REALFORCEのスペースキーが長くなってしまった喜びも悲しみも

新世代REALFORCEが発表されたが……

 先日、東プレの高級キーボード「REALFORCE」(リアルフォース)の第2世代となる「REALFORCE R2」が発表されました。*1

東プレ REALFORCE R2 日本語108配列 静電容量無接点方式 USBキーボード 変荷重 昇華印刷 かな表記あり アイボリー R2-JPV-IV

 REALFORCEは自分も愛用しているキーボードです。もう10年以上使っています。だからこのリニューアルは自分も注目するところですが、一番気になるのがスペースキーが長くなったこと。いや、「気になる」なんて生やさしいものではありません。「あり得ない」レベルです。これだけでもうREALFORCEはキーボードの選択肢から外れました。さようなら。日本語キーボードの良いところは[無変換]と[変換]があることなのに、それを打ちにくくしてどうするの。[スペース]だけ打ちやすくなってもしょうがないじゃん。

 自分の感想はそんな感じですが、当然東プレだってスペースキーが長い方が売れると判断したからそうしたわけで、スペースキーが長くなったことを歓迎する声もあります。上記でリンクした記事のはてなブックマークを見ても、賛否両論入り乱れています……、と書こうと思ったら、長いスペースに否定的なコメントの方が明らかに多かった(^_^;) まあ、こういうコメントは否定的な意見の人の方が積極的にするものだし、Twitterでも「スペースが長くなって嬉しい」のようなツイートも見かけるので(「スペースが長くなって悲しい」のようなツイートはもっとよく見かけるけど)、賛否両論あるのは間違いないでしょう。

親指で押せるキーは多い方がいいに決まってる

 なぜ、スペースキーが長い日本語キーボードはダメなのか?

 それは、無変換キーと変換キーが親指で打ちにくくなるからです。ほかの指が文字キーを複数担当して忙しく動き回る中、親指はほかの指とは別の流れでキーボード最下段のキーを担当できる貴重な指です。その活用がスペースキーだけに限定されるなんて、なんともったいない。

 英語キーボードのスペースキーが長いのは納得できます。英文入力ではスペースを入力する機会は頻繁にあります。親指の活用はスペースの入力だけでも十分かもしれません。

 しかし、日本語入力の場合も変換操作でスペースキーは使いますが、英文でのスペース入力ほどの頻度ではありません。なにより変換操作があるので、英文入力の場合よりも求められる操作が多くなります。だから[無変換]と[変換]があるのです。[スペース]とあわせて[無変換]と[変換]を活用できてこその日本語キーボードです。日本語キーボードの長いスペースキーなんて、そのメリットを自ら手放していて愚かとしか言いようがありません。

無変換キーにも変換キーにもろくな機能が割り当てられていない

 ただね。

 こう書くと、長いスペースキー肯定派の人たちはこう反論するでしょう。

 「無変換キーと変換キーなんて何に使うの?」

 そうなのです。初期設定では[無変換]と[変換]にはろくな機能が割り当てられていないのです。*2

Microsoft IMEのキー設定画面。初期設定

無変換キーと変換キーの機能は無くてもいいものばかり

 [無変換]は入力中に押すと入力した文字を「カタカナ→半角カタカナ→ひらがな」に変換します(「かな変換」)。これは多少使える機能ですが、カタカナ変換は[F7]や[Ctrl] + [I]でもできます。そうやって1回変換すれば次からは通常の変換でカタカナに変換できます。そもそも、普通のカタカナ語なら通常の変換でも候補に出てきます。

 [無変換]は変換済み(確定前)の文字をひらがなに戻すときにも使います。これこそ「無変換」というキー名らしい機能ですが、そもそもひらがなで入力したいなら変換せずに確定すれば済むことです。変換してしまったとしても、何回か変換すればひらがなの候補も出てきますし、ひらがな変換は[F7]や[Ctrl] + [U]という操作でも可能です。*3

 [変換]はさらに使い道がありません。ほとんど[スペース]と同じ機能です。「変換」とは名ばかりで、変換操作に使用する必要がありません。数少ない[スペース]と違う機能が「再変換」です(確定済みの文字を確定前の状態に戻す)。これは便利な機能ですが、そんなに頻繁に使うわけでもないですし、[変換]という一等地のキーを使うほどの機能ではありません。

 と言うように、[無変換]と[変換]はあまり使いません。使わなくても何とかなります。一方で、[スペース]は変換操作で頻繁に使います。だったら、大して使わない[無変換]と[変換]なんて脇に追いやって[スペース]を長くした方がいいじゃないか、という意見ももっともです。REALFORCE R2シリーズがスペースキーを長くしたのも納得できると言わざるを得ません。

 「長いスペースキーの方が良いなら英語キーボードを使えばいいじゃない」と思わなくもないですが、「[変換]と[無変換]は多少押しにくくてもいいけど無いのは嫌なんです」とか「(日本の)デファクトスタンダードから離れるわけにはいかない」という気持ちも分かるのでしょうがない。

[無変換]と[変換]をキーカスタマイズしよう

キーボード図の一部。[無変換]を[←]、[変換]を[Enter]、[ひらがな]を[→]に変更している
[無変換]を[←]、[変換]を[Enter]、[ひらがな]を[→]に変更

 では、スペース短い方が良い派は、なんで大して使わない[無変換]と[変換]が打ちやすいことにこだわっているのか? それは、『KeySwap for XP』のようなキーカスタマイズソフトを使って、[無変換]と[変換]を別のキーとして使うからです。*4

pasokatu.com

 先ほども書いたとおり、日本語の入力では変換操作があるので文章入力中にやりたい操作が英文より多くなります。また、変換操作に限らなくても、使いこなすと便利なのに押しにくい位置に配置されているキーがたくさんあります。これを親指で押せるようにするのです。

