金貨はスコア
『運命の森』では、金貨を入手できる場面が多数あります。アイテムを入手した際にわざわざ「金貨○枚分の価値がある」と書かれている場合もあります。そのわりには、道中で金貨を使う場面はそれほど多くありません。周回ルートがあるので、2周目以降でヤズトロモの塔で魔法の品を買う際に使うこともできますが、自分は金貨の枚数はスコアであると思いました。つまり、金貨をできるだけ多く集めた方が良いクリアである。単に任務達成するだけでなく、より多くの金貨を持って任務達成する道を探してこそ真のクリアとなる。というわけです
そこで、そのようなルートを探して進行表を作ってみました。能力値によってできることは異なるので、ルート表は3つ作りました。1つ目は、最低能力値でスコアにこだわらずクリアだけをめざすルート。2つ目は、最低能力値で現実的に可能な範囲で高スコアをめざすルート、3つ目は、最高能力値で、できるだけ高スコアをめざすルートです。
もちろん、かなりネタバレです。
3つの攻略ルート
共通ルール
- 一度使ったアイテムは消滅する。例えば、【銀の鍵】を石の扉を開けるのに使った後に、女首領の盗賊団へ差し出すアイテムとして使ってはいけないという意味です。*1
- 「背景」で入手する地図はアイテムに含めない。これも譲渡アイテムとして使ってはいけないという意味です。*2
- 周回ルートは使わない。運点12なら確実に周回できるので、全ルート踏破が最善に決まっているので。*3
- 保存食は、戦闘が起こっていない項目1つにつき1個食べられる。*4
- 魔法のポーションは、ルールに書いてある文字通り「いつでも使用することができる」と解釈します。つまり、戦闘中に使っても敵から攻撃を受けたりしません。ただし、戦闘のルールの一から七の進行中はさすがに不可とします。
最小限ルート
技術点7・体力点14・運点7で、物語的な美しさは残しつつ、最低限必要なことだけをやって確実な任務達成をめざします。魔法のポーションは体力のポーションが良いでしょう。
難所らしい難所もなく、かなりのイベントをスルーできるので、能力値最低で、運だめしにすべて失敗する前提でも、十分任務達成できます。「たった一つの真実の道」が本当である数少ない(?)作品です。
効率重視ルート
技術点7・体力点14・運点7で、物語的な美しさは残しつつ、現実的に可能な範囲で金貨を集めつつ、任務達成をめざします。技術点7なので戦闘は結構きつい。あきらめざるを得ないアイテムや金貨もあります。魔法のポーションは体力のポーションを選択します。
最大の難関は攻撃力-3されるグレムリンとの戦闘。ここは入手できる金貨の枚数が28枚とダントツなので、無理してルートに入れました。体力のポーションはここで使う想定です。
技術点が7ではなく8だと、序盤で大針ミミズに勝って【武術のポーション】入手 → 猿人に勝って【武術の腕輪】入手が可能かもしれません。すると、ファイア・デーモンに勝ったり、女首領の盗賊団に勝ったりとできることが広がり、ヤズトロモから購入するべきアイテムも変わってきます。このくらいの方がゲーム的には面白いかもしれません。
最強ルート
技術点12・体力点24・運点12で、可能な限り最大枚数の金貨を持って、任務達成をめざします。回収できる金貨はすべて回収し、支出もできるだけ抑えます。魔法のポーションは技術のポーションを選択します。理由はルートを見ていくとわかります。
購入する魔法の品は1つだけでいい。正直、ヤズトロモの魔法の品って微妙な品が多いよね(^_^;) もう少し能力値が低いとさすがにもっとアイテムが必要になるが、この能力値ならなくていい。最強冒険者なら骨折しても大丈夫!
『運命の森』の謎?
いつもの疑問・感想の列挙コーナー。今回はツッコミ所?が少なめなので、この記事にまとめて書きます。
ワームホールにはまる?
1回目を終えて2回目のプレイを始めた時のこと。序盤は1回目と同じ道を辿ろうとしていたのに、なぜか初めて見るイベントに遭遇する。あれ?
