配列沼ビンゴ

 「使ったことのある日本語キーボード配列 - めけぽんビンゴ」というものを作りました。

bingo.mekepon.com

使ったことのある日本語キーボード配列ビンゴ。チェック10、ビンゴ0。

 思ったより多くの方にプレイしていただいています。こんな、ゲームとしては破綻しているビンゴをプレイしていただいてありがとうございます。すいません(..;)

 プレイすると、これまでプレイした人の各マスのチェック率がパーセンテージが表示されるので、興味がある方はぜひ。こんなの、ふつうはビンゴできるわけないので(^_^;)、配列沼とは無縁の方も臆さずどうぞ。「ローマ字入力だけ」「ローマ字入力とかな入力だけ」「ローマ字入力NICOLAだけ」「キーボードなんて触ったことないですよ」なんて方に参加いただけると実態に近づけるでしょう。まあ、それにしても項目もサンプルも偏りすぎているので、アンケートとしては参考にならないでしょうが……。

 配置は、とりあえず真ん中はローマ字入力、斜めラインに有名な・歴史的に重要な配列を入れて、あとは配列的・考え方・作られた時期など何かしら似ていたり関連性があったりする配列をできるだけ対称的な位置に配置しました。何となくですけど。あと、個人的趣味で昔からある配列が多めです。入り切らなかった配列もいっぱいあります。入らなかった配列の作者・使用者の方にはごめんなさい。めけぽんビンゴは最大10*10マスまで作れるのですが、さすがにこれ以上広げると難度がひどすぎるので5*5にしぼりました。

参考にした配列リンク集など

カーリング五輪・世界選手権、国別の順位/スキップ選手名一覧表

※このページの表は随時更新しています。

最終更新日:2024/03/28(木) ※この日より後に更新していることもあります。

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カーリング日本選手権2020は他にも名シーンがあったぞ

 先日、第37回日本カーリング選手権大会女子決勝が名シーン満載の好ゲームだっただという記事を書きましたが、本大会はそれ以外でも名シーンがありました。そこで、今回は女子決勝以外の名シーンをいくつか、局面図を交えながら振り返ってみます。

y-koutarou.hatenablog.com

男子予選 コンサドーレ-TM軽井沢

3エンド 混み合った石の動き

 のちに決勝戦で顔を合わせることになる両チームが予選第1戦で対戦。

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3E 後攻(赤)スキップ2投目前

 0-2で2点ダウンの後攻(赤)コンサドーレ、スキップ松村雄太のラストストーンを前にすごい形が残った。コンサドーレの選手が4人集まって作戦会議、石の飛ぶ角度を綿密に検討している。

 これ、どういうショットを投げたらどうなるか想像できますか? 自分は、こういう混み合った場面の石の動きが、なかなか分からないんですよね。

敦賀「これ、おもしろい形になったと思いますね。というのは石の芯より少し右側に……赤に当たってこの黄色も出ますし、これはこう、これはどこまで行くかですね。この赤は残ると思います。この赤も出る可能性ありますし、この赤も出る可能性もありますけど、もしかするとうまくいけば……赤2点を取ることができるショットになるかも知れませんね」

 いつものように石の動きの読みを詳しく説明する敦賀解説。

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3E 後攻(赤)スキップ2投目

 1・2の黄が両方出ていく形だった。狙いより少し厚く当たったが、下の黄もぎりぎりナンバー3まで押しやれて赤2点。

敦賀「少し芯だったんですけど、ただ赤に少しかすったことによって良かったですね。黄色がずれたということで」

4エンド コンサドーレの作戦会議

 コンサドーレのコミュニケーションがおもしろかったシーン。

 2-2の同点で先攻(赤)コンサドーレ、サード清水徹郎2投目を前にハウス側と投げ手側で作戦会議。ハウス側にはスキップの松村、投げ手側には清水、谷田、阿部。

 最初、スキップの松村はガードの赤の黄の間の、さらに高い位置のガードを指示していたが……。 

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4E 先攻(赤)サード2投目

(投げ手側で)

谷田「あそこ置いて」
清水「赤・赤・赤で行ったら」
谷田「俺ら微妙そうじゃない」
阿部「ショットのガードになった方がいいんじゃないか」

(ハウスと投げ手側で)

清水「そこ、俺らふさぐ必要あるかい?」
谷田「ガードするならショット上の石の上じゃない?」
松村「こっちはさ、結構……」
谷田「そっち3つ一気に切られちゃったら黄色のガードになっちゃうよ」
松村「ここ来たとしても、こっち側抜くんだよね相手」

 清水がハウス側に行く。投げ手側ではガードの赤から縦3つを一気にテイクされる手を心配している。

清水「ここ置いて、これ行ったら、俺らもうこれ取れないよ」
松村「こっち側しか抜けないんだよね相手」
清水「いや抜けてさ、これ1でしょそしたら。俺らそこにガード置いちゃったらさ、俺らもう」

 さらに、ハウス側の松村と清水の話し合いが続き、中の黄を直接テイクする手に作戦を変えた。結果は、見事にガードの間を通してテイク成功。

 コンサドーレは、松村が決断よく作戦を指示するが、清水と谷田からの指摘があって作戦を変えるというシーンを結構よく見る気がします。2018年12月の軽井沢国際でも印象深いシーンがありました。

y-koutarou.hatenablog.com

4エンド 女子決勝の伏線?