 具体案をいくつか挙げます。*5

案1:[無変換] → IME-オフ [変換] → IME-オン

 IMEをオンにするキーとオフにするキーを別々に設定します。IME-オン/オフにすれば1キーで済むじゃないか、と思うかもしれませんが、文字入力を始める時に「いまIMEオンかオフか」は瞬時にはわかりづらいものです。IMEオンとオフを別々に設定して、「英数文字を打つ時は[無変換]を押してから打つ」「日本語を打つ時は[変換]を押してから打つ」と決めてしまえば、IMEのモード違いに悩むことがなくなります。

案2:[無変換] → [Ctrl] [変換] → [Shift]

 [Ctrl]は、コピペやアンドゥ、上書き保存などで大活躍するキーです。文字入力中も[Ctrl] + [I]のカタカナ後変換や[Ctrl] + [U]のひらがな後変換など便利な機能も多い。しかし、[Ctrl]はキーボード右下隅と左下隅というかなり押しにくい場所に配置されています。[Ctrl]を親指で押せるようにすれば、[Ctrl]を十分に活用できるようになります。

 [Shift]も、アルファベットの大文字の入力や、かな入力を使う場合の小書きのかなの入力で大活躍するキーですが、小指で押す[Shift]は押しやすいとは言えません。弱い小指を酷使するのも問題。そこで[Shift]を親指で押せるキーに配置します。小指と比べて親指の[Shift]はホームポジションが維持しやすいのも利点です。

案3:[無変換] → [BackSpace] [変換] → [Enter]

 [BackSpace]は文章入力中に非常によく使うキーなのに、右上隅というとんでもなく遠い位置に配置されています。これを近くに置くだけでも文章入力の快適さは別次元。キーボード入力初心者にはとっては、ミスをすぐに修正できるのでミスを恐れずにキーを押せるようになるのも良い点です。

 [Enter]は変換確定や改行で文章入力中もよく使います。「左手親指の[スペース]で変換して右手親指の[Enter]で確定」という流れも心地よいです。

案4:[無変換] → [←] [変換] → [→]

 [無変換]と[変換]に矢印キー(カーソルキー)の左右を割り当てます。ひと目奇妙に思えるかもしれませんが、これがキーの位置と画面上の動きがかみ合っていて意外としっくりくるのです。矢印キーの左右は、変換中は文節移動や文節伸縮に使いますし、文章の少し前の部分にカーソルを動かして修正するなど使い道が多く、ホームポジションから押せる価値が高いキーです。

 このようなキーカスタマイズをすると、キーボード入力の効率が格段に上がります。キーカスタマイズが十分に機能するには[無変換]と[変換]が押しやすいことが必須なので、スペースキーが長いキーボードを見ると悲しい気持ちになるのです。

 キーカスタマイズをしている人というのはどう考えても少数派ですから、キーカスタマイズを前提としてスペースキーを短くしろと言うのは無茶だな、と思っていました。しかし、REALFORCE R2シリーズのスペースキーが長くなったことの反応を見ていると、キーカスタマイズを前提に話をしている人が意外と多くいました。キーカスタマイズをしている人は、全体では少数派でしょうが、REALFORCEのような高級キーボードを買う層に絞った話なら、意外と無視できない数が存在するような気がします。

 いまキーカスタマイズをしていないという人も、これを機会にキーカスタマイズをしてみませんか? キーカスタマイズソフトはフリーソフトでも良いものがたくさんあります。キーカスタマイズ案もググるとたくさん出てきます。キーボード全面を変更するような大幅なカスタマイズ案も多くありますが、今回紹介したような「[無変換]と[変換]を別のキーに置き換えるだけ」のようなささやかなカスタマイズでも十分に効果があります。

キーカスタマイズしたフルキーボード図。半数以上のキーがカスタマイズされている

キーカスタマイズの例

自分の場合のキーカスタマイズ

 ちなみに、自分のキーカスタマイズは次の通りです。[ひらがな]まで親指担当キーとして、[無変換]と[スペース]は左親指担当のキー、[変換]と[ひらがな]は右手親指担当のキーとしています。

  • [無変換] → [←]
  • [スペース] → [スペース]
  • [変換] → [Enter]
  • [ひらがな] → [→]

 要するに、「親指Enter」と「親指左右カーソル」を両方採用した形です。変換操作は左手親指の[スペース]で変換して右手親指の[Enter]で確定。これに「親指左右カーソル」を加えます。変換→確定の操作に流れができて、文節移動やちょっと前後の文字を修正したくなった時のカーソル移動が親指キーでできて、とても快適ですよ。

 なお、キーカスタマイズは他にもたくさんしています。詳しい内容は次のページに書きましたので、興味のある方はぜひ。

y-koutarou.hatenablog.com

 今回のこの文を書いて、改めてPCの使いやすさというのはキーカスタマイズに支えられていると認識しました。とにかくキーボードの機能は初期設定が使いにくすぎる。キーカスタマイズは必須。したがって、スペースの長いキーボードは話にならない。先日、東京ゲームショウ2017でREALFORCE R2を触ってきたのだけど、やっぱり長いスペースキーはありえねーわ、と思った*6。キーの打ちごこちは東プレのREALFORCEが最高だと思ってるので、ホントに何とかなりませんか? キートップを差し替えてスペースキーを長くも短くもできるとか。うまく工夫すればできる気がするんですけど。

