『盗賊都市』の謎?

 『ファイティング・ファンタジー・コレクション』の『盗賊都市』をプレイした感想・疑問などをつらつらと書いてみます。

 かなりネタバレですので注意して読んで下さい。

『盗賊都市』の謎?

食事はいつ取れる?

 『盗賊都市』のルールで解釈に迷うのが、食事をいつ取ってよいかです。保存食ははじめから10食分持っていて、食べると体力点が4点回復します。『火吹山の魔法使い』では指示があった場合のみ食べることができましたが、『盗賊都市』では任意に食べることができます。ルールには以下のように書いてあります。

戦闘中以外なら、いつでも一息ついて食事をとることができる。一度にとれる食事は一個だ。

問題は「一度にとれる食事は一個だ」の部分です。「一度」とは?

 「1パラグラフにつき1個。ただし戦闘が発生するパラグラフでは不可」と考えるとルールとしては明快です。しかし、ゲームバランス的には甘すぎる気がします。また、短時間で複数回食事が取れることになってしまうので現実的にもおかしな感じがします。

 1つのイベントにつき1個という解釈は、現実的にもゲームバランス的にも妥当です。しかし、どこからどこまでが1つのイベントかは判断がつきにくい場合もあります。屋敷や海賊船、下水道、ザンバー・ボーンの塔などは全体で1つのイベントとするのか、いくつかに分割できると考えるのか……。もっと現実的に、文章を読んでみて食事を取る時間がありそうならOKという考え方もありますが、ルールとしてはどんどんあいまいになっていきます。

 自分としては、「食事を取って体力点回復」というのは極めてゲーム的な処理なので、現実感は無視して、確実に1通りの解釈ができる「1パラグラフにつき1個。ただし戦闘が発生するパラグラフでは不可」でいいと思います*1。そして、本来は食事を取れる場所はゲーム側で指示があるべきだと思います。

鎖帷子を手に入れると技術点マイナス2?

 FFルールで常に議論になる技術点増減の処理。ルールには次のように書かれています。

技術点、体力点、運点は追加であたえられることもあるが、これまでの点数と新たに加えられた点数の合計がそれぞれの原点を超えることはできない。ただし、ごく稀にだが、指定のページで超えられるような指示があった場合は除く。
特に指示のあった場合を除いて、技術点の合計は原技術点を超えることはできない。

実際、たまに「原技術点を増やす」と指示されることもあるので、「技術点を加える」というような指示では原点を超えるアップはできないというのは、ルール上は明らかです。

 しかし、ルール通りに解釈すると現実的に納得いかない場面が数限りなくあります。「魔法の剣を手に入れたのに技術点アップなしかよ(´・ω・`)」とか。

 特に、『盗賊都市』では鎖帷子の処理が納得できない。46番で鎖帷子を入手すると「技術点を二点加える」と指示されます。しかし、この時点で技術点が原点と同じだった場合は、ルール上、この技術点プラスを得ることはできません。そして、その後11番に行くと鎖帷子を脱ぐことで「技術点を二点失う」を食らいます。つまり、鎖帷子を入手したために技術点が2点減ってしまうのがルール上は正しい処理ということになります。どう考えても理不尽です。

 現実的には、11番では「鎖帷子入手時に技術点アップを得ていた分だけマイナスする」というのが妥当な解釈でしょう。しかし、そうするためには技術点アップの要因をいちいち記録する必要があることになります(アップした時点では、その後何を失うかなんてわからないですから)。

 また、ルールを無視して「優れた装備品入手の技術点アップは原技術点アップだ」と解釈してしまうという方法もあります。現実的な納得感はありますが、しかし技術点は1点の違いでも戦闘などへの影響は大きいので、ゲームバランスが崩壊する可能性があります。*2

 技術点に関しては他にも、優れた装備品によって技術点にまつわるすべてがアップするのはおかしいという問題もあります。技術点は戦闘だけでなく、鍵開けや崖を飛び越えるなど、技能が要求される場面で使う場合があります。魔法の剣を入手して技術点がアップしたことで(原点でもそうでなくても)鍵開けが成功しやすくなるというのは変な話です。

 ルール上の正しさ、ゲームバランス、現実的な妥当性・納得感、プレイしやすさ(記録の簡潔さ)。あちらを立てればこちらが立たずという関係で、うまい解決方法が見当たりません。自分としては、ルール上の正しさとゲームバランスの維持を重視して、「鎖帷子を入手したために技術点-2を食らう」という処理でやむを得ないと思います。

 優れた装備品による効果としては、技術点ではなく攻撃力*3アップである場合もあります*4。これなら技術点が原点でも恩恵を受けられるし、技術点自体はそのままなので、ルール上の正しさ、現実的な妥当性・納得感も満足できます。この方が妥当な処理だと思います。優れた装備品の効果は攻撃力アップに統一すれば良かったのにね。まあ、それでもゲームバランスの問題は残りますが……。

持っているアイテムを失う?

