中継ぎ投手の悲しいキャリア

 今年のヤクルトのクライマックスシリーズは、あっという間に終わってしまいました(´・ω・`)

 ノーヒットノーランとは。菅野智之はすごい投手になったなあ。菅野は今までもすごくいい投手だと思っていて、ダルビッシュ有田中将大大谷翔平などよりすごいと思っていたくらいなのだけど、それが証明されました(´・ω・`) いままで「俺がリアルタイムで見たすごい投手ランキング」の歴代1位は伊藤智仁だったんですが、今回のノーヒットノーランで菅野が上回ったかも。試合の録画をとっておいて、しばらくたってからもう1回見よう。

松岡健一と山本哲哉の引退

 ところで、ヤクルトの今シーズンオフの話題の一つに、松岡健一と山本哲哉の引退があります。「マツケン」「ヤマテツ」の愛称でファンから親しまれ、リリーフ一筋でヤクルトの投手陣を支えていた両投手が奇しくも同時に引退。ヤクルトファンとしては感慨深いものがあります。

 キャリアを一人ずつ見ていきましょう。まず、松岡健一。フォークを武器に2008年からセットアッパーに定着。押本健彦と並ぶタフネスぶりで「次のヤクルトのクローザーはこいつだ」と思っていた時期もありました。

 しかし、2012年についに故障してほとんど登板できず。2013年以降は復活しましたが「あの頃の輝きは戻ってこなかったなあ」という印象があります。

 山本哲哉は2012年から台頭。2013年は一時期クローザーを務める。しかし、2013・2014年はチームは連続最下位。ヤクルト低迷の原因としてけが人が多いことが挙げられ、「ヤ戦病院」と揶揄される事もあるのですが、山本はケガをしないで活躍を続けていた貴重な存在でした。

 と思っていたら、2015年はケガで低迷。しかし、チームは優勝。2度目のトミー・ジョン手術を受けて翌2016年は一軍登板登板ゼロに終わりますが、2017年は復活しますがチームはまたも最下位。そして2018年はまた登板数が激減してそのまま引退。 チームが低迷した年に活躍し、チーム成績が良かった年は登板が少ないという孤軍奮闘投手になってしまいました。

 こうやってプロ野球選手のキャリアを見ていると思うのが、 中継ぎ投手のキャリアは突然終わることが多すぎない?ということ。この2人も、2017年には30試合以上登板しているのに、2018年にもう引退です。

 年を取ると衰えるのは投手も野手も同じですが、野手だと衰えても晩年は代打で活躍したり、投手でも先発だと、中継ぎに転向したり、登録抹消を挟みつつローテの谷間にたまに先発したりという展開がある場合も多いです。中継ぎ投手はそういう展開がなく、少し衰えると2年くらいで、年齢もまだ30代前半なのに、いきなり引退というパターンが多い気がします。

中継ぎ投手の悲しいキャリア

 というわけで、自分が悲しいと感じるヤクルト投手のキャリアを何人か挙げてみます。

島田直也

 横浜で毎年中継ぎ登板を重ねていたが、1999・2000年はやや不振で自由契約に。しかし、2001年ヤクルトに移籍すると安定した登板を重ねて優勝に貢献。選手名鑑*1にも「使い減りのしない貴重な中継ぎ」と書かれます。ところが、翌2002年からいきなり登板数が激減して自由契約近鉄に移籍するも2003年限りで引退。2001年の活躍はなんだったのか……。

山本樹

 ヤクルト黄金時代後半の中継ぎエース。全盛期1996年~2001年。2003年も復活して50試合登板していますが、そこから衰えてわずか2年で引退。

河端龍

 2000年代始めのヤクルト中継ぎエース。1999年にルーキーながら14試合に登板するが、翌2000年はリハビリで登板ゼロ。2001年に復活して優勝に貢献。そこからセットアッパーとして毎年活躍するが、2006年に再びリハビリで登板ゼロとなり、今度は復活することなくそのまま2008年に引退。

 自分が「中継ぎ投手のキャリアは悲しい」ということをはっきり意識したのはこの投手がきっかけ。これだけ活躍した投手なのに、突然登場して、突然いなくなっていた。

押本健彦

 2008年、ヤクルト-日本ハム3対3トレードの一員(藤井秀悟坂元弥太郎三木肇-川島慶三押本健彦橋本義隆)としてヤクルトに移籍。この時、藤井秀悟を出したのはびっくりしたなあ。ただでさえグライシンガーと石井一久が抜けて先発投手がいないのに、藤井出すか? 前年の先発登板数1・2・3位が抜けるってどういうこと!?

