北海道カーリング選手権のある一場面

 平昌五輪のカーリング競技の男女もいよいよ大詰めですね。日本は、男子は惜しくも1勝足らず予選リーグ敗退で残念。最終戦に勝てばタイブレークには進めたのに……。これが20年ぶりの出場の難しさということか。まあ、勝てる試合もあったとか言い出したら他のチームもそうだろうけど。スウェーデンのピタリピタリと決まるショットはすごかったな。

 女子は最後に連敗して5勝4敗で終わるも、混戦の中4チームが4勝5敗で終わる巡り合わせで、単独4位となり予選突破。5勝4敗でタイブレークなしで準決勝に進出できるとは思わなかった。だんだん調子を落としている感じがするので心配ですが、準決勝まで1日空くのでこの1日をうまく使ってほしい。世界ランク1・2位のカナダとスイスがともに調子が上がらず予選敗退というのが驚き。カナダはぎりぎり間に合ったかと思ったが……。

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 さて、今回はそんな平昌五輪とはまったく関係のないカーリングの話を1つ。

 J:COMテレビで「sapporoジモスポ★特別編 #3」という番組をやっていまして、そこで北海道カーリング選手権の模様が伝えられていました。

 女子決勝は北海道銀行 - 札幌国際大学というカードで、ダイジェストですがいくつかのシーンが取り上げられていました。そのうちの1つが驚きのシーンだったので思わず局面図を作ってしまいました。北海道銀行が5-4でリードして迎えた9エンド、後攻・黄の札幌国際大学のラストストーン投球前の場面。

北海道カーリング選手権決勝 9エンド黄16投目

 なんだこの局面は。ハウス内に密集して赤6個、黄4個。これだけ密集している局面はあまり見たことないなあ。どういう経緯でこうなったのか……。先攻赤のセンターガードからひたすらフリーズ合戦になったのでしょうか。

 このあと札幌国際大学のラストストーンはガードに引っかけてしまって、ハウス内はこの形のままで赤が1点スチール。試合はそのまま北海道銀行の逃げ切り勝ちとなりました。熱い試合をやってますね。

女子決勝 北海道銀行 - 札幌国際大学
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道銀行 3 0 0 1 0 0 0 1 1 0 6
札幌国際大学   0 0 1 0 2 1 0 0 0 1 5

 J:COMテレビがどういう条件で見られるのかよくわからないけれど、この番組は頻繁に再放送されているので、放送される地域にお住まいの方は探してみると見られるかもしれません。


 ちなみに、J:COMテレビでは平昌五輪も他ではなかなか放送しない競技を放送をしていてよく見ていました。特にバイアスロンを放送してくれたのはありがたかったです。トップ選手でも射撃は百発百中ということはない。射撃で外しても走力で挽回できる一方、やっぱりクロスカントリーでリードしていたのに射撃で外して逆転されることもある。1回失敗したら終了みたいな競技が多い中、絶妙なバランスがある競技です。まだ、2/24(土)と2/25(日)にもバイアスロンの放送があるようですね。