 148番などで失うアイテムは、387番で入手する銅のブローチでも良いのだろうか?という疑問。金のブローチと銀のブローチはアイテムとして身につけている=入手しているという描写がされています(273番・13番・8番・132番)。よって、148番で失うアイテムとして選択して良いし、その場合はブローチの効果を失うと解釈するのが妥当だと思います。だとすると、銅のブローチにも同じ解釈を適用できると思うけど、さすがにご都合主義で気が引ける。

 似たような意味で、354番売れるアイテムの中に「サソリのブローチ」があるけれど、銅のブローチを売っても良いのか……。

銀のブレスレット?

 ついでに、354番で売れるアイテムの中に「銀のブレスレット」があるけれど、そんなアイテムは出てこなかったような……。

「竜殺し」? 名剣?

 初回プレイ時のこと。「背景」を読むに、『盗賊都市』の主人公は「竜殺し」の高名な冒険者のようだが、そのわりにはいつも通りの技術点1D+6なの? それと、「背景」でもらう広刃の剣が、これまでにない丁寧な描写で書かれていて格好いいのだけど、技術点にボーナスないの?

 ……と思って始めたら、開始早々の126番でその広刃の剣を手放すことになって、技術点-1を食らった(´・ω・`) 名剣込みで技術点1D+6かよ。「竜殺し」も大したことないな。

空き巣・強盗

 そして、その126番でずいぶん殊勝なことをする主人公だなと思ったが、その後は空き巣、強盗のオンパレードだった……。このときの義務感とは何だったのか。しかも、ゲーム的には空き巣・強盗をした方が有利な場面が結構多い。まあ、お互い様ではあるけれど。これがポート・ブラックサンド流か……。

 395番では強盗をしたことで「運点を四点失う」という強烈な罰を食らうが、これ以外にもたくさんあっただろ! 「深い罪悪感を覚えつつ」って、今さらそんな事を言われても。

勝手にお金を払わないで

 これも初回プレイ時のこと。364番で「(男は)「金貨二枚で居場所を教えてやる」と言う。きみは男を信じて情報に金を払うことにする。」って勝手に払うなよ! だって俺、いま金貨持ってないぜ! ちょうど屋台で全品買ったところだったので……。このゲーム、金貨0枚になる可能性って結構あると思うんだけど……。

 なお、341番と160番でも同様の事態に陥りました(´・ω・`) いいのかな?

魔法のポーション? 魔法の鎧?

 187番で衛兵に渡す「魔法のポーション」は359番で入手する〈精神操作の飲み薬〉でもいいのだろうか? あと、魔法の鎧でも可と書いてあるけど、魔法の鎧なんて出てきたっけ? 鎖帷子は魔法の品ではなさそうだし……。

刺青屋はどこ?

 『盗賊都市』において唯一難しい謎だと思うのが、刺青師の店の場所。文章をきちんと読んでいないとスルーしていることに気がつかないので、繰り返せば繰り返すほど見つからない。結構はまった。これってわざとやってるの? 社会思想社版はクリアしたはずなのだけど、まったく覚えていなかった……。

金貨を隠し持つ?

 サワベリーとファットノーズに金貨を巻き上げられる際に金貨を1枚隠し持つのはえらいが(367番)、このあと金貨が必要な場面はないのでゲーム上は意味がない。なんでわざわざこんな描写を……。

扉を体当たりで壊すと……

 ザンバー・ボーンの塔の扉を体当たりで壊した場合のペナルティ(365番)。社会思想社版では体力点-1だったが、コレクション版では技術点-1になっている。社会思想社版が誤っていたのでしょう。

 そしてこの後の使用人のセリフが秀逸。「このように劇的な入場をされる必要が本当にあったのでしょうかね?」。返す言葉もありません……。

スピリット・ストーカーの倒し方

 任務達成した後で読み直して気がついたんですが、スピリット・ストーカーの倒し方は「背景」に書いてあったんですね。気がつかなかった。てっきりザンバー・ボーンを倒すためのアイテムだと思っていた。回収できるなんて思わなかったし……。

3つの道の選択

 最初の3つの道、〈カギ通り〉〈市場通り〉〈時計通り〉の選択。どの道にも必須アイテムはないのでどれを選択してもクリア可能ですが、どの道を通るのが有利か?

 このゲームの最大の難関はムーン・ドッグ戦なので、そのために攻撃力アップアイテムを入手しておくことが重要です。よって、攻撃力アップのアイテムがない〈カギ通り〉は選びません。

 〈市場通り〉は金貨が増えるイベントが多く、街を通り抜けるには一番有利だと思います。しかし、64番で運だめしに成功して狼との戦闘を回避してしまうと*5、次の技術チェックに失敗すると屋敷に入れないので、攻撃力+1の立派な盾を入手し損ねます。これは痛い。

 というわけで、確実なクリアを狙うなら〈時計通り〉がオススメ。そして、攻撃力+1アイテムの魔法の兜(376番)を入手しておきます。運だめし一発で金貨をすべて失ってしまう可能性があるのが厳しいように見えますが(247番)、ここで金貨を失っても対策を取っておけば金貨は足ります。ポイントは、オーガーから宝石を入手しておくことと(324番)、パイプ夫人から保存食2食分で金の花をもらっておくこと(145番)。

ムーン・ドッグ

 このゲームの最難関、ムーン・ドッグ戦(217番)。技術点11の敵に自力で勝つ必要がある。「たった一つの成功への道」をうたっているゲームブックにはあるまじき強敵。「たった一つの成功への道」の記述は以下の通り。

「たった一つの成功への道」のリスクは最小であり、最初のキャラクター作成時のサイコロの出目がどんなに低くても比較的簡単に通り抜けることができるだろう。

真っ赤な嘘と言わざるを得ない。

 しかし、イラストなしで、単なる戦闘で勝っても何ももらえないし描写もあっさりしているので印象薄い……。「背景」では詳しく語られているけど、“盗賊都市”とは関係ないので繰り返しプレイするうちに忘れ去られている(^_^;)

『盗賊都市』の魅力とは?

 このムーン・ドッグ戦があるので、技術点は10点はないと厳しい。それでも道中で攻撃力+1のアイテムを手に入れてやっと攻撃力互角。運だめしも絡めれば、まあ何とかなるというレベル。技術点9でも体力点と運点が高ければ運だめしで逆転できるという考え方もありますが、サイコロ勝負になるのでそんなに面白くないと思う。

 あと、ザンバー・ボーンに遭遇した際に運だめしに失敗すると一発ENDだし(203番)、老魔女の髪を入手する際も、ベイズ・ボールで技術チェック失敗して(〈精神操作の飲み薬〉が入手できない。168番)、さらに運だめし失敗でデッドエンドになります(390番)。最善手を選んでもサイコロ頼みなのでかなり怖い。

 というわけで、『盗賊都市』の推奨能力値は、次の通りとします。

  • 技術点10
  • 体力点19
  • 運点11

 というような感じなので、『盗賊都市』は“ゲームとしては”自分はあまり好きではありません。上に書いたように技術点勝負や運だめしなどのサイコロ運も必要だし、他の選択でも、ほぼ当てずっぽうで正解を引かないとデッドエンドというものがある。道中も、最初の3つの道の以外はほぼ一本道だし、個々のイベントも「そのイベントに関わるか、スルーするか」しか選択できない場合が多く、プレイヤーが考える余地があまりない。探し物がある以上、初見でスルーするという選択はあり得ない。展開を想像して選択肢を選んだり、サイコロを振るにしても有利になるように戦術を考えるという楽しみが少ない。

 それでもこのゲームブックが魅力的で、『ファイティング・ファンタジー・コレクション』に収録された理由は、ファンタジー界随一の名都市、ポート・ブラックサンドを描ききったからでしょう。街中ではデッドエンドはそれほどないし、特に技術点の高い敵もいない。また、かなりのイベントはスルーできる。街を通り抜けるだけなら、能力値が低くても容易です。街中を観光する気分で、景色を見たり、冷やかしで店に入ったり、思わぬトラブルに遭遇したり。この街をうろついているだけで楽しい。

 それにより、全体のストーリーがどうでもいい、街を出た後の話がつまらない、ラスボスが印象薄い、という欠点をまた生み出してもいるとも言えますが……。オープニングは危機感迫る描写で格好よかったのにね。街中の面白さと比べると、街を出た後の展開は蛇足です。これなら、街を出た次のパラグラフで「こうしてポート・ブラックサンドで必要な品を入手した主人公は、その後、黒い塔で〈夜の王〉を打ち倒し、シルバートンに平和な日々が訪れました。めでたしめでたし」で終わらせて、その分ブラックサンド内のイベントを充実させた方が良かったんじゃない?

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*1:似たような意味で、体力のポーションなどは、ルールに「いつでも使用することができる」と書かれているのだから、本当にいつでも、戦闘中でも代償なしで使える、と解釈しています。

*2:『盗賊都市』では後述のムーン・ドッグ戦があるので、むしろこの処理の方がゲームバランスは取れている気もしますが……。

*3:戦闘時に使う、技術点+サイコロ2個のこと。

*4:『盗賊都市』では、340番の「立派な盾」、376番の「魔法の兜」が攻撃力アップになっています。

*5:ここの運だめしは、失敗した方が確実に屋敷に入れるので有利。