カーリング日本選手権2019の思い出のシーン

 去る2月11日から2月17日まで、第36回日本カーリング選手権が行われていました。NHKカーリング中継は、昨年は五輪イヤーだったためやや控えめでしたが、今年は例年の連日1日2試合中継の態勢に戻って、特設サイトの情報も充実。インターネットライブ配信も、今年はYouTubeでの配信になって、さらに過去の配信も見られるという、時間がいくらあっても足りない態勢に拍車がかかる(^_^;)

 と言うわけで、今年も自分が印象に残ったシーンを、局面図を交えて振り返ってみます。

女子予選 チーム京都-中部電力

1エンド チーム京都のコミュニケーション

 京都弁だか広島弁だか知らんが、味のあるコミュニケーションを取っているチーム京都。「そだねー」のロコ・ソラーレとはわけが違う(^_^;)

「テイクでねー、曲がってこっち当たって、これが出るかもしれんけー。それじゃったら前置いた方が……。ワンやしな」

 このチーム京都というチーム、2選手はカーリング歴なんと10ヶ月だそうです。平昌五輪でロコ・ソラーレの銅メダルがきっかけで競技を始めて、それから10ヶ月で全国大会に出場して、そのロコ・ソラーレと公式戦で試合をするなんてことが起こるんですね。

女子予選 チーム京都-中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
チーム京都   0 1 0 0 0 0 0 - - - 1
中部電力 2 0 1 2 1 3 1 - - - 10

女子予選 富士急-ロコ・ソラーレ

2エンド 気配り淳子さん

 小穴2投目の投球前。スイープの時につまずきそうな石に注意するように小谷姉に呼びかけるが、小谷姉が全然気がつかず、ちょっといらつく西室w

西室「(ガードの石を指して)優奈、これな、気をつけて。優奈! 優奈! ……有理ちゃんこれ気をつけるように言ってお姉ちゃんに」

4エンド ピンチを救う小穴のドロー

女子予選 富士急(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 4エンド 先攻赤フォース1投目

 先攻富士急フォース1投目。苦しい形だったが、小穴桃里がナイスドロー。曲がるラインを読み切ってガードをの黄をギリギリかわして黄に軽く触れて止まるナイスショット。チームのピンチを救った。

 このあと、ロコ・ソラーレのスキップ藤澤五月がランバックでボタンを狙うが、2投ともガードにかすって失敗。ハウスの中はこの形のまま。このエンド、富士急が1点スチールした。

9エンド 9エンド1点リード先攻の戦術は?

 試合は進んで4-3で富士急の1点リードで9エンド。先攻の富士急は、当然ガードを置くかと思ったが、1投目をハウスに入れてきた。その後もテイク戦模様。これでいいのか富士急!?

 9エンド1点ビハインド後攻の立場で考えると、ブランクにして10エンド1点ビハインド後攻になれば互角。2点取って10エンド1点リード先攻になっても、ブランクの場合と立場が逆になるだけで大差ない。1点取って10エンド同点先攻になってしまうとかなり不利。

 つまり、通常の後攻の目標は「2点取る>ブランク>1点取る」くらいの優先順位だけど、9エンド1点ビハインドの後攻は「2点取る=ブランク>>>1点取る」となる。2点取りのメリットが小さく、しかも2点取りに行って1点しか取れなかった場合の損が大きい。したがって、9エンド1点ビハインドの後攻は、2点取りは狙わずブランクを狙ってくる。

 よって、先攻としてはその狙いを阻止すべく点数の入る勝負に持っていきたい。うまく1点取らせればかなり有利になるし、失敗して2点取られても互角の勝負になるだけ。

 ……ということだと思うのだけど、このエンドで富士急が採った作戦はテイク戦。富士急はどういう狙いだったんでしょうか?

 結局、このエンドはブランクになるのですが、富士急のラスト1投。ここで突然フリーズに行くという手もあったらしい。なるほどー。

y-koutarou.hatenablog.com

10エンド 見応えのある攻防

 最終10エンドで後攻が1点ビハインドという、カーリングで最も際どい展開。

 それぞれのチームのサード、富士急の西室淳子とロコ・ソラーレ吉田知那美がナイスショットの応酬。まず先攻・西室1投目で右からのヒットロールを決めてセンターガードの裏に隠れれば、後攻・吉田知1投目は左からセンターガードをギリギリかわしてその赤をテイク。西室2投目でその黄をテイクして右へロールして再びセンターガードの裏に隠れる。上げた右手を力強く握りしめた西室。

女子予選 富士急(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 10エンド 先攻赤フォース1投目

 しかし、吉田知が再びその赤をテイクして、今度は左にロールしてコーナーガードの裏に隠れて、図の投球前の形に。見応えのある攻防。ここで富士急タイムアウト。西室雄二コーチが降りてくる。

淳子「どうします? あのさあ、一応案としては……」

 淳子、コーチに向かって「あのさあ」って言うなw

 タイムアウト明けの富士急フォース・小穴桃里1投目。ハウス左端の赤から角度を変えて中に転がす作戦。狙い通り少し内側にロールしてナンバー1を取る。

 このショットが効いて、このエンドはロコ・ソラーレは1点しか取れず。4-4の同点でエキストラ・エンド。有利な後攻は富士急が取った。

11エンド 痛恨のスルー

女子予選 富士急(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 11エンド 後攻赤フォース1投目

 富士急フォース・小穴1投目、少しだけ見えている中央の黄を直接テイクに行くが、わずかにスルーしてしまう。痛恨のショット。手前のガードに当たってガード外しになるのはまだ良かったが、スルーは致命的だった。

 このあと、ロコ・ソラーレのフォース・藤澤五月の2投目は、黄のセンターガードの手前やや右にガード。ドローコースもランバックコースもふさぐ狙い通りの位置に置く。小穴2投目は左から複数の石を経由する難しいランバックを狙わざるを得ず、狙いの石に飛ばずロコ・ソラーレ1点スチール。ロコ・ソラーレの勝ちとなった。

 このエンドの富士急はリードの小谷有理沙が2投ともウィックを決めたが、そのあとのショットが続かず、簡単な展開に持ち込めなかった。ここまで有利な試合展開だっただけに、悔しい敗戦になった。

女子予選 富士急-ロコ・ソラーレ
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
富士急 1 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 4
ロコ・ソラーレ   0 2 0 0 0 1 0 0 0 1 1 5

女子予選 北海道銀行-富士急

3エンド 小穴のダブルテイク祭り その1

女子予選 北海道銀行(赤)-富士急(黄) 3エンド 先攻黄フォース2投目

 この試合は富士急のフォース・小穴桃里のダブルテイクが連発した。まず3エンド。

 後攻、北海道銀行のスキップ吉村紗也香の1投目は右にドローして図の投球前の形に。赤1・2を作ったが、もう少し奥まで行って平行近くに置きたかった。距離はあるが赤2つのダブルはある角度が残る。