2017/10/28(土)追記:「愛と哀しみの変換キー」

 とても共感できる記事があったのでリンクします。

pc.watch.impress.co.jp

2017/12/21(木)追記:REALFORCE 108US SJ38D0を買った

 その後、REALFORCE 108US SJ38D0を買いました。R2が発売されだしている最中に旧世代を買うヤツ。

y-koutarou.hatenablog.com

*1:REALFORCE R2発表の記事リンク集

*2:なお、以下の説明は『Microsoft IME』の場合の話です。IMEによって割り当てられている機能は多少異なりますが、ろくな機能が割り当てられていないという点は似たようなものです。

*3:[無変換]には他に、IMEのモードを「ひらがな→カタカナ→半角カタカナ」に切り替えるという機能もあります(「かな切替」)。しかし、IMEオンにすることができないので中途半端ですし、IME操作は[半角/全角]・[英数]・[ひらがな]でもできます。4キーもあるくせに重複する機能が多くて役割分担がうまくできていないひどい設計。

*4:割り当てる機能によっては、キーカスタマイズソフトを使うまでもなく、IMEのキー設定(キーカスタマイズ)機能を使った方が簡単な場合もあります。

*5:なお、[変換]を置き換えた場合の英数入力中の変換([スペース]はスペースの入力になる)は[Shift] + [スペース]でできます。「再変換」はIMEのキー設定で別のキー、例えば[Shift] + [変換]や[Shift] + [Enter]あたりに割り当てておけば良いでしょう。

*6:でも、All 30gの打ち心地はやっぱりいいわぁ……とも思った(いま使っているのはAll 45g)。うっとり。店頭から無くなる前に買っておこうかしら……。いま使っているREALFORCE買ってから10年経ってるし……。そろそろいいのでは……。壊れたわけではないですが……。

東プレ キーボード REALFORCE108US 日本語配列 USB 有線接続 静電容量無接点方式 昇華印刷 ALL30g ホワイト SJ38D0

 買うとしたら、これかな。108キー荷重All 30gホワイトバージョン。右手一列シフトをしている関係で変荷重は不向き。テンキーは自分は使うのであった方が良い。黒もあるけど、本体色は白の方がいいな。キートップに油性マジックで書き込みしたりするので。

 

 ちなみにいま使っているのはこれ。108キー荷重All 45g。当時はWindowsキーアプリケーションキーが付いていてテンキー付きのモデルはこれしかなかった。

 

歩行者はどこを歩く?

 前回に引き続き自転車の話をもう少し。「自転車で車道の左端を走るぞ!」と固く決意して走り始めると、その決意をぐらつかせるのが車道の左端にある2つの“障害物”の存在です。

y-koutarou.hatenablog.com

駐車車両を避ける技術は必須

 障害物の1つは駐停車している車です。道路の左端にはとにかく駐車している車が多い。車道の左端を車がふさいでいると、自転車は右の方に出て行かざるを得ません。車道の左端を走っている限りはそれほどの危険は感じないのですが、止まっている車を避けて右に出ようとすると途端に大きな恐怖を感じます。

 まず、後方を振り返って車などが来ないことを確認します。その後、十分手前からゆっくりと右側に出ていきます。止まっている車の陰から人が飛び出してくるかもしれないし、ドアが突然開くかもしれません。したがって、止まっている車からは十分な距離を取りたいところですが、そうすると車線をはみ出してしまうこともあります。片側一車線の場合は対向車にも注意しないといけません。飛び出す人や突然開くドアに対応するために速度を落としたいところですが、後ろから車が追いついてくると速度も必要になります。片側二車線以上ではみ出さなければならないときは、中途半端にはみ出さずはっきりはみ出した方が良いと思います。止まっている車が大型車だと、対向車が来ているか、止まっている車がその1台だけなのか連なっているのか見通しにくい。止まっている車が突然動き出すこともあります。とにかく神経を使う状況になります。こんな怖い思いをするくらいなら歩道を走った方がましだと思うこともありました。

 とはいえ、これはある程度仕方ないのかな、とも思います。違法駐車は論外でバンバン取り締まっていただきたいです。しかし、違法駐車が無かったとしても、道路の左端に止まっている車がゼロになるということはないと思います。そういう状況は多かれ少なかれ遭遇することになるので、「道路の左端に止まってしている車を安全に避ける技術」は、自転車に乗る人が身につけなければいけない技術である、ということになると思います。バックミラーを付けるのもいいですよ。

車道上には歩行者がいる

 車道の左端を走る上でのもう一つの障害物が、歩行者です。車道には歩行者がたくさんいます。『新・自転車“道交法”BOOK』は良い本ですが、納得いかないのが99ページの記述です。そこには次のように書かれています。

考えたら、私はこれまでベルを鳴らしたことがない。法律で決まっているのでベルを付けているが、まったく無用の長物である。使う場面に遭遇しなかったのが幸いなのだが、ホントにいるのかなと首を傾げないではいられない。

ベルを鳴らしたことがないって本当ですか? 自分は鳴らしたくなる場面によく遭遇します。もちろん、歩道でチリンチリン鳴らして歩行者を蹴散らす、なんてことはしませんよ。鳴らしたくなるのは車道にいる歩行者に対してです。

 歩道が混んでいるわけでもないのに、縁石から降りて車道を歩いている人がいます。横断歩道のない場所で車道を横断する、しかも、車が切れるタイミングは注意して見ているのに、ちょうど自転車にぶつかるタイミングで横断し始める人がいます。信号待ちで、歩道の端ギリギリに立つのはまあいいけど、完全に車道に出て立っている人がいます。道の両側に路側帯のある道路で、路側帯がふさがっているわけでもないのに、左右の路側帯は開けて車道の中央に3人横に並んで歩いている人がいます。何なのこの人たち。これらの歩行者に対してベルを鳴らしてはいけませんか?と憤るわけです。

 これは、歩行者にとっても「自転車は車道の左端を走る」という意識がないのが原因だと思います。自転車は歩道を走ると思っているので、すると車道の左端は何も通らない場所だから、そこを歩いたり立っていたりしても問題ないと思ってしまう。車道の車には注意するけど、自転車が車道を走るという意識がないから、車道の自転車なんか注意しようとも思わない。「自転車は車道の左側」というルールは、自転車に乗る人だけでなく、すべての人に意識づける必要があるのだと思います。

歩行者の交通ルールって知ってる?