 と思っていたら、移籍してきた押本が大活躍。毎年50試合以上の登板を重ねるタフネスぶりを発揮し、押本健彦-松岡健一-林昌勇の勝利の方程式は長く続きました。しかし、2013年に故障で50試合登板が5年で途切れると、翌2014年引退。あれだけ毎年登板していたのに、それからたった2年で引退とは……。

久古健太郎

 左腕のサイドスロー。2011年、ドラフト5位ながらルーキーイヤーから登板を重ねてレギュラーシーズン2位の躍進に貢献。翌2012年は血行障害の手術の影響で登板数が減りますが、翌2013年からは再び左のワンポイントとして活躍を続け、2015年の優勝にも貢献する。このままの状態が続くのかと思いきや、2017年に登板数が激減して今年、2018年は一軍登板ゼロのまま引退。ヤマテツ、マツケンと並んで引退セレモニーあってもよかったと思うんだけど?

ヤクルト以外の投手

 ヤクルト以外の投手だと、印象深いのが中日-西武の岡本真也です。2004年から4年連続で50試合以上登板している中日リリーフ陣の大黒柱でしたが、2008年、FA移籍してきた和田一浩人的補償で西武へ移籍。なぜこの投手をプロテクトから外すのか!? そのときは理解できませんでした。西武1年目はそこそこの活躍でしたが、2年目途中から成績が落ちるともう戦力外通告。中日はこうなることを予見していたのか? そうだとしたら卓見だとしか言いようがありませんが……。

 今年引退した巨人の山口鉄也も悲しいキャリアだと感じます。あれだけ毎年鉄腕ぶりを発揮していたのに、1年投げられなかっただけでもう引退なの? まだ35歳でしょ?

理想のキャリアは?

 こう見ると、最後に活躍してから1~2年で引退、あるいは活躍していたのに故障で突然消えてそのまま引退、という選手が目立ちます。プロ野球選手の中継ぎ投手というのはそういうもの、と言えばそれまでですが、野手や先発投手の終わり方と比べるとあまりに悲しい。中継ぎ投手でも、もう少し息の長い、フェードアウト感のある終わり方はできないものかと思ってしまいます。

 例えば、高木晃次のような終わり方です(ヤクルト時代は主に先発でしたが)。

 入団したのは阪急。しかし、1990年に42試合登板した以外は大した成績を上げられず1998年、30歳でヤクルトへ。1999年は規定投球回数に達して9勝を上げる活躍をしましたが、そこまで好投し続けたわけでもないしなあ。他の年はメッタ打ち状態だった記憶しかない(^_^;) 2001年は2試合の登板にとどまり戦力外通告を受けロッテに移籍。この年34歳。もう引退寸前という印象でしたが、ここからロッテで8年、41歳まで現役を続けるとは……。しかも、年々登板数が増えていく。実働19年。見事なキャリア。

*1:『日刊スポーツグラフ 2002年プロ野球選手写真名鑑』

女子プロ野球の女王決定戦を見に行ってきた

 この前見に行った試合はあっさり終わって納得いかなかったので、10月7日(日)に再び女子プロ野球(JWBL)を観戦してきました。場所は再び川口市営球場。

 試合は女王決定戦の京都フローラ-愛知ディオーネ。女王決定戦というのは、NPBでいう日本シリーズのような試合です。年間総合順位1位と2位の対戦で2勝先取ですが、1位の京都には1勝のアドバンテージがあります。つまり、京都は2試合のうち1試合勝てばOK、愛知は2連勝が必要ということです。

 今回は、スコアは差が付きましたが、自分的には見るべき点は多くて満足できる試合内容でした。というわけで、見所をいくつかご紹介します。

厚ヶ瀬美姫のファインプレー

 1回裏、ディオーネ遊撃・厚ヶ瀬美姫がセンター前に抜けそうなハーフバウンドの打球を好捕。さすが。やはり今でも守備は厚ヶ瀬が一番か。

 ときに、厚ヶ瀬美姫と言えば、忘れられないプレーがあります。2013年、自分がJWBLを見始めたころ。ボテボテのゴロに対して、バウンドに合わせるなどまったくせずに全力で突っ込んでいって、ハーフバウンドになった打球を体の横で捕った。「これはすごい!」と、その後もJWBLを見るきっかけとなったプレーです(忘れられないと言いつつ思い出補正がかかっている可能性あり(^_^;))。2013年は『ベストプレープロ野球'00』でJWBLのデータを作ったのですが、厚ヶ瀬美紀の遊撃に、守備能力では唯一のAを付けました。

スクイズ! ウエスト!

