今回も『危難の港』をプレイし終わっての疑問・感想などを書いていきたいと思います。ネタバレなので未プレイの方は注意して下さい。
ただし、「結局、保存食は持っているの?」の項目はネタバレなしで書きます。これから『危難の港』をプレイするという方にも読んでいただきたい内容となっています。
『危難の港』の謎?
きみは無一文?
チャリスのマーケット広場をうろつく場面。「市場には買いたいもの、特に食べ物がたくさん売られているが、きみは無一文だ」と書かれていますが(247番)、ついさっき泥棒少女から老人を助けたお礼で銅貨4枚もらったんですけど……(298番・26番)。
あと、このあともチャリスの町の中で金貨や銅貨を入手できる場面がいくつかあるけど、お金を得たら何はさておきここに戻ってきて食糧を買うべきでしょう。あなた、食べ物持ってないんでしょ?
トウモロコシを持っていく?
チャリスの正門を出てすぐ、こちらに向かって疾走してくる馬車を避けるかどうかの選択(64番)。『盗賊都市』の名シーンであるアズール卿の馬車を彷彿とさせる場面。いずれにせよトウモロコシ畑に転がり込んで、ついでにトウモロコシを盗み食いするのだが、避けないで、かつ運だめしに失敗した場合だけ、なぜかトウモロコシ3本を後のために残すという描写があります(361番)。これは、後で食べるために持っていくという意味ですよね? このトウモロコシは、いつでも使える体力点が1点回復するアイテムという解釈で良いでしょう。
ここの運だめしは失敗しても金貨か銅貨を数枚失うだけなので、失敗した方がトウモロコシを持っていけるぶん有利かも?
ゾンビとの戦闘?
199番のゾンビとの戦闘。323番で運だめしに失敗した結末を考えれば、この戦闘も1ラウンドでも負けたらデッドエンドでもいい気がするけど……。265番の疫病にかかった魔女との戦闘では容赦なく1ラウンド負けでデッドエンドになるのに。
運命の二択?
あなたは洞窟トロールの罠に捕らえられるデッドエンド(157番)を何回食らいましたか? 自分は1回で済みました(エッヘン!)。*1
これ、1回も食らわなかった人どれくらいいるんだろう?
「やった!」と思ったのに:その1
ノルグルとの遭遇で「羊の目玉の瓶」を使う選択肢がある(292番)。羊の目玉の瓶は229番で入手できる5つの瓶の1つで、無条件で持っていけるのは5つのうち1つだけ(2つ目以降は所持品と交換)。その1つに、自分は初見で「羊の目玉の瓶」を選んでいました! 5分の1を引き当てて「やった!」と喜んでいたら、体力点マイナスを食らうだけのアイテムだった(´・ω・`) なにこれ……。そもそも、ノルグルって何ですか?
巨大な溶岩ワーム戦で運だめしをすると?
巨大な溶岩ワームとの戦闘(336番)。技術点9・体力点9で「きみが戦闘ラウンドで勝つたびに、巨大な溶岩ワームは体力点を二点ではなく一点失うだけですむ」という特殊能力を持つなかなかの強敵。
ですが、この戦闘でこちらの攻撃が当たったときの運だめしに成功した場合は、1点+2点で3点のダメージを与えられるという解釈でいいよね? 戦闘での運だめしは「成功(幸運)すれば、敵の体力点からさらに二点引く」というルールで、巨大な溶岩ワーム戦では運だめしについては言及されていないのだから。
巨大な溶岩ワームは塩を持っていれば無傷で突破できるが、塩を入手するには一発デッドエンドの危険を冒さなければいけない。よって、できれば巨大な溶岩ワームには塩なしで勝ちたいので、この解釈は重要。
追記:この解釈をしたせいで、のちに『アランシアの暗殺者』で苦しむことになります……。
ここの一発デッドエンドはきつい
その塩を入手するためには、95番の技術ロール(サイコロ2個で技術点以下を振れば成功)に成功して山男と遭遇する必要があります。しかし、この技術ロールに失敗すると一発でデッドエンドになります。これは厳しすぎると思う。ここは体力点-6くらいで手を打ってほしかった。一発デッドエンドの危険は冒せないので、ここはスルーせざるを得ない。
すると、影響の1つは、先ほども書いたとおり巨大な溶岩ワーム戦が自力になってしまうこと。これも大きな影響ですが、実はもう一つ、弓矢が入手できないので(55番・193番)、最終決戦で悪魔の短剣を持っている意味がなくなってしまうという影響もあります。
最終決戦で悪魔の短剣を使うには、その前に弓矢かフリントロック銃を使う必要があります(296番)。フリントロック銃があれば悪魔の短剣は必要ないので*2、悪魔の短剣を有効に使うには弓矢が必須となります。
95番の技術ロールが一発死である以上、こちらには来ず、弓矢は入手できない。すると、最終決戦で悪魔の短剣を使う機会がないので、悪魔の短剣を買う必要がない(384番)。すると、事前に金のうさぎのお守りを売って金貨10枚を用意する必要がなく(275番)、金のうさぎのお守りを入手する必要がなく(298番)、泥棒少女を捕まえる必要がない(387番)……と、序盤の面白いイベントの数々が、ゲーム的にはスルーするべきイベントになってしまう。もったいない。
ご機嫌のハカサン?