 そして、すかさず小穴のダブルテイクが炸裂。このエンドをブランクにする。

5エンド 小穴のダブルテイク祭り その2

女子予選 北海道銀行(赤)-富士急(黄) 5エンド 後攻黄フォース1投目

 後攻、富士急フォース・小穴1投目の投球前のやりとり。1つ目の赤に薄く当てるトリプルテイクを狙っているが……。ハウスにはバイススキップの西室。解説は石崎琴美

小穴「7だよね」
西室「うん。7……半でもいいよ、どっちがいい?」
(小声で)
小穴「ちょっとわたし見えないんだよなこっちから」
石垣「まじかいな」
小穴「淳子さんにコールを任せよう(笑)」
石崎「(笑)コールを任せよう……」
実況「(笑)」

 解説も実況さえも笑わせる富士急漫才。しかし、ショットの方は狙いのトリプルテイクを決める! シューターも残して逆に黄が1・2を取る。

 このあと吉村紗也香の2投目のダブルテイクは決まらず、小穴2投目のドローでこのエンド富士急が2点を取った。

6エンド 小穴のダブルテイク祭り その3

女子予選 北海道銀行(赤)-富士急(黄) 6エンド 先攻黄フォース2投目

 ハーフタイムを挟んでも小穴の絶好調は続く。

 先攻、富士急フォース・小穴1投目は、ある程度距離もある上、薄く当てなければいけない難しい角度のダブルテイク。しかし、今日の小穴はこれも決める。

西室「キレッキレだな。キレッキレや」
石垣「来てますねー」

 このエンドをブランクにする。

7エンド 小穴のタップバック

 富士急のセカンド・石垣真央2投目はハウスに入ったところくらいに止めたいドロー。

石垣「ちょっとウェイトないかも」

 最初は短そうだったので西室と小谷有理沙がスイープするが……。

石崎「今のコールだと、3・4と言ってますので、ハウスの前に止まるようなウェイトでしたけども。お、けっこう伸びてますね」
西室「走ってるよー。やり過ぎたわー」

 結局T奥まで行く。

女子予選 北海道銀行(赤)-富士急(黄) 7エンド 先攻黄フォース1投目

 このエンドは、サード2投目を前に北海道銀行タイムアウトを含めて3分以上時間を使う。力の入ったエンドになった。

 そして、今度はテイクアウトではないが、またも小穴のナイスショットが出る。富士急フォース・小穴1投目、左から黄を押して4フットに押し込んで赤にぴったり付ける。

 このあと、吉村1投目は右の赤から中央に飛ばして形を変えるが、バックガードがあるおかげで黄がナンバー1で残る。このまま富士急が1点スチール。スコア5-2となり富士急が優位に立った。

9エンド 流行語?

 試合の方はこのまま富士急が逃げ切ったのだが、ぜひ紹介したい1シーン。

 富士急フォース・小穴1投目を前に作戦会議。

小穴「ただねー……厚い時にちょっとやだなっていう感じ」
西室「うん、こっちにしよう」
石垣「うん、こっちにしよう」
小穴「ステイの方がいい?」
西室「そだねー

 小穴、顔を上げてギロっと西室を睨む。

西室「あの…うん、そう……そうですね」と恥ずかしそうに微笑む西室。

女子予選 北海道銀行-富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道銀行   0 0 0 2 0 0 0 2 0 1 5
富士急 0 2 0 0 2 0 1 0 1 0 6

男子予選 コンサドーレ-札幌国際大学

7エンド 青木と言えばランバック

男子予選 コンサドーレ(赤)-札幌国際大学(黄) 7エンド 先攻黄サード1投目

 札幌国際大学は前年度優勝のteam IWAIの岩井、宿谷、青木の3選手が所属するチーム。team IWAIと言えば、青木豪のランバック。昨年の世界選手権では難しいランバックをビシビシ決めていた

 この試合も2エンドでガードからのランバック・ダブルテイクを決めている青木。迎えた7エンド、先攻札幌国際大学サード青木1投目。またもガードからのランバック・テイクアウトに成功。しかもシューターもコーナーガードになるナイスショット。

 しかし、続く青木2投目では、そのコーナーガードの裏に隠す単純なヒットロールを狙うが、まったくロールせずヒットステイになってしまう。そこでこの一言。

青木「まじランバックしか決まらないんだけど今日」

10エンド 最善手は?

 3-3の同点でコンサドーレ後攻で迎えた10エンド。

 センターガードを置いては外す展開が続く。コンサドーレ清水2投目を前に長い作戦会議。ハウス側に阿部、清水、松村の3人、デリバリー側から谷田が見る。解説は小笠原歩

谷田「ただ、それピールして、次タップされて、あんま抜けない形になるなら良くないな。こっちのフリーズはあるから、やるんだったらこっちは押さえなきゃいけないと思う」
小笠原「いいこと言いますね、谷田選手(笑)」

 ここでも作戦を切り替えずガード外しを選択した。

男子予選 コンサドーレ(赤)-札幌国際大学(黄) 10エンド 後攻赤フォース1投目

 そして、札幌国際大学フォース岩井真幸1投目はドローして(4フットのセンターライン左にかかっている黄)図の投球前の形。コンサドーレタイムアウト取る。タイムアウト時間を終わって、中継がサブチャンネルBS102chに切り替わっても作戦会議は続く。コンサドーレ、フォース松村雄太1投目は速いウェイトでテイクアウトを選択。石がきれいに四方に散っていって、ボタンに黄だけが残る! 札幌国際大学にチャンスが来た。すかさずタイムアウトを取るが、

「ここだな」
「ここだね」
「そこしかない」
「ここしかない」

作戦は5秒で決まって、もちろんセンターガード。ハウス手前の近すぎず遠すぎずいい位置に置けた。松村2投目はわずかに見えている左側からガードをかわして黄を少し押す手を狙うが、ガードにかすってしまってハウスに届かず、札幌国際大学がスチール。札幌国際大学がここまで予選リーグで全勝のコンサドーレを破った。

 コンサドーレ、フォース松村1投目の場面、結果は狙い通りではなかったと思いますが、どこに誤算があったんでしょうか? 狙いの場所に当たったがその後の石の動きが計算外だったのか、ショットがずれていたのか。ずれていたとすればどこに当てたかったのか。ショットのあとに解説の小笠原が「少し松村選手のが厚く当たってしまって」とコメントしているが、実際もっと薄く当たっていたら石はどう動いていたのだろう? そして、スキップ1投目の小さなミスでこんなピンチになってしまうのなら、サード2投目の段階で作戦を切り替えるべきだったのだろうか?