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4E 後攻(黄)スキップ1投目

 同じ4エンドの後攻(黄)TM軽井沢、スキップ両角友佑1投目。ほんの少ししか見えていない黄に向かって、速いウェイトでデリバリーする。狙い通りの場所に当てて黄からナンバー1の赤をテイクする。スルーになる危険もあったと思うけど、そこを狙うか。

 これが、女子決勝での8エンド中部電力タイムアウトで話していたショットかな。

 しかし、TM軽井沢のラストストーンは、ガードの間を縫って4フットに止めないといけない難しいドローが決まらず。このエンドはTM軽井沢が1点止まりとなった。

男子予選 コンサドーレ - TM軽井沢
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
コンサドーレ   0 0 2 0 2 0 0 2 0 1 7
TM軽井沢 1 1 0 1 0 0 2 0 1 0 6

女子予選 札幌協会-富士急

5エンド 富士急コミュニケーション

 5エンドで2-0とリードして先攻の富士急。1投目はハウス内へのドローを選択。Tラインの前で止めたいが……。解説は石崎琴美

「ちょっと伸びそう」
「ちょっと伸びそうじゃない?」
「でも止まるよりは……」
「そうだよ、止まるよりまだマシ」
「いいよ、ちょっと止まってきた」
「ラインはいいよ」

(スイープをやめる)

「あんまり最後引っ張りたくないよ」
「OK」
「ちょっと速いね」
「大丈夫かい」
「14.1」
「あらー」
「おー、また」

(Tラインを越えて止まる)

「ちょっと後ろ」
「ちょっと後ろ、失礼」
石崎「(笑)。分かりますあの気持ち(笑)。そうなんですよね、本当はT前に止めたいのにね、ちょっと行ってしまうと投げ手に申し訳ないと思いますからね」

 ボタンで止まるがわずかにT奥に行ってしまいました。前年の西室の「走ってるよー。やり過ぎたわー」を思い出す。なぜ、富士急のコミュニケーションは解説者を吹き出させてしまうのか……。

10エンド 劇場型

 10エンド。7-4で3点リードで先攻(黄)富士急、スキップ小穴桃里1投目。3点リードで大優勢の富士急だが、ここで大きなミスが出てしまう。

 半分見えている赤から左下の赤へのダブルテイクを狙う。決まれば一気にコンシードだが……。

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10E 先攻(黄)スキップ1投目

実況「当たらない!」
石崎「あれ?」
実況「中の石が、富士急の石がすべて出ました」
石崎「それも……あったか(笑)。これは、3点あるかもしれないですね」
実況「考えていた中では、富士急は一番悪い結果になりましたね?」
石崎「そうですね、はい。ちょっとやっぱり警戒しすぎたというか。なんかこう……薄くなきゃいけなかったので、ダブルにするには」

 ラインが左にずれてスルー。ボタンの黄に当たって、自分たちの黄だけなくなってしまう。これだけは避けたかったというショットになってしまった。手のひらを顔の前に縦にしてこうべを垂れる小穴。

 続く札幌協会、スキップ佐々木1投目は左下の赤にフリーズを決める。ガードの裏に赤が3つある形になる。赤を1つテイクしたとしても、シューターの黄がテイクできる位置に止まると、簡単に3点取られて同点に追いつかれてしまう。3点リードしているのに追い詰められた富士急。

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10E 先攻(黄)スキップ2投目

 しかし、小穴2投目は、1投目のミスを帳消しにするショットを決める。後ろの赤をテイクしつつ赤の前にぴったり縦に止めて、この黄は出せない。

石崎「決めてきましたね。ナイスショット」

 ナイスショットを決めたのに、小穴の表情は固いままだった。

 札幌協会はラストストーンの角度を検討するが、打つ手がない。残り時間もあとわずか。

「どう思う? ここから3つ」
「ちょっと待って」
「飛ばすしかないよね」
「いま後ろどれくらい近い?」
「もうくっついてるよ、ほぼ」
「ああ、マジかー」
「1分切った」
「でも3つ飛ばなくない?」
「後ろの赤、入ってるの?」
「入ってないよ。掛かってない」
「3つの目ある? これからも飛ばせないし……」
「赤から飛ばないっしょ」
「35秒」
「ちょっと時間ないから。こっち来れる?」
「ないんなら握手でもいいんだけど」
「ないよね」
「終わるか」

 残り時間17秒で、ラストストーンを投げずにコンシードとなった。コンシード後、札幌協会と富士急の選手が一緒になって、ラストストーンで何か手がなかった検討する「感想戦」が行われていた。

女子予選 札幌協会 - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
札幌協会 0 0 0 0 0 2 0 2 0 x 4
富士急   0 1 1 0 3 0 1 0 1 x 7

 というわけで富士急が勝ったわけですが、富士急を応援している観戦者としてはなんと心臓に悪い試合だったことか……。自分は録画して見ていたので、残り録画時間からエキストラエンドには行かないんだろうなとは思っていましたが、4点取られて逆転負けまで想像しましたよ。

 今大会の富士急は、ロコ・ソラーレ中部電力北海道銀行を含めた「四強」の一角と見られていました。しかし予選リーグは、四強直接対決の他、チーム軽井沢にも敗れて、4勝4敗の4位でギリギリ予選リーグ通過。プレーオフでも3位-4位で北海道銀行に敗れて4位で大会終了。その北海道銀行も準決勝では中部電力に完敗して、トップとは差があるという印象が残る大会となりました。自分としては、もう1回世界選手権で富士急を見たいものだと思っているのですが……。2018年の富士急の世界選手権は実に魅力的でした。

y-koutarou.hatenablog.com

 ちなみに富士急は、次のチーム東京戦でもすごい劇場型ショットを決めてます(^_^;)

2020/06/04(木)追記:#おうちで作戦会議 Part 4

 日本カーリング協会公式Twitterで「#おうちで作戦会議」という企画が行われていましたが*1、そのPart 4で札幌協会-富士急の10エンドの局面が取り上げられました。

 さらに、富士急の選手・コーチによるリモート作戦会議の動画もアップされています。これは貴重な動画だ!