カーリング魂。

平昌五輪カーリング予選リーグの勝敗表(将棋の順位戦風)を作ってみた

 平昌五輪のカーリング競技の予選リーグが進行中ですが、今回は予選リーグの対戦表をテキストで作ってみました。勝敗数の前の数字は現在の世界ランキングです。

女子予選リーグ

■女子予選 14昼 15朝 15夜 16昼 17朝 17夜 18昼 19朝 19夜 20昼 21朝 21夜
【韓国】  -- カナ 日本 スイ -- イギ 中国 スウ -- アメ OAR  デン
08☆8勝1敗    ○  ●  ○     ○  ○  ○     ○  ○  ○ 
【スウェー】デン -- カナ OAR  スイ -- イギ 韓国 日本 -- 中国 アメ
05☆7勝2敗 ○     ○  ○  ○     ○  ●  ●     ○  ○ 
【イギリス】OAR  アメ 中国 -- デン 韓国 スウ -- スイ 日本 カナ --
04☆6勝3敗 ○  ●  ○     ○  ●  ●     ○  ○  ○    
【日本】  アメ デン 韓国 -- 中国 OAR  -- カナ スウ イギ -- スイ
06☆5勝4敗 ○  ○  ○     ●  ○     ●  ○  ●     ● 
【中国】  スイ OAR  イギ -- 日本 デン 韓国 -- アメ カナ スウ --
10▼4勝5敗 ○  ●  ●     ○  ○  ●     ●  ○  ●    
【カナダ】 -- 韓国 スウ デン -- アメ スイ 日本 -- 中国 イギ OAR 
01▼4勝5敗    ●  ●  ●     ○  ○  ○     ●  ●  ○ 
【スイス】 中国 -- アメ 韓国 スウ -- カナ OAR  イギ -- デン 日本
02▼4勝5敗 ●     ○  ●  ●     ●  ○  ●     ○  ○ 
【アメリカ】日本 イギ スイ -- OAR  カナ -- デン 中国 韓国 -- スウ
07▼4勝5敗 ●  ○  ●     ○  ●     ○  ○  ●     ● 
【OAR】   イギ 中国 -- スウ アメ 日本 -- スイ デン -- 韓国 カナ
03▼2勝7敗 ●  ○     ●  ●  ●     ●  ○     ●  ● 
【デンマー】スウ 日本 -- カナ イギ 中国 -- アメ OAR  -- スイ 韓国
09▼1勝8敗 ●  ●     ○  ●  ●     ●  ●     ●  ● 

男子予選リーグ

■男子予選 14朝 14夜 15昼 16朝 16夜 17昼 18朝 18夜 19昼 20朝 20夜 21昼
【スウェー】デン 韓国 -- アメ イギ カナ -- 日本 スイ イタ -- ノル
02☆7勝2敗 ○  ○     ○  ○  ○     ○  ●  ○     ● 
【カナダ】 イタ イギ ノル -- 韓国 スウ スイ -- アメ 日本 -- デン
01☆6勝3敗 ○  ○  ○     ○  ●  ●     ●  ○     ○ 
【アメリカ】韓国 -- イタ スウ デン -- 日本 ノル カナ -- スイ イギ
04☆5勝4敗 ○     ●  ●  ○     ●  ●  ○     ○  ○ 
【イギリス】スイ カナ 日本 -- スウ 韓国 -- イタ デン ノル -- アメ
06△5勝4敗 ○  ●  ○     ●  ●     ○  ○  ○     ● 
【スイス】 イギ イタ デン -- 日本 ノル カナ -- スウ 韓国 アメ --
05△5勝4敗 ●  ●  ○     ○  ○  ○     ○  ●  ●    
【ノルウェ】-- 日本 カナ 韓国 -- スイ デン アメ -- イギ イタ スウ
03▼4勝5敗    ●  ●  ○     ●  ○  ○     ●  ●  ○ 
【韓国】  アメ スウ -- ノル カナ イギ -- デン イタ スイ -- 日本
16▼4勝5敗 ●  ●     ●  ●  ○     ●  ○  ○     ○ 
【日本】  -- ノル イギ -- スイ イタ アメ スウ -- カナ デン 韓国
08▼4勝5敗    ○  ●     ●  ○  ○  ●     ●  ○  ● 
【イタリア】カナ スイ アメ デン -- 日本 -- イギ 韓国 スウ ノル --
13▼3勝6敗 ●  ○  ○  ●     ●     ●  ●  ●  ○    
【デンマー】スウ -- スイ イタ アメ -- ノル 韓国 イギ -- 日本 カナ
09▼2勝7敗 ●     ●  ○  ●     ●  ○  ●     ●  ● 

 よくある対戦相手を縦軸に並べたリーグ表形式ではなく、将棋の順位戦の形式で作ってみました。実際の将棋の順位戦の表がどんなものかは、下のリンク先を見てください*1

 この形式だと、それまでの勝敗の流れがつかめるし、今後の日程もわかりやすいし、成績順に並び替えるのも容易だし、なかなか優秀な形式だと思います。他の分野でももっと採用してもいいと思う。

 なお、この予選リーグ表は今後も更新していくつもりですが、自分が試合の録画を見終わった段階での更新となります(^_^;)  リアルタイムで見られるとは限らない、というかほとんどリアルタイムでは見られないと思うので、最新の表を見たい方は、コピペして「メモ帳」とかで自分で書き換えてください。なんなら、コピペして自分のブログなり掲示板なりに掲載していただいても結構です。