男子予選 コンサドーレ-札幌国際大学
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
コンサドーレ   0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 3
札幌国際大学 0 1 0 0 0 2 0 0 0 1 4

女子予選 ロコ・ソラーレ-北海道銀行

9エンド 藤澤のヒットロール

女子予選 ロコ・ソラーレ(赤)-北海道銀行(黄) 9エンド 先攻赤フォース1投目

 先攻ロコ・ソラーレ、フォース藤澤五月の1投目。左の黄から4フット手前の黄の裏に入るヒットロールを決める。これでロコ有利になった。

 このあと、なんとしても2点以上がほしい北海道銀行は、フォース吉村紗也香1投目でセンターライン上の黄からランバックを狙うが、わずかにずれて赤は動かず、さらにロコ・ソラーレ有利に。吉村2投目のラストストーンは、ハウス右端の赤から角度を変えて中央を狙う難しいショットをやらざるを得なくなる。これもわずかにずれて中央に飛んだシューターの黄はボタン下を通過。ロコ・ソラーレの3点スチール。ここまでクロスゲームだったがだったが、終盤スコアが大きく動いてこのエンドでコンシードになった。

女子予選 ロコ・ソラーレ-北海道銀行
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
ロコ・ソラーレ   1 0 2 0 0 1 0 2 3 - 9
北海道銀行 0 1 0 2 0 0 1 0 0 - 4

女子予選 北海道銀行-中部電力

3エンド 作戦を変えたショットが……

女子予選 北海道銀行(赤)-中部電力(黄) 3エンド 先攻赤フォース1投目

 先攻、北海道銀行スキップ吉村紗也香1投目。ハウス内のセンターライン右の黄のテイクで一度は決まって、投球体勢に入りかけるが……。

吉村「そっちにフリーズも考えたんだけどねー。どうしよう」
近江谷「押えられると思うけど。このあとどうするのかなとは思ったけど」
吉村「あれ2なんだよね」
近江谷「うん。で、……どういう予定だった?」

 投球をやめて吉村がハウスに行って船山弓枝と相談。黄のテイクではナンバー1を取れないので、テイクをやめて左の黄にフリーズに切り替えた。解説は金村萌絵。

金村「ここは2点勝ってるので、テイクアウトしてくるチームもあるとは思うんですが、一歩攻めに出ましたね」

 ナイスショット風だったが、わずかにナンバー1にならず。これが痛かった。

 後攻、中部電力フォース北澤育恵1投目。作戦会議があって、右の黄のタップバックを選択。ナンバー1・2・4を取る狙い通りのショット。

女子予選 北海道銀行(赤)-中部電力(黄) 3エンド 先攻赤フォース2投目

 吉村2投目はナンバー1の黄を直接狙うが、手前のナンバー4の黄に当たって押し込んでナンバー3にしてしまう。痛恨のショット。うつむき加減で渋い顔の吉村。

金村「2点をどうしても防ごうと思うとギリギリ狙ってしまうんですが、2点勝っているというスコアを考えて、悪くても1つ出して、2点は覚悟という気持ちで投げてほしかったですね」

 このあと、北澤2投目はナンバー1に軽く当てるドローで1点追加。中部電力4点のビッグエンドとなった。

6エンド 危険な選択

女子予選 北海道銀行(赤)-中部電力(黄) 6エンド 後攻赤フォース2投目

 先攻、中部電力フォース北澤2投目の段階で、4フットの赤と黄、どちらがナンバー1か中継の画面上からは微妙に見えた。

金村「どちらにせよ、中部電力は赤をテイクしていく必要はあると思いますね」
実況「テイクは、しづらいですか?」
金村「そうですね……。ただ、後ろの黄色も一緒に出てもいいと思えば、比較的簡単にできるとは思います」

 中部電力の選手は黄がナンバー1という確信があるようだ。赤を押すコースを無くしてドローコースも狭める石を置く手を選択し(4フット手前の黄)、図の投球前の形になる。いい位置に置けたが、この選択は危険だった。

 北海道銀行、スキップ吉村のラストストーン。右の黄から横に飛んでシューターをピタッと止めるダブルテイク・ステイを決める。北海道銀行は、ハウス内は黄ばかりの状態からスキップの2投で2点取った。

金村「よくあの状況から2点を取れたなというところなんですが。すばらしいショットが決まりましたね」
実況「中部電力もですね、北澤が与えたプレッシャーは大きかったと思うんですけど」
金村「そうですね。ただ、このダブルがあると思えば、赤のテイクアウトという方が良かったのかなと思うんですよね」

8エンド 「すばらしいショット」

女子予選 北海道銀行(赤)-中部電力(黄) 8エンド 先攻黄フォース2投目

 先攻、中部電力フォース北澤2投目、ボタンの赤をテイクして、じわっと左へロールして隠れるナイスショットを決める。実況が「すばらしいショット」とかみしめるようにように言った。試合後の市川美余のスタジオ解説*1、「美余's チョイス」でもこのシーンが選ばれた。

 吉村2投目はボタンに掛けるしかない厳しいドローだったが、まるでハウスに届かず中部電力1点スチール。ここまでクロスゲームだったが、ここで中部電力が有利になった。試合はこのまま中部電力の勝ち。

 この試合の北海道銀行は、ここで紹介した以外にも良いショットを決めていた――例えば、2エンド、小野寺2投目のダブルテイク。4エンド、吉村2投目のセンターラインをクロスして4フットを狙う狭い範囲のドロー。5エンド、吉村2投目のテイク後わずかにロールしてセンターガードの裏に入り相手に1点を取らせるショット――だけに、3エンドの4失点が悔やまれる。もっとも、この試合の勝敗が逆だったとしても予選リーグの順位に影響はなかったのだけど。

女子予選 北海道銀行-中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道銀行 0 2 0 2 0 2 0 0 1 0 7
中部電力   0 0 4 0 1 0 2 1 0 1 9

女子1位-2位 中部電力-ロコ・ソラーレ

1エンド 2投目は読んでいた

女子1位-2位 中部電力(赤)-ロコ・ソラーレ(黄)1エンド 先攻黄サード1投目

 先攻ロコ・ソラーレ、サード吉田知那美2投目。ヒットロールを決める。赤から内側にロールして、ロール幅も完璧。1エンドから精度の高いショット。吉田知那美はこういう難しめのショットを完璧に決めるシーンが多い。解説は石崎琴美