男子予選 北海道大学-チームTANI

 この試合は、自分が見た中では本大会で2番目にいい試合*2。名シーン満載でした。

3エンド 解説を上回るショット

 3エンドで2点リードの先攻北海道大学、スキップ河野2投目。ショットの選択はヒットロールだが、解説の敦賀信人カムアラウンドを推奨。

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3E 先攻(赤)スキップ2投目

敦賀「ここ思い切って、回り込んでも面白かったんですけどね。当てて内側にロールしないとナンバー1を隠すことできませんので。それができるかですね」

 ヒットロール狙いの石が進んでくるが……。

敦賀「お、良さそうですね」
実況「いい角度で当たりそうです!」
敦賀「ナイスショットですね(笑)」

 苦笑する敦賀

敦賀「ほぼ完璧です。わたし始め、いま置けたところに直接置いてくるのかなと思ったんですね。そうしますとナンバー1を完全に隠すことができる位置ですので」

 相手の石をテイクしてセンターガードの裏に入るヒットロールを決める。敦賀推奨ショットを上回るショットを決めた。

 このあと、チームTANIのラストストーンのドローは決まらず。このエンド、北海道大学が2点スチールする。4-0と序盤で優位に立った。

5エンド 踏みとどまる

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5E 後攻(黄)スキップ2投目

 さらに、4エンドも北海道大学が1点スチール。3エンド連続スチールで、5-0と大きくリード。カーリングでは、序盤で差が付くと負けている方が無理をせざるを得ず、さらに大差になってしまうという展開も多い。しかし、ここでチームTANIは踏みとどまる。

 後攻(黄)チームTANI、スキップ谷のラストストーン。ガードの間をすり抜けて、黄をまっすぐ押してナンバー1の赤をテイク。難度は高く、失敗すればまたスチールという場面だった。飛ばした黄も止めて、右下の黄もメジャーで計測してナンバー2で黄が2点。ここからチームTANIの逆襲が始まる。

8エンド 満面の苦笑い

 試合は進んで8エンド。6-3で北海道大学の3点アップ。しかも8エンド後攻。まだ北海道大学が大優勢といえる点差。

 先攻(黄)チームTANI、スキップ谷1投目はフリーズ狙い。ドローは狙ったラインよりやや外側を走っている。

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8E 先攻(黄)スキップ1投目

「ちょっとあるよ」
「6、7、7」
「クリーンだけ、クリーン」
「ウェイトオンリーで」
「8」
「クリーン」
「ウェイトオンリーで」
「9はない」
「8ならごっつんさせて外の方がいいよ」
「7」
「8」

 コールが飛び交うが……。

「おお、曲がったわ」
「イエスエスエス
「わからんわからんわからん」

 何か噛んで急に曲がった。さらに中の赤にかすってコースが変わり、当初の狙い通りの位置にピタリ。満面の苦笑いの谷。

谷「いま無茶苦茶噛んだよね」

 このあと、4フットに黄に1・2持たれた状態で迎えた北海道大学のラストドローは、わずかに伸びてしまった。今度はチームTANIが2点スチール。これで試合はわからなくなった。

9エンド 9エンド1点ダウン先攻の作戦選択

 しかし、9エンドで1点リード側が後攻なので、スコアだけを見ればまだ北海道大学が十分有利。

 そして、先攻(黄)チームTANI、スキップ2投目で作戦選択の局面を迎える。センターラインが空いていて先攻のチャンスが少ない形。単にヒットステイすればブランクになる可能性が高い。チームTANIのスキップ谷はあくまで1点取らせを狙っているが、解説の敦賀信人はブランクを推奨。

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9E 先攻(黄)スキップ2投目

敦賀「これ、入れ替えてゼロゼロにしてもいいと思いますね。くっつけにいってもし短いようでしたら2点取られて3点差になる、可能性もあるので。くっつけにいくショットというのは置きにいくショットの中で、難しいと思うんですね」
「前の方が1点取らせられる」
「8?」
「付けるとやばい。完全に付くなら付いてもいいけど」
「付けた方がブランクにされて嫌かも。8くらい」
「バック4くらいだな」
「ピールするには難しくて、2点取るにはジャムりそうな位置、がベスト」
「芯でまっすぐ付くんならそれはそれで最高だけど、ちょっとでもずれたらブランクにされちゃうから」
敦賀「ちょっとでもずれたら、ブランクどころか2点取られる危険性もあるので。1点差で最終エンドを迎えるのであれば全然大丈夫な場面なんですね」

 狙いは、完全にフリーズではなく、あえて赤を少し押して、黄と赤の距離を作ってダブルテイクを難しくする手。しかし、少し斜めに押してしまって黄の後ろに赤があまりかぶらない配置になってしまった。北海道大学は2点チャンス。ここは敦賀の不安通りになってしまった。ややうつむき加減の谷。

 しかし、北海道大学のラストストーンは、黄は後ろの赤に引っかかって残り、シューターの赤は右にロールして出ていってしまう。黄が1点スチール。天を仰いだ北海道大学スキップの河野。結果的にはチームTANIの狙い通りとなった。試合は同点で最終エンドを迎える。

10エンド カーリングの醍醐味

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10E 後攻(赤)スキップ2投目

 そして、局面は後攻(赤)北海道大学スキップ、河野2投目。同点の最終エンド。カーリングの醍醐味、プレッシャードロー。

 この場面はNHKスポーツのTwitterで動画が見られるので、とにかくこのショットを見てください。当たったらまずい石も見える中、4フットに入らないといけないラストドローをボタンに決めて北海道大学勝ち。ナイスゲーム!

男子予選 北海道大学 - チームTANI
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道大学 1 1 2 1 0 1 0 0 0 1 7
チームTANI   0 0 0 0 2 0 1 2 1 0 6


男子決勝 コンサドーレ-TM軽井沢

4エンド 両角友佑のスーパーショット

 最後は男子決勝、TM軽井沢スキップ、両角友佑のスーパーショットを紹介。 

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4E 先攻(黄)スキップ2投目

 ショットの前に4人集まって作戦会議。石が散っていていろいろな手がある。左上の黄を飛ばして中を狙う手を選択。黄が赤を経由して中に飛んでいって、なんと赤3つをはじき出すトリプルテイク。シューターの黄も残って黄が1・2でスチールチャンス。掛け値なしのスーパーショット。

 NHKスポーツのTwitterの動画は、通常ラストストーンしか配信されないのが、このシーンが配信されている。逆にラストストーンがない。コンサドーレスキップ、松村雄太のラストストーンはドローで1点を狙うが、わずかにウェイトが足りずTM軽井沢の1点スチールとなった。

敦賀「ただここもよくナンバー2にしたなと思いますね。ナンバー1、ナンバー2いい位置でしたし、ああいう決められ方をしますと、ものすごくプレッシャーの掛けられるんですけど、よく1点に抑えたなと思いますね」

