歩行者はどこを歩く?

 前回に引き続き自転車の話をもう少し。「自転車で車道の左端を走るぞ!」と固く決意して走り始めると、その決意をぐらつかせるのが車道の左端にある2つの“障害物”の存在です。

y-koutarou.hatenablog.com

駐車車両を避ける技術は必須

 障害物の1つは駐停車している車です。道路の左端にはとにかく違法駐車している車が多い。車道の左端を車がふさいでいると、自転車は右の方に出て行かざるを得ません。車道の左端を走っている限りはそれほどの危険は感じないのですが、止まっている車を避けて右に出ようとすると途端に大きな恐怖を感じます。

 まず、後方を振り返って車などが来ないことを確認します。その後、十分手前からゆっくりと右側に出ていきます。止まっている車の陰から人が飛び出してくるかもしれないし、ドアが突然開くかもしれません。したがって、止まっている車からは十分な距離を取りたいところですが、そうすると車線をはみ出してしまうこともあります。片側一車線の場合は対向車にも注意しないといけません。飛び出す人や突然開くドアに対応するために速度を落としたいところですが、後ろから車が追いついてくると速度も必要になります。片側二車線以上ではみ出さなければならないときは、中途半端にはみ出さずはっきりはみ出した方が良いと思います。止まっている車が大型車だと、対向車が来ているか、止まっている車がその1台だけなのか連なっているのか見通しにくい。止まっている車が突然動き出すこともあります。とにかく神経を使う状況になります。こんな怖い思いをするくらいなら歩道を走った方がましだと思うこともありました。

 とはいえ、これはある程度仕方ないのかな、とも思います。違法駐車は論外でバンバン取り締まっていただきたいです。しかし、違法駐車が無かったとしても、道路の左端に止まっている車がゼロになるということはないと思います。そういう状況は多かれ少なかれ遭遇することになるので、「道路の左端に止まってしている車を安全に避ける技術」は、自転車に乗る人が身につけなければいけない技術である、ということになると思います。バックミラーを付けるのもいいですよ。

車道上には歩行者がいる

 車道の左端を走る上でのもう一つの障害物が、歩行者です。車道には歩行者がたくさんいます。『新・自転車“道交法”BOOK』は良い本ですが、納得いかないのが99ページの記述です。そこには次のように書かれています。

考えたら、私はこれまでベルを鳴らしたことがない。法律で決まっているのでベルを付けているが、まったく無用の長物である。使う場面に遭遇しなかったのが幸いなのだが、ホントにいるのかなと首を傾げないではいられない。

ベルを鳴らしたことがないって本当ですか? 自分は鳴らしたくなる場面によく遭遇します。もちろん、歩道でチリンチリン鳴らして歩行者を蹴散らす、なんてことはしませんよ。使うのは車道にいる歩行者に対してです。

 歩道が混んでいるわけでもないのに、縁石から降りて車道を歩いている人がいます。横断歩道のない場所で車道を横断する、しかも、車が切れるタイミングは注意して見ているのに、ちょうど自転車にぶつかるタイミングで横断し始める人がいます。信号待ちで、歩道の端ギリギリに立つのはまあいいけど、完全に車道に出て立っている人がいます。道の両側に路側帯のある道路で、路側帯がふさがっているわけでもないのに、左右の路側帯は開けて車道の中央に3人横に並んで歩いている人がいます。何なのこの人たち。これらの歩行者に対してベルを鳴らしてはいけませんか?と憤るわけです。

 これは、歩行者にとっても「自転車は車道の左端を走る」という意識がないのが原因だと思います。自転車は歩道を走ると思っているので、すると車道の左端は何も通らない場所だから、そこを歩いたり立っていたりしても問題ないと思ってしまう。車道の車には注意するけど、自転車が車道を走るという意識がないから、車道の自転車なんか注意しようとも思わない。「自転車は車道の左側」というルールは、自転車に乗る人だけでなく、すべての人に意識づける必要があるのだと思います。

歩行者の交通ルールって知ってる?

17訂版 執務資料 道路交通法解説

 そんな風に考えたりもするのですが、少し冷静になって自分のことを考えると、自転車の交通ルールを知らなかったこともさることながら、歩行者の交通ルールも知らないな、ということに気がつきました。本当に歩行者は道路の横断はしてはいけないの? 歩道がある道路で車道を歩くのはダメなの? 路側帯ある道路だったら? また、小学生のころ「道路の右側を歩きましょう」と教わった覚えがありますが、これは日本一守られていないルールのような気がします。そもそも、「右側」とは何に対する右側なのか。道路全体? 歩道の中?

 というわけで少し調べてみました(以下の条文はすべて道路交通法です)。

歩行者は右側通行?

 歩道も路側帯もない道路では右側通行(10条)。歩道や路側帯が道路の片側にある場合は左右に関係なくそちら側(10条2項)。両側にある場合はどちらでも可。道路の右側の歩道や路側帯を使う義務はない。また、歩道や路側帯の中で右側を通るという法律はない。

 「歩行者は右側」というのはかなり限定的な話のようですね。日本一守られていない法律であることには変わりないと思うけど。

(通行区分)
第十条  歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

2  歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。

一  車道を横断するとき。
二  道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。

歩道や路側帯のある道路で車道を歩いてもいい?

 ダメ。「道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。」はOKだけど(10条2項2号)、それ以外はダメ。歩行者は、歩道があるなら歩道内、路側帯があるなら路側帯内を歩く必要がある。

 これは思っていたとおり。意外な部分はありません。しかし、実際はかなり守られていないのは先ほども書いたとおり。

歩行者は車道を横断してもいい?

 「横断禁止」と書かれている場所は横断不可(13条2項)。車のすぐ近くで横断するのは不可(13条1項)。横断歩道が近くにあるときは横断歩道を使う必要がある(12条1項)。斜めに横断するのは不可(12条2項)。

 車側から見ると(自転車も同じ)、横断歩道があるところはもちろん歩行者優先。横断しているときだけではなく、横断しようとしているときも歩行者優先(38条1項)。横断歩道のない交差点でも歩行者が横断しているときは歩行者優先(38条の2)。横断歩道もなく交差点でもないところでも車側が歩行者と安全な間隔を保つ必要がある(18条2項)。

 これは意外な結果。歩行者が車道を横断できない場合を4つ挙げましたが、逆に言えば、これ以外の場合は車道を横断できるということです。かなりの場合で横断して良いことになる気がします。車のこないタイミングを見計らって道路を歩いて横断するのはOKなんですね。それに、交差点なら横断歩道がなくても歩行者優先なんですね。本当にこれでいいの?

 まあ、車側も横断歩道で横断しようとしている歩行者がいるときに、必ず一時停止して歩行者を優先させているかと言われればそうでない光景もよく見ますけど。これからは、車道を歩いている歩行者に文句を言うからには、横断歩道では絶対に歩行者を優先させよう、と反省しました。

(横断の禁止の場所)

十三条  歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。

2  歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。


(横断の方法)

第十二条  歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。

2  歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。


(横断歩道等における歩行者等の優先)

第三十八条  車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。


(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)

第三十八条の二  車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。


(左側寄り通行等)

第十八条 2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。

参考サイト