もっとちゃんとした勝敗表と日程

 下記のページが見やすいと思う。

女子予選リーグ勝敗表

男子予選リーグ勝敗表

日程

*1:ところで、日本将棋連盟のサイトのトップページからこの順位戦のページになかなかたどり着けないの私だけでしょうか……。

カーリング五輪・世界選手権の国ごとの成績一覧表を作ってみた

※2020/03/31

表のみの別記事を作りました。

また、男子スキップの表も作りました。

y-koutarou.hatenablog.com


 平昌五輪のカーリング競技。ミックスダブルスはすでに予選リーグが終了して2月12日(月)から決勝トーナメントですが、男子と女子はともに2月14日(水)から予選リーグ開始です。いよいよ近づいてきました。

 今回はカーリング国際大会の観戦の参考になるような表を作ってみました。

女子

国別順位(女子)

 五輪の正式競技となった1998年の長野五輪以降の五輪・世界選手権の各国の順位を表にしました。国の順番は左から現在の世界ランキングが高い順、大会列の数字は世界選手権の回数です。背景の色は金・銀・銅を表しています。

国別スキップ選手名(女子)

 そして、長野五輪以降の五輪・世界選手権に出場した各国スキップ選手名の表も作りました。各枠の下段の最初の数字はその大会の順位、括弧書きの数字は年齢です。

 この表にはスキップで出場した選手しか書いていないので、同じスキップ名でも別チームな場合もあるし、この表に載っていなくてもスキップ以外で出場していたり、姓が変わっていることもあります。各選手の詳しい出場歴を追いたい場合はWikipediaなどを見てください。

 国によって同じスキップがずっと出場していたり、毎回入れ替わり立ち替わりで出場していたり。ある選手がずいぶん間があいて出場していたり。若手が活躍していたり、年齢が上がっても出場していたり。この表だけでもわかる雰囲気があると思います。

平昌五輪各国代表の寸評(女子)

 この表を作る過程などで思った、各国に対する自分の印象を一言書いてみます。

※選手名のリンクはNHKのピョンチャン五輪サイトの選手ページ。

  1. カナダ
    カーリングは国民的競技で、選手層は圧倒的。有名スキップはジェニファー・ジョーンズチェルシー・キャリー、クリスタ・マッカービルなど。今回は2017年世界選手権優勝のレイチェル・ホーマンのチームが出場する。金メダルの最有力候補。
  2. スイス
    2014~2016年世界選手権3連覇。進境著しい。ここも国内代表争いが熾烈。今回はビニア・フェルチャーでもなくアリーナ・ペーツでもなくミリアム・オットでもなく、シルバーナ・ティリンツォーニのチームが出場。
  3. OAR(ロシア)
    近年はアンナ・シドロワを擁して、世界選手権2014~2016年は3位、2017年は2位。今回こそ五輪メダルかと思ったが、シドロワが12月末の代表決定戦に敗れる大波乱(代表決定戦をやらずに五輪代表に決まっていた気がするのだけど……。軽井沢国際のチーム紹介でも「2018 Russia Olympic Team」って書いてあるし……)。代わって出場するのは、こちらも美人軍団のビクトリア・モイセエワのチーム。
  4. イギリス(スコットランド
    カーリング発祥の地。五輪ではイギリス代表、世界選手権ではスコットランド代表として出場する。近年は若き女王イブ・ミュアヘッドが席巻している。ソチ五輪銅。
  5. トリノバンクーバーで五輪連続金、ソチ五輪銀の強豪。しかし、ここ4年の世界選手権の成績は以前と比べると今ひとつ。シグフリードソンも引退したし。
  6. 日本
    五輪は正式競技となった長野から6回すべて出場している。今回は2016年世界選手権2位の藤澤五月のチーム(LS北見)が出場する。
  7. 世界選手権優勝経験あり。しかし、近年メダルには手が届いていない。
  8. 韓国
    日本・中国より遅れて出てきてアジア三強に。PACCで優勝するなどチーム状態は良いようだ。地元開催の利を生かせるか?
  9. 古豪だが、近年の成績は以前ほどではない。五輪・世界選手権の出場は継続中。今回はレネ・ニールセンが引退して五輪出場もピンチだったが、最終予選を勝ち抜いて出場を果たした。
  10. 中国
    バンクーバー五輪銅。以前は世界の中でも強豪だったが、前回・今回と連続して五輪最終予選行きとなった。PACC2位以内に入らないと世界選手権に出場できないからアジアはつらいね。次回からルールが変わるようだけど。ソチ五輪後引退?していた王冰玉が復帰してまたも出場する。