よく調べてみると、1回目のプレイの時に、最初に〈ダークウッドの森〉に入った177番から289番に進む時に、間違って288番を読んでいたようだ(´・ω・`) 全然気がつかなかったなあ。井戸の底でグレムリンと攻撃力-3の戦闘をさせられたり、ワイヴァーンが登場したり、序盤から容赦ないな、とは思いましたが……。
このような、ランダムに出現するワームホールにはまってしまうという現象は、ゲームブックではあり得ることです。よって、1回目のプレイも有効なプレイということにしました(^_^;)
1つ愚痴を言わせてもらうと、288番の冒頭にこう書いてあるのが間違いの元。
丘を下って行くと谷の低地が前に見え、その向こうに不気味な木の壁が広がっている――〈ダークウッドの森〉だ。
前に見えるものが「〈ダークウッドの森〉だ」ということは、今いる場所は〈ダークウッドの森〉ではないと思って、「ああ、これから〈ダークウッドの森〉に入って冒険が始まるんだな」と違和感なく読めてしまった。まさか、冒険の途中に〈ダークウッドの森〉ではない場所がある(と言うか、半分以上はそう)とは思わなかったよ。
しかし、序盤から容赦なかったのは勘違いだったのか、と思ってほっとして改めて2回目のプレイを進めたら、開始早々シェイプチェンジャー(技10・体10)と戦闘になった。開始1戦目から技術点10かよ。やっぱり容赦なかった(´・ω・`)
後戻りできる箇所
テキストマップの記事でも書いたとおり、このゲームブックは基本的に後戻りはできないようになっていますが、一部進行方向を変えて進むことができる箇所があります。
- ホブゴブリンから逃げる
- しゃべるカラスの丁字路(160番)。北へ行っても、317番のホブゴブリンとの戦闘で逃走すると、戻って東へ行くことができる。途中、カラスに「こんにちは!」とわざわざ挨拶するのがおもしろい。
- ツリーマンから逃げる
- 115番か20番から東へ行っても、277番のツリーマンから逃げると、戻って西へ進むことができる。
- クィンの小屋
- 東から208番に来た場合は北か西にしか行けないが、西へ行ってクィンの小屋へ行って戻ると、東へ戻ることができる(349番)
- 井戸
- 井戸に立ち寄るだけでは通過する方向にしか行けないが(172番・17番)、井戸に降りて出てきた場合はどちらの方向にも行くことができる(362番)。また、井戸に金貨を投げ入れた場合もどちらの方向にも行くことができる(89番)。
特に、井戸から引き返せるのは、グレムリンの棲み処と火の魔王の洞窟の両方に行くために重要です。先ほど書いた「最強ルート」でもこれを利用しています。『運命の森』きっての大型イベントを2つとも完遂して金貨を稼ぎましょう。
金の輪の価値は?
イノシシを倒すと入手できる【金の輪】(174番)。社会思想社版では金貨10枚の値打ちがあると書かれていましたが、コレクション版ではその記載がない。先ほども書いたとおり、『運命の森』では金貨はスコアだと思うので、これはしょんぼり。誤植だとしたらエラッタを出してほしいなあ。
運点を目標としたロール?
石造りの建物の扉を体当たりで開けようとした場合、2dで運点と技術点の両方を目標とするロールを行ないます(73番)。なかなか珍しい処理だと思う。運を目標とするロールなのに〈運だめし〉ではないので運点は減らないというのも珍しい。体当たりロールに失敗しても体力点などのマイナスなしって優しいなあ。
食料不足でゲームオーバー?
木の洞の穴を飛び降りて骨折した場合の処理がなかなか興味深い(304番)。
動けるだけの力を取り戻すまでに、保存食を五個食べなければならない。保存食がないなら、きみは飢え死にする(きみの冒険はここまでだ)。
保存食5つ消費というのも大胆だし、それが足りなかったら飢え死とは……。こんなデッドエンドは初めて見たかも。こんな個性的なデッドエンドがFF3作目にして盛り込まれていたのか。
複数の品物を差し出す場合のルール
この前『巨人の影』の記事で「ルール上の処理が謎」と書いた、アイテムを交換する際、同じアイテムを複数個持っている場合に複数アイテム扱いして良いかという疑問。39年も前に、リビングストン先生が自ら答えを書かれていました*5。女首領の盗賊団に背負い袋の中の品を差し出す場面(279番)。
背負い袋の中の品は、複数でもそれぞれ一つの品物として扱う。これは金貨も同様で一つの品物とみなす。
すばらしい記述。これなら明快。今後は特に指示がない限りこのルールを踏襲することにしましょう。
『運命の森』は簡単すぎる?