 エンド後、両角と松村が、逆側のハウスに移動しながら今のショットについて何か話している姿が映る。この2人、試合中にも何か言葉を交わしている姿がたびたび映っていました。

男子決勝 コンサドーレ - TM軽井沢
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
コンサドーレ 2 1 0 0 0 0 2 0 1 x 6
TM軽井沢   0 0 1 1 0 0 0 2 0 x 4

カーリング日本選手権2020、女子決勝の名シーン

 2020年2月8日から16日まで第37回日本カーリング選手権大会が行われていました。今年も熱戦が繰り広げられていたわけですが、中でも女子決勝、ロコ・ソラーレ-中部電力がとてもおもしろい試合でした。ナイスショットもあり、ミスショットあり、作戦面やタイムアウトの場面などでも見所が多く、最後まで接戦でどちらが勝つかわからない展開。

 だからなのかどうかは分かりませんが、2月27日(木) 19:00から『熱戦凝縮!「カーリング日本選手権2020」』という番組が放送されるそうなので、どんな取り上げ方をされるのか楽しみです。

www2.nhk.or.jp

 と言うわけで、例によって今回も局面図を交えながら、女子決勝の名シーンを振り返ってみます。

1エンド ヒットロール一発で逆転

 お互いにまだアイスの状態が読めていないのか、カマーもヒットロールもいまいち決まらない立ち上がり。後攻ロコ・ソラーレのセカンド鈴木夕湖2投目で、残っていたガード2つをテイクしてブランク模様かと思った。

カーリング図 1エンド 先攻中部電力・フォース北澤2投目 ヒットロールを決める

1E 先攻(黄)フォース2投目

 しかし、そんな単純な作戦は採らない両チーム。ハウス左上にガードの位置で黄が残ったのを見て後攻ロコ・ソラーレ、スキップ藤澤五月2投目はすかさずカマーに行く。しかしこれがガードにかすって丸見えでハウスに入る形になって、図の投球前の局面。

 ここで先攻(黄)中部電力、フォース北澤育恵2投目。距離のあるヒットロールを完璧に決める。解説はおなじみの石崎琴美

石崎「途中まではロコ・ソラーレ、ブランクにできるなと思ってたんですけど、逆転しましたね」

 ロコ・ソラーレは仕方なくドローで1点取る。ブランクになりそうだったエンドを北澤のショット一発で逆転した。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1                   1
中部電力   0                   0

3エンド 再び北澤

カーリング図 3E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤1投目 赤のポケットの前にフリーズを決める。

3E 先攻(黄)フォース1投目

 2エンドは中部電力が1点。1-1で3エンド。

 早くも吉田夕梨花のウィックが炸裂したりして、右上にガードのかたまりを残したまま進む。ハウスの中の赤2つは、ロコ・ソラーレのサード吉田知那美の2投で作ったもの。この2投のヒットロールとカマーがともにナイスショット。このエンドはロコ・ソラーレが複数点を取るかと思った。

 しかし、ここで先攻(黄)中部電力のフォース北澤1投目のショットが決まる。北澤はこの試合初めて投げるドローだったが、ぴったり赤2つの前にフリーズしてこの黄は出せない。再び北澤のナイスショットで追いついた。

 この後はお互いに難しいショットを決めきれず、4フット付近の石はこのまま動かず。ロコ・ソラーレが1点取るエンドとなった。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1               2
中部電力   0 1 0               1

5エンド ダブルロールイン失敗

カーリング図 5E 後攻(赤)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目 ダブルロールインに失敗。

5E 後攻(赤)スキップ2投目

 4エンドは中部電力が2点を取って、3-2で中部電力がリードして5エンド。

 ハウスに石がない状態でロコ・ソラーレ(赤)のラストストーン。スキップ藤澤はダブルロールインを狙ったが、当たり薄すぎて惜しくも失敗。2点取る狙いが1点取ってしまう結果となった。

 実は、この局面になる直前の北澤2投目は、センター付近の赤のガードの裏にカマーを狙ったが、まるでラインが合わず、赤のガードにまともに当たって少し押すというミスショットだった。このミスショットがあったためにダブルロールインを狙いやすい形になって、ダブルロールインを狙ったためにロコ・ソラーレは1点取ってしまった。もし、このミスショットがなかったとしたら、簡単にブランクになっていたかもしれない。ミスしたことがかえって良い結果をもたらすということはカーリングではよくある。ミスした結果どうするかも含めてカーリング

 この試合は、ここまで藤澤のショットがいまいち決まっておらず、中部電力が優勢かと思ったのだが……。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1           3
中部電力   0 1 0 2 0           3

6エンド テイク失敗でスチール

カーリング図 6E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 テイクに失敗してスチールを喫する。

6E 後攻(黄)フォース2投目

 しかし、続く6エンドは中部電力にミスが出てしまう。

 後攻中部電力(黄)のラストストーン。北澤はガードをかわしてのテイクを狙ったが、当たりが薄すぎて赤が残ってしまう。ロコ・ソラーレが1点スチール。ここまでナイスショットを連発していた北澤だが、ここで痛いミスが出てしまった。これで試合の行方は分からなくなった。

 スチールは最悪で、テイクは確実に決めてせめて1点取らないといけなかった。と言いたいところですが、これまでの北澤を見ていたら、このブランクも成功しそうだと思って見ていました。これは決めてほしかった。ショット前には「しっかりは出したいね」「芯で、1点取る」という話もしていたのだけど。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1         4
中部電力   0 1 0 2 0 0         3

7エンド ダブルテイクでブランクか、ドローで1点か

 中部電力が1点ダウンの後攻で迎えた7エンド。ここも中部電力は2点パターンを作っていたが、フォース北澤1投目のドローがショートする痛いミス(右上の黄)。ハウス内に黄がなくなって図の局面。中部電力(黄)のラストストーン。残った赤をダブルテイクしてシューターも出ていくブランクも狙えるが、どうする? 中嶋と北澤が作戦会議。

カーリング図 7E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ダブルテイクでブランクを狙うか、ドローで1点を取るか。

