大西配列の句読点・長音符を移動した理由

 これまでも何回か触れてきたとおり、今年の1月から大西配列を使っています。その大西配列は、元の大西配列から句読点と長音符の部分だけ少し変更しています。今回は、その変更とそうした理由について書きます。

大西配列(句読点・長音符移動)

 オリジナルの大西配列から、以下の変更しました。

  • 「、」(読点):[R] → [G]

  • 「。」(句点):[T] → [R]

  • 「ー」(長音符):[G] → [T]

大西配列の配列図。

大西配列(オリジナル)

大西配列の配列図。オリジナルから句読点と長音符を入れ替えている。

大西配列(句読点・長音符移動)

改造した理由その1――長音符の出現率が低い――

 まず、[R] [T] [G]の3キーの打ちやすさを考えます。一番打ちにくいのは[T]です。[R]と[G]は同じくらいだと思います。

 次に、「、」「。」「ー」の出現率を考えます。出現率が1番高いのは「、」、2番目が「。」、3番目が「ー」です*1

 よって、一番打ちにくい[T]に、一番出現率が低い「ー」を割り当てます。

改造した理由その2――句点をアルペジオで打ちたい――

 [R]と[G]に「、」と「。」のどちらに配置するかはまだ決め手がないので、「、」と「。」に連なりやすい文字を考えます。

 「。」は「す。」「る。」という2文字連なりで多く出現します。「す」と「る」はともにウ段なので「U」で入力します。大西配列では「U」は[E]のキーで入力します。「。」を[R]に割り当てると、「す。」「る。」という頻出連なりを、[E][R]という非常に打ちやすいキー連接で打つことができます。このような、片手で打てる(かなり)打ちやすいキー連接をアルペジオと呼びます。*2

 一方、「、」は「は、」と「が、」という2文字連なりで多く出現します。「は」と「が」はともに「A」で、大西配列では[D]のキーで入力します。[D][R]と[D][G]のキー連接の打ちやすさを比べると、どちらも同じくらいだと思います。

 つまり、「。」は[R]に置くことで[E][R]のアルペジオを活用できるという、[R]に置きたい積極的な理由があります。「、」は[R]と[G]のどちらでもあまり変わりません。

 よって、「。」を[R]に、「、」を[G]に配置しました。

それでも長音符を優先した方が良いか?

 自分が句読点と長音符の配置を変更した理由は以上ですが、実はまだ考えるべき要素があります。

 まず、「。」を[R]を置いた理由は、[E][R]のアルペジオを活用して「す。」「る。」を打てるようにするためです。

 しかし、大西配列の作成過程の記事では、次のように書かれています。

note.com

長音はUと繋がりやすいので上に置き*、使用頻度の低い句点は隅へ。

長音符がUと繋がりやすいとあります。たしかに、長音符の2文字連なりでは、「ーる」「ーす」「ーむ」が多く出現します。そう考えると、「ー」を[R]に置くのも良いように思えます。上記のページにある“普及版”の前のバージョンの大西配列ではそうなっています。

 しかし、長音符が1文字目の2文字連なりの場合、キー入力は「長音符→子音→母音」の順番になります。「ー」と「U」の間に1打鍵挟まることになるので、アルペジオの活用としてはやや弱くなります。また、長音符が2文字目の「U → ー」の2文字連なりの出現数は、とりわけ多くはありません。*3

 そして、出現数は「す。」「る。」の方が圧倒的に多いです。よって、やはり自分は「す。」「る。」をアルペジオで打てることを優先したいと思いました。

 もう1つ、文字の性質という要素があります。長音符は、ほとんどがカタカナ語で出現するという特徴があります。そのため、長音符の出現率は、カタカナ語をどれくらい使うかに大きく左右されます。たしかに全体の出現率は句読点より低いのですが、文章によっては大量に出現するということも十分あり得ます。普段からそういう文章を書いている人にとっては、あるいはいざそういう文章を書きたくなった時に、長音符を出現率通りに評価した配置にしていると、つらいことになります。

 また、長音符は1モーラを形成する文字ではありますが、前の母音を伸ばして発音するため、実際に発声をイメージする時は1モーラより短い感覚があります。そのため、長音符を打つのに手間が掛かると、イメージした文のリズムと打鍵のリズムが合わなくて違和感が生じる、という可能性があります。

 さらに、句読点は文の切れ目で出現します。そのため、必ず少しは休止が入るところで打つことになるため、出現率が示すよりは打ちにくい場所に置いて構わないという要素があります。特に、句読点の次に続く文字はまったく考慮する必要がないというのは、句読点の大きな特徴です。

 自分は、それでも「す。」「る。」をアルペジオで打てるメリットが圧倒的に大きい、また句読点は確かに文の切れ目だが、「、」「。」を打つまでで区切りであるのでそこまでのキー連接は重視したい、と思うので前述のような変更をしました。しかし、長音符は[R]か[G]に置いて、残る2ヶ所に句読点を置く方が良いというのも十分あり得るとは思います。実際どちらが良いかは微妙なところです。このあたりは、配列作成者のセンス、そして実際にその配列を使用する人のセンスが出るところだと思います。

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【大西配列使用記リンク】

*1:大西配列作成時の青空文庫での調査でも自分の調査でもそうなっています。

*2:[E][R]はアルペジオの中でも特に打ちやすい「最強アルペジオ」とでも呼ぶような連接です。

*3: