『火吹山の魔法使いふたたび』の謎?

 今回も、『火吹山の魔法使いふたたび』をプレイし終わっての感想・疑問点などをつらつらと書いてみます。

 かなりネタバレなので、まだ読んでいない方は注意して下さい。

火吹山の魔法使いふたたび』の謎

ムースは味方?

 開始直後、いきなり主人公を追いかけて警告を伝えに来るアンヴィルの酒場〈二つの月〉亭の主人ムース。自ら抜き身の剣を片手に走ってくる姿があまりにウソっぽくて、初回のプレイでは無視してしまいましたw その時の彼の心境やいかに……。

 その後、ヤズトロモの偽物の情報を伝えてくれたので(40番)、どうやら信用できそうだということで、次の回はついて行きましたが、闇狩人を倒した時の行動がまた不自然(306番)。

ムースはポケットを空にするだけでは満足せず、闇狩人のブーツを脱がせて振り動かす。折りたたまれた一片の茶色く汚れた紙が地面に落ちる。「俺はそんな臭いものには触らないよ」ムースが笑いながら言う。「あんたが欲しけりゃ、持ってったらいい」

 見事にムースの策略?にはまってザゴールの呪いで技術点-2を食らいました。やられた……。よく考えたら、自分からブーツを探っておいて「そんな臭いものには触らないよ」っておかしくない? やっぱり俺はまだ信用してないぞ。結局、闇狩人の逃走を阻止したのって意味なかったし。

君はランタンを持っているか?

 ディープ・シーの店(116番)で買えるアイテムの一つであるランタンは、買わなくても持っているという解釈でいいよね? ルールにはっきりこう書いてあるのだから……(259ページ)。

装備
冒険の開始時、きみは稼業に必要な基本的なものを持っている。上質の剣、旅にうってつけの服、発見した財宝を入れる背負い袋、行き先を照らすランタンだ。

短剣を手に入れた?

 49・196番では短剣を入手した(306番で手に入る短剣とは別に)という解釈でいいのでしょうか? 文章としてはそう読み取れるけど、どういう経過であれ、306番で入手する短剣は闇狩人が持っていたものなので、たどる経路によって入手できる短剣の本数に差が出るのは不自然ではある。131番の戦闘では短剣の本数は大切なので、ここの解釈は重要。

 あと、131番の戦闘では、ディープ・シーの店で買える銀の短剣も投げていいよね、この際。「投擲用」とは書かれていないけれど、306番で入手できる鋼の短剣も「投擲用」とは書かれていないし。

投擲用ダガー

 ついでにもう一つ短剣の謎。後半、3つのパラグラフで投擲用ダガーをブーツの差し込んでいるかどうかを聞かれるけど*1、ここでいう短剣・ダガーは70・220番で入手できるもののみ有効で*2、闇狩人が持っていた短剣(49・196・306番)やディープ・シーの店で買える銀の短剣を持っていても無効という解釈でいいよね? それらの短剣は「ブーツに差し込む」という描写はないので。131番で「投擲用の短剣」という言葉が出てくるのでややこしくなっている。

 『火吹山の魔法使いふたたび』は登場アイテム数が非常に多く、まったく役に立たないアイテムも多数ある中、この投擲用ダガーは2ヶ所で必須になるという超重要アイテム。

多多益益弁ず

 「多多益益弁ず」って言葉、初めて知ったなあ(316番)。ここでは、要するに「多ければ多いほど良い」という意味か。勉強になります。でも、「少なくとも二つは必要」はミスリードですよね、ヤズトロモさん。

