カーリング男子世界選手権2017が終了しました。日本は前回の4位を上回るメダル圏内をめざしていましたが、5勝6敗で12チーム中7位という結果に終わりました。上位チームにはことごとく勝てず、特に優勝したカナダとの試合は手も足も出ない完敗となり、世界との差を見せつけられる大会となりました。
とはいえ、平昌五輪出場は決定。男子カーリングの五輪出場は1998年長野以来で、自力で出場権を取ったのは初めて(長野は開催国枠だったので)。これで平昌五輪は日本は男女とも出場できることになり、来シーズンがますます楽しみになりました。NHKの充実の中継にも期待したい(^_^)
さて、昨年のカーリング女子世界選手権2016に続き、男子世界選手権2017を題材にカーリング実戦・次の一手を作ってみました。自分が印象に残ったシーンから、今回は全部で8題作ってみました。画像をクリックすると拡大表示されます。それと、NHKの特設サイトとWorld Curling TVからその場面の動画があった物はリンクしておきました。しかし、意外とハイライトになっている場面が少ない(´・ω・`)
- 予選 日本(赤) - (黄)イタリア 3エンド
- 予選 日本(赤) - (黄)オランダ 4エンド
- 予選 日本(赤) - (黄)オランダ 8エンド
- 予選 日本(赤) - (黄)スコットランド 1エンド
- 予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 1エンド
- 予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 2エンド
- 予選 日本(赤) - (黄)中国 3エンド
- 準決勝 スウェーデン(黄) - (赤)スイス 10エンド
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予選 日本(赤) - (黄)イタリア 3エンド
赤1 - 2黄 3エンド 後攻(赤)スキップ2投目
イタリアのスキップ2投目は赤の裏へのヒットロールを狙ったが、わずかにロールしすぎてハウスに残らず。ラストストーンを前に、ハウス内に1つも石がない状態になった。スルーさせてブランクにして後攻を維持するのは悪くない選択だが、この局面で赤の日本のスキップ両角友佑は考え始めた。
赤の狙いはダブルロールイン。失敗すると1つだけ入って1点取ってしまうことも考えられたが、積極的に狙った。見事に2つ入れて赤が2点取った。
1・2エンドはイタリアの方にいいショットが出ていたが、ここで2点取った以降は日本がペースを握った。
動画
- 0402 カーリング男子世界選手権_日本vsイタリア=3m00s
http://www.nhk.or.jp/curling/vod.html?id=3
※00:14ごろ
予選 日本(赤) - (黄)オランダ 4エンド
赤2 - 2黄 4エンド 先攻(赤)スキップ2投目
ナンバー1は黄だが2・3は赤が持っている。赤としてはナンバー1の黄を打ち出せれば後攻に1点取らせる展開にできそうだが、ガードをかわしてテイクアウトできるか微妙なところ。そして気になる点がもう一つ。
「3分の1(見えている)」という声もかかってテイクアウトに行く赤。しかし……。解説は土屋長雄(日本協会指導普及委員長)。
実況「速めのストーン」
土屋「来てますね」
実況「ガードは……すり抜けた」
土屋「ナイスショッ!」
実況「見事です」
土屋「……そこに残っちゃうとまずい!」
実況「あー、バックガードがありました」
ハウスの外に残っていた黄にぴったり当たってナンバー2で残ってしまった。次のラストストーンでナンバー1の赤を出されて投げた黄が残れば黄に2点取られる形。しかし、黄のオランダはラストストーンのテイクアウトが手前の赤に当たってしまってナンバー1を取れず、結果的にはこのエンドは日本が1点スチールした。
予選 日本(赤) - (黄)オランダ 8エンド
赤5 - 5黄 8エンド 後攻(赤)スキップ2投目
試合は同点で終盤8エンド。ここで後攻を持っている日本がやや有利。
ナンバー1はすでに赤が持っているが、黄のスキップ2投目で中央にフリーズでナンバー2を作られた。しかし、ぴったり縦にはくっついていない。この形でできることは?
中央手前の黄を芯で叩くと黄2つが出て行く形ができていた。中央手前の黄が出て行けば3点、右下の黄に当たって残ってしまう2点。選手からも「2つ出せば3点」「最悪2点」という言葉が聞こえた。
結果は、右下の黄に当たって両方出て行った上に、さらに中央の赤も右下でぎりぎり残って4点。望外の戦果となって一気に試合を決めた。
動画
- 0403カーリング男子世界選手権 日本vsオランダ
http://www.nhk.or.jp/curling/vod.html?id=4
※02:10ごろ
予選 日本(赤) - (黄)スコットランド 1エンド
赤0 - 0黄 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目
立ち上がりの1エンド。まだお互いアイスの状態をつかめておらず、ヒットロールが逆側にロールしたり、スルーしたりというショットもある中でこの形に。直前の黄のスキップ1投目のカムアラウンドは良いショットで、ガードの裏にナンバー1を作られた。赤の目標は相手に1点取らせることだ。
日本の選択はガードから飛ばしてのテイクアウト。一見、直接黄色に触ることもできそうに思えたが……。解説は敦賀信人。
敦賀「置きに行くショットがこのエンド難しくなっていますので。どちらかというとはじき出すテイクの方が、今のところ確率が高いということで」
結果は、見事にナンバー1をはじき出すことに成功。赤も残らなかったが、ハウス右側の赤の縦の形もそのまま残ったので、スコットランドにドローで1点取らせることに成功した。
予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 1エンド
黄0 - 0赤 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目
お互い積極策の両チーム。1エンドからハウス内に石がたまる展開。先攻・赤のアメリカのスキップ2投目を前にこの形。ナンバー2の赤はいい位置だが、ナンバー1・3を黄に持たれている。ナンバー3の黄はバックガードに守られて出しようがない。このままだと、ナンバー2を出されていきなり大量失点もあり得る。それを防ぐには?