石崎「2投目はやはり読んでいましたね」

 実は、吉田知の1投目もほぼ同じショットを投げていて、それはヒットステイになっていた。2投目はその情報を元に調整して決めた。

9エンド 投げる順番を間違える

 クロスゲームのまま試合は進み、同点で迎えた9エンド。ここで事件が起きる。

 中部電力がサード2投目をデリバリーするが、石が進んでいる間に解説の石崎琴美が異変に気がついた。

石崎「あれ? 1投早く投げてしまったんですかね。あれ? サードの2投目ですよね、これ」
実況「そうですねえ」
石崎「いま北澤さん投げまし……たね」

 ショットの方は、ボタンの黄に直接当てて左下に押し下げて、赤が1・2を取るナイスショットだったが……。

実況「北澤ですね」

 なんと中部電力、投げる順番を間違えていた。サード2投目で、まだサードの松村千秋が投げるはずのところで、フォースの北澤育恵が投げてしまった。

 シート上では、ロコ・ソラーレの選手の方が先に気がついて指摘した。

「いまさー、北澤ちゃーん。千秋ちゃんだったかも」
「すいません。タイム止めてください」
「まだあと2投あるからさー」

 やっと事情が飲み込めた中部電力の選手。なぜか松村北澤と吉田夕梨花が肩を組む。苦笑いの両角友佑コーチ。石郷岡葉純が大会職員にルールの確認をしている。カーリング中継では珍しくリポーターから情報が入った。

リポ「曽根さん。先ほどの松村のところなんですけども、確認しましたら、ストーンは有効で、一番最後のストーンを松村が投げるということです」
実況「そうですね。ルールの規定上、プレイヤーが順番を間違えてストーンを投球した場合は、間違えがなかったものとしてそのエンドを続行して、順番を抜かされたプレイヤーがそのエンドの自分のチームのラストストーンを投球する、という規定になっていますので、松村が最後に投げるということになります」

 そして、ラストストーンを松村が投球する。ガードをギリギリかわして黄をテイクしてシューターも残るナイスショットで中部電力3点。ここまで同点だったが、ここで一気に中部電力優勢になった。

松村「アクシデントはあったけど」

 このルール、どうなんでしょう? これだと、順番を間違えたことが有利に働くこともあるんじゃない? 石を触ってしまった場合は、石を触った側が有利になることはないルールになっていたと思います。順番を間違えた場合にもそれと同じくらいのルールがあっていい気がします。カーリングらしいルールなのかもしれないけど、特に今回の場合、順番を抜かされた松村のラストストーンが、この試合を決めるショットになってしまったので、ちょっと釈然としない気持ちは残りました。

(i) プレーヤーが、順番を間違えてストーンを投球した場合、間違いがなかったものとしてそのエンドを続行し、順番を抜かされたプレーヤーがそのエンドの自分のチームのラストストーンを投球する。誰が抜かされたのか分からない場合、間違いをしたチームのリードがそのエンドの自分のチームのラストストーンを投球する。
女子1位-2位 中部電力-ロコ・ソラーレ
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
中部電力 0 0 3 0 1 1 0 0 3 - 8
ロコ・ソラーレ   1 0 0 2 0 0 2 0 0 - 5

女子準決勝 ロコ・ソラーレ-北海道銀行

2エンド 怪力さっちゃん?

 女子準決勝でも事件が起きる。

 ロコ・ソラーレ吉田夕梨花2投目、Tライン奥でハウスから出るかどうか微妙な黄を掃き出そうとスキップ藤澤五月が全力スイープ。その瞬間、藤澤のブラシが折れる! 膝から落ちた藤澤だったが、なんとかタッチストーンは避ける。黄はハウスの右下にかかって残った。怪力だと思われたくない(?)藤澤がマイクに入るように「折れてたブラシだから」と言い訳。「亮二さーん」と大きな声を出す。解説は石崎琴美

実況「石崎さん、このシーンって見たことありますか?」
石崎「あー、んーとなんか、男子はね、あったりてしますけど。女子はね、さっちゃんどんだけの力だってことになっちゃいますからね」

 この後の決勝戦の中継の中で、コーチの小野寺亮二が練習の時に踏んで折れかけていたブラシを誤って使ってしまった結果ということが明かされた。

女子準決勝 ロコ・ソラーレ-北海道銀行
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
ロコ・ソラーレ 0 3 0 2 0 3 0 1 0 1 10
北海道銀行   1 0 2 0 1 0 2 0 2 0 8

女子決勝 ロコ・ソラーレ-中部電力

3エンド 女子の試合?

 サードで見応えのあるランバックの応酬があった。後攻中部電力サード松村千秋1投目、ガードの黄から縦にまっすぐ押すランバック。4フットの赤はなくなって、シューターの黄も飛ばした黄もぴったりステイ。石の配置はそのままで石の色だけが変わった。しかし、先攻ロコ・ソラーレ、サード吉田知那美2投目もお返しのランバック。先ほどステイで残っていた黄が2つともなくなった。解説は石崎琴美、金村萌絵のダブル解説。

石崎「なんか、女子の試合ですかね? 男子の試合を見ているみたいな」
金村「錯覚に陥りますね」

 そして中部電力サード松村千秋2投目はボタンへドローして、図の投球前の形に。ナイスショットに見えたが、ど真ん中すぎた。

女子決勝 中部電力(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 3エンド 先攻黄フォース1投目

石崎「ちょっと深いところまで行ってしまいましたので、これに付けられると2点目を取るスペースがかなり狭まってしまったんですよね。石1つ2つくらい前で良かったんですが、深くなりすぎてしまいました」

 先攻ロコ・ソラーレ、フォース藤澤五月1投目は、その黄にフリーズが吸い付くように決まる。これで中部電力は2点目を置く場所がない。このエンド、ロコ・ソラーレは1点取らせに成功した。

5エンド 思わぬ大差

女子決勝 中部電力(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 5エンド 先攻黄フォース2投目

 先攻ロコ・ソラーレ、フォース藤澤2投目。緩いウェイトで4フットの赤に触りたかったが、ガードに当ててしまう。最初はスイープしていたが、一瞬スイープをやめて、その後で激しくスイープしたがガードをかわせなかった。ハウス内の形を変えられなかった上に、センターガードがなくなってしまう痛恨ショット。

 このエンド、これまでロコ・ソラーレがセンターガードを置いては中部電力が外すショットが続いていた。中部電力フォース1投目で作戦を切り替えて、ヒットロールで4フット後方に黄を置いたところだった。センターガードをなくなってしまっては大量失点のピンチ。

 このあと、中部電力フォース北澤2投目は速いウェイトで一番手前の黄の芯に当てて赤が右に出ていき、黄は4フット奥の黄が無くなっただけで4つ残る。前半で思わぬ大差がついてしまった。

石崎「いやー、これはちょっと……。(北澤2投目は)いや、かなりナイスショットです。ナイスショットなんですが、その1個前の(藤澤2投目は)、あのラインコールというか……もったいなかったなという感じですね」

