論理パズルゲーム『ロンパル殺人事件』が面白い

 『ロンパル殺人事件』という論理パズルゲームがあります。かなり古いフリーゲームで、自分がインターネットを触りだしてすぐの頃にずいぶんプレイした記憶があります。先日、久しぶりにプレイしたらおもしろくて、懐かしくて作者のサイトを見たところ、なんと今年の2月に約10年ぶりのバージョンアップをしたばかりではないですか!(軽微なバグを取り除いただけのようですが) 10年周期でこういうゲームがやりたくな習性があるのでしょうか? これも何かの縁だということで、このゲームを紹介します。

『ロンパル殺人事件』のルール 

 ある屋敷で当主の郷田貴文が殺されました。容疑者は当日屋敷招かれていた5人。この5人の容疑者から「○時に自分は××にいて、△△さんを見た」という証言を集めて、犯行時刻と犯人を当てるのが目的です。

 「犯人以外はウソをつかない」「犯人も犯行時刻以外の証言ではウソをつかない」というのがポイントです。これを利用して犯行時刻を絞り込んでいき、証言の矛盾を引き出して犯人を告発します。

 証言の内容は画面に一覧表の形で残っていくので、常に(ほぼ)すべての情報を参照しながら推理することができます。できるだけ少ない尋問回数で犯人を当てると高得点になります。犯行時刻と犯人はランダムで毎回変わるため、何回でも楽しむことができます。

 ルールは次の通りです(説明書からの引用です)。屋敷の見取り図はウインドウの左上に表示されています。黒の間と白の間はつながっていないことに注意してください。

  1. 犯人はひとり。
  2. 犯行時刻には、犯人と生きている郷田(被害者)だけが黒の間にいた。
  3. 犯行後、死体はずっと黒の間にあった。
  4. 各容疑者は、自分のいた部屋と隣の部屋に誰がいて誰がいなかったかを見ることができた。
  5. 黒の間にいた人物は死体があれば見ることができたが、隣の部屋から死体を見ることはできなかった。
  6. 1時間の間に隣の部屋より遠くに移動することはできない。
  7. 犯人以外は、故意と過失とを問わず、ウソをつかず事実を隠さない。
  8. 犯人も、犯行時刻以外では故意と過失とを問わず、ウソをつかず事実を隠さない。
  9. 犯人は、他の容疑者との雑談により、自分が見ていない事実を知っている場合がある。
  10. 被害者がn時とn+1時の間に殺されたとき、n時を犯行時刻とする。n時ちょうどに殺されたということはないものとする。

 それと、説明書には書かれていないですが、犯人のウソの内容は大きく分けて2つしかありません。これ以外のウソはつきません。

  1. 犯人は、犯行時刻に黒の間以外の場所にいたと証言する(必ずする)。
  2. 犯人は、ある人物を犯人に仕立て上げる証言をする(適当なターゲットがいない場合はしない)。
    1. 犯行時刻に黒の間にいなかった人物を黒の間にいたと証言する。
    2. 犯行時刻に黒の間以外にその人物がいたという事実を隠す。

プレイの実例 その1

 では、実際のプレイの例をみながら、ルールとテクニックを説明していきます。画像をクリックすると拡大して表示できます。

 最初は犯行時刻を絞るのが目標です。まず、12時に郷田が生きているか殺されているかを調べます。12時に生きていれば犯行時刻は12時以降ですし、12時に既に殺されていれば犯行時刻は11時以前ということがわかります。

プレイ例1-捜査開始

 12時の中村の証言を取ってみます。12時の中村のマスをクリックして水色にして「尋問」ボタンを押します。

プレイ例1-証言1

 画面下部の白い部分に証言が表示されます。中村自身が黄の間にいたという証言を得られました。これは「(黄の間から見える)藍の間と紫の間には誰もいなかった」という証言でもあります。

 同時に、証言表に証言内容が記号で記録されます。12時の中村のマスの“7A”は「部屋7(黄の間)に中村がいたとA(中村)が証言した」という意味です。7が丸で囲んであるのは、その証言がA自身の証言であったことを示しています。