 そんな風に考えたりもするのですが、少し冷静になって自分のことを考えると、自転車の交通ルールを知らなかったこともさることながら、歩行者の交通ルールも知らないな、ということに気がつきました。本当に歩行者は道路の横断はしてはいけないの? 歩道がある道路で車道を歩くのはダメなの? 路側帯のある道路の場合は? また、小学生のころ「道路の右側を歩きましょう」と教わった覚えがありますが、これは日本一守られていないルールのような気がします。そもそも、「右側」とは何に対する右側なのか。道路全体? 歩道の中?

 というわけで少し調べてみました(以下の条文はすべて道路交通法です)。

歩行者は右側通行?

 歩道も路側帯もない道路では右側通行(10条)。歩道や路側帯が道路の片側にある場合は左右に関係なくそちら側(10条2項)。両側にある場合はどちらでも可。道路の右側の歩道や路側帯を使う義務はない。また、歩道や路側帯の中で右側を通るという法律はない。

 「歩行者は右側」というのはかなり限定的な話のようですね。日本一守られていない法律であることには変わりないと思うけど。

(通行区分)
第十条  歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。

2  歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。

一  車道を横断するとき。
二  道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。

歩道や路側帯のある道路で車道を歩いてもいい?

 ダメ。「道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。」はOKだけど(10条2項2号)、それ以外はダメ。歩行者は、歩道があるなら歩道内、路側帯があるなら路側帯内を歩く必要がある。

 これは思っていたとおり。意外な部分はありません。しかし、実際はかなり守られていないのは先ほども書いたとおり。

歩行者は車道を横断してもいい?

 「横断禁止」と書かれている場所は横断不可(13条2項)。車のすぐ近くで横断するのは不可(13条1項)。横断歩道が近くにあるときは横断歩道を使う必要がある(12条1項)。斜めに横断するのは不可(12条2項)。

 車側から見ると(自転車も同じ)、横断歩道があるところはもちろん歩行者優先。横断しているときだけではなく、横断しようとしているときも歩行者優先(38条1項)。横断歩道のない交差点でも歩行者が横断しているときは歩行者優先(38条の2)。横断歩道もなく交差点でもないところでも車側が歩行者と安全な間隔を保つ必要がある(18条2項)。

 これは意外な結果。歩行者が車道を横断できない場合を4つ挙げましたが、逆に言えば、これ以外の場合は車道を横断できるということです。かなりの場合で横断して良いことになる気がします。車のこないタイミングを見計らって道路を歩いて横断するのはOKなんですね。それに、交差点なら横断歩道がなくても歩行者優先なんですね。本当にこれでいいの?

 まあ、車側も横断歩道で横断しようとしている歩行者がいるときに、必ず一時停止して歩行者を優先させているかと言われればそうでない光景もよく見ますけど。これからは、車道を歩いている歩行者に文句を言うからには、自転車走行中は横断歩道では絶対に歩行者を優先させよう、と反省しました。

(横断の禁止の場所)

十三条  歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。

2  歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。


(横断の方法)

第十二条  歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。

2  歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。


(横断歩道等における歩行者等の優先)

第三十八条  車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。


(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)

第三十八条の二  車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。


(左側寄り通行等)

第十八条 2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。

参考サイト

自転車はどこを走る?

 『新・自転車“道交法”BOOK』という本を読みました。

 この本は、もともとは2012年3月10日発行の『自転車はここを走る!』という本でした。それが再編集されて、2014年2月20日発行の『自転車“道交法”BOOK』になり、そして再・再編集されて2017年5月30日発行の『新・自転車“道交法”BOOK』になりました。2~3年おきに再編集されていることになります。ところどころ最新の情報に更新された部分がありますが、基本的には同じ内容です。私は全部買ったけど。まあ、「ところどころ最新の情報に更新」の部分も大事ですけど。

 本の内容は、『自転車はここを走る!』と『自転車“道交法”BOOK』の冒頭の「プロローグ」に書かれている「自転車の4つの走り方」が一番良く表していると思います。この部分では、日本の交通環境には、自転車の走り方には次の4つがあると書いてあります。

  1. 「法律」で定められた走り方、
  2. 現実的に見える走り方
  3. 安全を担保した「妥協案」としての走り方
  4. ルールと道路整備を行った上での「理想」
自転車“道交法"BOOK (エイムック 2789)

 法律的には、よく言われているように「車道の左端」を通るのが原則です。しかし、実際に自転車で走っていると「この道路、『車道の左端を自転車が通る』ことを考えてないだろ」と思える箇所によくぶち当たります。そういう場面で、法律的にそれほど逸脱せず、安全面を確保して、利便性もそこそこあるという走り方はどのようなものか。この本ではそれを十字路・Y字路・バス専用レーン・駐車車両などのケース別に紹介しています。法律的にどうかだけでなく、「法律的にはグレーだけど現実的にはこう走った方が良い」ということが書いてあるのが本書の最大の特徴だと思います。

