよりますが、10%以上はここでデッドエンドになると思う。

 合わせると、4回に1回近くは序盤のサイコロ運だけで、382番の理性の煙にもたどり着けずデッドエンドになるということになります。

 ……やってられるか。

『モンスター誕生』の魅力とは?

 というように、とにかく「ひどい」のが『モンスター誕生』の特徴というのは間違いなく事実。序盤のサイコロで行動を決める部分以外でも、「たった一つの道」を辿っていても運だめしなどのサイコロ運だけでデッドエンド確定になってしまう場面がいくつかある。「たった一つの道」の発見も非常に困難。基本的にノーヒントの総当たりで探索するしかない上、単純に枝分かれするような構造になっていないので分岐を把握するのも難しい。総当たりで探索した結果、すべてデッドエンドに繋がっていて任務達成にはまったく関係ないというデッドエンドブロックも多い。極めて意地悪。正直言って、ゲームとしては破綻していると言ってもいいと思います。

 しかし、だから『モンスター誕生』が面白くないかというとそんな事はありません。むしろ、だからこそ『モンスター誕生』は面白いゲームブックだと思います。

 『モンスター誕生』は、開始前の「背景」で17ページもあるなど文章量が多いことからもうかがえるように、物語指向が高いゲームブックです。物語指向が高いゲームブックというと「選択肢は申し訳程度で、低難度でほぼ一本道」というような構成が思い浮かぶかも知れません。ところが、『モンスター誕生』は高難度で道筋も非常に複雑なのは先ほど書いたとおりです。

 このような高難度は、一見物語を楽しむ為には邪魔なようにも思えます。しかし、『モンスター誕生』では、選択肢の選択方法や複雑な道筋、難度も物語の演出に一役買っています。序盤の選択決定は、サイコロでなければいけない理由がある。このモンスターが、理性を獲得し、言葉を理解し、人生の目的を得ていく過程が、そんな簡単であるはずがない。この物語はこの難度でなければいけない。この高難度は、ゲームとしては破綻していても、物語上は大きな意味がある。

 『モンスター誕生』は、“ゲームブックを利用した小説”として、ゲームブックの最高峰の作品だと思います。

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*1:金貨が入手できる項目。

  •  2 12枚(集会所のホビット
  • 412 2D枚(3人の冒険者
  • 249 2枚(狂獣の部屋の人間の死体)
  •  91 3枚(ハーフ・オークの死体)
  • 125 2枚(グロッグからもらう)

序盤のドワーフ冒険者も金貨を持っているが、入手できるという描写はない。

*2:なぜか290番ではこの指示はない。所詮ハズレルートだから運点アップに値しないということだろうか……。