 2回表はディオーネ打線がつながって、5-0とリードを大きく広げる。なお1死1・3塁で打者は4番只埜榛奈。ここで初球スクイズ! フローラバッテリーはウエスト! しかし、只埜は飛びついてなんとかバットに当ててファウル。

 左バッターボックスより外くらい大きく外した投球だったが、バットを放り投げて当てた。バットに当たった瞬間はすでにバットから手が離れていた。

 自分は、5点リードで打者4番でまさかスクイズがあるとは思わず、びっくりしているうちに、すべてがまさにあっという間に終わってしまった。あとで調べたら、只埜のスクイズはこれまでも何度かあったようです。だからフローラも読んでウエストしたのでしょう。*2

ベテラン?のナイスピッチ

 4回表、フローラ植村美奈子の投球。植村は2回途中から登板。「相変わらずボール球多いなあ」と思って見ていた4回表。スコアはすでに7-0と大きなビハインドという状況で、先頭打者は打ち取った打球が内野手の間に落ちて無死1塁、続いて四球で無死1・2塁。「また大量失点か」と思った。

 ところが、5番中田友実の投ゴロを冷静にさばいて併殺。2死3塁。6番強打者の寺部歩美は四球で2死1・3塁。7番の榊原梨奈をボールカウント1-1からズバッと内角へ2球続けて三振。何事もなく無失点で切り抜ける。さすが、JWBL発足2年目から所属しているベテラン。落ち着いた投球。

ライトゴロ狙い

 6回表、ディオーネ只埜榛奈のライト前の打球に対して、フローラの右翼・中村茜がライトゴロ狙いで一塁へ送球。間に合わなかったが、ライトゴロは女子野球の見所のプレー。

力の入った勝負

 6回裏、フローラみなみの打席。ディオーネ投手は笠原優子。2死1塁。0-7と大差は付いているが、まだ2イニングあるし、もちろんあきらめることはない。みなみは本塁打を前年は3本、今年は2本打っている長打力のある打者。フルカウントからのファウルが4球続く。3塁線への強い打球やレフトへの大きな当たりのファウルもあって、力の入ったいい勝負になりました。最後の見逃し三振は残念でしたが……。それほど厳しいコースでもなかったし。


 試合の方は、そのまま7-0で愛知ディオーネが勝利。女王決定は翌日の試合にもつれ込みました。それで、翌日の試合も気になったので「女子プロ野球ライブTV」の1dayチケットを購入して観戦しました。この試合は接戦で力は入ったけど、おもしろいシーンはそれほどなかったかな。3回表、ディオーネ1塁走者の三浦由美子が、ライトへのファウルフライでタッチアップして2塁へ行ったシーンは良かった。結果はこの試合もディオーネが勝って逆転で年間女王になりました。

www.jwbl-live.jp

 この1dayチケット、当日の試合を見られるだけかと思いきや、その1日の期間内なら最近行われた試合(おおよそ1週間のようです)の見逃し配信の動画も見られるのですね。というわけで、上で紹介した見所シーンは、見逃し配信で前日の試合の動画を確認して書きました。このサービスは初めて使ったけれど、動画の再生速度が4倍~0.5倍まで9段階で選べるのはいいね。セルフスロー再生がすぐできる。

 また、このサービスの見逃し配信の期間が終わったものは、順次ニコニコ動画の女子プロ野球チャンネルの方に回される(有料)。無料のハイライト動画などは翌日以降にYouTubeの日本女子プロ野球リーグチャンネルにアップされる……という流れのようです。

*1:試合速報のページのタイトルタグの部分が「<title>日本女子プロ野球リーグ JWBL</title>」になっているのは頂けませんな。タイトルはちゃんとどの試合かわかるように付けてほしい

*2:ところで、この「ウエスト」という言葉を、盗塁やスクイズを阻止するための投球を指して使うのは誤りだそうです。ですが、あまりにも広く使われているし、「ピッチアウト」という言葉はまだしっくりこないなあ。という感覚があるので、今回は「ウエスト」という言葉を使いました。

