ひらがなキーを押すと謎な再変換が掛かる?(Microsoft IME)

ひらがなキー再変換

Microsoft IME』で起こる不思議な現象

 『Microsoft IME』で、確定した文字列を選択して[ひらがな]キーを押すと、なぜかすべてひらがなに戻った上で変換済み(確定前)の状態になってしまいます。この現象のことを「ひらがなキー再変換」と呼ぶことにします。

文字列選択状態

文字列を選択して[ひらがな]キーを押すと……

すべてひらがな1文節で確定前の状態

すべて1文節のひらがなに変換されて確定前の状態になる

 『Microsoft IME』の設定上の[ひらがな]キーの機能は「ひらがなキー(ひらがな入力モードに切り替えます)」のはずです。「ひらがなキー再変換」が掛かるのは納得できない挙動です。昔はこんな現象は起こらなかったと思うのだけど、いつから起こるようになったのか思い出せません。*1

「再変換」と「ひらがなキー再変換」の違い

 「ひらがなキー再変換」は、確定前の状態に戻るという点では[変換]キーで掛かる「再変換」と似ていますが、それとは異なる挙動です。例えば、以下の点が異なります。

  1. IME OFFで掛かるか?
    • [変換]キーの「再変換」はIME OFFの状態でも掛かる(再変換と同時にIME ONになる)。
    • 「ひらがなキー再変換」はIME OFFでは掛からない([ひらがな]キーの効果でIME ONになるだけ)。
  2. 漢字かひらがなか? 文節構造は再構築されるか?
    • [変換]キーの「再変換」は漢字などに変換済みの状態になる。文節構造は適当に再構築される(IMEの学習による)。

      漢字に変換された状態で確定前。文節構造は構築される

      [変換]キーの再変換は、漢字交じりで文節構造も再構築される
    • 「ひらがなキー再変換」はすべてひらがな(英数は全角文字)に変換済み状態になる。全体が1文節になる。

      すべてひらがな1文節で確定前の状態

      「ひらがなキー再変換」は、すべてひらがなで全体が1文節になる
  3. 文字列を選択していない場合でも掛かるか?
    • [変換]キーの「再変換」は、文字列を選択してなくてもキャレットがある部分の文節に対して再変換が掛かる。

      文字列を選択していない状態

      文字列を選択していなくても[変換]キーを押すと……

      キャレットのある文節のみ確定前の状態になった

      キャレットのある部分の文節に対して再変換が掛かる
    • 「ひらがなキー再変換」は、文字列を選択していないと掛からない。

「ひらがなキー再変換」が掛かるのは、キー設定が「Microsoft IME」の場合だけ

 「ひらがなキー再変換」が起こるIMEは『Microsoft IME』だけです。『ATOK』や『Google 日本語入力』では起こりません。

 さらに、プロパティの「キー設定」*2が「Microsoft IME」の場合にのみ起こります。他のキー設定に変更した場合は起こりません。なお、「変更」ボタンでキー設定をカスタマイズした場合は、自動的にキー設定が「ユーザー定義」に変更されますので、「ひらがなキー再変換」は起こらないということになります(ひらがなキーの設定を変更したかどうかは関係ない)。

Microsoft IMEのプロパティのキー設定を選択するウィンドウ

「ひらがなキー再変換」が起こるのは、キー設定を「Microsoft IME」にしている場合のみ

 よって、「ひらがなキー再変換」を回避する方法は、「キー設定を「ユーザー定義」にする」*3というのが、一番簡単で副作用がない方法です。

「ひらがなキー再変換」が掛かるのは一部のアプリケーションのみ

 「ひらがなキー再変換」は、すべてのアプリケーションで起こるのではありません。起こるアプリと起こらないアプリがあります。自分が使っているいくつかのアプリで、「再変換」と「ひらがなキー再変換」が掛かるかどうか調べてみました。

「再変換」と「ひらがな再変換」が掛かるアプリケーション
アプリケーション名 [変換]キーの再変換 ひらがなキー再変換
Windows 10のスタートメニュー
メモ帳 ×
ワードパッド *4
Microsoft Edge
Internet Explorer *5
Mozilla Firefox
Google Chrome ×
Microsoft Excel 2016 ×
Apache OpenOffice Writer ×
Apache OpenOffice Calc × ×
Nami2000 ×*6 ×
TeraPad ×

 ご覧の通り、「ひらがなキー再変換」が掛かるアプリケーションは一部に限られます。とりあえず、再変換が掛からないアプリでは「ひらがなキー再変換」も掛からない感じはありますが、「ひらがなキー再変換」が掛かるアプリケーションの共通点はよく分かりません。

「ひらがなキー再変換」はバグなの?

 「ひらがなキー再変換」はバグなんでしょうか? 意図して組み込んだ挙動にしては、IMEのキー設定を変更するだけで発生しなくなるというのが不自然だと思います。

 本来の『Microsoft IME』の[ひらがな]キーは、元のIMEの状態が何であってもひらがな入力モードにしてくれるという、初期設定の中では気の利いたキーでした*7。初期設定で使わざるを得ないPCを使うときは「これから日本語を入力するぞ」というときは何も考えずとりあえず[ひらがな]キーを押せば良かったので、自分はよく使います。その[ひらがな]キーで「ひらがな再変換」が掛かってしまうのは微妙に邪魔です。これが意図した挙動だというのならあきらめますが*8、バグだというのならMicrosoftにはなんとかしてほしいところです。

スペースキーを押すと謎な再変換が掛かる?

