「ソーサリー」の解析表いろいろ

 「ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~スティーブ・ジャクソン編~「サラモニスの秘密」」をクリアして調べていくうちに、いろいろと一覧表を作り出したのです。

呪文使用と触媒入手の一覧表

 「ソーサリー」の魅力は、なんと言っても48種類の呪文です。各呪文がどのくらい使用機会があるのか? どのくらい役に立つのか? 調べたくなったので一覧表を作ってみました。

 呪文の使用機会については、選択肢に登場する回数はもちろんですが、その呪文に必要な触媒をいつ・どれくらい入手できるかも重要なので、それも表に盛り込みました。

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※このブログ上だと表示が小さいので、表の下のリンクからGoogle スプレッドシートで開いた方が見やすいと思います。

 評価は「◎○△×」の4段階としましたが、いわゆる“独断と偏見”です。どう評価するか迷うところも多いです。基本的には、その場でできる最善の結果をどれくらい実現できるかで考えました。例えば――失敗に見えても、その方がかえって良い結果になる場合は高評価。成功に見えても、それによって必須アイテムを逃している場合は低評価。その項目自体がデッドエンドブロックの中の場合は、それは考慮しないでその場の評価。しかし、直後に終了するような状況ならすべて低評価――という感じです。

 表の下の方に使用可能回数・有効回数・有効率なども載せています。有効率は出してみましたが、その呪文が失敗する場合の中には、あきらかにその場面に合っていない場合も多いです。その呪文がどれくらい役に立ったかの指標としては、有効率より、有効回数や「◎」の回数を見た方が感覚に合う気がします。

参考サイト

呪文の使用で矛盾が生じる箇所

 このような表を作っていたら、呪文の使用で矛盾点が生じる箇所がいくつかあることに気がつきました。

『シャムタンティ丘陵』123番:夜行性のモンスターとの遭遇
GUMは触媒なしで失敗するが、にかわの入った小瓶はアリアンナの家で入手できるので(248番)、ダンパスの外れの野営で齟齬が生ずる(108番)。
『七匹の大蛇』37番:老ブラックエルフに使命を話す
GODを使用できるが、ここまで黄金飾りを入手できる機会がない。
『七匹の大蛇』287番・38番:クラッタマンと戦闘
GODを使用できるが、ここまで黄金飾りを入手できる機会がない。
『七匹の大蛇』189番:神罰で神殿が崩れ落ちる
FIXを使用できるが、ここまで樫の若木の杖を入手できる機会がない。
『七匹の大蛇』263番:〈地の蛇〉と戦闘
ZENを使用できるが、ここまで宝石細工のメダルを入手できる機会がない。*1

 間違いや他にも矛盾点あるなど、気がつかれた方がいましたらぜひ教えてください<(_ _)>

参考サイト

食事と睡眠の一覧表

 食事と睡眠は、「ソーサリー」において印象に残るルールです。ゲームながら妙に現実に即したルールで、日数の経過が明確になり、旅の雰囲気を高めるのに一役買っています。テキストマップでは、日数と日の区切りもマップに入れました。

 そこで、「ソーサリー」の旅程の食事と睡眠のすべてを表にしてみました。登場する飲食物をすべて載せたかったので、その場で食べるものや食料の入手だけでなく、食事にはカウントされないが飲み食いできるものはすべて載せました。 

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 この表を作った目的の1つは、体力点増減量の差を確認しておきたかったから。体力点増減量は、基本的には決まっていますが*2、条件によっては異なることがあります。どの食事・睡眠がどのように評価されているのか気になったのです。

 食事に関しては、変化があるのは『シャムタンティ丘陵』だけです。2巻以降は鉄板で「初回は+2、2回目以降は+1」が並びます。ブラックエルフの隊商で出されるワートルのスープやグロイスターなどや、クラッタマンの集落で出される野生のイノシシの肉は、少し変化があっても良さそうなものですが……。ボンバの実(食事の体力点回復が2倍)の有効な使い所も検討しようと思ったのだけど、特別に有利なポイントはなさそう。

 睡眠は、寝床や周囲の環境によって変化があります。しかし、後半は選択の余地がない場合が多いので、これもおもしろいのは『シャムタンティ丘陵』です。

 『シャムタンティ丘陵』の注目点は2点。1つ目はクリスタタンティの宿の優秀さ。スカンク熊シチューが金貨2枚で体力点+3、そして宿屋のベッドが金貨3枚でなんと体力点+5! 睡眠の体力点回復は2点が標準で、他は多くても3点なのに、5点。なんでここだけこんな破格なんだろう?