7E 後攻(黄)フォース2投目前

中嶋「難しいかなこれ」
北澤「ここに当たれば、行きそう」
中嶋「ステイとかだとちょっとまずい」
北澤「後攻がいいんだったら……」
中嶋「ここにする?」
北澤「1点取って、8エンド相手後攻……」

 松村と石郷岡もやってきて話し合いに加わる。

北澤「ブランクにするか、1点取るか」
松村「ブランク楽そう?」
中嶋「ちょっとね外当たればいいんだけど、芯とかだとこっちの方が近くなっちゃうんだよね」
松村「まあ行くは行く」
中嶋「ブランクにして8エンド目で、そっちの方が流れ的には良さそうだよね」
松村「ラインがどう?」
北澤「そうなんだよね。ドローする?」
松村「それでいいと思う」

 最後の方までどちらになるのかわからない話の流れだったが、最後はあっさり決まってドローで1点と取るという選択になった。同点の8エンドを後攻で迎えたロコ・ソラーレが優位に立った。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0       4
中部電力   0 1 0 2 0 0 1       4

8エンド 中部電力タイムアウト

 同点、ロコ・ソラーレ後攻で8エンド。先攻(黄)中部電力、フォース北澤の2投目を前に図の形。 ハウス側に中嶋と北澤、投げ手側に松村と石郷岡で作戦会議。

カーリング図 8E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目の投球前 ガードの赤を飛ばすランバックが2通りあって防ぐ手段がない。

8E 先攻(黄)フォース2投目前

中嶋「これと、これは相手もいじれないね。あとドローくらいしかないか? 前にする?」
北澤「これと?」
中嶋「こっちからドローと、こっちと。それか前にする」
松村「ボードとかハック系で黄色触るのは微妙?」
北澤「そうだねー、これがね出てきちゃう。この黄色が」
松村「あー、簡単に2点になっちゃうかい」
北澤「あと、これと、これが(左の赤からとセンターの赤からのランバック)があるんだけど」
中嶋「でもこれやってここ止まれば、そしたらさ、もうちょっと隠れるからさ……でも相手ピールでもよくなっちゃうか。そっか。これ微妙か?」
石郷岡「それ出しておけば2点?」

 松村もやってきて作戦会議に加わる。

中嶋「自分のこういう感じで」
松村「ここに止まりたいね、だったらね。バックラインとかじゃ遅いか」
北澤「これがね、出したいよね、2点でいいんだったらパーンってやりたいけどね」
松村「でも2点だったらしょうがないよね」
中嶋「取るか。うん、取ろう」
松村「タイムアウトお願いします」

 話し合いが続いた末にタイムアウトを取る。両角友佑コーチが降りてくる。

両角「こっちからカマーとかフリーズだとさ、逆にランバックで止まる石が増えちゃうじゃん。後ろもさ、何かウチのキャッチャーになるんだったらいいけどそうでもないでしょ。それだったらこっちから1個出しとくというのは1つ手かもしれないなと、いまの話聞いてると思う。
 それでさ、いま言ったさ、ウェイトの話なんだけど、しっかり出しといた方が。最低でもあの黄色よりはさ、赤が出てないと意味がないから。すごく、薄い、8、9、の方がいいと思う。8、ノーマルの辺り、かなって思うな。8、9だと2センチ当たれば余裕で出る。俺この前さ、あっ……、コンサとの予選のさ、これくらいのこうやって出したの覚えてる? あれ8秒で1センチくらい当たってるんだよね。それで十分出てるから。8秒であればかなり薄くても。
 あとはラインの選び方ね、それだけ慎重に。まずはしっかり出す。あとはなるべく狙い通りのとこに」

 時間いっぱい使って具体的なアドバイスを送る両角コーチ。自身がTM軽井沢の選手として出場したコンサドーレ戦の経験も踏まえた話も出た。

カーリング図 8E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ガードをかわして黄に薄く当てて赤を出すテイクアウトに成功。

8E 先攻(黄)フォース2投目

 黄に薄く当ててのテイクアウトを選択。狙い通りの場所に当てて、赤はしっかり出して黄はほぼ動かずナンバー1キープ。しかし、赤には2点チャンスが来ている。

 この場面、自分が最初に見たときは「長い作戦会議をしたのに、ロコに2点チャンスを与えてしまったなあ」と思ったんですが、この局面、中部電力は3失点のピンチだったんですね。ランバックで12時方向の赤に触ると黄は簡単に出てしまう。ランバックに使える赤は2つある。両方を防ぐ手はない。そして、どこに黄をドローしても、少しでもずれたらやはり3失点ピンチだし、かえってランバックで飛んできた赤が出ていくのを止めてしまうかもしれない。それだったら、確実に赤を出しておけば悪くても2点で済む。そして確実に赤を出すならウェイトは……。というタイムアウトの話だったんですね。

 このあと、ロコ・ソラーレ藤澤のラストストーンは、黄に当てて押し出してシューターは残って2点というショットを狙ったが、わずかに右にそれて、黄にかするだけでほぼスルー。中部電力の1点スチールとなった。この試合、まだ藤澤のショットが決まらない。同点の8エンドをスチールして、逆に中部電力が優位に立った。勝負の行方はまだわからない。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0     4
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1     5

9エンド ガードでも良かったのでは?

カーリング図 9E 先攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ドローが短くなって相手にダブルテイクのラインを残してしまった。

9E 先攻(黄)フォース2投目

 後攻(黄)中部電力、フォース北澤2投目。センターガードの裏へカマーだが、やや短かったのが致命的。相手にダブルテイクのチャンスを与えてしまった。このドローを投げるなら、少なくともハウス後方の赤よりも内側まで持ってきてナンバー1・2・3を作らないといけなかった。

カーリング図 9E 後攻(黄)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目 距離のあるダブルテイクアウトを決めて2点。

9E 後攻(赤)スキップ2投目

 ロコ・ソラーレ(赤)藤澤のラストショットは狙い通りのダブルテイクを決めた! ブラシを掲げて笑顔の藤澤。ここまでショットが決まっていなかった藤澤だが、土壇場でビッグショットを決めた。

 この場面、黄は1・2持っているので、ダブルテイクのラインをふさぐガードという選択もあったと思います。9エンド1点リードの先攻。1点スチールの価値も確かに高いが、1点取らせの価値も高い。何より3失点は良くない。藤澤のダブルテイクはナイスショットでしたが、もう少しで3点の可能性もありました。ガードで確実に1点取らせができるならその方が良かった気がします。もっとも、ガードを選択して、そのガードがずれて同じダブルテイクを決められていたら、3失点どころか4失点になっていましたが……。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2   6
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0   5

10エンド 2点目を取る手段はあるか?