 過去の実績からすると、「Aランク」はカナダ、スイス、ロシア、イギリス(スコットランド)、スウェーデン。この5か国だけで五輪・世界選手権のメダルの7割以上を占めます。

 こう見ると、日本がメダルを取るのはやはり難しいことだと感じます。まず、Aランク以外の4か国に勝つのは前提条件。その上でAランクの5か国のうち3つを上回って、やっと銅メダルだからね。1つに勝つのだって難しいだろうに。2016年世界選手権「銀」の実績があるから、期待するけどね。

男子

国別順位(男子)

 強い国は女子と似ていますが、やや異なる部分もある。カナダ、スウェーデン、イギリス(スコットランド)、スイスが強いのは女子と同じですが、カナダがとにかく強い。女子でもカナダは強いけれど、男子は実績ではカナダが他を圧倒している。男子はロシアがそれほどでもない。そして、女子は近年世界選手権にもなかなか出場できないノルウェーが強豪の一角、という感じですね。

リンク集

データ

平昌五輪関連

NHKピョンチャン五輪サイトの選手(カーリング・国別)ページ
BBM2017インフィニティ/INFINITY■レギュラーカード■085/藤澤五月/カーリング

日本カーリング選手権2018女子で優勝した富士急の名シーン

 もうすぐ平昌五輪が開幕しますが、その前に第35回日本カーリング選手権が開催されました。今年は五輪代表チームであるSC軽井沢クラブLS北見が出場しないし、NHKの中継は3試合しかなかったけれど、やはり始まってしまうと見てしまうね。YouTubeの中継も少しは見れました。

 そしてこの大会、女子は富士急が優勝しました! 強気な若手スキップ・小穴桃里選手とベテランの闘将・西室淳子選手がおもしろくて、個人的に以前から注目していたチームです。そのチームがついに優勝。まあ、過去の3大会は3位・2位・3位だし、今回はLS北見が出場していないのだから、意外な結果と見るべきではないかもしれません。しかし、過去の予選リーグは4勝4敗でギリギリ通過だったり強豪相手には負けていたりするので、順位の割には強いチームという印象がありませんでした。強豪相手には序盤から連続スチールされて差を付けられた試合も多かったし……。今回も、予選リーグは中部電力北海道銀行の強豪2チームに負けて6勝2敗の3位通過。期待はするけど、プレイオフを勝ち抜くのは難しいかなと思っていました。それが優勝。

 というわけで、この大会の富士急のハイライトシーンを、局面図を使って振り返ってみます。

レイオフ3位-4位

 プレイオフ初戦は予選3位と4位の対戦。富士急-青森Jr。青森Jrは予選リーグ最終戦中部電力を破って、大逆転でのプレイオフ進出。勢いに乗っていて怖い相手でした。試合はクロスゲームのままエキストラエンドまでもつれる接戦の末、7-6で富士急が勝利、準決勝進出を決めました。

女子プレーオフ3位-4位 青森Jr - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 EE
青森Jr   0 1 0 2 0 1 0 0 1 1 0 6
富士急 2 0 1 0 1 0 1 1 0 0 1 7

準決勝 中部電力-富士急

5エンド

女子準決勝 中部電力-富士急 05エンド 黄・先攻富士急 スキップ2投目

 迎えた準決勝の相手は中部電力。3エンドにスチールされますが、4エンドに3点取って一気に逆転。とはいえ、試合はこれから。

 5エンド。先攻・黄・富士急のスキップ小穴桃里の2投目、相手のナンバー1をはじき出して投げた黄はハウス入り口の味方の石の裏、というヒットロールを完璧に決める。ナンバー1・2・3・4まで取る。