別の剣を見つけるまで技術点-2

 348番で剣を失うと、別の剣を見つけるまで技術点-2となります。この「別の剣」は4ヶ所で入手できます。

  • 355番 ダークブレード・スカルバイダーの剣
  • 190番 ゴブリンの剣
  • 227番 オークの剣
  • 225番 骸骨の剣

 225番以外は技術点2点回復とは書かれていないけれど、225番は忘れないように厚意で書いてくれているだけと解釈して良いでしょう。

 また、343番の戦闘では「剣を持っていないなら、きみは技術点から二点引いて」と書かれているけれど、これも厚意で書いてくれているだけで、348番の技術点-2とは別に引く必要はないでしょう。他にも剣がない状態での戦闘は多数発生するので、ここだけこの記述があるのはかえって不自然。

 剣を失うシーンは後半にもう一つあります(202番)。この際の、340・358番「剣を持っていないなら、この戦闘の間、一時的に技術点を二点減らさなくてはならない」の指示は、202番では技術点を引くという指示はないし、202番以降の(剣を使った)戦闘は340・358番しかないので、必要で妥当な指示です。

目まぐるしい展開

 『火吹山の魔法使いふたたび』で最も印象的なシーンが36番。このゲームブックでは、ただ通り過ぎるだけのパラグラフ(分岐も合流もないパラグラフ)がないように作られているので、様々な出来事が起こるパラグラフがいくつかあります。その最たるものが36番。「パラグラフジャンプ成功」→「ズート・ジンマーのその後」→「同行」→「〈黄金の竜牙〉入手」→「罠発動」→「ショートカットルート終了」と1つのパラグラフで次々と事件が起こるので唖然としてしまう。なんと不幸なズート・ジンマー……。

ダイアモンドとは?

 12番の「思いもかけぬ死」とはいったい……。いずれ無防備な状態でダイアモンド・センティネルに襲われるということだろうか……。このパラグラフを通過した上で任務達成した場合は、どういう気持ちになったらいいのだろう? ここは400番の次のパラグラフを用意してほしかった。

木の球を持っている?

 382番でマインドベンダーの口の中に木の球を詰め込むけれど、木の球なんて持ってましたっけ? 33番で木の球と積み木を入手できるけれど、ここを通らなくてもここまで来る展開もあると思うけど……。鉄の鍵の方とセットで入れておけばよかったのに。

3つの鍵?

 331番。3つの鍵の選択。「お? 火吹山の宝箱の再来か!?」と色めき立ったが、ただの三択だった。なーんだ。でも、ここで1つは正解があるのがリビングストン作品の優しさ。スティーブ・ジャクソン作品だったら、3つ全部体力点-2だったことでしょうw

兜はどこ?

 65番。盾・兜・胸甲を身につけていれば有利になるのだけど、盾と胸甲はわかるけど、兜なんて出てきたかなあ?

 ……と思っていたが、まさか、298番の〈混乱の兜〉のことか!? あれば65番の一発死の確率が16.7%下がるのですごく重要だけど、さすがにこれは……。そもそも、運だめしに失敗しないと〈混乱の兜〉を入手するルートに入れないし。文章をよく読むと、一度かぶっただけでその後は外しているので、これではないのかなあ。

 〈混乱の兜〉が入手可能だとしても、『火吹山の魔法使いふたたび』には技術点回復ポイントが数えるほどしかないので、技術点-3は痛すぎる。唯一大きく技術点を回復できるチャンスが167番のプロバブスの幸運のお守りだが、ここまでも技術点が必要な戦闘は多数あるし、ここは体力点の方を回復させたいところだし……。 

盾の出番

 前項で盾はわかると書いたけど、ここで盾の出番が来るというのも結構トリッキーで驚いた。盾は開始直後に入手できるアイテム(82番)。すぐに役立つのでここで出番は終わりと思わせておいて(374番)、終盤に2ヶ所でデッドエンド回避に働く(169・65番)。「火」の箱入手の為に捨ててしまった回もありました(307・67・293番)。

パラグラフジャンプの処理が雑

 335番からのザゴールとのエレメンタル合戦。これまで集めた〈黄金の竜牙〉と『竜の目』のページの情報を使って、パラグラフジャンプを立て続けに4回させる趣向なのだけど、ここの処理がちょっと雑で、正しくないパラグラフジャンプをしているのに正しいと誤解させる余地が生じていると思います。ここはもう少していねいに処理してほしかった。