女子プロ野球の選手年齢一覧表

 女子プロ野球(JWBL)の年ごとの選手年齢の一覧表を作ってみました。

docs.google.com

 年齢は、その年の誕生日を迎えての満年齢。

 選手の背景色は所属球団です。トレードなどで同じ年に複数の球団に所属した場合は色なしにしています。途中でカラーが変わった球団は、過去の部分も現在の球団色にしています。2012年以前の3球団と2013年以降4球団は別球団扱い。また、レイアは2014年以前と2015年以降はチームの位置づけが変わったので別チーム扱いにしています。

 コは監督・コーチとしてJWBLに所属している人。 

 手作業で作成・入力したので、抜け・勘違い・入力ミスなどがあるかもしれません(特に2012年以前)。間違いがわかる方はご指摘いただけると助かります。

  2013年以降は選手名鑑のようなもの*1を持っているのでそれを見て作りました。2012年以前はWikipedia JWBL公式サイトの年度別個人成績のページなどを見て作りました。


 なんでこんな表を作ったのかというと……。

 9月16日(日)に女子プロ野球(JWBL)を見に行ってきました。川口市営球場の埼玉アストライア-愛知ディオーネ。ここのところ、年に1回は見に行っているのだけど、今年はまだ行っていなかったので。今年は試合はおろか、数字の情報もほとんど見ていない状態でした。ディオーネが兵庫から愛知にフランチャイズを変えていたというのも当日知りました。

 JWBLを以前ほど熱心に見なくなった理由の一つに、好きな選手がよくいなくなるというのがあります。成績が落ちたり、若手の活躍で出場機会が減って引退するならわかりますが、まだやれそうなのに理由もわからず好きな選手がいなくなるという状況は応援するには厳しい。数年前と比べても、2年連続首位打者で一塁でも好守備を見せていた大山唯、左腕のスローボーラー渚、2015年には2本塁打を放った池山あゆ美ら、自分が好きだった選手が続々と引退しています。

 それで、実際に女子プロ野球の選手は平均何歳くらいで引退するのか? どれくらい入れ替わっているのかを俯瞰したくなったので、表を作ってみたのです。

 こう見ると、自分が一番熱心にJWLBを見ていた2013年と比べてもだいぶ入れ替わりました。川端友紀、厚ヶ瀬美姫、里綾実、山崎まりあたりは健在で少しほっとしますが。先日見に行った試合でも、中野菜摘が選手名鑑を見るとアストライアに戻っているいるのだけど試合に出てないな、と思ってあとで調べたら、今シーズン初めに体調不良で欠場するというお知らせがあって、見に行った試合の前にすでに現役引退するという発表がされていました。また好きな選手が引退していく。

 年齢的には、30歳になる前に多くの選手がやめている。まあ、プロ野球ということでなく、スポーツ全般で考えればそれほど特別なことではないのかもしれません。やっぱり、まだやれそうな選手が去っていくのがなあ……。その中で小西美加がすでにレジェンド的存在。ここ3年くらいで、リーグ創設当初から在籍していたスター選手が30歳を越えるので、そこでどういう動きがあるか。

 ちなみに試合の方は、2回にアストライアが連続2塁打で2点取った以降は、4イニングで両チーム合わせて3安打無四球、ポコンポコンと凡フライばかりで打ち上げてイニングが進み、あっという間に試合終了。普段はむしろ打高投低リーグなんだけど……。前に見に行った試合もこんな風だった記憶がある。なんで自分が見に行くとこんなしょっぱい試合になるんだろう(´・ω・`)  翌日の試合は打撃戦のシーソーゲームの末5x-4のサヨナラゲームだったのに……。良かったプレイは、3回裏、ディオーネ捕手の寺部歩美が盗塁を刺したプレイと、4回裏、ディオーネ三塁手只埜榛奈が三塁線を抜けそうな当たりを好捕して一塁へ遠投でアウトにしたシーンくらいか。

ATOKで日本語入力ONとOFFを別々のキーに設定しつつ、英語入力モードも使う(『のどか』使用)

 結論を言うと、「[英数]を押すとひらがな入力モードに、[右Shift]を押すと英語入力モード(ATOK)にする」が実現できた、という話です。

IMEオンとIMEオフを別々のキーに設定したい

 通常は、IME ONとIME OFFの切り替えは[半角/全角]で行うことが多いと思います。IMEがONだとOFFになり、OFFだとONになるというトグル操作です。しかし、トグル操作だと、いまのIME状態を確認しないと目的の状態になりません。すでにIME ONだったのに、IME OFFだと勘違いして「IME ON/OFF」キーを押してしまい、入力したら英数文字がずらり……ということになりがちです。*1