 実は、この証言だけで11時と13時の中村のアリバイ(=その時刻にその人物が殺したのではない)が成立します。理由は後ほど説明します。マスを右クリック(右ドラッグでも可)すると緑色になります。アリバイが成立したマスを緑にしておくと推理の役に立ちます。

 この証言だけでは郷田が生きているのか既に殺されているのかわからないので、まだこの時刻の尋問を続けます。今度は鈴木に尋問してみます。

プレイ例1-証言2

 鈴木は12時に黒の間にいて、既に郷田は殺されていたと証言しました。犯人であっても郷田の所在・生死についてウソはつかないので、この証言は真実です。したがって、犯行時刻は12時より前です。つまり、12時以降の全員のアリバイが成立します。すべてのマスを緑にするのは面倒なので、ここでは12時の縦1列だけ緑にします。

 犯行時刻は0~11時なので、次は5時か6時に郷田が生きていたかどうかを調べるのがセオリーです。6時の中村の証言を取ってみます

プレイ例 1-証言3

 またも郷田は既に殺されていたという証言でした。6時以降の全員のアリバイが成立します。次は3時の中村の証言を取ってみます。

プレイ例1-証言4

 郷田を橙の間で見たという証言を得られました。郷田は黒の間にいるときに殺されますから、この時刻は犯行時刻ではありません。したがって犯行時刻はこれより後です。しかも6時より前。つまり4時か5時です。だいぶ絞れてきました。

 ここで、中村が見たと証言した鈴木・市川・島谷の3人のこの時刻のアリバイが成立します。なぜなら、中村の証言が正しいとすれば、この3人はこの時刻に黒の間にはいなかったのだから犯人ではありません。中村の証言がウソだとすれば、中村が犯人ですから3人は犯人ではありません。*1

 さらに、鈴木と島谷の2人については1時間前と1時間後のアリバイも成立します。何故なら、1時間で隣の部屋より遠くへ移動することはできないので、角部屋にいたこの2人は1時間前と1時間後に黒の間にいることができないからです。これを「角部屋のアリバイ」と呼びます。「角部屋のアリバイ」は尋問時刻以外のアリバイを成立させることができるので、とても役に立ちます。

 「角部屋のアリバイ」は証言者自身の証言であっても成立します。先ほど12時のときに保留した、中村の11時と13時のアリバイが成立した理由がこれです。12時の中村の証言が正しいとすれば同じ理屈ですし、証言がウソだとすれば12時が犯行時刻ですから11時や13時は犯行時刻ではありません。

 さて、犯行時刻は4時か5時に絞られています。次は4時の島谷の証言を取ります。

プレイ例1-証言5

 島谷は、郷田と中村が黒の間にいるのを目撃していました。島谷は4時のアリバイはすでに成立しているので、この証言は真実です。「犯行時刻には犯人と郷田だけが黒の間にいる」という条件と一致しています。この時刻が犯行時刻だとすれば犯人は中村です。しかし、犯行時刻が5時という可能性もまだあるので、確定させるために中村の証言を取ります。

プレイ例1-証言6

 証言が矛盾しました。中村は「自分は橙の間にいた」と証言しましたが、さきほど島谷は「中村は黒の間にいた」と証言しました。島谷の証言は正しいので中村の証言がウソです。したがって「犯人は中村。犯行時刻は4時」で確定しました。

プレイ例1-告発

 さあ、告発です。中村の4時のマスをクリックして水色にして「告発」ボタンを押します。

プレイ例1-告発成功

 見事正解でした。たった6回の尋問で告発に成功しました。

プレイの実例 その2

プレイ例2-証言1-3

 まず、12時の証言を鈴木・市川・山野の順番で取りました。山野が郷田の死体を見ているので、犯行時刻は12時より前であることが確定しました。アリバイが成立したマスを右クリックして緑にしておきます(12時以降はすべてアリバイ成立していますが、省略します)。「角部屋のアリバイ」により11時のアリバイが成立した人物がいるのが後に生きます。次は6時の証言を取ります。