 ところが、最新版の『新・自転車“道交法"ブック』では、今まで冒頭に書いてあった「自転車の4つの走り方」の話が無くなっています! 代わりに、自転車活用推進法の話が入りました。たしかに、自転車活用推進法が成立したのは自転車界にとって大きなトピックだと思います。しかし、この本を読んで知りたいのは、現実的に自転車でどう走るのが良いのかという話です。この法律によって道路の状況が大きく変わるのかもしれませんが、それは変わったら教えてくださいという感じです。自転車活用推進法の話を書いてもいいですが、それは「第5章」を作ってやる話ではないですか? 少なくとも「自転車の4つの走り方」を差し替えてやる話じゃないでしょう。

 前書き部分の「自転車の4つの走り方」の話がなくなってしまったので、今までの経緯を知らずにこの本を初めて手に取った読者には「この本は何を言いたい本なのか?」が伝わりにくくなったと思います(あと、目次も今までより省略されててどこに何が書いてあるかわかりにくい)。

 とはいえ、メインの内容は前版までとほとんど同じなので、今までどおり自転車を走る場合に役に立つ内容なのは間違いないです。


自転車はここを走る! (エイムック 2344)

 実は、自分も自転車に乗るようになりました。かつては自転車を使うのはせいぜい2~3km程度でしたが、ここ5年くらいは10kmくらいなら自転車で行く。ママチャリで(^_^;) クロスバイクを買った方が良いのかもしれないけど、ママチャリでも結構行けるので。自転車で行くにはいくつか条件があって、天気が良いことと、体調が良いこと、目的地に駐輪場があることが確認できていること。5年前というと『自転車はここを走る!』が発売された時期と重なります。この本に触発されて……というわけではないのだけど。自転車で遠出し始めたころによく読んだのは確かです。

 走り始めるにあたって、「道路の左端を走る」と「信号は絶対守る」を心に決めて走り始めたわけですが、実際に走ってみると最初のうちはわからないことがたくさんありました。「“自転車横断帯”があるときはそこを通るの?」「“自転車歩行者専用”信号があるときはそれに従うの?」「左端のレーンが左折専用レーンになっているとき、左折専用レーンを走ったまま直進していいの?」などなど戸惑うことばかり。そんなとき、『自転車はここを走る!』の記述は大変参考になりました。

 当時を思い返すと、「交通ルールのことが全然わかってなかったな」と思います。「自転車は車道の左側を走るのが本来は正しい」というだけでわかったような気になっていましたが、実際に走ってみると迷うことだらけ。よくこんなので自転車に乗ろうと思ったなと思います。

 最初のうちは「車道を通るのはなんとなく怖いな」と思っていましたが、今では「歩道を自転車で疾走するなんて危険すぎる」という感覚になりました。それと、「自転車は道路の左端を走る」というのは、幹線道路を走るときはもちろんだけど、むしろ車の対面通行がギリギリできる程度の生活道路で安全に走るために必要だと思うようになりました。自転車の交通ルールや安全に走るための知識は、自転車で10km以上移動するような人だけに必要なのではなく、数キロの移動に自転車を使うような人にも必要です。だから、この本の程度の知識は自転車に乗るすべての人に持ってほしい、と思います。

 最後に、自転車を使う人に特に言いたいこと。道路の左端を走ろうというのももちろんですが、それよりなにより信号を守ろうということを第一に言いたい。車や歩行者にも気になる点はありますが、自転車の信号無視を見る頻度はあまりに多い。これはママチャリ、スポーツ自転車を問わず多いです。黄色から赤に変わりかけたところで突っ込むとかならまだわかるけど、完全に赤信号で突っ込むのは理解できない。自分が赤信号で止まっている後ろからでも、なんの躊躇もなく追い抜いていくからね。車も100%ルールを守っているかと言われればそうでもないと思いますが、信号無視をしている車は滅多に見ません。どんなに空いている道でも信号はほぼ100%守っています。自転車も最低限、信号くらい守りましょうよ。実際に待ってみると、信号1サイクルの時間くらいどうってことないですよ。

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バックギャモンフェスティバル2017に行ってきた

 バックギャモンフェスティバル2017に行って、初級戦に参加してきました。開催期間は5/3(水)・5/4(木)・5/5(金)の3日間です。

www.backgammon.gr.jp

 と言っても、最初は初級戦は参加しようかどうか迷っていたんですけどね。参加費高いし、ボード触ったことないし、ダイス持ってないし。それでも、実際のボードにも一度はさわってみたいな、と思って大会サイトを見ていると、「初心者体験コーナー」というものがあることを発見。これだと無料で参加できるようなので行ってみることに。

 ちなみに、自分のバックギャモンのプレイ経験は、古くはファミコンディスクシステムの『バックギャモン』でルールを覚えた。最近はフリーソフト『GNU Backgammon』をプレイしている。以上。したがって、実際のボードでプレイしたことはないし、人との対戦さえほとんどありません。『バックギャモン・ブック』は読みました。

 会場は「大崎ブライトコアホール」。今年からこの会場になったそうです。こういうときは会場への道のりで迷うのが私の定番です。今回は大崎駅から目的地の建物までは迷いませんでしたが、「大崎ブライトコア」に入ってから迷いました。広く静かな空間でイベントをやっている感じがまったくしない。しばらく歩き回って、やっぱりエスカレータを上がった3階が「大崎ブライトコアホール」だよなあ、間違ってまじめな会議とかに入ったらやだなあ、と思って入ったらそこで正解でした。入り口に看板でも出しておけばいいのに。そういえば、バックギャモン・フェスティバルは毎年秋の開催だった気がしたのですが、今年からゴールデンウィークの開催になったようです。