 趣旨としては――ザゴールが召喚したエレメンタルに対応するエレメンタルを呼び出す必要がある。エレメンタルを呼び出すには4つの〈黄金の竜牙〉を使うのだが、どの牙にどのエレメンタルの力が込められているのかはわからない。〈黄金の竜牙〉には番号が刻印されている。『竜の目』のページに、どの番号の〈黄金の竜牙〉にどの元素が込められていて、どの元素に対して有効かが書かれているので、この情報を元に正しい順番で4つの〈黄金の竜牙〉を使う――というものです。

 しかし、〈黄金の竜牙〉に刻まれている番号がジャンプ先のパラグラフ番号そのものなので、どの〈黄金の竜牙〉を使っても「〈黄金の竜牙〉を使って相手のエレメンタルを攻撃しようとする」という場面にジャンプします。一見すると正しいジャンプをしたように見えてしまいます。文章をよく読めば相手のエレメンタルの元素が異なるのでおかしいことは分かりますが、ここまででプレイヤーが得ている情報量は場合により様々です。〈黄金の竜牙〉や『竜の目』がいくつあるかや、〈黄金の竜牙〉と元素の対応があること、相手の元素に対して有効な元素があることさえ知らずにここまで来てしまう可能性もあります。気がつかずに読み飛ばしてしまう危険は十分あると思います。

 〈黄金の竜牙〉に刻印する番号はジャンプ先ではない数字にして、「現在のパラグラフ番号から使用する〈黄金の竜牙〉に刻まれた番号を加えた(引いた)パラグラフへ進め」などという処理にするべきだったと思います。

 また、『竜の目』のページにどの〈黄金の竜牙〉にどの元素が込められているかが書かれていますが、その〈黄金の竜牙〉の判別方法が刻印されている番号(つまりジャンプ先の番号)なので、〈黄金の竜牙〉を入手していなくても『竜の目』だけでジャンプ先の番号が分かってしまいます。番号が刻印された〈黄金の竜牙〉を持っていないとパラグラフジャンプをしてはいけないのですが、「一見〈黄金の竜牙〉に見えるが実はそうではない」というトラップアイテムがあるので*3それを正しいアイテムと誤解して『竜の目』に書かれた番号へジャンプしてしまう可能性があると思います……というか、自分はそれをやってしまいました。*4