 そして、それに引き換えビリタンティの宿の使えないことよ……。食事は金貨4枚もとるくせに標準の「1回目+2・2回目以降+1」です。宿泊は金貨5枚もとるのに、なんと外で野宿した場合と同じ!(体力点+3) ジャンが「よそ者にも親切な村でここで少なくとも一泊はしていく」と言っていたから期待していたのに、とんだぼったくり宿だった。

眠れぬラムに有効なアイテムは?
 ※『七匹の大蛇』と『王の冠』の大ネタバレ

 『王の冠』の「眠れぬラム」との対決で使うアイテムの選択。なぜか、回りくどい分岐を立てて、正しいアイテムが持っているかどうかを判別させています。まず152番。

きみが使うのはどれだろうか。《中略》 液体の入った【ガラスの小瓶】なら 九二

 そして92番。

小瓶はどうやって手に入れたものだろう? 小瓶をくれたのは女か(二四一へ)、男か(二七八へ)。それとも、きみ自身が見つけたものだろうか(四九一へ)?

 普通に考えれば、「【○○の小瓶】を持っているか?」とするか、「□□からもらった(または、△△で見つけた)小瓶を持っているか?」という分岐でも十分と思えます。そうなっていないのは、この分岐を見てもそのアイテムがどこで入手できるのかわからないという効果を狙ったのでしょう。

 しかし、この分岐の立て方で、本当に正しいアイテムを持っていることを判別できるのか? 正しいアイテム以外にも「瓶」は多数出てきます。その中に、この分岐条件にあてはまってしまうアイテムはないのか気になりました。

 というわけで、ソーサリーで登場する「瓶」をリストアップしてみました。

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 入手した先が「男/女/自分で」という分岐だけなら(92番)、女から入手した瓶はアリアンナからもらった【にかわの入った小瓶】、フェネストラからもらった【油の入ったフラスコ】や【薬効のポーション】、女族サチュロスのシ・フーリからもらった「精霊の瓶」、ジャビニーからもらった「ティンパン川から採った【聖水】」も当てはまります。

 しかし、その前の152番の選択肢では「“ガラスの”小瓶」と書かれています。材質が書かれている瓶は多くありません。ガラス製であることはキーポイントなので、書かれていない場合は陶器製や金属製など、ガラスではない瓶と解釈するべきでしょう。ガラス製と明記されているのは、ほかにはレンフレンからもらう黄色い粉末が入った瓶だけです(3巻72番)。

 また、フェネストラからもらうフラスコ(3巻183番)はガラス製と解釈してよいと思いますが*3、フラスコは“瓶”なのかという問題があります。瓶とフラスコは違うものなんじゃないかなあ?

 というわけで、152番 → 92番の分岐で、「女」からもらった「ガラス」の小瓶に当てはまるアイテムは1つしかないことがわかりました。よかったよかった。

 ……と言いたいところですが、まだ問題があります。

液体の入った瓶?

 コレクション版の152番の分岐には「“液体の入った”【ガラスの小瓶】」と書かれています。液体の入った? 3巻22番・290番では、【ガラスの小瓶】についてこう書かれています。

「誰にも中のガスを解放させられないようにね」

 中に入っているものはガスだと書かれています。この「ガス」は液体ではないんじゃないかなあ? そうだとすると、152番 → 92番の分岐で、正しい瓶に当てはまるアイテムは1つもない事になってしまいます。これは困ったことです。この記述は無視するしかないかなあ。きっと液体と気体の両方が入っているということでしょう。*4

ガラスの小瓶はほかにもある?

 そして、コレクション版では解消されていますが、東京創元社版と創土社版では、別の問題がありました。

 まず、これは東京創元社版のみ。3巻296番でフェネストラからもらえる「一服の薬」についてこう書かれています。

魔法使いの女があなたにくれたガラスの小瓶には液体が入っていたが

 「女」にもらった「液体」の入った「ガラス」の小瓶。4巻152番 → 92番の分岐条件に完全にあてはまってしまいます。*5

 もう1点。これは東京創元社版・創土社版共通です。東京創元社版の3巻14番、フェネストラからもらった「油の入ったフラスコ」を水の蛇に使う場面でこう書かれています。

あなたは瓶に手をのばし、蛇が襲いかかってくるのを待った。《中略》あなたは素早く身をかがめ、瓶を振って、頭の上を通り過ぎる蛇になかみをぶちまけた。

 フラスコが“瓶”であると認めてしまっています! 同じ場面で創土社版でも「小瓶」と書かれています。フラスコが瓶だとすると、「油の入ったフラスコ」も「女」にもらった「液体」の入った「ガラス」の小瓶という条件にあてはまってしまいます。*6