赤はナンバー2を守るガードを置いた。このガードはナンバー2の赤より左寄りに置くことが重要。左寄りにおいて赤の右側を見せても、出そうとしても後ろの黄に当たって出すことができない。逆に、左側を見せてしまうと、出されるラインができてしまう。狙いどおりの場所に置けた。
このあと、黄の日本はドローでナンバー2を作りに行くが、惜しくも寄り切らず。アメリカは相手を1点に抑えることに成功した。
予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 2エンド
黄1 - 0赤 2エンド 先攻(黄)スキップ2投目
今度はアメリカ後攻の2エンド。ナンバー1の赤は後ろの黄にぴったりくっついて強い形。黄としてはドローでナンバー1で置けそうな場所はいくつかあるが、出されるような位置に置くと2点以上取られてしまう。ハウス内の12時方向にある赤の存在に注意して。
本当はナンバー1の赤の手前にフリーズするのが一番良いが、失敗してハウス内の12時方向の赤に当たって押し込んでしまうと非常にまずい(このエンド、ちょうどその方向への曲がりが大きいところだった)。そこで右側からナンバー1を置きに行くが、Tラインの前に置くと12時方向の赤を使って出されてしまう。というわけでT奥の黄にフリーズ。ここならナンバー1だし、出されることもない。
このあと、赤のアメリカはドローで1点を取るにとどまった。
予選 日本(赤) - (黄)中国 3エンド
赤0 - 5黄 3エンド 先攻(黄)スキップ1投目
序盤から黄の中国が大きくリードしている。
黄がナンバー1・2だが、ダブルテイクアウトできる形。むしろ、ガードに隠れていて後ろの壁もある赤がいい形。というわけで、黄としては赤のガードをはずすというのが考えられる。実は、この4投前から「黄がガードをはずす → 赤がガードを置く → 黄がガードをはずす → 赤がガードを置く」というパターンでこの形になった。ということは三たびガードはずし?
黄の壁の間を抜ける道があった。ガードとの距離が近くなって、比較的狙いやすくなったところで見事に決めた。大量点がほしい赤は石がなくなって苦しくなった。
結局、このエンドも中国がスチール。序盤早々決定的な差が付いてしまった。
準決勝 スウェーデン(黄) - (赤)スイス 10エンド
黄5 - 4赤 10エンド 後攻(黄)スキップ2投目
準決勝。勝った方はカナダと決勝を、負けた方はアメリカと3位決定戦を戦う。
大詰めの10エンドのラストストーン。1点リードで後攻の黄が断然有利だが、赤も粘ってこの形まで持ってきた。赤が勝つためは絶対にスチールが必要だが、黄が勝つ道筋は?
黄はヒットロールでナンバー1を狙ったが、惜しくも寄り切らず赤が1点スチール。同点になってエキストラエンドに突入した。
この場面、黄はドローで中央に置けば1点取ってこのエンドで勝てたかもしれない。しかし、もしショートしたりスルーしたりすれば赤の2点スチールになって、一気に逆転負けになってしまう恐れがある。1つテイクアウトしておけば悪くても1点スチールで済む。1点スチールだとエキストラになってしまうが、そこでも後攻になるのでまだ黄が十分有利。勝ち急がず、最悪の道を避ける選択をした。
試合はエキストラエンドで後攻・黄のスウェーデンが1点取って、狙いどおりの展開で勝利した。
動画
ところで、日本選手権に引き続き、世界選手権でもNHK特設サイトが開設されています(日本選手権のサイトを上書きする形ですが)。ただ、日本選手権の時は全出場選手の写真とプロフィールが掲載されていたのに対し、今回は日本以外のチームは選手名の掲載すらないので、日本選手権のときと比べると薄い内容だなあと思って見ていました。
ところが、SC軽井沢クラブの各選手のプロフィールを見たら、インタビュー記事が掲載されているじゃないですか! これ、いつの間に載りました? 他では見たことのない話もあって、特に山口剛史のポジション変更に関する話が興味深い内容でした。清水徹郎とのセカンド・サードのポジション変更はうまくはまったように見えたので、チーム内でも納得ずくのポジション変更だと思っていました。山口選手にはそんな悔しい思いもあったのですね。
- カーリング男子世界選手権 2017 | NHK
http://www.nhk.or.jp/curling/ - 山口剛史選手インタビュー | カーリング男子世界選手権 2017 | NHK
http://www.nhk.or.jp/curling/int_jpn_03.html