倒した丘トロールの袋から、金貨3枚と銀のボタン2つを発見して「手始めにということね!」とご機嫌のハカサンだが(102番)、これは自分が総取りしていいのでしょうか? ハカサンと分ける方が自然な気がするけど。まあ、丘トロールは2体いたから、ハカサンはそちらの方から何か見つけたということかな?
主人公のセリフ?
同じく102番。ハカサンからスカルクラッグで何を見つけたか聞かれて「鉄の箱で見つけた木箱だ」と答える“きみ”。珍しく無色透明の主人公がしゃべる場面。
ハカサンもそばで戦っているので?
ウォーホークとの戦闘(24番)。ハカサンと同行している状況なので、2対1の戦闘となる。敵側が2体の戦闘はFFではよくあるが、こちらが2人というのは珍しいかも。
ここの戦闘ルールの解釈がちょっと迷う。本文ではこう書かれています。
ハカサンもそばで戦っているので、きみは各戦闘ラウンドで二回攻撃することができる(訳注:ハカサンの分ということで、二回攻撃力合計を振る。敵が両方上回っていても、敵からのダメージはどちらか一回のみ)。
なお、ハカサンの技術点は示されていません。
訳注を除いて考えると、「二回攻撃することができる」と言われても、FFの戦闘ルールは攻防一体だから、2回目の攻撃をして勝っていたらダメージを与えるが、負けていたらダメージを受けるのでは、通常の1ラウンドの処理を2回行っているだけでまったく意味がない。
訳注の「敵が両方上回っていても、敵からのダメージはどちらか一回のみ」を文字通り解釈すると、2回とも負けた場合はダメージが1回で済み、1勝1敗の場合は敵・自分ともダメージ1回。つまり、2回とも負けた場合だけ有利に働くということになります。しかし、ウォーホークは技術点8の敵なので2回とも負けることはあまりない。大して有利になっていないような……。
1回目の攻撃力は通常通り処理して、2回目の攻撃力は負けていてもダメージを受けない、と解釈するのが妥当かなあ?
あの悪役が帰ってきた!
ホーレス・ウォルフの今際のことばで明らかになる、ザンバー・ボーンが復活しようとしているという衝撃の事実、何ですか? よく知りませんが(367番)。
ザンバー・ボーンと言えば、悪役の格としては、オルドラン・ザゴール、バルサス・ダイア、ザラダン・マーの「悪魔の3人」にも劣らないはずなのに、初登場の『盗賊都市』でポート・ブラックサンドという街の探索が面白すぎて、ラスボスであるザンバー・ボーンは「影が薄い」「蛇足だ」「アズール卿の方がはるかに魅力的」と散々な言われようで、自分も書いたし、Wikipediaにも書かれているという袋だたき状態になっていましたが、ここに来て復活。復活まで34年かかりました*3。しかも、アズール卿はザンバー・ボーンのしもべであるという。これまで散々コケにされてきたザンバー・ボーンの(リビングストンの?)執念を感じる設定ですね。
「やった!」と思ったのに:その2
ダークウッドの森で胞子球と遭遇する場面で、『火の根の液』を使う選択肢がある(252番)。『火の根の液』は330番で入手できる7つの瓶の1つで、7つのうち3つしか入手できない。しかし自分はこれを初見で選択していた! 運だめしにも成功して「やった!」と喜んでいたら、これを使うと運だめし一発でデッドエンドになる危険を冒すはめになるだけというとんでもないトラップアイテムであることが後に判明した(´・ω・`) なにこれ……。
どっちにしろぬか喜び?