 中部電力はラストストーンを青に入れないとスチールされるし、手前のガードに引っかけようものなら4点スチールもあり得るプレッシャーのかかるドロー。実際、手前のガードにかすってナンバー4を取るにとどまり、富士急が3点スチール! 6-2となり一気に大優勢となりました。

7エンド

女子準決勝 中部電力-富士急 07エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 6-3の富士急リードで試合は7エンド。後攻富士急のラストストーンは、相手の石をテイクして投げた石は残れば2点取れる場面。ここでまさかのスルー! 思わずテレビの前で「ああーーーーーー」って声を出しましたよ。これを決めてれば勝ってたのに……。決まっていれば2点のところが、逆に1点スチール。差し引き3点を失うショットになってしまった。ここで、すかさずコーチ席にいる西室淳子のおかんむりな表情(←かなりバイアス入ってます)を抜いたNHKの中継はナイス。

実況「西室淳子選手も、なんでそのショットになってしまったんだろうという、悔しそうな顔をしていました」

 しかし、冷静に見れば6-4の2点リードで8エンド後攻だから、まだだいぶ有利。この後、むしろ中部電力の方にミスが出たりして、きわどいシーンもなくそのまま富士急勝利、決勝進出となりました。

女子準決勝 中部電力 - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
中部電力 0 1 1 0 0 1 1 0 1 - 5
富士急   0 0 0 3 3 0 0 3 0 - 9

 この大会の富士急は、結成時からチームを支えていた西室淳子がリザーブに回っていて(大会期間中に妊娠中であることが明らかになった)、チームに加入して間もない現役高校生、小谷有理沙がリードに入り、その影響で石垣真央がリード→セカンド、小谷優奈がセカンド→サード、小穴桃里がサード→フォースと玉突き式にポジションを変更していました。同じオーダーで臨んだ軽井沢国際は、内容は悪くなかったようですが、結果は4戦全敗。「さすがに西室抜きで難しいか」と思っていたので、準決勝に進出してテレビで中継が見られただけでもう満足という気持ちでした(^_^;) それがもう1試合見られることになって嬉しい……(←まだ優勝できるは思っていない)。

決勝 北海道銀行-富士急

3エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 03エンド 赤・後攻北海道銀行 スキップ2投目

 富士急名シーンと言いながら対戦相手のナイスショットも紹介します。先攻・富士急のスキップ2投目でハウスの入り口をふさぐ石を置き(ハウス上部の右の黄)、センターガードの赤を使う道もない。北海道銀行のラストストーンは角度のある難しいランバックを狙うしかない状況。「こんなの決まるわけがない」と思って見ていたら、これが決まってしまう。2点スチールもあり得た大ピンチで2点を取るビッグショット。さすが小笠原歩、ホントに劇場型スキップだなあ。

4エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 04エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 後攻・富士急スキップ小穴のラストストーン。ナンバー1・2・3を見せられたプレッシャーのかかるドローだったが、見事にナンバー1を取る。

9エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 09エンド 黄・後攻富士急 スキップ2投目

 8エンドは2-2の同点。後攻・北海道銀行はラストストーンでブランクもできたが、1点取る方を選択する。

 9エンド1点リードで後攻の富士急。ここはブランクにするか、2点以上取りたい。1点取らされて10エンド同点先攻になってしまうと不利。

 しかし、このエンドは北海道銀行のショットが上回っていて、ラストドローで1点取るしかない、むしろ1点取るのも難しい展開になってしまう。それでも、失敗すればスチールされてしまう厳しいドローを、これも完璧に決める。

10エンド

女子決勝 北海道銀行-富士急 10エンド 黄・先攻富士急 スキップ2投目

 同点で最終エンド。先攻の富士急が勝つにはスチールするしかない。

 先攻・富士急スキップ小穴桃里の2投目。最後のドローの場所を狭くするハウス内ガードを完璧に置いた。

 このあと、北海道銀行はプレッシャーのかかるラストドローをいま置かれた石に当ててしまいナンバー1を取れず、富士急がスチール。富士急優勝。

 4エンドや9エンドもそうだったけれど、今回の富士急はこのような重要な状況でのドローを決めた場面が何回かありました。それまで何回も決めていたドローが、プレッシャーがかかるここ一番で失敗するという場面はカーリングでは頻繁にあります。テイクアウトのような派手さはないけれど、こういうプレッシャーのかかるドローショットカーリングの醍醐味だと思います。今回の富士急はそのドローショットを、チーム内でコミュニケーションを取ってよく決めていました。