 ところで、「ひらがなキー再変換」とは別に、文字列を選択した状態で[スペース]キーを押すと再変換が掛かるという不思議な現象もあります(以下「スペースキー再変換」と呼びます)。『Microsoft IME』の設定上の[スペース]キーの機能は、当然「空白」(スペースを入力する)です。文字列を選択して[スペース]キーを押す際に期待する挙動は「選択した文字列を削除してスペースを入力する」ですので、これも納得できない挙動です。

 「スペースキー再変換」で起こる再変換は、「ひらがなキー再変換」ではなく[変換]キーで行う「再変換」と同じです(つまり、漢字に変換済み状態になり、文節構造は再構築される)。

 「スペースキー再変換」が起こる条件は、「ひらがなキー再変換」と似ています。「IME ON」「文字列選択状態」「特定のアプリケーション」の場合のみ起こります。しかし、キー設定が「ユーザー定義」の場合は掛かりませんが、それ以外の場合は掛かります(「ひらがなキー再変換」は、キー設定が「Microsoft IME」の場合にのみ掛かりました)。

 これも意図した挙動なのか、バグなのか分かりません。これはこういうものだと決まっていればこれはこれで使い道ありそうな挙動ですが*9、アプリやキー設定によって使えたり使えなかったりするのではどうしようもない。Twitterで検索すると、『Microsoft Word』ではスペースキーで再変換が掛かるのに他のアプリでできないのは不便だという声と、2015年頃から『Firefox』でスペースキー再変換が掛かるようになってしまったのが邪魔だという声が交錯しています。「ひらがなキー再変換」ともども、なんとかしてほしいです。

2020/05/06追記:変換を行うあらゆるキーで謎な再変換が掛かる?

 Twitterでご指摘いただいて気がついたのですが、[ひらがな]キーや[スペース]キーに限らず、[英数]キーと[F6]~[F10]キーでも、そのキーに応じた変換状態になる再変換が掛かることがわかりました。

 つまり、これらの現象は[ひらがな]キーなどに限った話ではなく、文字列を選択して変換を行うキーを押すと、確定前と同じような変換が行われるということのようです(ただし、[ひらがな]や[英数]は変換するキーではないですし、[無変換]は変換するキーですが再変換は掛からないので、この説明では説明し尽くせていません……)。

 もっとも、そうだとしても一部のIME・一部のキー設定・一部のアプリのみで起こるのはなぜかという疑問は変わりませんし、意図した挙動だとしたらこれがいい機能かどうかはやはり疑問がある、という結論は変わりませんが。*10

Windowsキー + スラッシュキーで再変換が掛かる

 ついでに、再変換に関するあまり知られていない気がするショートカットキーの話を一つ。

 [Windows] + [/](スラッシュキー)で再変換が掛かります。

 この再変換はバグっぽい要素はなく、ふつうの[変換]キーで行う「再変換」と同じ挙動です。すなわち、IME OFFの状態でも掛かりますし、漢字などに変換済みの状態に戻って文節構造も再構築されますし、文字列を選択していなくても掛かりますし、『ATOK』でも『Google 日本語入力』でも利きますし、ほとんどのアプリケーションで利きます。

 IME関連の操作に[Windows]キーを使うというのが意外ですし、[/]キーで再変換というのも連想しにくい。また、[変換]キーの再変換はIMEのキーカスマタイズ機能で無効にしたり他のキーに設定したりできるのに対し、[Windows] + [/]はカスタマイズできません。ちょっと不思議なショートカットの設定という感じはします。

 しかし、これは意図した設定でしょう。Microsoftの公式サポートページのショートカット一覧にも載ってますし。そのページによると、Windows 8.1から追加されたようです(Windows 7の一覧には載っていない)。

 [変換]キーがない英語キーボードでも再変換できるようにという意味でしょうか? 確かに、[再変換]は便利ではあるけれどそこまで多用する機能ではないので、この程度のショートカットキーでできれば十分という気がします。

「ひらがなキー再変換」と「スペースキー再変換」にまつわるリンク集

「ひらがなキー再変換」

「スペースキー再変換」

*1:Windows Vistaを使っていたときは起こらなかった気がするが自信ない……。Windows 10(8?)からかなあ……?

*2:プロパティ → 詳細設定 → 「全般」タブの編集操作

*3:「ユーザー定義」がない場合は、とにかくどこか1箇所キー設定を変更する(と同時に「ユーザー定義」が作成される)。いったん「ユーザー定義」にしてしまえば、変更した箇所を元に戻しても良い。

*4:ただし、検索ウィンドウでは掛からない。

*5: アドレスバーなどでは再変換は掛からないが、Webページが表示される部分に設置される検索窓などでは再変換が掛かる。

*6:右クリックメニューの「IME再変換」(Shift+Ctrl+Z)は再変換が掛かるが、[変換]キーでは再変換は掛からない。

*7:例えば、[半角/全角]キーは、IME OFFならON、IME ONならOFF、というように現在のモードによって挙動が変わるので、現在の入力モードを把握していないと目的のモードにできないので、使いにくい

*8:キー設定やアプリによって掛かったり掛からなかったりするのをなんとかしろよとは思いますが。

*9:[変換]キーの使い道がますますなくなりますね。

*10:Microsoft Wordの意図した挙動だとしたら、Microsoftの公式サポートページのWordショートカット一覧に載っていてもいいと思うけど……。