 IME ONとIME OFFを別々のキーに設定すれば、とにかくそのキーを押せば目的の状態になるので、いちいちIMEの状態を確認する必要がなくなります。

 というわけで、IME ONとIME OFFは別々のキーに設定するのがベストです。ちまたでは、[変換]と[無変換]にIME ONとIME OFFを割り当てる方法を説明したページが山ほどあります。自分もぜひそうしたいところですが、問題がいくつかあります。

ATOKでは「英語入力ON」を設定できない

「ki-bo-do」から「keyboard」に変換する

 自分は、IMEは『ATOK』を使っています。ATOKでは「英語入力モード」という入力モードがあります。基本的に英数文字を入力するモードですが、カタカナ読みのローマ字綴りで打っても正しい英単語に変換できたり、スペルチェックができるなどの便利機能が使えます。日本語と同様の推測変換も働きます。

 というわけで、ATOKでの英数文字は、「IME OFF」ではなく「英語入力モード」で入力したいのです。よって、日本語入力ONとOFFを別々のキーに設定するには、「日本語入力ON」と「英語入力ON」を別々のキーに設定するということになります。

 ところが、ATOKでは「英語入力ON」という設定が存在しません。キーカスタマイズの項目には「英語入力ON/OFF」しか存在しないのです。『ATOK 2017』での話ですが、その後も追加されたという話は聞きません。「日本語入力ON」と「日本語入力OFF」はあるのに……。というわけで、別の方法を考えます。

『のどか』で「全入力文字メニュー」を利用して英語入力ONキーを作る

全文字入力メニューで半角英字を選択する

 ATOKの機能の一つに、[Ctrl] + [F9]の「全入力文字メニュー」というものがあります。入力モードを一覧から選択するという機能です。この一覧の中には英語入力モードも存在します。操作に手数がかかるので普通はあまり使うことはない機能だと思いますが、ここではこの機能を利用します。

 『のどか』を使ってマクロ的な設定を書けば、どんなに手数がかかる操作でもワンタッチで済ますことができます。あるキーを押したら、[Ctrl] + [F9]→[I]を押したということにしてしまえるわけです。メニューが一瞬表示されてちらつく感じがしますが、気にしないことにします。これで、事実上「英語入力ON」というキーを作ることができます。

www.appletkan.com

「英語入力ON」はワンショットモディファイヤで[右Shift]に割り当てた

 自分の場合、「英語入力ON」キーをどのキーに置くか、という問題もあります。

 先ほども紹介したとおり、IME ONとOFFに設定するキーは[変換]と[無変換]にする方法が有名です。大して使い道のない[変換]と[無変換]を活用する方法としては良い手段ですが、しかし、自分の場合キーカスタマイズはすでに散々しています。そのあたりのキーはもう使用済みです。そんなに都合良く空き地はありません。

y-koutarou.hatenablog.com

 「日本語入力ON」は[英数]でいいとして、「英語入力ON」に割り当てるキーが見当たりません。[Space] + [なんとか]など2キーの組み合わせを使えばいくらでも場所はありますが、「英語入力ON」というこれからまさにタイピングをしようという時に習慣的に押すキーが2キーの組み合わせというのは、自分は気に入りません。

 そこで、「英語入力ON」は[右Shift]に割り当てることにしました。[右Shift]はワンショットモディファイヤにします。つまり、[右Shift]を、押して離した場合は「英語入力ON」、押し下げたまま他のキーを押した時は[Shift]となります。これなら他の機能を削らずに「英語入力ON」を置くことができます。

 [右Shift]は頻繁に使う機能を置くキーとしてはやや遠いという懸念もあります*2。しかし、「英語入力ON」を使う機会はものすごく多いというほどではないので*3、妥当なラインだと思います。

 これで、ようやく「日本語入力ON」と「英語入力ON」を別々のキーに設定することができました。

『のどか』設定ファイル

 『のどか』の設定ファイルは以下の通り。

 [英数]はワンショットモディファイヤで[英数 & Ctrl]にします。[英数]の「日本語入力ON」は『のどか』の&SetImeStatus&SetImeConvStatusで設定しています。

 [右Shift]もワンショットモディファイヤにします。一番下の行が、今回のポイントとなる、[右Shift]単打で『ATOK』の半角英語入力モードにする設定です。間に&Wait(5)を挟むことでスムーズに動くようになりました。