ツリーハウスで見つけた木箱を開けるかどうかの選択(258番か388番)。「カタカタ鳴っている」という表現が212番の毒ガスの罠付きの箱と同じなのでスルーするべきと思いきや、あえて開けてみると竜の牙といういかにも重要そうなアイテム入手と思いきや、使用箇所が1つもないという無意味アイテムだった。なんだこりゃ……。
オンクスって何者?
【炎蛇の指輪】を追ってカオス・ウォリアーのクラッシュを追跡するする際の重要人物、ラルゴの村のオンクス。ただの小さな村の船頭かと思いきや、怒らせると技術点-2・運点-1という強烈な呪いを掛けてくるとんでもない呪術師?だった(170番)。癒しのポーションにしろ、『幸運のサイコロ』にしろ、ものすごいマジックアイテムも平然と扱っているし。オンクスって何者……? ラルゴの村って何なの……?
原点を超えてもいいか?
ヤズトロモの魔法で能力を増強してもらえるシーン(14番)。ここはさすがに現在値とともに原点も上がるという解釈でいいよね? 「増加させる」というのはほかの箇所ではない表現だし……。
マンゴの航海
ブラック・ロブスター亭での一幕(129番)。いくらマンゴと意気投合したからって、そのまますぐに航海に出るっていくら何でも脱線しすぎだろう……。何のために金貨10枚も使ってポート・ブラックサンドに来たのか思い出せ! アランシアの危機だろう。それも、結構急を要する。
そして、出航後1時間で嵐に遭うマンゴの運のなさよ……。
クァグ・シュグスとの戦闘のルール解釈
クァグ・シュグスとの戦闘(11番)で毒剣を持っていた場合の技術点+3をどう解釈するか。毎度おなじみの、技術点を加えるという指示で原技術点を超えることができるかというお話。
毒剣を持っている場合は「技術点を三点加える」(337番)と書かれているが、毒剣を持っていない場合は「攻撃力を四点減らす」(202番)と書かれている。202番で減らすのは攻撃力と書いているのだから、337番で加えるのも攻撃力でいいはずなのに、あえて技術点と書いている。よって、ここはルール通り原技術点を超えることはできない、と自分は解釈しました。能力値的にはこれでも勝てますし。
1つの段落が長い
原文がそうなのかもしれないけど、1つの段落が長い項目が多すぎませんか? 14番、272番、322番、333番など、文章が1ページ以上にわたって続くのに、すべて1つの段落になっている項目がいくつもある。特に322番は目がくらくらする。1番、6番、132番など段落分けしている項目もあるのに。
いらないアイテムが大量に出てくる?
『危難の港』はとにかく登場するアイテムの数が多い。実に89種類ものアイテムが出てきます(数え方にもよりますが)。しかも、まったく役に立たないアイテムが多い。およそ半数は、マイナス効果を含めても、使い所が1回もないアイテムです。*4
こうなると、アイテムの入手をアドベンチャーシートに記入するだけでも大変です。確かに自分は以前、「プレイヤーが管理するものでも、能力値やアイテムなどなら記録すること自体に楽しさがあるので多少面倒でも気になりません。」と書いたことがありましたが、いくら何でもこれは……*5。途中から、あらかじめアイテムリストを作っておいて、入手したら○を付けるという方法でプレイしました。
しかし、プレイしているうちに納得しました。この面倒さは狙いだったんですね! つまり、「持っているだけじゃ使えねーだろ?」ということが言いたいのだと。そのアイテムを入手したことを把握して、それを覚えていて、いざというときにサッと取り出せないと意味がないだろ、と。
入手したアイテムをザックにしまって(記録して)、必要なときにそれを取り出す(アイテム欄から探し出す)のもゲームのうち。重要アイテムの入手の記述が、ほかの重要なそう情報と混じって本文中にさらっと出てきたりする。その記述を見落としたら、そのアイテムが視界に入ったのに見落とした、あるいはきちんとザックにしまわなかったということ。そのアイテムを持っているはずなのに大量の記録から探し出せなかったら、あるいはそれがあれだと分からなかったら、そんな雑多なしまい方をしたあなたが悪い。
すでに持っている本なのに、それを忘れていて、あるいは家の中で見つけられなくて、もう一度買ってしまうなんてよくあることじゃないですか(^_^;) 『危難の港』のアイテム管理の面倒さは、この感覚をゲームブック上で再現したものと受け取りました。