プレイ例2-証言4-6

 6時の証言を鈴木・市川・山野の順番で取りました。アリバイが成立したマスを緑にします。白の間にいた鈴木は2時間前から2時間後にかけての5時間のアリバイがすべて成立します。

 さて、この時刻は3人の証言を取りましたが、まだ郷田を見たという証言が得られません。この3人が見ていた部屋は、鈴木が部屋1・2・3、市川が部屋5・7・8・9、山野が部屋1・4・5・7です。総合すると、部屋6を見たという証言が得られていません。もしかしたら、郷田は部屋6にいるのかもしれません。中村が部屋3から部屋6を見ているはずなので、ここは中村の証言を取るべきです(島谷でも同じ)。もし、中村が郷田を見ていなければ、郷田は既に殺されていることが確定します。なぜなら、すべての部屋を誰かが見ているのに誰も郷田を見ていないのは、郷田は黒の間で死体となっているからとしか考えられないからです。

プレイ例2-証言7

 中村が郷田を目撃していました。これで犯行時刻は7~11時に絞られました。もしこの証言が得られなければ、0~5時が犯行時刻である可能性も考慮せざるを得ず(むしろ、その可能性の方が高い)、かなりの無駄足を踏まされる恐れもありました。次は9時の証言を取ります。

プレイ例2-証言8-9

 9時の山野・中村の証言を取りました。中村が郷田を黒の間で見た(他の人はいなかった)と証言しています。この証言は真実でしょうか? この証言がウソで、実は中村はこの時刻に黒の間にいて郷田を殺害していたという可能性はあるでしょうか? 中村が紫の間にいることは山野と中村自身の2人が証言しています。ウソをつくのは犯人だけですから、2人が同じ事を証言したらそれは真実です。したがって、中村のアリバイが成立するので中村の証言は真実です。この時刻は郷田は1人で黒の間にいたので、犯行時刻はこの時刻より後です。つまり、犯行時刻は10時か11時です。

プレイ例2-証言10

 10時の山野の証言を取りました。郷田が紫の間にいたという証言を得られました。実は、この時点で犯人と犯行時刻を特定できます。犯人であっても郷田の居場所についてウソはつかないので、この時刻は犯行時刻ではありません。つまり、犯行時刻は11時で確定します。

 そして、10時の山野自身の証言で、「角部屋のアリバイ」により山野の11時のアリバイが成立します。中村・鈴木・島谷の11時のアリバイは、すでに12時の証言の「角部屋のアリバイ」により成立しています。

プレイ例2-証言10_2

 よって、唯一11時のアリバイがない市川が犯人です

 12時で3回、6時で4回の証言を取るなど序盤は捜査が滞った感じもありましたが、結局は10回の尋問で告発に成功しました。犯行時刻である11時の証言は1つも取りませんでした

『ロンパル殺人事件』の醍醐味

成績表

 犯行時刻と犯人の組み合わせは、24*5=120通りもあります。一見すると何十回も証言を取る必要があるように感じるかもしれません。しかし、慣れると平均10回以内で告発できるようになります。非常に難しい・絶対に特定できないこともありますが、そうなる可能性はかなり低いです。画像は自分の成績です(何回かリセットしていると思いますが)。

 作者のサイトにヒントがいろいろ書かれていますが、それ以外にもさまざまなテクニックがあります。例えば「プレイの実例 その2」で6時の鈴木のアリバイが成立するのはなぜでしょうか? のちに中村の証言などで補強されましたが、鈴木自身の証言だけで成立します。また、「プレイの実例 その1」で犯行時刻が4時か5時に絞られた次に、4時の島谷の証言を取ったのはなぜでしょうか? 運の要素はありましたが、「4時の島谷が役に立つ証言が得られる可能性が一番高い」と思って選んでいます。

 このようなテクニックを駆使して、どの時刻の誰を尋問したら良い証言が得られるかを予想して、尋問数を1回でも減らすよう工夫する。これが『ロンパル殺人事件』の醍醐味です。

*1:もっとも、この時刻は犯行時刻ではないという時点で、この時刻の全員のアリバイはすでに成立していますが。