『真夜中をさまようゲームブック』
『美術手帖』2015年10月号に突然ゲームブックが掲載された、ということを「冒険記録日誌」読んで知りました。というわけで読んでみました。
- 冒険記録日誌 2016年05月22日(日) 真夜中をさまようゲームブック(津村 記久子/美術出版社)
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=79672&pg=20160522 - 美術手帖|株式会社美術出版社
http://www.bijutsu.press/books/magazine/bt/ - 美術手帖 2015年10月号 春画 | 株式会社美術出版社|アートを社会に実装させる
https://www.bijutsu.press/books/1358/
内容は、深夜に帰宅した主人公が玄関の鍵をなくしていたことに気づき、一晩の居場所を求めて深夜の街をさまようというもの。難しいルールはなく、基本的に選択肢を選んで行き先のパラグラフを決めるだけです。注意書きにはメモを取ると良いと書いてありますが、自分はメモは取らずにプレイしました。持ち物や行動記録は記憶で何とかなる範囲だと思います。すぐにデッドエンドになる選択肢もあるのでどのパラグラフをたどってきたかわかると便利は便利ですが、指セーブを活用すれば大丈夫でしょう(^_^;)
序盤で1回デッドエンドになった以外はすんなり“(了)”まで読み進めることができました。しかし、この結末は事件の真相が最も分からない結末なんですね。最初から、今度はすべてのパラグラフを読むつもりでもう一度読みます。初回は公園をスルーしたし……。パラグラフ番号の表記が○と□に分かれているのは何か意味があるのかと思ってメモしながら解析して、半分くらい進んだあたりで単に偶数と奇数で分けられていることに気がついた。全部で2時間くらいで読み終わりました。
このゲームブックでは、ランダム要素として「100ページ目以降を無作為に開いて、そのページの2桁目が奇数か偶数か」という乱数が使われています。なんで100ページ目以降なんだろう? 雑誌自体が全部で220ページくらいで、このゲームブックが掲載されている部分が100ページくらいなので雑誌の後半を開くことになる。しかし、172~3ページの間に綴じ込み冊子があるので開きにくい。実質50ページくらいの中から開くことになる。「2桁目」ではなく「十の位」を見ることにすれば良いのでは? それなら90ページ以上の中から開く場所を選べる(そこで1桁のページを開く人はきらいです)。
このゲームブックを書いた津村記久子という方は、芥川賞など数々の賞を受賞している作家だそうです。文章の良さはもちろんですが、複数の結末を読むと事件がつながる感じとか、デッドエンドになる選択肢の作り方(短編なので唐突感は否めませんが)やデッドエンドになった場合の理由の説明があって理不尽さをあまり感じないところなど、ゲームブックとしてもセンスが良いと思いました。これならもっと本格的なゲームブック作品も読んでみたいです。
それにしても気になるのが、なんで『美術手帖』にゲームブックが掲載されたんでしょうね? 『美術手帖』という雑誌は今回初めて手に取りました。「普段は普通の短編小説が掲載されているページなのかな?」と思いましたが、図書館で前後の号をいくつか読んだところ、小説の掲載自体がそれほど頻繁にあるわけではないようです。ゲームにも小説にもそれほど関係が深いとは思えない雑誌での突然のゲームブックの掲載。雑誌側の要望なのか、作家側の意向なのか。いずれにせよ、次があってほしいです。
2020/07/31追記:『サキの忘れ物』に収録されました
その後、2020年6月29日発売の『サキの忘れ物』に「真夜中をさまようゲームブック」が収録されました。
- 津村記久子 『サキの忘れ物』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/331982/ - 冒険記録日誌 2021年07月31日(土) サキの忘れ物(津村 記久子/新潮社)
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=79672&pg=20210731 - 「何でも書けるし、何でも書いてみようと」 津村記久子さん新刊「サキの忘れ物」語る - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200701/k00/00m/040/213000c - 会社員の〈私〉は窓から身を乗り出して……津村記久子『サキの忘れ物』で発揮された作家性|Real Sound|リアルサウンド ブック
https://realsound.jp/book/2020/07/post-592464.html - 書評・エッセイバックナンバー | 波 -E magazine Nami-|Shincho LIVE!(新潮ライブ!)| 新潮社のデジタルコンテンツライブラリー ※津村記久子傑作短編集 津村記久子『サキの忘れ物』 福永信
https://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2020/07/202007_01.php - 津村記久子「サキの忘れ物」 | レティシア書房 - 古書・ミニプレス&ギャラリー
http://book-laetitia.mond.jp/blog/2020/07/09/%E6%B4%A5%E6%9D%91%E8%A8%98%E4%B9%85%E5%AD%90%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%81%AE%E5%BF%98%E3%82%8C%E7%89%A9%E3%80%8D/ - 【今週はこれを読め! エンタメ編】"意外性の作家"の短篇集〜津村記久子『サキの忘れ物』 - 松井ゆかり|WEB本の雑誌
http://www.webdoku.jp/newshz/matsui/2020/07/15/125249.html - 【書評】『サキの忘れ物』物語に仕込まれた空白 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/life/news/200823/lif2008230017-n1.html - 『サキの忘れ物』津村記久子著 ちょっとイジワルな短編集 | 47NEWS
https://nordot.app/671837797957583969?c=39546741839462401 - 「今月のプラチナ本」は、津村記久子『サキの忘れ物』 | ダ・ヴィンチWeb
https://ddnavi.com/review/654489/a/ - こんな本読んだことありますか? 『サキの忘れ物』(津村記久子著、新潮社) - わたしの水彩スケッチと読書の旅
https://yaswatercolor.hatenablog.com/entry/2021/09/18/171929 - 津村記久子さん「サキの忘れ物」インタビュー 選ばれるより、自ら選ぶ人生 |好書好日
https://book.asahi.com/article/13553134 - 【第103回】間室道子の本棚『サキの忘れ物』津村記久子/新潮社 | 特集・記事 | 代官山T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
https://store.tsite.jp/daikanyama/blog/humanities/15288-1113480806.html - 『サキの忘れ物』著者、津村記久子さんインタビュー。「別の世界は自分のひと押しで開けると伝えたくて」(クロワッサン online)
https://news.line.me/detail/oa-croissant/6c12ea35ec80 - 「どこにでもいそうな人」を丁寧に描く、津村ワールドを堪能できる短編集|最新刊『サキの忘れ物』 | 本がすき。
https://honsuki.jp/pickup/37203/index.html
『サキの忘れ物』収録の『真夜中をさまようゲームブック』
— kouy (@y_koutarou) July 3, 2020
内容以前に「なぜゲームブックを書いたのか?」「なぜゲームブックが「美術手帖」に掲載されたのか?」という謎があったが、少し触れられていた。
津村さんが「子供の頃に好きだったゲームブック」の作品名が気になる。 https://t.co/isbfWV7WcP
2023/09/04さらに追記:『サキの忘れ物』の文庫版が発売されました
さらにその後、2023年8月29日に『サキの忘れ物』の文庫版が発売されました。
- 津村記久子 『サキの忘れ物』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/120143/ - 大学入学共通テストや麻布中学校の入試問題に採用された短篇を収録! 津村記久子さん文庫最新刊『サキの忘れ物』本日発売。|株式会社新潮社のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001125.000047877.html
『サキの忘れ物』収録の「真夜中をさまようゲームブック」。
— kouy (@y_koutarou) 2023年10月19日
あまりにもゲームオーバーになるので「『美術手帖』版と内容変わってるんじゃねーの?」と思って調べてみた。
ほぼ一字一句同じだった(´・ω・`) https://t.co/Re6mh6c0sG