 6-5で後攻中部電力の1点ダウン。10エンド後攻1点ダウンはカーリングで最も際どい点差。終盤フリーズ合戦になって、先攻(赤)ロコ・ソラーレ、スキップ藤澤2投目を前に図の形。ナンバー1の黄は強いが、ナンバー2の赤も強く、黄は2点目を置くスペースがない。赤としては黄が2点取る手段を消したいが、黄が2点取るにはどんな手があるか? タイムアウトを取って考えるが……。

カーリング図 10E 先攻(赤)ロコ・ソラーレ スキップ藤澤2投目の投球前 ボタン付近にスペースがない。

10E 先攻(赤)スキップ2投目前

鈴木「隙間はちょっとある」
藤澤「ここから2点はね、うちらが何かしない限り」
知那美「ない?」
藤澤「ない」
鈴木「これ、こうは?」
知那美「触らなくていいんじゃないかな。ガードじゃない?」
藤澤「でもガードって言ってもさ、これで相手2点取るの何があると思う? これか」
知那美「でも狙うかい? こっちに当たったら終わりで」
鈴木「これじゃない?」
藤澤「でも、ガードしてもさ意味なくない?」

 小野寺亮二コーチが降りてくる。

知那美「何もないんだよね、相手ここから」
小野寺コーチ「これで相手がどうなったら2点があるか」
知那美「うちらが余計なことしたら」
藤澤「余計なことするか、赤のノーズ? だけど黄色に行ったら終わり」
知那美「いやガードでいいと思う」
藤澤「いやどこにガードするか」
小野寺コーチ「ゆっくり考えよう」
知那美「センターでいい? こっち見せていいもんね。これバーンとやったところでさ、何もないもんね」
小野寺コーチ「何があるか」
藤澤「相手赤のノーズしかないんですよ」

 結局、中には触らないという選択。他に有効な手もないので、一応ランバックと左からのドローラインをふさぐガードを置いた。

 そして中部電力のラストストーン。相手のストーンが止まるや否や「何かある?」から始まって、中嶋、北澤、松村がハウスに3人集まって作戦会議。石郷岡は投げ手側から見ている。

カーリング図 10E 後攻(黄)中部電力 フォース北澤2投目 ボタンの隙間のないところに押し込むドロー。惜しくもナンバー2は取れず1点。

10E 後攻(黄)フォース2投目

北澤「アウトターンからいけそうじゃない? 半分……3分の2でしょ? ちょっと中に」
松村「これは絶対こっち側にはなるからさ。ギリギリ狙って。それか外からドロー?」
石郷岡「黄色の内側の隙間はありそうだけど」
北澤「ちょっと押せないとダメだね」
中嶋「ちょっと内側、ここって感じ?」
松村「絶対抜けることはないから、相当速くない限り」
北澤「ここに当てたい」
松村「ギリでこれかわせば」
北澤「ちょっと狭めにとってこれに当たってもいいや」

 右からガードをかわしてボタンに入るドローを狙う。ボタンに石が入ってくる! わずかにナンバー2は取れず! 同点でエキストラエンドへ。

 こんなラインがあったのか。これがあるならロコ・ソラーレはこのラインをふさぐガードを置くべきでしたが、どうだったんでしょう? 手前の赤もギリギリかわしたし、これが精いっぱいだったかもしれません。

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2 0   6
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0 1   6

11エンド 対照的なアドバイス

 エンドの序盤にちょっと珍しいシーンがあった。吉田夕梨花の1投目はウィックだが、ガードに厚く当たって押してしまった。黄がバックラインギリギリまで下がって越えたかどうか。

藤澤「お、ほほー、びみょー」

 審判が三角定規のような物を持ってきてラインを越えているかどうか判定する。選手から「初めて見た」という声が聞こえた。

石崎「わたしも初めて見ました、これ」

 結果はラインに乗っていないという判定でウィック失敗。この後、2投目もウィックを狙うが、これも厚く当たってシューターがセンターライン付近に残ってしまう。珍しく、吉田夕梨花がウィックを2投とも失敗した。中部電力チャンスかと思ったが、ここから後のガード外しはロコ・ソラーレも失敗せず、スチール形にはさせない。

 そして中部電力(黄)フォース北澤1投目を前に図の形。すかさずタイムアウトを取る。 

カーリング図 11E 先攻(黄)中部電力 フォース藤澤1投目の投球前 センターラインが空いた状態でガードをどこに置くか。

11E 先攻(黄)フォース1投目前

両角「まだガードでもいいと思う。どっちにしろガードは、払わないわけにいかないじゃん。自分たちでもそうするじゃん。一番大事なのは最後ドローを置く位置だよね。こういうときの鉄板は、4フット半分掛けた、Tライン上だよね。右か左か。たぶんインアウトのテイク狙うんだよね相手は。絶対どっちか狙うんだけど、俺のオススメはアウトターンを残す。だからここのドロー、かなって思ってる。
 いずれにせよ次はガードでいいじゃん。やっばりセンターガードは絶対必要だからね。ああ距離は全然、いまの赤の並びかでいいと思う。こっちの方が、最後にアウトターン相手に残す方がいいんじゃないかな。
 (見えててもいいってこと?)全然見えててもいい。だってテイクしてもちょっとやな位置じゃん。隠すってのが目的じゃなくて、どれだけテイクもしにくくてドローも狭くするかというのが一番大事」

 8エンドに続いて、時間いっぱい使って具体的なアドバイスを送る両角コーチ。

 ショットの選択はセンターガード。センターライン上で赤の少し下あたり、やや長めのガードになった。アドバイスの中で「赤の並びかでいいと思う」という話もあったので狙い通りだと思うが……。