 「初心者体験コーナー」は、大会公式サイトでは12時、14時、16時と書いてありますが、実際は教えてもらいたい人がいたら随時、という感じに見えました。手の空いた選手?の方とスタッフ?の方に駒や方向の決め方や、駒の並べ方、ダイスの振り方などを教えていただきました。実際のボードを使ったことがないと、こういうところがわからない。途中からはプレイ内容の方も少しレクチャーが入りました。自分として当然と思える手が良くない手だと理由付きで教えてもらえるのはありがたかったです。『GNU Backgammon』やってると、エラー-200点とかついても理由がまったくわからないとかあるからね……。

プレシジョンダイス 19mm 4カラー 4個セット

 それはともかく、プレイ内容の方では「初級戦なら優勝するんじゃない?」「10位以内は入れる」「中級戦に出てもいい」など言われて調子に乗って、ボードでのプレイもやれそうだったので、初級戦に参加することにしました。参加費は3000円ですが、初級戦の参加者は発売したばかりの『バックギャモン・ブック 改訂新版』(1800円+税)がもらえます。バックギャモンをプレイするなら必携の本なので実質参加費1000円みたいなものです。それと、大会に参加するには「プレシジョン・ダイス」という精密に作られた特別なサイコロが2個必要です。会場で販売していたので購入しました。1個1100円なので2個で2200円。あと、対戦結果は自分でシートに記入するので、筆記用具も持っていった方がいいですね。

 初級戦は13時からの予定でしたが、想定以上の参加者数だったようで準備が追いつかず、10分ほど遅れてスタートするというアナウンスがありました。対戦記録のシートも急遽印刷したのか、他の人のシートは裏面に注意事項などが書かれていたようでしたが、自分のシートは白紙でした。大会スタッフの「この世の終わりだ」というつぶやきが聞こえてきました(^_^;) 結局、初級戦の参加者は66人。過去最高の参加者数だったそうです。

 大会形式は、1ゲームの試合を対戦相手を変えながらできる限りおこなうというもの。ダブリング・キューブはなし。ギャモン勝ち、バックギャモン勝ちはあり。試合が終わったら受付に対戦記録シートを持っていって、ほかの試合が終わった人との対戦が組まれます(基本的に一度対戦した相手とは対戦しません)。それを時間いっぱいまで繰り返します。ボードはたくさんあるので、ほぼ待ち時間なしでプレイできます。大会参加者は老若男女さまざま。女性もいましたし(自分が対戦した12人中4人が女性でした)、男の子、女の子、外国人もいました。

BACK GAMMON(バッグギャモン)

 実際のボードでプレイするのは先ほどレクチャーを受けたばかりでしたが、手続き的なことでは大きなトラブルはなくプレイできました。最初は駒の初期配置も自信ないくらいでしたが、後半は早くも慣れてきました。あやふやなところは初級者同士、対戦相手と確認しながらという感じで進行しました。

 しかし、ゲームの方は大変。まず、盤面を見られない。PCの画面よりボードの方が大きいので、ボード全体を視界に入れるのが大変です。プレイの方向は(PCでは)一応どちらでもプレイしていましたが、実際にやってみたらどちらも慣れない感じがしたというのが正直なところです。また、駒をサイコロどおりに動かすのが大変。1マスずつ確認して動かすこともしばしば。それと、バックギャモンではサイコロを拾い上げるまでは(時計を使わない場合)駒を動かしてみてから戻して別の手を選んでもいいのですが、それをやると駒を元に戻せなくなります。戻せないからもうこの手でいいや、とか(^_^;)

 大会時間は3時間弱でしたが、ほぼ休みなくプレイしました。大会が始まる前にトイレに行っておこうか、でももう始まりそうだから少し試合をこなしてから行けばいいかと思っていたのですが、いざ始まったら休憩することも忘れてました。気がついたら3時間経っていた、という感じです。プレイしている間はあっという間ですが、終わったとたんにどっと疲れました。キューブなしでこれだからね。これでキューブアクションを考えたりピップカウントをしたりすると大変だろうなあ。それと、トイレに行ったあとで気がついたけど、会場と同じフロアにもトイレありましたね。2階まで降りていってました(^_^;) なお、飲食は、試合会場の部屋ではできませんが(ペットボトルなどは可)、部屋の外では飲食もできます。椅子とテーブルも少しあります。

カルカソンヌ

 初級戦の結果ですが、自分は+5点で6位(たぶん。ちょっと記憶があいまい)でした。3連勝スタートだったのですが、そこから3連敗。あとは一進一退でしたが、最後に連勝してこのスコアに。良い結果でしたが、プレイ内容が良かったかどうかは……。サイコロを拾った瞬間にあっと気がついたミスもあったし、相手のプレイも、自分が思ったとおりの手か、自分でも何が良いのかわからない手ばかりでした。結果的にギャモン勝ち1回、ギャモン負け0回だったので、ランニングに走りすぎていたのかもしれません。6位の賞品は『カルカソンヌ』というボードゲームでした。賞品は入賞(たしか11位以上)だけでなく、ブービーキリ番、ゾロ目などさまざま用意されています。優勝は+7だったそうです。

 初級戦は5/4(木)と5/5(金)にも開催されるので、興味がある方は行ってみてはいかがでしょうか。5/4(木)は「ウェルカムカップ」というものも開催されるそうです。