6エンド ダブルコーナーガードは有効なのか

 4点を追いかけるロコ・ソラーレだが、なかなか複数点を取る形にならない。逆に中部電力の方にいい形ができる。最後はロコ・ソラーレ、フォース藤澤に黄を3つ見ての4フットに入れなければいけない厳しいドローが残り、このドローがショートして中部電力3点スチール。10-3となり、ここでほぼ勝負あった。

女子決勝 中部電力(赤)-ロコ・ソラーレ(黄) 6エンド 後攻黄セカンド1投目

 自分が気になったのが、このエンドの作戦。ロコ・ソラーレはリードの2投でダブルコーナーガードを置きました。

金村「ただ中部電力はそうさせないためにセンターで勝負をしてくるので、それをいかにうまくかわすか、早い段階でコーナーに1個入れたりですとか、センターをきれいにしつつ自分の石が残るようにしていけるかですね」 

 結局、このあとそういう展開にはなりませんでした。図は後攻セカンド鈴木夕湖の1投目。センターラインへのドローを選択。これ以降のショットも、先攻も後攻もすべてセンターライン付近へ投げています。コーナーガードの裏を使うという展開は、このエンド1回もありませんでした。

 大量点を取りたい後攻はダブルコーナーガードを置くのは当然。5ロックルールだからなおさら、といままで思っていましたが、このエンドを見るとそうでもないかもと思いました。後攻がダブルコーナーガードを置く間に、先攻はセンターライン上に3つ置くことができる。それでいい位置に置かれたら、後攻セカンド1投目でセンターラインに投げざるを得ないというのなら、ダブルコーナーガードを置く意味がない気がします。

8エンド SPIN-O-RAMA

 8エンドで8点差。勝負はもうついた。プレーオフに入ってからはコンシードできるのは8エンド終了時から。

 中部電力リード1投目のドローに対して、ロコ・ソラーレはヒットステイを選択した。

金村「テイクしてきますね。ここは、もう」
石崎「そういうことですかね」
金村「そうですね。相手に敬意を表して」

 そのまま儀式のようにシンプルにテイクしあって進行する。中部電力フォース北澤2投目はピールして、石がすべてなくなる。あとは藤澤ラストストーンを残すのみ。チームメイトから声が飛ぶ。

「まわれー」
「さっちゃんまわれー」
「さっちゃんお願いします」

 藤澤、最後は回転投げ。平昌五輪決勝でスウェーデンのニクラス・エディンも見せた相手の勝ちを認めるパフォーマンス。ちょっとぎこちない(^_^;) エディンの回転の方がきれいだったなあ。まっすぐは投げられなかったように見えたが、タッチストーンして?ボタンに石を置いたところでコンシード。中部電力優勝となりました。

女子予選 ロコ・ソラーレ-中部電力
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
ロコ・ソラーレ   0 2 0 1 0 0 0 0 - - 3
中部電力 2 0 1 0 4 3 1 0 - - 11

中部電力が世界選手権へ

 日本選手権女子は中部電力が優勝して、3月16日から行われるカーリング女子世界選手権に出場が決まりました。中部電力は2017年にも優勝していますが、その時は日本が世界選手権の出場枠を獲得できなかったので出場できませんでした。2013年出場時は、スキップ藤澤五月、サード市川美余で日本選手権を4連覇したチーム構成の頃。中部電力が現在の構成に近い形になってからは初めての世界選手権出場になります。

 直近4回の世界選手権出場チームを見ると、2015年北海道銀行、2016年LS北見、2018年富士急、2019年中部電力と、ちょうど四強1回ずつとなっています。ロコ・ソラーレは世界選手権2位、五輪3位があるので世界の実績では抜けているけど、国内大会では圧勝しているというほどではない。こう見ると、来年以降もどうなるかわかりませんね。来年からは2022年の北京五輪の出場枠争い、代表争いも本格化してくるので、どういうことになるのか楽しみです。まあ、その前に今年の世界選手権ですね。

www1.nhk.or.jp

日本女子カーリングの主な大会の出場チームと成績
オリンピック 日本選手権優勝 世界選手権
2019 - 中部電力 中部電力(?位)
2018 LS北見(3位) 富士急 富士急(10位)
2017 - 中部電力 ※不出場
2016 - LS北見 LS北見(2位)
2015 - 北海道銀行 北海道銀行(6位)
2014 北海道銀行(5位) 中部電力 ※不出場
2013 - 中部電力 中部電力(7位)

*1:スタジオと言っても、シート脇にテーブルを置いただけのものだったけど。何の意味があるんだろう?

軽井沢国際2018でのコンサドーレ札幌の作戦会議

 今年も日本カーリング選手権の時期がやってきました。今年は例年にもましてNHKの中継がすごい。BS1で連日2試合の生中継に加えて「全試合のハウス映像をライブ配信」 だそうです。NHKとは別にインターネットのオフィシャルインターネット中継放送もあります(今年はYouTube)。しかも、今まではリアルタイムでしか見られませんでしたが、今回はアーカイブに残るそうな……。見る時間を工面するのが大変です。

 ここで、カーリングの金言を紹介しよう。

カーリングはねー、全試合追っちゃダメなんですよ(笑) 本当に1日ですからね。1日8時間仕事のように見続けることになる」(両角友佑) 

  •  信州スポーツ! 一刀両断 #36 軽井沢アイスパークから生放送! ゲストは? 国際カーリングの直前情報などをお伝えします お楽しみに! | FRESH LIVE(フレッシュライブ) - ライブ配信サービス ※問題の発言は9:00ごろ
    https://freshlive.tv/nns/253472
カーリング日本選手権2019リンク集

 そんなカーリング日本選手権を前に、今回は昨年12月に行われた軽井沢国際カーリング選手権大会2018のおもしろかったある1エンドを紹介します。

 12月21日に行われた男子予選。アメリカのシュスターと北海道コンサドーレ札幌の対戦。赤シュスター、黄コンサドーレ

 6エンド。4-3でシュスターが1点リード。コンサドーレの先攻。1点負けているコンサドーレはスチールを狙いたいエンド(ワールドカーリングツアーは8エンド制)。

シュスター(赤)-コンサドーレ(黄) 6エンド 先攻コンサドーレセカンド谷田2投目

  清水選手の積極的な発言が印象に残ったコンサドーレの作戦会議のシーン。

 アメリカセカンド1投目は、ガードの黄を経由してハウスの中の黄はテイクアウトしたものの、元ガードの黄もシューターの赤も残ってこの形。セカンド谷田2投目を前にハウス側と投げ手側で意見が割れる。ハウス側にはスキップの松村雄太、投げ手側にはセカンドの谷田康真とスイーパー清水徹郎・阿部晋也がいる。松村は赤のセンターガードの裏のハウスの中を指示するが……。