女子決勝 北海道銀行 - 富士急
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
北海道銀行 0 0 2 0 0 0 0 1 0 0 3
富士急   0 0 0 1 1 0 0 0 1 2 5

 ところで、この試合の最後は、先にも書いたとおり北海道銀行のラストストーンがナンバー1になれず試合が決まりました。その際、ナンバー1・2が富士急なのは明白なので富士急優勝はストーンが止まった瞬間にわかりましたが、ナンバー3がどちらの石か微妙だったので、選手がその確認をしていました。しかも、実況アナがその状況をうまく伝えることができず、「やったー! 優勝だー!」という感じにならない。もやっとした終わり方になりました。

富士急は世界選手権へ

 日本選手権に優勝した富士急は、3月15~25日にかけて行われる女子カーリング世界選手権にも出場することになりました。あの富士急が世界選手権に出場するとは、楽しみでなりません。今回の世界選手権は、アジアの国が最下位になってしまうと次回の世界選手権のアジア出場枠が1つ減ってしまうそうなので、最下位だけは避けてほしいと思いつつ、世界を相手にどこまでやれるのか楽しみでありつつ。五輪が終わっても忙しくなりそうですね(^_^;)

パシフィックアジアカーリング選手権2017の男子決勝の大逆転劇を詳しく

 前回に引き続き、もう一つ今シーズンのカーリングの話。

 パシフィックアジアカーリング選手権の男子決勝は韓国と中国の対戦でしたが、スコアを見たらこんなスコアでした。

決勝 中国 - 韓国
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
中国   0 1 0 3 1 0 1 0 2 0 8
韓国 0 0 0 0 0 4 0 3 0 2 9

5エンド終了時5 - 0で中国リードから韓国が逆転勝利。5点差逆転はなかなか見ない展開です。しかも決勝戦でこれが出るか。どんな試合だったのかと思って動画を見てみたら、これがすごい試合でした。中国も良いショットを決めていたのですが、韓国がそれを上回るスーパーショットを連発していました。

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6エンド

男子決勝 中国-韓国 06エンド 赤・先攻中国 セカンド2投目

 逆転の端緒となったのは、やはり韓国が4点を取った6エンドです。おもしろい攻防だったので、詳しく紹介します。

 セカンド1投目までの展開は――赤ボタンドロー → 黄左へコーナーガード → 赤センターガード → 黄中央赤へフリーズを狙うが左へずれて後方へ → 赤ずれた黄をピール(投げた石も打った石もなくなるショット) → 黄もう一度中央赤へフリーズ。左やや手前で止まる――で、左の局面の投球前の形になりました。

 赤・先攻中国のセカンド2投目。中央の黄のテイクアウトを狙うが、中央の赤に当たって形が変わる。まあ、ここまではよくある流れでしたが……。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 黄・後攻韓国 セカンド2投目

 黄・後攻韓国セカンド2投目。大量点を取りたい韓国はコーナーガードの裏に置いて得点源になる石を作る。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 赤・先攻中国 サード1投目

 赤・先攻サード1投目。大量失点を防ぎたい中国は相手の石を減らす。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 黄・後攻韓国 サード1投目

 黄・後攻サード1投目。ハウスの奥に置く。それほど強い位置でなくてもテイクアウトされないことが優先。手前に赤があるので出されにくい。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 赤・先攻中国 サード2投目

 赤・先攻サード2投目。中央へドロー。センターガードの裏でTラインの前。理想的な位置かと思ったが……。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 黄・後攻韓国 サード2投目

 黄・後攻サード2投目。相手の石だけ3つはじき出して自分の石は3つとも残すスーパーショット。しかも投げた石もコーナーガードの裏。大量点の形を作った。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 赤・先攻中国 スキップ1投目

 赤・先攻スキップ1投目。センターガードの裏へのドローを狙ったが、ガードに当たってしまう。

 ここで韓国はタイムアウトを取った。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 黄・後攻韓国 スキップ1投目