カーリング実戦・次の一手 世界選手権2017男子編

 カーリング男子世界選手権2017が終了しました。日本は前回の4位を上回るメダル圏内をめざしていましたが、5勝6敗で12チーム中7位という結果に終わりました。上位チームにはことごとく勝てず、特に優勝したカナダとの試合は手も足も出ない完敗となり、世界との差を見せつけられる大会となりました。

 とはいえ、平昌五輪出場は決定。男子カーリングの五輪出場は1998年長野以来で、自力で出場権を取ったのは初めて(長野は開催国枠だったので)。これで平昌五輪は日本は男女とも出場できることになり、来シーズンがますます楽しみになりました。NHKの充実の中継にも期待したい(^_^)

 さて、昨年のカーリング女子世界選手権2016に続き、男子世界選手権2017を題材にカーリング実戦・次の一手を作ってみました。自分が印象に残ったシーンから、今回は全部で8題作ってみました。画像をクリックすると拡大表示されます。それと、NHKの特設サイトWorld Curling TVからその場面の動画があった物はリンクしておきました。しかし、意外とハイライトになっている場面が少ない(´・ω・`)

予選 日本(赤) - (黄)イタリア 3エンド

日本(赤)1 - 2(黄)イタリア 3エンド 後攻(赤)スキップ2投目前

赤1 - 2黄 3エンド 後攻(赤)スキップ2投目

 イタリアのスキップ2投目は赤の裏へのヒットロールを狙ったが、わずかにロールしすぎてハウスに残らず。ラストストーンを前に、ハウス内に1つも石がない状態になった。スルーさせてブランクにして後攻を維持するのは悪くない選択だが、この局面で赤の日本のスキップ両角友佑は考え始めた。

日本(赤)1 - 2(黄)イタリア 3エンド 後攻(赤)スキップ2投目後

 赤の狙いはダブルロールイン。失敗すると1つだけ入って1点取ってしまうことも考えられたが、積極的に狙った。見事に2つ入れて赤が2点取った。

 1・2エンドはイタリアの方にいいショットが出ていたが、ここで2点取った以降は日本がペースを握った。

動画

予選 日本(赤) - (黄)オランダ 4エンド

日本(赤)2 - 2(黄)オランダ 4エンド 先攻(赤)スキップ2投目前

赤2 - 2黄 4エンド 先攻(赤)スキップ2投目

 ナンバー1は黄だが2・3は赤が持っている。赤としてはナンバー1の黄を打ち出せれば後攻に1点取らせる展開にできそうだが、ガードをかわしてテイクアウトできるか微妙なところ。そして気になる点がもう一つ。

日本(赤)2 - 2(黄)オランダ 4エンド 先攻(赤)スキップ2投目後

 「3分の1(見えている)」という声もかかってテイクアウトに行く赤。しかし……。解説は土屋長雄(日本協会指導普及委員長)。

実況「速めのストーン」
土屋「来てますね」
実況「ガードは……すり抜けた」
土屋「ナイスショッ!」
実況「見事です」
土屋「……そこに残っちゃうとまずい!」
実況「あー、バックガードがありました」

 ハウスの外に残っていた黄にぴったり当たってナンバー2で残ってしまった。次のラストストーンでナンバー1の赤を出されて投げた黄が残れば黄に2点取られる形。しかし、黄のオランダはラストストーンのテイクアウトが手前の赤に当たってしまってナンバー1を取れず、結果的にはこのエンドは日本が1点スチールした。

予選 日本(赤) - (黄)オランダ 8エンド

日本(赤)5 - 5(黄)オランダ 8エンド 後攻(赤)スキップ2投目前

赤5 - 5黄 8エンド 後攻(赤)スキップ2投目

 試合は同点で終盤8エンド。ここで後攻を持っている日本がやや有利。

 ナンバー1はすでに赤が持っているが、黄のスキップ2投目で中央にフリーズでナンバー2を作られた。しかし、ぴったり縦にはくっついていない。この形でできることは?

日本(赤)5 - 5(黄)オランダ 8エンド 後攻(赤)スキップ2投目後

 中央手前の黄を芯で叩くと黄2つが出て行く形ができていた。中央手前の黄が出て行けば3点、右下の黄に当たって残ってしまう2点。選手からも「2つ出せば3点」「最悪2点」という言葉が聞こえた。

 結果は、右下の黄に当たって両方出て行った上に、さらに中央の赤も右下でぎりぎり残って4点。望外の戦果となって一気に試合を決めた。

動画

予選 日本(赤) - (黄)スコットランド 1エンド

予選 日本(赤)0 - 0(黄)スコットランド 1エンド 後攻(赤)スキップ2投目前

赤0 - 0黄 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目

 立ち上がりの1エンド。まだお互いアイスの状態をつかめておらず、ヒットロールが逆側にロールしたり、スルーしたりというショットもある中でこの形に。直前の黄のスキップ1投目のカムアラウンドは良いショットで、ガードの裏にナンバー1を作られた。赤の目標は相手に1点取らせることだ。

予選 日本(赤)0 - 0(黄)スコットランド 1エンド 後攻(赤)スキップ2投目後

 日本の選択はガードから飛ばしてのテイクアウト。一見、直接黄色に触ることもできそうに思えたが……。解説は敦賀信人

敦賀「置きに行くショットがこのエンド難しくなっていますので。どちらかというとはじき出すテイクの方が、今のところ確率が高いということで」

 結果は、見事にナンバー1をはじき出すことに成功。赤も残らなかったが、ハウス右側の赤の縦の形もそのまま残ったので、スコットランドにドローで1点取らせることに成功した。

予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 1エンド

予選 日本(黄)0 - 0(赤)アメリカ 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目前

黄0 - 0赤 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目

 お互い積極策の両チーム。1エンドからハウス内に石がたまる展開。先攻・赤のアメリカのスキップ2投目を前にこの形。ナンバー2の赤はいい位置だが、ナンバー1・3を黄に持たれている。ナンバー3の黄はバックガードに守られて出しようがない。このままだと、ナンバー2を出されていきなり大量失点もあり得る。それを防ぐには?