# ◆[英数]と[右Shift]				                        ●元のキー	●変更後のキー
mod control		+= !!英数					# [英数]	[英数 & Ctrl]
key R-*英数		= &Ignore			        	# ※しばらく押したままにして離した場合は何も起こらない
key ~R-~S-*英数		= &SetImeStatus(on) &SetImeConvStatus(0x0019)	# [英数]	IMEオン(ひらがな)	※~S-を付けないとCaps Lockがかからなくなる
mod shift		+= !!RightShift		                        # [右Shift]	[右Shift & Shift]
key R-*RightShift	= &Ignore
key ~R-*RightShift	= &SetImeStatus(on) &Wait(5) C-F9 &Wait(5) S-I	# [右Shift]	『ATOK』の半角英語入力モード

*1:IMEの状態によってカーソルを替えたり、IMEの状態をカーソルのそばに表示しておくIMEなりアプリケーションなりを使えば多少は改善されます。自分は『SetCaretColor』を使用しています。しかし、それでもIME状態を確認する必要があるのは変わりません。

*2:自分は右手一列シフトをしているので[右Shift]は通常より1キー近いですが。

*3:日本語入力モードのままでも、[Shift]を押しながら文字キーを押せば自動的に英語入力モードになって英数文字が入力できます(そしてその入力が終わると自動的に日本語入力モードに戻る)。だいたいの英数入力はこれで済んでしまいます。[右Shift]を押して英語入力モードに入る必要があるのは、先頭の文字で[Shift]を伴わない英数文字(例えばアルファベット小文字)を入力したい場合が主です。

カーリング女子世界選手権2018、富士急の挑戦を振り返る

 2017-2018年カーリングシーズンを振り返るシリーズ。前回の男子世界選手権のteam IWAIに引き続き、今回は女子世界選手権2018、日本代表の富士急の印象に残ったシーンを振り返ります。

ドイツ-日本

10エンド デビュー戦を飾る

ドイツ(赤)-日本(黄) 10エンド 後攻日本スキップ小穴1投目

 日本の初戦はドイツ戦。日本1点ビハインドで後攻の10エンド。赤ドイツ、黄日本。日本は2点取れば逆転勝利だが、1点にとどまってエキストラ先攻になってしまうと苦しくなる。

 スキップ小穴1投目がナイスドロー。完全にガードの裏に隠れて直接打ち出せず、フリーズしてもナンバー1を取りにくく、ドイツは2失点を阻止するのが難しくなった。

 このあと、ドイツスキップ2投目はナンバー1の黄を少し押してナンバー1・2を取る手を狙うが、わずかにラインがずれて奥に抜けてナンバー1を取れず。小穴がラストドローも決めて日本が逆転勝利。世界選手権初出場の富士急が初戦を白星で飾りました。

予選 ドイツ-日本
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
ドイツ 0 0 0 2 0 0 2 0 1 0 5
日本   0 1 1 0 1 0 0 1 0 2 6

日本-アメリ

5エンド 小穴の積極策その1

 日本の4試合目。試合内容とは関係ないけど、この試合からNHKの中継で現在の残りストーンの数を常に画面に表示するようになりました。これはナイス。この表示がないと、いま何投目なのかわかりにくいんだよね。特に録画を見返す時に。

 日本1点リードで5エンド後攻。赤日本、黄アメリカ。スキップ小穴の1投目。どうということのない局面に見えたが、小穴はここから2点を狙いたい。

日本(赤)-アメリカ(黄) 5エンド 後攻日本スキップ小穴1投目

小穴「この前にドローする? でもブランクもあるんだよね、打っとけば」
小野寺「ブランクしてもいい気がするけどね」
小穴「近ければ相手が打つから、勝手にブランクにはなると思うけど」

 ここは2点狙うものなんですかね? フリーズすれば2点取れる可能性はあるけれど、フリーズに失敗したり、成功しても次に付け返されたりしたら1点取らされることになる可能性もある。リードしているところだしブランクでいいのでは?と自分は思いました。

 小穴はフリーズを選択。ぴたり縦には付かなかったが、くっつけることには成功。このあと、アメリカスキップ、ジェイミー・シンクレア2投目は後ろの黄もろとも赤をテイク。ここは小穴の事前の言葉通り。最後は小穴2投目でピールして、結局このエンドはブランクになります。