結局、保存食は持っているの?(ネタバレなし)
以前書いた、「『危難の港』で保存食を持ってスタートするか問題」。要するに――ルールには保存食を10食分と魔法のポーションを持っていると書かれている。しかし、本文を読んでいるとどう見ても食糧を持っているようには見えない。また、パラグラフ1番で「きみ」は所持品を確認しているが、魔法のポーションも持ってなさそう。さて、保存食と魔法のポーションを持っていることにするのかどうか――という問題です。
安田均先生は保存食を持ってスタートするのはイージーモード。保存食なしでスタートするのがハードモードとの見解です。「ファイティング・ファンタジー・コレクション~レジェンドの復活」のセットに含まれている解説書『FFシリーズの復活』には以下のように書かれています。
ただ、最初から食糧やポーションなどの所持品をいつも通り持っているとちょっと楽かなという部分もあるので、慣れた人は無一文の主人公に習って、持ち物ナシからはじめるのも一興かもしれない。
確かに『危難の港』は、これまでのリビングストン作品のように技術点12でないと無理とか、サイコロ運一発でデッドエンドという箇所は(そんなに)なく、保存食なし・魔法のポーションなしでも任務達成できる内容となっています。物語性も高いゲームブックなので、保存食なし・魔法のポーションなしで始めて無一文主人公の気分を味わいつつプレイするのも楽しいと思います。
しかし自分としては、ルールに書かれているとおり、保存食あり・魔法のポーションありでプレイすることを推奨したいです。というのは、先ほども少し書いたとおり、本作はリビングストン作品にしては珍しく、低い技術点でも任務達成できるようになっているからです。技術点10なら十分、技術点9でもまずまずクリアできる難度です。それなのに、高い技術点にものをいわせてしまうのはもったいない。ただし、技術点が低いとどうしても厳しい場面があるので、そこを保存食の体力点回復を使って何とかする。このギリギリ感を味わってほしいのです。
というわけで『危難の港』の推奨能力値は、
- 技術点:9
- 体力点:24
- 運点:10
- 保存食あり・魔法のポーションあり
とします。体力点と運点はもう少し低くても任務達成は可能だと思いますが、やや厳しい場面もあるので。これでも十分スリリングです。保存食なし・魔法のポーションなしの場合は技術点は最低10、できれば11ないと厳しいでしょう。
保存食については、下記のブログで『食料の代わりに塗ることで体力4点を癒せる膏薬10回分』を持っているという独自設定が提案されていたので、それを採用しましょう。魔法のポーションについても、言うまでもなく持っているということで。やっぱりゲーム的には、プレイヤーが任意で使えるアイテムは多い方が面白いですよ。
ところで……。
主人公とハカサンはなんでダークウッドの森に向かったのだろう?
プレイ記録(Twitter)
『危難の港』
? kouy (@y_koutarou) September 1, 2022
14回目:任務達成!
14回目と言っても、“クイックリスタート”で途中からやり直しているので実質的には4回目ですけど。
序盤は地に足のついたせせこましい話かと思いきや、一転アランシアを救う冒険に発展。ゲームブックにしては珍しく?友好的な人物が多く、正統派の冒険物語。 https://t.co/FP2zxEYhRA
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*1:【ネタバレ注意!】1回食らって、“クイックリスタート”でなかったことにして進めたがノルグルに負けて、最初からやり直したところで気がついた。
*2:鉛の弾丸の予備は必ず持っているはずだし、そもそも技術点12あれば1発目を外さない。
*3:原書の出版年は、『盗賊都市』は1983年、『危難の港』は2017年。
*4:『盗賊都市』でザンバー・ボーンを倒すために必要だった3つのアイテム、『ロータスの花』の瓶(蓮の花)(330番)、白髪のロケット(老魔女の髪)(51番)、黒真珠(163番)が出てくるのでキーアイテムかと思いきや、どれもまったく使い所がないという……。
*5:この文をリビングストンが目にして真に受けたというわけではないでしょうが……。