谷田「中?」
松村(首を縦に振る)「もう1個置く? いってからでもそんなに悪くないと思うけど」
(投げ手側で)
谷田「でも赤黄は切られるよね」
清水「切られると思う。そしたら結局1個を守り続けることしかできないっしょ。今もう1個前置いたら、狙われても赤は残るよね。俺は前でいいと思うけど」
谷田「俺も前でいいと思う。ここ取らなきゃいけない」
(ハウス側に向かって)
谷田「それ置いたら先に赤黄やられない? こっちで」
松村「こっちはやられるよ」
清水「そしたらもうあと1個しか守るものなくない?」
(清水がハウス側に行く)
松村「ここ置いて、これ狙わせた方がいいんじゃない?」
清水「ここ切られてここ残された時に、俺らもう打てないで前置き続けるしかないでしょ」
?「前置いて入らせない方がいいと思うけど」
?「ただ、本当に高くないと」

 結局、清水の案が採用されて赤の前にダブルセンターガードを置くという選択になった。解説は敦賀信人

敦賀「清水選手はあまり作戦に対して言う選手でないんですね。ただ彼もオリンピックとか世界選手権を経験しているので、ここぞと言う時に的確なアドバイスができるのも、清水選手が入ったことによってのこのチームの強みかなと思いますね」

シュスター(赤)-コンサドーレ(黄) 6エンド 先攻コンサドーレセカンド谷田1投目

 先攻(黄)コンサドーレ、サード清水1投目。センターガードの裏にセンターガードをぴったり縦に置く。スチールのチャンスがある形になってきた。

シュスター(赤)-コンサドーレ(黄) 6エンド 後攻コンサドーレセカンド谷田1投目

 後攻(赤)シュスター、サード2投目を前に、こちらも激しく意見を言い合う。スキップは縦にダブルテイクを狙いたいが、そうするとシューターがガードで残って、次に赤に中に入られる。そうなる前に先に中に入るという選択になった。ガードは強力スイープでギリギリかわしたが、少し長くなってT奥まで行って黄に当たって止まる。

 このあと、コンサドーレ、スキップ松村1投目でその赤の前へフリーズするナイスショット。スチールまであと一歩。

シュスター(赤)-コンサドーレ(黄) 6エンド 後攻コンサドーレセカンド谷田1投目

 後攻(赤)シュスター、スキップ2投目。黄のスキップ2投目でさらにセンターガードを置かれて、スチールの形を作られてラストストーン。シュスター困ったかに見えたが……。

敦賀「シュスター選手、すごいところ見てますね」

 壁際に残っていた赤から角度を変えて中をテイクするショットを狙う。こんな石が働くのか……。決まれば2点だったが、惜しくも手前を通過してコンサドーレ1点スチールに成功!

 この試合は、この後7エンドにシュスターが2点を取って勝つのですが、この6エンドはコンサドーレの作戦会議のシーンや、清水・松村の正確なドローショット、シュスターのラストショットなど見所が詰まったエンドになりました。日本選手権でもこんなシーンをお願いします。

予選 シュスター-コンサドーレ
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8
シュスター 2 0 2 0 0 0 2 - 6
北海道コンサドーレ札幌   0 2 0 1 0 1 0 - 4

REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP 2018のスコアを取ってみた

 今年もREALFORCE TYPING CHAMPIONSHIPが開催されました。

www.realforce.co.jp

www.youtube.com

 昨年2017年の第1回大会東京ゲームショウでの開催でした。自分は現地で観戦しておもしろかったので今年も楽しみにしていたのに、今年は東京ゲームショウの時期になっても告知がない。「去年はREALFORCE R2の発売の時期だったので、その時だけだったのかなあ」と思って昨年の動画を見たりして懐かしんでいたら、なんと今年は単独イベントでの開催。残念ながら自分は現地には行けなかったのですが、全編動画配信されていたので即視聴。前回にもましておもしろい大会でした。

 前回より試合展開がバリエーションに富んでいたと思います。ダブルイリミネーション方式となって試合数が増えたおかげもあります。正確性95%ラインが勝負の鍵となるわけですが、95%ギリギリを維持する試合あり、95%に回復させるためにわざとワードを打ち切らず相手に取らせる、相手が95%を割っている間に10ワード打ち切ってしまう、95%を割っているのに思わず打ち切ってしまった、お互いに95%を目指さない乱打対決など、多彩な展開がありました。

 そうやって動画を見ていると、各試合がどういう経過をたどって決着したかを記録を見て確認したくなってきました。というわけで各試合のワードやkpm・正確性・ポイントなどを表に入力してみました。野球の試合の試合を見ながらスコアを取ったようなものです。

 すべて手動で入力したので入力ミス・抜け・勘違いなどがあるかもしれません。もし見つけた方がいましたら、訂正しますのでご指摘いただけると助かります。

 また、各試合の概要などをメモしましたので以下に載せます。「スコア」は上記ファイルのその試合のスコアシート、「動画」はYouTubeのその試合の部分の時間のリンクです。

  • 【1回戦 第1試合】kurimans vs. セレナーデ☆游騎
  • 【1回戦 第2試合】muller vs. prmil
  • 【1回戦 第3試合】cocoa vs. 珠
  • 【1回戦 第4試合】tanigon vs. はやとぅっ!
  • 【1回戦 第5試合】オリプス vs. のん
  • 【1回戦 第6試合】ring vs. やだ
  • 【1回戦 第7試合】dqmaniac vs. ヨッシー
  • 【1回戦 第8試合】テル vs. miri
  • 【2回戦 第1試合】kurimans vs. muller
  • 【2回戦 第2試合】珠 vs. はやとぅっ!
  • 【2回戦 第3試合】のん vs. やだ
  • 【2回戦 第4試合】ヨッシー vs. miri
  • 【3回戦 第1試合】muller vs. 珠
  • 【3回戦 第2試合】やだ vs. miri
  • 【LOSERS 1回戦 第1試合】セレナーデ☆游騎 vs. prmil
  • 【LOSERS 1回戦 第2試合】cocoa vs. tanigon
  • 【LOSERS 1回戦 第3試合】オリプス vs. ring
  • 【LOSERS 1回戦 第4試合】dqmaniac vs. テル
  • 【LOSERS 2回戦 第1試合】ヨッシー vs. セレナーデ☆游騎
  • 【LOSERS 2回戦 第2試合】のん vs. tanigon
  • 【LOSERS 2回戦 第3試合】はやとぅっ! vs. ring
  • 【LOSERS 2回戦 第4試合】kurimans vs. テル
  • 【LOSERS 3回戦 第1試合】セレナーデ☆游騎 vs. のん
  • 【LOSERS 3回戦 第2試合】はやとぅっ! vs. テル
  • 【LOSERS 4回戦 第1試合】珠 vs. のん
  • 【LOSERS 4回戦 第2試合】miri vs. テル
  • 【LOSERS 5回戦】のん vs. miri
  • 【WINNERS 決勝】muller vs. やだ
  • 【LOSERS 決勝】やだ vs. miri
  • 【決勝 第1試合】muller vs. miri
  • 【決勝 第2試合】muller vs. miri
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中継ぎ投手の悲しいキャリア