 続いてロコ・ソラーレもスキップ1投目すかさずタイムアウト

知那美「相手がここに置いて来たとしたら」
鈴木「こう取る?」
知那美「結構難しいもんね」
藤澤「これロングじゃん。最悪こっちになって、相手決められたら……」
鈴木「ああ打てばいいもんね」
知那美「ああそうかそうか。じゃあここにするか」
梨花「こっちが最悪だもんね」

 作戦会議はコーチが来る前から結論が出そう感じ。降りてきた小野寺コーチは開口一番「終わったか?」。

知那美「相手のガードがロングだから、ウチら先に入れて、後ろになっちゃって相手がいいとこあれても、ロングだから出せるんで」
小野寺コーチ「最後の投げるやつをどうするかだけイメージして、よし行こう」

 中部電力とは対照的に、うなずきながら選手の考えた作戦を聞き、アドバイスは短く終わる。ショットの選択は、ガードピールではなく、カマー。左のラインからセンターガードの真裏、Tライン前でボタンに止めるナイスドロー。この試合の前半はショットが決まっていなかった藤澤だが、終盤の勝負所で決めてきた。小野寺コーチも笑顔。

 このカマーがあるなら、中部電力のガードの位置がどうだったか。もっとハウスに近いガードでないといけなかったのかもしれません。

 この後、中部電力北澤2投目はガードをギリギリかわしてその赤をテイクしてナンバー1を取るが、わずかに右にロールしてガードから半分見えてしまった。最後は藤澤がその黄を芯でテイクして1点。ロコ・ソラーレの優勝となりました。笑顔で涙を流す藤澤。ナイスゲーム。

 試合後のインタビュー。

藤澤「私の最終ショットの前のショットで相手の前の石を開いて、最後にドローショットを投げるというのが一般的な作戦ではあるんですけど、投げたくなくて(笑)。プレッシャーがすごすぎて、ちょっとごめん先に投げさせてほしいというのをみんなにお願いして」

女子決勝 LOCO SOLARE - 中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
LOCO SOLARE 1 0 1 0 1 1 0 0 2 0 1 7
中部電力   0 1 0 2 0 0 1 1 0 1 0 6

www.nhk.or.jp

日本女子カーリングの主な大会の出場チームと成績
オリンピック 日本選手権優勝 世界選手権
2020 - ロコ・ソラーレ ロコ・ソラーレ(?位)
2019 - 中部電力 中部電力(4位)
2018 LS北見(3位) 富士急 富士急(10位)
2017 - 中部電力 ※不出場
2016 - LS北見 LS北見(2位)
2015 - 北海道銀行 北海道銀行(6位)
2014 北海道銀行(5位) 中部電力 ※不出場
2013 - 中部電力 中部電力(7位)
2012 - 中部電力 ※不出場
2011 - 中部電力 ※不出場
2010 チーム青森(8位) チーム青森 チーム青森(11位)

女子決勝以外の名シーン

y-koutarou.hatenablog.com

カーリング、9エンドの戦術の考え方

2022/03/03追記

 この記事の内容を検証した記事を書きました。

y-koutarou.hatenablog.com


 今年もカーリング日本選手権の季節がやってきました。試合は2月9日(日)から始まります。今回もNHKの充実の中継態勢で連日放送があるので楽しみです。

 ところで、カーリングの試合を見ていると、終盤で際どい点差になった場合、どういう戦術を採れば良いのかわからなくなるのです。勝っている方は安全策、負けている方は積極策というのはどの競技でもよくある話ですが、カーリングの場合は、それが点差によって極端に出ることがあります。どの点差ならどういう戦術になるのか、よく考えるとわかるのですが、特に9エンドの戦術が独特でいつも混乱します。そこで、カーリング日本選手権を前に、一度整理して書いておこうと思います。

通常の後攻・先攻の狙い

 まず、序盤~中盤の点差がそれほど離れていない場合の考え方を確認しておきます。

 カーリングは、そのエンドで点数を取った方が次のエンドで先攻、取られたが後攻になります。また、両者点数が入らなかった場合(ブランクエンド)は、次のエンドの先攻・後攻は入れ替わりません。

 後攻は最後の1投(ラストストーン)を持っているので、1点を取るのは比較的容易です。先攻は1点を取る(スチール)のもなかなか大変です。

後攻は2点以上を狙う

 後攻の第一目標は2点以上を取ることです。2点以上取るのができないようなら、ブランクにして後攻を維持して、次のエンドで2点以上を狙う方が良いです。1点取るのは「有利な後攻をたった1点で手放してしまう」ことになるので、後攻にとっては良くない結果です。

先攻は1点取らせを狙う

 先攻の第一目標は相手に1点取らせることです。そして、次のエンドの後攻を得て2点以上を狙います。スチールができればなお良いですが、スチールを狙って攻めすぎると、後攻に3点以上のビッグエンドのチャンスを与えてしまう可能性もあります。

まとめ

  • 後攻:2点取り > ブランク > 1点取り > 1点スチール
  • 先攻:1点スチール > 1点取らせ > ブランク > 2点取られ

10エンドで有利な状況は?

 しかし、終盤になるとこの考え方を修正する必要があります。まず、最終10エンドの状況を考えてみます。

10エンド同点は後攻有利

 10エンドを同点で迎えた場合。後攻はラストストーンを持っている状況で1点取りで勝ちになるので、後攻が有利です。ただし、先攻もスチールすれば勝ちで、それを狙ってくるので、後攻が楽に勝てるというほどではありません。自分の観戦体感的には、10エンド同点の後攻が勝つ確率は2/3~3/4という感覚です。

 もちろん、後攻が1点以上アップであればさらに有利です。

10エンド後攻1点ダウンは互角

 10エンド後攻1点ダウンは最も際どいスコアです。後攻は、2点取れば逆転勝ちで、その可能性は十分あります。1点にとどまって同点になってしまうと、エキストラエンドの先攻でスチールしないと勝てないので不利になります。それでもまったく勝てないわけではありません。

 先攻は、1点取らせて同点にし、エキストラの後攻になって1点取って勝つのが主な狙い筋になります。このエンドで勝つためにはスチールが必要ですが*1、スチールを狙うと2失点して一気に逆転負けになるリスクも上がります。