 黄・後攻スキップ1投目。せっかくタイムアウトを取ったのに、センターガードの裏を狙ったショットは、はるか手前で止まってしまうミスショット。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 赤・先攻中国 スキップ2投目

 赤・先攻スキップ2投目。センターガードの裏で相手の石の前に置いてナンバー1を取る。黄としては、この手前に置いて1点を取ってもしょうがないので、打ち出しに行くしかない。後ろの黄がバックガードになっているので難しいかと思ったが……。

男子決勝 中国-韓国 06エンド 黄・後攻韓国 スキップ2投目

 黄・後攻スキップ2投目。見事にバックガードをかわして打ち出して、しかも投げた石は止める。黄・韓国が4点取って一気に試合はわからなくなった。

 赤の中国としては、サード2投目あたりから、とにかくテイク・テイク・テイクで、できれば2点、最悪でも3点に抑えるという作戦に切り替えた方が良かった気がします。まあ、この大会で優勝してもメリットないので、これが平昌五輪だったら違う作戦をとったよという話なのかもしれませんが……。

 この試合、このあともおもしろい攻防が続きました。

8エンド

男子決勝 中国-韓国 08エンド 黄・後攻韓国 サード1投目

 7エンドは中国に1点取らせて、再び黄・韓国後攻で8エンド。

 このエンドは韓国にスルーがあったりして、途中まではビッグエンドになるようにはとても見えませんでした。セカンド2投目終了時で左の図の投球前。センターガード3つの裏で赤が縦にナンバー1・2。完全に赤の形かと思った。しかし、黄はたった1投で打開する。

 黄・韓国サード1投目。ガードの石の中の石もすべて吹き飛ばすテイクアウト。

男子決勝 中国-韓国 08エンド 黄・後攻韓国 サード2投目

 それでも赤・先攻サード2投目はガードの裏に再び置いていい形を作り返すが、またもスーパーショットが出る。

 黄・後攻サード2投目。ランバックからのダブルテイクアウト。しかもランバックに使った石はコーナーガードの裏で味方の石へフリーズ。実況の外国人も

「Wow!」
「Hahahahahahahahahahahahaha」

って笑ってたよ。

 このエンドは黄の韓国が3点を取る。5エンド終了時は0-5から、8エンド終了時で7-6と逆転した。

10エンド

男子決勝 中国-韓国 10エンド 黄・後攻韓国 スキップ1投目

 9エンドは中国がきれいに2点を取って再び逆転。中国8-7韓国。最終エンドで1点ビハインド側が後攻という、カーリングで最もきわどい展開。

 先攻スキップ1投目まで終えて、赤・中国がナンバー1・2。しかもナンバー2は前後を石に挟まれて打ち出されにくそう。赤が優位かと思ったが、黄・後攻韓国スキップ1投目。ナンバー1を打ち出し、角度を変えてナンバー2も押し出す。

男子決勝 中国-韓国 10エンド 黄・後攻韓国 スキップ2投目

 中国も負けていない。赤・スキップ2投目で再び前後を石に挟まれたいい位置にナンバー1を置く。これを外に押し出してナンバー1・2を取るのは難しいかと思った。

 しかし、黄・後攻韓国スキップ2投目はまたも中国を上回る。ナンバー1を横に少し押し出して、投げた石は中央でナンバー1。ナンバー2は微妙だったがメジャーで黄。このエンド2点を取って韓国が逆転勝利、PACC優勝となった。 

決勝 中国 - 韓国
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
中国   0 1 0 3 1 0 1 0 2 0 8
韓国 0 0 0 0 0 4 0 3 0 2 9

余談

 ……というようなすごい試合だったのですが、最後の最後でツッコミどころが2か所。

 その1。赤・先攻中国のスキップ2投目は先ほども紹介したようにナイスドローだったのですが、なんと黄色の石を投げてました。石の色を間違って投げるのは何回か見たことありますが、この大詰めでやるか? 石を入れ替えて何事も無かったかのように試合再開しました。

 その2。ラストストーンは先ほども紹介したようにメジャーになったのですが、韓国のスキップがメジャーの最中にトイレ?に行きました。判定が出て勝敗が決まって相手と握手しているときにアイスの上にいないという珍事態。戻ってきて、中国チームが帰りかけているところをあわてて追いかけて握手していました。

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