予選 日本(黄)0 - 0(赤)アメリカ 1エンド 先攻(赤)スキップ2投目後

 赤はナンバー2を守るガードを置いた。このガードはナンバー2の赤より左寄りに置くことが重要。左寄りにおいて赤の右側を見せても、出そうとしても後ろの黄に当たって出すことができない。逆に、左側を見せてしまうと、出されるラインができてしまう。狙いどおりの場所に置けた。

 このあと、黄の日本はドローでナンバー2を作りに行くが、惜しくも寄り切らず。アメリカは相手を1点に抑えることに成功した。

予選 日本(黄) - (赤)アメリカ 2エンド

予選 日本(黄)1 - 0(赤)アメリカ 2エンド 先攻(黄)スキップ2投目前

黄1 - 0赤 2エンド 先攻(黄)スキップ2投目

 今度はアメリカ後攻の2エンド。ナンバー1の赤は後ろの黄にぴったりくっついて強い形。黄としてはドローでナンバー1で置けそうな場所はいくつかあるが、出されるような位置に置くと2点以上取られてしまう。ハウス内の12時方向にある赤の存在に注意して。

予選 日本(黄)1 - 0(赤)アメリカ 2エンド 先攻(黄)スキップ2投目後

 本当はナンバー1の赤の手前にフリーズするのが一番良いが、失敗してハウス内の12時方向の赤に当たって押し込んでしまうと非常にまずい(このエンド、ちょうどその方向への曲がりが大きいところだった)。そこで右側からナンバー1を置きに行くが、Tラインの前に置くと12時方向の赤を使って出されてしまう。というわけでT奥の黄にフリーズ。ここならナンバー1だし、出されることもない。

 このあと、赤のアメリカはドローで1点を取るにとどまった。

予選 日本(赤) - (黄)中国 3エンド

予選 日本(黄)0 - 5(赤)中国 3エンド 先攻(赤)スキップ1投目前

赤0 - 5黄 3エンド 先攻(黄)スキップ1投目

 序盤から黄の中国が大きくリードしている。

 黄がナンバー1・2だが、ダブルテイクアウトできる形。むしろ、ガードに隠れていて後ろの壁もある赤がいい形。というわけで、黄としては赤のガードをはずすというのが考えられる。実は、この4投前から「黄がガードをはずす → 赤がガードを置く → 黄がガードをはずす → 赤がガードを置く」というパターンでこの形になった。ということは三たびガードはずし?

予選 日本(黄)0 - 5(赤)中国 3エンド 先攻(赤)スキップ1投目後

 黄の壁の間を抜ける道があった。ガードとの距離が近くなって、比較的狙いやすくなったところで見事に決めた。大量点がほしい赤は石がなくなって苦しくなった。

 結局、このエンドも中国がスチール。序盤早々決定的な差が付いてしまった。

準決勝 スウェーデン(黄) - (赤)スイス 10エンド

準決勝 スウェーデン(黄)5 - 4(赤)スイス 10エンド 後攻(黄)スキップ2投目前

黄5 - 4赤 10エンド 後攻(黄)スキップ2投目

 準決勝。勝った方はカナダと決勝を、負けた方はアメリカと3位決定戦を戦う。

 大詰めの10エンドのラストストーン。1点リードで後攻の黄が断然有利だが、赤も粘ってこの形まで持ってきた。赤が勝つためは絶対にスチールが必要だが、黄が勝つ道筋は?

準決勝 スウェーデン(黄)5 - 4(赤)スイス 10エンド 後攻(黄)スキップ2投目後

 黄はヒットロールでナンバー1を狙ったが、惜しくも寄り切らず赤が1点スチール。同点になってエキストラエンドに突入した。

 この場面、黄はドローで中央に置けば1点取ってこのエンドで勝てたかもしれない。しかし、もしショートしたりスルーしたりすれば赤の2点スチールになって、一気に逆転負けになってしまう恐れがある。1つテイクアウトしておけば悪くても1点スチールで済む。1点スチールだとエキストラになってしまうが、そこでも後攻になるのでまだ黄が十分有利。勝ち急がず、最悪の道を避ける選択をした。

 試合はエキストラエンドで後攻・黄のスウェーデンが1点取って、狙いどおりの展開で勝利した。

動画


 ところで、日本選手権に引き続き、世界選手権でもNHK特設サイトが開設されています(日本選手権のサイトを上書きする形ですが)。ただ、日本選手権の時は全出場選手の写真とプロフィールが掲載されていたのに対し、今回は日本以外のチームは選手名の掲載すらないので、日本選手権のときと比べると薄い内容だなあと思って見ていました。

 ところが、SC軽井沢クラブの各選手のプロフィールを見たら、インタビュー記事が掲載されているじゃないですか! これ、いつの間に載りました? 他では見たことのない話もあって、特に山口剛史のポジション変更に関する話が興味深い内容でした。清水徹郎とのセカンドサードのポジション変更はうまくはまったように見えたので、チーム内でも納得ずくのポジション変更だと思っていました。山口選手にはそんな悔しい思いもあったのですね。

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