 今年のヤクルトのクライマックスシリーズは、あっという間に終わってしまいました(´・ω・`)

 ノーヒットノーランとは。菅野智之はすごい投手になったなあ。菅野は今までもすごくいい投手だと思っていて、ダルビッシュ有田中将大大谷翔平などよりすごいと思っていたくらいなのだけど、それが証明されました(´・ω・`) いままで「俺がリアルタイムで見たすごい投手ランキング」の歴代1位は伊藤智仁だったんですが、今回のノーヒットノーランで菅野が上回ったかも。試合の録画をとっておいて、しばらくたってからもう1回見よう。

松岡健一と山本哲哉の引退

 ところで、ヤクルトの今シーズンオフの話題の一つに、松岡健一と山本哲哉の引退があります。「マツケン」「ヤマテツ」の愛称でファンから親しまれ、リリーフ一筋でヤクルトの投手陣を支えていた両投手が奇しくも同時に引退。ヤクルトファンとしては感慨深いものがあります。

 キャリアを一人ずつ見ていきましょう。まず、松岡健一。フォークを武器に2008年からセットアッパーに定着。押本健彦と並ぶタフネスぶりで「次のヤクルトのクローザーはこいつだ」と思っていた時期もありました。

 しかし、2012年についに故障してほとんど登板できず。2013年以降は復活しましたが「あの頃の輝きは戻ってこなかったなあ」という印象があります。

 山本哲哉は2012年から台頭。2013年は一時期クローザーを務める。しかし、2013・2014年はチームは連続最下位。ヤクルト低迷の原因としてけが人が多いことが挙げられ、「ヤ戦病院」と揶揄される事もあるのですが、山本はケガをしないで活躍を続けていた貴重な存在でした。

 と思っていたら、2015年はケガで低迷。しかし、チームは優勝。2度目のトミー・ジョン手術を受けて翌2016年は一軍登板登板ゼロに終わりますが、2017年は復活しますがチームはまたも最下位。そして2018年はまた登板数が激減してそのまま引退。 チームが低迷した年に活躍し、チーム成績が良かった年は登板が少ないという孤軍奮闘投手になってしまいました。

 こうやってプロ野球選手のキャリアを見ていると思うのが、 中継ぎ投手のキャリアは突然終わることが多すぎない?ということ。この2人も、2017年には30試合以上登板しているのに、2018年にもう引退です。

 年を取ると衰えるのは投手も野手も同じですが、野手だと衰えても晩年は代打で活躍したり、投手でも先発だと、中継ぎに転向したり、登録抹消を挟みつつローテの谷間にたまに先発したりという展開がある場合も多いです。中継ぎ投手はそういう展開がなく、少し衰えると2年くらいで、年齢もまだ30代前半なのに、いきなり引退というパターンが多い気がします。

中継ぎ投手の悲しいキャリア

 というわけで、自分が悲しいと感じるヤクルト投手のキャリアを何人か挙げてみます。

島田直也

 横浜で毎年中継ぎ登板を重ねていたが、1999・2000年はやや不振で自由契約に。しかし、2001年ヤクルトに移籍すると安定した登板を重ねて優勝に貢献。選手名鑑*1にも「使い減りのしない貴重な中継ぎ」と書かれます。ところが、翌2002年からいきなり登板数が激減して自由契約近鉄に移籍するも2003年限りで引退。2001年の活躍はなんだったのか……。

山本樹

 ヤクルト黄金時代後半の中継ぎエース。全盛期1996年~2001年。2003年も復活して50試合登板していますが、そこから衰えてわずか2年で引退。

河端龍

 2000年代始めのヤクルト中継ぎエース。1999年にルーキーながら14試合に登板するが、翌2000年はリハビリで登板ゼロ。2001年に復活して優勝に貢献。そこからセットアッパーとして毎年活躍するが、2006年に再びリハビリで登板ゼロとなり、今度は復活することなくそのまま2008年に引退。

 自分が「中継ぎ投手のキャリアは悲しい」ということをはっきり意識したのはこの投手がきっかけ。これだけ活躍した投手なのに、突然登場して、突然いなくなっていた。

押本健彦

 2008年、ヤクルト-日本ハム3対3トレードの一員(藤井秀悟坂元弥太郎三木肇-川島慶三押本健彦橋本義隆)としてヤクルトに移籍。この時、藤井秀悟を出したのはびっくりしたなあ。ただでさえグライシンガーと石井一久が抜けて先発投手がいないのに、藤井出すか? 前年の先発登板数1・2・3位が抜けるってどういうこと!?

 と思っていたら、移籍してきた押本が大活躍。毎年50試合以上の登板を重ねるタフネスぶりを発揮し、押本健彦-松岡健一-林昌勇の勝利の方程式は長く続きました。しかし、2013年に故障で50試合登板が5年で途切れると、翌2014年引退。あれだけ毎年登板していたのに、それからたった2年で引退とは……。

久古健太郎

 左腕のサイドスロー。2011年、ドラフト5位ながらルーキーイヤーから登板を重ねてレギュラーシーズン2位の躍進に貢献。翌2012年は血行障害の手術の影響で登板数が減りますが、翌2013年からは再び左のワンポイントとして活躍を続け、2015年の優勝にも貢献する。このままの状態が続くのかと思いきや、2017年に登板数が激減して今年、2018年は一軍登板ゼロのまま引退。ヤマテツ、マツケンと並んで引退セレモニーあってもよかったと思うんだけど?

ヤクルト以外の投手

 ヤクルト以外の投手だと、印象深いのが中日-西武の岡本真也です。2004年から4年連続で60試合前後登板している中日リリーフ陣の大黒柱でしたが、2008年、FA移籍してきた和田一浩人的補償で西武へ移籍。なぜこの投手をプロテクトから外すのか!? そのときは理解できませんでした。西武1年目はそこそこの活躍でしたが、2年目途中から成績が落ちるともう戦力外通告。中日はこうなることを予見していたのか? そうだとしたら卓見だとしか言いようがありませんが……。

 今年引退した巨人の山口鉄也も悲しいキャリアだと感じます。あれだけ毎年鉄腕ぶりを発揮していたのに、1年投げられなかっただけでもう引退なの? まだ35歳でしょ?

理想のキャリアは?