今回、自分は久々に『運命の森』をプレイしたわけですが*6、なんと4回でクリアできてしまいました。しかも、任務達成した回は、先ほど示した攻略ルートのうちの「最小限ルート」に近い行程でした。今回の『運命の森』のプレイ内容は、だいたい以下の通りです。
- 1回目:ワイヴァーンに負ける
- できるだけ西に進んだつもりが、初っ端でランダムワープで後半に飛んで、結局戦闘負け。
- 2回目:半魚人に負ける
- できるだけ西を通るルート。シェイプチェンジャーと戦闘になって運点を消費した後に、技術点と運点の入れ替えを食らったのが痛かった。【怪力のアームバンド】を持っていたので【浮遊の塵】は入手するも、川で力尽きる。
- 3回目:山男の一団に襲撃される
- 2回目より一路東寄りのルート。銀の鍵を入手した後は初到達なのでできるだけ西ルート*7。【浮遊の塵】を持っていなかったのでハンマーの頭は入手できず。しかし、【浮遊の塵】と【銀の鍵】が必要なことはこれでわかった。体力のポーションは残っていたが、運点8の運だめしに失敗して周回できず終了。
- 4回目:ジリブランへドワーフの戦鎚を届ける!
- 3回目より一路東寄りのルートを進んでいたら、あっさりハンマーの柄を入手できてしまった。こうなったら、あとは西に行けば腕相撲小屋へ行って【浮遊の塵】と【銀の鍵】を入手できるルートに入れることは確実なので、他のイベントは全スルー。初めて見る樹上小屋なんてもちろんスルー。【真鍮の笛】は持っていたがワイヴァーンもスルー。女首領の盗賊団にも「どうぞどうぞ」と使わなかった魔法の品5つを差し出して、ストーンブリッジに到達して任務達成。
たった4回で、しかも4回目は序盤でクリアできることがわかった状態だったので、クリアした嬉しさより「これでいいの?」と申し訳ない気分になりました。1回目のプレイはクリアに関係なかったので、きちんとプレイしていれば3回でクリアできていたことになります。
いくら初期作品とはいえ、こんなにあっさりクリアできるとは思わなかった。『死の罠の地下迷宮』は言うに及ばずですが、『盗賊都市』も目的のアイテムを全部見つけて任務達成するには繰り返しのプレイが必要だし、『バルサスの要塞』もガンジーの部屋など終盤は難所が列をなして待っているし、『火吹山の魔法使い』だって正しい鍵を3つ揃えるのはそんなに簡単じゃないぜ。『運命の森』の挑戦回数も、少なくとも7~8回くらいになると思っていました。それが4回でクリアできるとは。
これはさすがに簡単すぎる。『運命の森』には全部で63個のイベントがありますが(数え方にもよります)、その3分の1も経験できなかったことになります。一つ一つのイベントがあっさりしている上に、スルーできるイベントも多いので、物足りなさを感じます。一つ一つのイベントがあっさりしているのは『盗賊都市』もそうですが、『盗賊都市』の場合は、ポート・ブラックサンドという街自体が冒険の舞台として魅力的だったので、それでも面白かった。〈ダークウッドの森〉が冒険の舞台として魅力的かというと、それほどでも……。迷路構造は『運命の森』の方が面白いはずでしたが、その迷路がこうあっさりクリアできるのではなあ。もっと迷わせてほしかった。
……とクリアした直後は思ったのですが、よく考えると、プレイ回数が4回というのはそんなに少なくないかもしれない、と思い始めました。道のりの選択やサイコロ運がもう少し悪ければあと1~2回は多くかかった可能性もあります。一般的に適切なゲームの難度ということで考えれば、この程度で十分という気もします。これで満足できなければ、今回自分が示したように、できるだけ多くの金貨を集めてクリアするというような遊び方もできるわけですし。
なにより、こんな簡単にクリアできるゲームブックは『運命の森』が最後で、今後FFシリーズはどんどん高難度になっていくのです。技術点12でないとクリアは無理とか、最善の選択をしてもサイコロ運でゲームオーバーになるのが当たり前になっていき、“指セーブ”が常態化していく……というのは――そういう作品があるのは悪くありませんが、それが当たり前というのは――ゲームブックの進化としては健全ではなかったと思います。
高難度化の直接の原因は、オーバーキルな『死の罠の地下迷宮』の人気が出たことだと思いますが、『運命の森』が簡単すぎると言ってしまったこともそれに拍車を掛けたことでしょう。しかし、実際自分としても『運命の森』より『死の罠の地下迷宮』の方が好きだという……。となると、FFシリーズの高難度化は避けられない運命だったのか……。どう受け止めればいいのかわからない複雑な気分になりました。
プレイ記録(旧Twitter)
『運命の森』の良かったところを1つ挙げると、400番の文章が長くしっかりと書かれていたこと。物語にきちんと結末をつけて文章で達成感を味わわせてくれるのは重要だと思う。ゲームブックは単なるパズルではなく、物語なのだから。『危難の港』が好きなのも400番の満足度が高いのは大きな要因。 https://t.co/yxpFTuxXlI
— kouy (@y_koutarou) 2023年8月30日