 総合すると、10エンド後攻1点ダウンという状況は、後攻・先攻どちらも互角だと思います。

10エンド後攻2点ダウンは先攻有利

 10エンド後攻2点ダウンの場合。2点差になると、後攻が勝つには「2点取って同点にした上で、エキストラの先攻でスチール」するか「このエンドで3点以上取る」しかありません。不可能ではありませんが、どちらも難しい狙いになります。よって、この場合は先攻の方が有利です。

 「2点ダウンの後攻」と「同点の先攻」を比較すると、2点ダウンの後攻は「2点取った上で、次にスチールで勝ち」です。同点の先攻は「スチールで勝ち」なので、2点ダウンの後攻の方が条件は厳しいです。2点ダウンの後攻は「3点取って勝ち」というプランもありますが、それを合わせても2点ダウンの後攻の方が勝つのは難しいと思います。よって、「2点ダウンの後攻」より「同点の先攻」の方が有利です。

 もちろん、後攻3点以上ダウンなら、さらに先攻有利です。

まとめ

  • 10エンド同点なら後攻有利
  • 10エンド後攻1点ダウンなら互角
  • 10エンド後攻2点ダウンなら先攻有利

9エンドの戦術

 以上を踏まえて、9エンドをどう終えれば10エンドで有利な状況になるかを考えて、9エンドで採るべき戦術を決めます。

9エンド同点

 後攻は、ブランクにすれば「10エンド同点の後攻」になれるので有利です。よって、通常よりブランクの価値が上がります。2点取って「10エンド2点アップの先攻」になればさらに有利ですが、ブランクでも十分有利ですし、2点取りに行って1点しか取れなかった場合の損も大きいです。ブランク狙いと2点狙いは作戦が正反対なので、基本的には後攻はブランクを狙います。

 先攻は、ブランクにされると不利なので、1点取らせて「10エンド1点ダウンの後攻」の互角の立場をめざします。1点スチールして「10エンド1点アップの先攻」になっても、先攻後攻が逆なだけで「10エンド後攻1点ダウン」の互角の状況なのは同じです。よって、1点スチールの価値がかなり低くなります。*2

後攻:2点取り > ブランク >>> 1点取らされ = 1点スチール
ブランクの価値が高い。2点取るのも良いが、ブランクでも十分有利。1点スチールは怖くない。
先攻:1点スチール = 1点取らせ >>> ブランク > 2点取られ
狙いはほぼ1点取らせのみ。スチールの価値が低い。

 なお、9エンド同点より後攻が有利な状況(9エンド後攻1点以上アップ)の場合は、直感的に思う戦術でおおむね正しいので、混乱することはそれほどありません。

 後攻は、2点以上取っても良いし、ブランクでも良いし、1点取らされでもそれほど悪くない。逆に先攻は、ひたすらスチールを狙うか、1点だけ取らせて最終エンドでビッグエンドを狙う。2点以上取られるのはもちろんダメだし、ブランクにされるのも悪い。

 つまり、勝っている方は無理をせず安全策で十分、負けている方は多少無理でも勝負手を放つという、競技の終盤でよくある展開となります。

9エンド後攻1点ダウン/先攻1点アップ

 後攻は、このエンドはブランクにすれば「10エンド1点ダウンの後攻」の互角の立場になります。2点取ると逆転して一見良いように見えますが、「10エンド1点アップの先攻」になるだけで、「10エンド後攻1点ダウン」の互角の状況になるのは変わりません。よって、2点取りの価値は低いです。しかも、1点取らされると「10エンド同点の先攻」になってしまうので不利です。2点取りの価値が低い上に1点取らされの損も大きいので、2点取りに行くメリットがありません。

 先攻は、1点取らせて「10エンド同点の後攻」になると有利だし、1点スチールで「10エンド2点アップの先攻」ならもっと有利。よって、先攻は1点取らせか1点スチールを狙うという、通常のエンドと似た狙いになります。2点取られてもブランクでも「10エンド後攻1点ダウン」の互角の状況になるので、2点取られは怖くない。よって、2失点を恐れず、最後までスチールか1点取らせを追求することができます。

後攻:2点取り = ブランク >>> 1点取らされ > 1点スチール
狙いはほぼブランク。2点取りのメリットがない。
先攻:1点スチール > 1点取らせ >>> ブランク = 2点取られ
1点スチールか1点取らせ。2点取られは怖くない。

ただし、後攻がビッグエンドを狙うなら……

 というわけで、9エンドで同点か後攻1点ダウンという僅差の展開の場合は、後攻はブランク狙いでクリーンな展開をめざす、先攻はそれを阻止するべくガードを置くということになります。その上で、通常のエンドと大きく異なる点が――同点の場合は「先攻1点スチールの価値が低い」、後攻1点ダウンの場合は「後攻2点取りの価値が低い」――という点を押さえておけば良いでしょう。

 ただし、後攻が3点取りを狙うなら話は別です。9エンド同点の後攻が3点取れば、10エンド3点アップの先攻。9エンド1点ダウンの後攻が3点取れば10エンド2点アップの先攻。どちらも、2点取り・ブランクの場合よりもかなり有利になります。

 したがって、後攻が3点取りができると思うなら、9エンドでガードを置いて攻めてくることも考えられます。その場合は、先攻はそれを阻止しようとしても、クリーン展開になってブランクになったら、それこそ後攻の思う壺です。よって、先攻も攻め合いに出るしかありません。この場合、9エンドが、お互いにガード・フリーズを多用する両者攻めの勝負エンドになると予想できます。

 特に、5ロックルールになってからは3点取れる可能性が高くなっているので、こういう展開も多くなるかもしれません。まだ5ロックルールになってから2シーズン目なので、各チームがどう考えているのか。その辺りも注目しながらカーリング日本選手権を観ることにしましょう。

*1:ラストストーンは相手が持っているので、ブランクになって1点逃げ切りで勝つという展開はまずありません。

*2:逆に、後攻の方が(2点取りもブランクもできないなら)わざと1点スチールさせる手もあるくらいです。