『美術手帖』に突然掲載された「真夜中をさまようゲームブック」

 『美術手帖』2015年10月号に突然ゲームブックが掲載された、ということを「冒険記録日誌」読んで知りました。というわけで読んでみました。

 内容は、深夜に帰宅した主人公が玄関の鍵をなくしていたことに気づき、一晩の居場所を求めて深夜の街をさまようというもの。難しいルールはなく、基本的に選択肢を選んで行き先のパラグラフを決めるだけです。注意書きにはメモを取ると良いと書いてありますが、自分はメモは取らずにプレイしました。持ち物や行動記録は記憶で何とかなる範囲だと思います。すぐにデッドエンドになる選択肢もあるのでどのパラグラフをたどってきたかわかると便利は便利ですが、指セーブを活用すれば大丈夫でしょう(^_^;)

 序盤で1回デッドエンドになった以外はすんなり“(了)”まで読み進めることができました。しかし、この結末は事件の真相が最も分からない結末なんですね。最初から、今度はすべてのパラグラフを読むつもりでもう一度読みます。初回は公園をスルーしたし……。パラグラフ番号の表記が○と□に分かれているのは何か意味があるのかと思ってメモしながら解析して、半分くらい進んだあたりで単に偶数と奇数で分けられていることに気がついた。全部で2時間くらいで読み終わりました。

 このゲームブックでは、ランダム要素として「100ページ目以降を無作為に開いて、そのページの2桁目が奇数か偶数か」という乱数が使われています。なんで100ページ目以降なんだろう? 雑誌自体が全部で220ページくらいで、このゲームブックが掲載されている部分が100ページくらいなので雑誌の後半を開くことになる。しかし、172~3ページの間に綴じ込み冊子があるので開きにくい。実質50ページくらいの中から開くことになる。「2桁目」ではなく「十の位」を見ることにすれば良いのでは? それなら90ページ以上の中から開く場所を選べる(そこで1桁のページを開く人はきらいです)。

 このゲームブックを書いた津村記久子という方は、芥川賞など数々の賞を受賞している作家だそうです。文章の良さはもちろんですが、複数の結末を読むと事件がつながる感じとか、デッドエンドになる選択肢の作り方(短編なので唐突感は否めませんが)やデッドエンドになった場合の理由の説明があって理不尽さをあまり感じないところなど、ゲームブックとしてもセンスが良いと思いました。これならもっと本格的なゲームブック作品も読んでみたいです。

 それにしても気になるのが、なんで『美術手帖』にゲームブックが掲載されたんでしょうね? 『美術手帖』という雑誌は今回初めて手に取りました。「普段は普通の短編小説が掲載されているページなのかな?」と思いましたが、図書館で前後の号をいくつか読んだところ、小説の掲載自体がそれほど頻繁にあるわけではないようです。ゲームにも小説にもそれほど関係が深いとは思えない雑誌での突然のゲームブックの掲載。雑誌側の要望なのか、作家側の意向なのか。いずれにせよ、次があってほしいです。