 ところで、この小穴2投目のピールはちょっと厚く当たって危なかった。ヒット後、石垣がスイープで掃き出してブランクになったシーンでした。その後こんなやりとり。

小穴「失礼しました。ピールをね、スイープそんな使うなっていう」
石垣「いいよいいよ。掃いてなんぼよ」

9エンド 「もうタイム使っちゃおうぜー」

 試合は進んで、日本2点リードで先攻9エンド。日本のゲームプランとしては、2失点で同点後攻10エンドになるのは良い。1失点で済めばなお良い。3失点は良くない。サード小野寺2投目を前に長い作戦会議。赤日本、黄アメリカ。解説は敦賀信人

日本(赤)-アメリカ(黄) 9エンド 先攻日本サード小野寺2投目前

小穴「1・2だからガードでもいいと思うんだよね」
石垣「んー、まあそれも悪くないね、守って」
実況「センターガードですか?」
敦賀「そうですね、もしくは、まあ……。ここ、思い切ってタイムアウト取ってもいいのかもしれませんね。結構大事な局面だと思うんですね」
小穴「ダブルされると2点だから、2点まではいいけど、ガードでも悪くないと思う」
石垣「タイム使わないかい?」
小穴「タイム使う?」
石垣「守り切るか、2点に抑えるかどっちかしかないから」
小野寺「これ切ったら……」
小穴「ただ曲がる方からだとオーバーカールしそうなんだよね」

(このあたりで放送上VTRになったり、解説が入ったりで会話が聞き取れなかった部分があります)

小野寺「……そしたらこっちは必ず見えるから、最悪2点もOK」
小穴「うーん」
敦賀「あのですね、1・2あってガードを置くんですけど、ナンバー1のストーンがTラインより後ろなんですね。残り3つアメリカがありますので、くっけるのは両方向の道からできるので」
石垣「切るか前だよね」
小穴「何点までかだな」
石垣「もうタイム使っちゃおうぜー」
小穴「OK、タイム」

 しばらく話し合いがあった後にタイムアウトを使う。コーチ席で、J.D. リンドコーチが西室雄二コーチの前にあるタブレットを「ここ、ここ、ここ」と指さしている姿が映る。

石垣「ここでガード置けたら置けたで、センターなかなかつぶれるから、結構嫌な感じで」
小穴「まあフォースの1投目でもいいと思うけど」
敦賀「ふさぐということは自分たちのナンバー1を守る石にもなるんですけど、取らすにもやはり1点でなければいけないんですね」
小野寺「守ったら相手……」
石垣「フリーズかなー?」
小野寺「そしたらまたフォローかい? 狭くはなるよね、円は」

 ここで西室雄二コーチ到着。

石垣「前か切るか、やってるんですけど。2点アップだから……」
小穴「2点まではいいけど、できれば1点に抑えたいです」
西室コーチ「2点はいいんだったら……(ガードを指さしてガード外しを指示)。あまり中に行くと、中だけで3点取られちゃう」
(ここで別シートで歓声が上がる。メンバーがコーチに駆け寄って耳を寄せる。仕草がいちいちコントっぽい富士急の面々w)
西室コーチ「2点はいいと思う」
石垣「OK、じゃあ前切るか」
西室コーチ「あんまり、センターにも残したくない、センターにも残したくない」
石垣「うん、ピールでいいんじゃない」

 というわけで、コーナーガード外しという選択になりました。小野寺・石垣・敦賀(解説ですが)がガードを置くのは危険と指摘するが、小穴がなかなか納得しない。タイムアウトもなかなか取らなかったが、ついにタイムをとり、西室コーチの意見もガード外しで、とうとう小穴が折れたという場面でした。タイムアウトを使わせた「もうタイム使っちゃおうぜー」の一言は石垣のファインプレイだったと思います。

10エンド ベストショット

 9エンドは結局アメリカが2点取って、同点で10エンド日本後攻。赤日本、黄アメリカ。

 アメリカスキップ、ジェイミー・シンクレアの2投目のハウス内ガードが完璧な位置に止まって、ボタンへかけなければならない厳しいラストドローが残った。スキップ小穴2投目。

日本(赤)-アメリカ(黄) 10エンド 後攻日本スキップ小穴2投目

「ちょっと外通ってきてるよ」
「まだ速い、まだ速い」
「外のラインだ」
「落ちると思うんだよね」
「ラインまだ、ラインまだ」
「ちょっと待てるね」
敦賀「そうですね、ラインはいいと思いますね。速さが少し」
実況「強いですか?」
敦賀「いや、速さも少し落ち着いてきましたね。ラインはいいですよ」
「来てるよ」
「待ってまだまだ」
「まだ速い」
「ウォー、ウォー、ウォー……」

 最後は石垣が石に付いたままスイープせずに見送って、Tラインを越えるがボタンにかかって止まった! 日本勝ち!