 東京創元社版と創土社版では、眠れぬラムに対して有効なアイテムは複数あると認めざるを得ないでしょう……。

参考サイト

ヴラダの賭博場のルーレットが渋すぎる

 『罠の都カーレ』25番の〈ヴラダの賭博場〉のルーレット*7。パラパラサイコロの要領でページをめくって、「当たり」と書いてあればそこに書かれている枚数の金貨がもらえるという、ゲームブックならではミニゲームです。パラパラサイコロなら確率は想像できますが*8 、ルーレットの当たりがどれくらいあるのかは、想像がつきません。

 というわけでルーレットの当たりの数を数えてみました。ついでに、『城砦都市カーレ』(東京創元社)と『魔の罠の都』(創土社)も調べました。

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ヴラダの賭博場のルーレットの当たりの数
 
創元推理文庫

アドベンチャー
ゲームノベル

ファイティング・
ファンタジー
コレクション
タイトル 『城塞都市カーレ』 『魔の罠の都』 『罠の都カーレ』
出版社 東京創元社 創土社 SBクリエイティブ
初版発行日 1985年8月10日 2003年12月31日 2024年2月29日
対象ページ数 108 113 108
当たり(5枚) 8 7.41% 8 7.08% 4 3.70%
当たり(10枚) 3 2.78% 3 2.65% 1 0.93%
当たり(20枚) 4 3.70% 4 3.54% 1 0.93%
当たり合計 15 13.89% 15 13.27% 6 5.56%

 ルール上そうは明記されていませんが、ルーレットのパラパラはサイコロが印刷されているページの中でめくると解釈して、「対象ページ数」はサイコロが印刷されているページ数としました。

 『城砦都市カーレ』と『魔の罠の都』は、パラパラサイコロの目は異なりますし、当たりの出るページも異なります。しかし、当たりと書かれているページの数は同じです。『魔の罠の都』の方がサイコロが印刷されているページ数が多いので、まともにやると勝率はやや低くなりますが、『魔の罠の都』では最初の方と最後の方に当たりがない部分が多くあるので、その部分を避けるようにすると勝率が上がります(反則でしょうか……?)。

 そして、『城砦都市カーレ』と『罠の都カーレ』(コレクション)は、なんとパラパラサイコロの目はまったく同じです。ここまで移植されているとは思わなかった。そうならば、もちろんルーレットの当たりも同じかと思いきや……なんだこの渋さは。

 一目瞭然。『罠の都カーレ』は圧倒的に当たりが少ないです。『城砦都市カーレ』では当たりなのに、『罠の都カーレ』では当たりでないページが多数あります(逆はありません)。『城砦都市カーレ』と比べると、当たりの数は4割しかないですし、10枚・20枚の高額の当たりはさらに少ないので期待値は33%しかありません。これはひどすぎる。なんでこんなに渋い設定になったんでしょうか。再販の際は修正されてもいいんじゃないかと思うくらいですが……。*9

参考サイト

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y-koutarou.hatenablog.com

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*1:唯一のZENの使い所だったのに……。

*2:

  • その日の1回目の食事:+2
  • その日の2回目以降の食事:+1
  • 睡眠:+2
  • 眠らない:-2
  • 1日食事をしない:-3

*3:

フラスコ【(ポルトガル)frasco】
《中略》円筒形の首部と膨らんだ胴部をもつガラス製容器。

ほかの国語辞典でも、自分の調べた限りすべてガラス製であるという語釈が書かれていました。

*4:ちなみに、東京創元社版の3巻22番・290番では中に入っている物が液体かどうかは書かれていません。また、創土社版では「中の空気」と書かれていますが、4巻152番の分岐は中身が液体かどうかには触れず単に「ガラスの小瓶」となっています。

*5:なお、創土社版とコレクション版では3巻296番では瓶の材質については触れられていません。

*6:なお、コレクション版では3巻14番でも「フラスコ」と書かれています。瓶とは書かれていません。

*7:『魔の罠の都』(創土社)では「運命の輪」。

*8:印刷されている数自体は実際のサイコロとほぼ同じであることは、別の本ですが以前調べました。

y-koutarou.hatenablog.com

*9:

「ファイティング・ファンタジー・コレクション 40周年記念~スティーブ・ジャクソン編~「サラモニスの秘密」」は再販されることが決まりました。予約締め切りは2025年1月6日となっております。受注生産となっておりますのでお見逃のないよう。