 〈黄金の竜牙〉と元素の対応を特定する方法は、番号の刻印とは別にマークを刻印するなど、パラグラフジャンプに使う番号とは別の情報で行うべきだったと思います。

サイコロ運が必要な主な場面

 後期のリビングストン作品なので覚悟はしていたけれど、やっぱり任務達成には運に頼る場面が多すぎるな。サイコロ運が必要な主な場面は以下の通り。

159番 ドッペルゲンガー
ラウンド勝者が2Dを振りゾロ目が出れば勝ちという特殊ルール。体力点や運点は使えない。つまり技術点9なら勝率50%。偶然性も高いので技術点12でも安心できない。
5番 拷問室のトラップ
必須ルートなのに、2Dで技術点以下を振れないと一発で終了。
231番 ゴルゴンとの戦い
鏡があっても運だめしに失敗すると、1Dで4-6を振ると終了。1-3でも実質技術点12の相手との戦闘になる。運だめしに失敗するとかなりきつい。
  • ゴルゴン 技術点10 体力点8 ※こちらの技術点-2
326番 羊の目大食い大会
サイコロを使う特殊ルールイベントだが、要するに確率的には以下の通り(悪い順)。
  1. 50% バーバリアンとの賭けに負ける → 〈黄金の竜牙〉を取り逃す
  2. 25% 優勝以外でバーバリアンとの賭けに勝つ → バーバリアンとの戦闘に勝つ必要がある
  3. 25% 優勝(バーバリアンとの賭けにも勝つ)
50%で必須アイテムを取り逃し、25%で技術点10の敵に勝つ必要があるという厳しいイベント。
  • バーバリアン 技術点10 体力点10
194番 カオス・ウォリアー戦
倒さないと、必須アイテムの本の一ページ・銀貨2枚・革の鞭を取り逃がす。
  • カオス・ウォリアー 技術点10 体力点10
212番 プレイグ・ベアラー戦
倒さないと、必須アイテムの本の一ページを取り逃す。
  • プレイグ・ベアラー 技術点6 体力点4 ※1ラウンドでも負けたら終了
加えて、ここで「プロバブスの幸運のお守り」での体力点全回復を得ないと体力点が厳しいので、ここで運点9点以上あることが必須に近い。
34番 ゴブリンがレバーを引くのを阻止
2Dで技術点以下を振れないと必須ルートへ行けず終了。
65番 デス・ロードの鋼の球
盾と胸甲があっても1Dで1か2を振ると(確率33%)終了。
27番 ザゴール戦
言うまでもなく必須戦闘。
  • ザゴール 技術点11 体力点18

 サイコロ一発で即死・デッドエンド確定のイベントも多いし、単純に技術点勝負の戦闘も多い。

 今回の推奨能力値は、次の通りとします。

  • 技術点 11点
  • 体力点 24点
  • 運点 12点

 全能力最大の最強モードでもいいくらいですが、さすがにそれは味気ないので技術点だけ1点減らしました。これでも、ゴルゴン、バーバリアン、マミーあたりと戦闘になってしまうと、体力点がかなりきついです。運点は温存して、ゴルゴン、マミーとの戦闘は絶対回避。できるだけ体力点・運点を残した状態で最終決戦にたどり着く必要があります。

 今回のルールは魔法のポーションや食料はないのだけど、今回こそこのルールが必要だったのでは……。

火吹山の魔法使いふたたび』の一番の見所は……

 というわけで、『火吹山の魔法使いふたたび』は、ゲームブックとしての面白さとしては、『ファイティング・ファンタジー・コレクション』に収録された他の作品と比べるといまいちだと思いました。火吹山の内部が『火吹山の魔法使い』と同じ構造だったり、ザゴールの伝説に新たな一幕が加えられたというという背景があってこその作品でしょう。

 そういう意味でも、『火吹山の魔法使いふたたび』の一番の見所は、一番最初、「背景」のこの記述で間違いない。

その一人がザゴールという名で知られた(また、恐れられた)火吹山の悪名高き魔法使いだった。そして、ある勇敢な冒険者が、ザゴールの邪悪な魔術からアランシアを救うために、その手下や死の罠の危険を顧みず火吹山の奥深くに踏み入った。

 これ、真っ赤なウソですよね。『火吹山の魔法使い』にザゴールが「悪名高き魔法使い」なんて書いてなかったし、「ザゴールの邪悪な魔術からアランシアを救うため」って、『火吹山の魔法使い』の主人公って、ザゴールの財宝目的の押し込み強盗だったじゃん。

 400番で、火吹山の宝物をさも当然かのように要求するアンヴィルの村人たちの行動も気になる。この宝物って、別にアンヴィルから盗まれたものではないですよね? やはりムースは信用できん。というか、この物語自体が本当のことだったのかどうか……。

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*1:

  • 257番「ブーツに短剣を差しているなら」
  • 142番「投擲用ダガーをブーツに差し込んでいるなら」
  • 315番「投擲用ダガーをブーツに差し込んでいるなら」

*2:

  • 70番「ブーツの側面に短剣を差し込む」
  • 220番「ブーツの側面に投擲用ダガーを差し込む」

*3:308・253番の〈青銅の竜牙〉と241番の金の竜牙。

*4:てっきり『竜の目』を読んで、消されてしまった〈黄金の竜牙〉の刻印番号を読み解くものだとばかり……。