 こう見ると、最後に活躍してから1~2年で引退、あるいは活躍していたのに故障で突然消えてそのまま引退、という選手が目立ちます。プロ野球選手の中継ぎ投手というのはそういうもの、と言えばそれまでですが、野手や先発投手の終わり方と比べるとあまりに悲しい。中継ぎ投手でも、もう少し息の長い、フェードアウト感のある終わり方はできないものかと思ってしまいます。

 例えば、高木晃次のような終わり方です(ヤクルト時代は主に先発でしたが)。

 入団したのは阪急。しかし、1990年に42試合登板した以外は大した成績を上げられず、ダイエーを経て、1998年、30歳でヤクルトへテスト入団。1999年は規定投球回数に達して9勝を挙げる活躍をしましたが、そこまで好投し続けたわけでもないしなあ。他の年はメッタ打ち状態だった記憶しかない(^_^;) 2001年は2試合の登板にとどまり戦力外通告を受けロッテに移籍。この年34歳。もう引退寸前という印象でしたが、ここからロッテで8年、41歳まで現役を続けるとは……。しかも、年々登板数が増えていく。実働19年。見事なキャリア。

*1:『日刊スポーツグラフ 2002年プロ野球選手写真名鑑』

女子プロ野球の女王決定戦を見に行ってきた

 この前見に行った試合はあっさり終わって納得いかなかったので、10月7日(日)に再び女子プロ野球(JWBL)を観戦してきました。場所は再び川口市営球場。

 試合は女王決定戦の京都フローラ-愛知ディオーネ。女王決定戦というのは、NPBでいう日本シリーズのような試合です。年間総合順位1位と2位の対戦で2勝先取ですが、1位の京都には1勝のアドバンテージがあります。つまり、京都は2試合のうち1試合勝てばOK、愛知は2連勝が必要ということです。

 今回は、スコアは差が付きましたが、自分的には見るべき点は多くて満足できる試合内容でした。というわけで、見所をいくつかご紹介します。

厚ヶ瀬美姫のファインプレー

 1回裏、ディオーネ遊撃・厚ヶ瀬美姫がセンター前に抜けそうなハーフバウンドの打球を好捕。さすが。やはり今でも守備は厚ヶ瀬が一番か。

 ときに、厚ヶ瀬美姫と言えば、忘れられないプレーがあります。2013年、自分がJWBLを見始めたころ。ボテボテのゴロに対して、バウンドに合わせるなどまったくせずに全力で突っ込んでいって、ハーフバウンドになった打球を体の横で捕った。「これはすごい!」と、その後もJWBLを見るきっかけとなったプレーです(忘れられないと言いつつ思い出補正がかかっている可能性あり(^_^;))。2013年は『ベストプレープロ野球'00』でJWBLのデータを作ったのですが、厚ヶ瀬美紀の遊撃に、守備能力では唯一のAを付けました。

スクイズ! ウエスト!

 2回表はディオーネ打線がつながって、5-0とリードを大きく広げる。なお1死1・3塁で打者は4番只埜榛奈。ここで初球スクイズ! フローラバッテリーはウエスト! しかし、只埜は飛びついてなんとかバットに当ててファウル。

 左バッターボックスより外くらい大きく外した投球だったが、バットを放り投げて当てた。バットに当たった瞬間はすでにバットから手が離れていた。

 自分は、5点リードで打者4番でまさかスクイズがあるとは思わず、びっくりしているうちに、すべてがまさにあっという間に終わってしまった。あとで調べたら、只埜のスクイズはこれまでも何度かあったようです。だからフローラも読んでウエストしたのでしょう。*2

ベテラン?のナイスピッチ

 4回表、フローラ植村美奈子の投球。植村は2回途中から登板。「相変わらずボール球多いなあ」と思って見ていた4回表。スコアはすでに7-0と大きなビハインドという状況で、先頭打者は打ち取った打球が内野手の間に落ちて無死1塁、続いて四球で無死1・2塁。「また大量失点か」と思った。

 ところが、5番中田友実の投ゴロを冷静にさばいて併殺。2死3塁。6番強打者の寺部歩美は四球で2死1・3塁。7番の榊原梨奈をボールカウント1-1からズバッと内角へ2球続けて三振。何事もなく無失点で切り抜ける。さすが、JWBL発足2年目から所属しているベテラン。落ち着いた投球。

ライトゴロ狙い

 6回表、ディオーネ只埜榛奈のライト前の打球に対して、フローラの右翼・中村茜がライトゴロ狙いで一塁へ送球。間に合わなかったが、ライトゴロは女子野球の見所のプレー。

力の入った勝負

 6回裏、フローラみなみの打席。ディオーネ投手は笠原優子。2死1塁。0-7と大差は付いているが、まだ2イニングあるし、もちろんあきらめることはない。みなみは本塁打を前年は3本、今年は2本打っている長打力のある打者。フルカウントからのファウルが4球続く。3塁線への強い打球やレフトへの大きな当たりのファウルもあって、力の入ったいい勝負になりました。最後の見逃し三振は残念でしたが……。それほど厳しいコースでもなかったし。


 試合の方は、そのまま7-0で愛知ディオーネが勝利。女王決定は翌日の試合にもつれ込みました。それで、翌日の試合も気になったので「女子プロ野球ライブTV」の1dayチケットを購入して観戦しました。この試合は接戦で力は入ったけど、おもしろいシーンはそれほどなかったかな。3回表、ディオーネ1塁走者の三浦由美子が、ライトへのファウルフライでタッチアップして2塁へ行ったシーンは良かった。結果はこの試合もディオーネが勝って逆転で年間女王になりました。

www.jwbl-live.jp

 この1dayチケット、当日の試合を見られるだけかと思いきや、その1日の期間内なら最近行われた試合(おおよそ1週間のようです)の見逃し配信の動画も見られるのですね。というわけで、上で紹介した見所シーンは、見逃し配信で前日の試合の動画を確認して書きました。このサービスは初めて使ったけれど、動画の再生速度が4倍~0.5倍まで9段階で選べるのはいいね。セルフスロー再生がすぐできる。

 また、このサービスの見逃し配信の期間が終わったものは、順次ニコニコ動画の女子プロ野球チャンネルの方に回される(有料)。無料のハイライト動画などは翌日以降にYouTubeの日本女子プロ野球リーグチャンネルにアップされる……という流れのようです。

*1:試合速報のページのタイトルタグの部分が「<title>日本女子プロ野球リーグ JWBL</title>」になっているのは頂けませんな。タイトルはちゃんとどの試合かわかるように付けてほしい

*2:ところで、この「ウエスト」という言葉を、盗塁やスクイズを阻止するための投球を指して使うのは誤りだそうです。ですが、あまりにも広く使われているし、「ピッチアウト」という言葉はまだしっくりこないなあ。という感覚があるので、今回は「ウエスト」という言葉を使いました。