 このドローは本大会の日本のベストショットでしょう。正直、シンクレアの2投目を見た時には「ああー、負けたかー。この展開で負けたか」と思いました。よく決めた。

予選 日本-アメリ
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日本   0 0 4 0 0 1 0 1 0 1 7
アメリ 1 0 0 2 0 0 1 0 2 0 6

日本-ロシア

7エンド 小穴の積極策 その2

 日本の6試合目。赤日本、黄ロシア。

日本(赤)-ロシア(黄) 7エンド 後攻日本スキップ小穴1投目

 日本4点ビハインドの7エンド後攻。大きくリードしているロシアはテイク、テイクで石をためない。後攻にチャンスがない展開に見えたが、日本はここからスキップの2投で2点を取る。

 スキップ小穴の1投目、ナンバー1の黄に軽くさわって縦にピタリと止めるフリーズを決める。

 このあと、ロシアのスキップ、ビクトリア・モイセーワの2投目は縦にテイクして石を入れ替えたが、シューターがわずかに外にずれてナンバー1を取れない。スキップ小穴2投目はドローをボタンに決めて2点を取った。

 まあ、ここはビハインドの場面だから、積極策にいくしかないのだけど。

予選 日本-ロシア
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日本 0 0 0 1 0 0 2 0 1 x 4
ロシア   0 1 2 0 2 0 0 2 0 x 7

スコットランド-日本

7エンド ガードの裏にガード

 日本の7試合目。日本1点ビハインドの7エンド先攻。サード小谷優奈2投目を前の日本の作戦選択が光った場面。赤スコットランド、黄日本。

スコットランド(赤)-日本(黄) 7エンド 先攻日本サード小谷優奈2投目

 ハウスを広く使って赤がナンバー1・2。このまま赤をテイクするとスコットランドの2点パターン。しかし、センターガードはハウスから遠いので、この裏に隠しても回り込んで打ち出されてしまう。

 というわけで、すでにサードの2投目だが、ここでセンターガードの裏にセンターガードを置いた。

 この後、スコットランドサード2投目は遠いセンターガード外し。日本スキップ小穴1投目でセンターガードの裏に隠す。センターライン上の展開に持ち込んだ。最後はスコットランドのスキップ、ハンナ・フレミングがダブルテイクを決めてスチールはならなかったが、それでも1点取らせることに成功。5エンド終了時には4点ビハインドだったが、2点ビハインドで8エンド後攻は勝負形。流れは日本だ!

 ……と思ったのに、続く8エンドは日本の4人が4人ともショットがまるで決まらず、スコットランドの3点スチールとなってしまう。解説は敦賀信人

実況「いやー敦賀さん、このスチールは痛いですね」
敦賀「そうですね。いまですね、一人ずつ、気持ちのコントロールが難しくなってますので。なんとか3点取ったところまでは良かったんですけど、その後ですね。1点うまく取らせて、このエンドに思い切って勝負にいったのは良かったんですけど、なかなかうまくゲームメイクができなかったですね。前が決まってなかったので、最後プレッシャーのかかるショットを小穴選手が強いられた。気持ち的にきちんと、全選手そうなんですけど、コントロールできてなかったなと思いますね。ミスした後にどれだけ他の選手がカバーできるか、それも重要になってくると思いますね」 

予選 スコットランド-日本
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
スコットランド 2 0 2 1 1 0 1 3 0 x 10
日本   0 2 0 0 0 3 0 0 2 x 7

日本-イタリア

6エンド 相手が使ったラインをふさぐのがセオリー

 日本の8試合目。日本1点リードの6エンド後攻の一幕。

 スキップ小穴1投目を前に作戦会議。いま、イタリアのスキップ、ディアナ・ガスパリ1投目の左からのドローが、かなりショートしてガードの位置で止まったところ。ガードが多数ある中、4フットにナンバー1の赤があって日本チャンス。しかし、まだ外側から中に入ってくるドローコースはある。次の相手のドローコースを限定するガードを置きたいが、左右どちらをふさぐ?

小穴「どっちかつぶす感じ。いま相手こっち(左側)投げてるからこっちつぶした方がいいと思う」と右側をブラシで指す。
小野寺「ああ」
小穴「…………違うか。こっち(左側)投げてるからこっち(左側)つぶした方がいい(笑)」

 大丈夫ですか小穴さんw

 しかし、投球の方は左側のハウス内ガードをきっちり置く。続く小穴2投目のピールも決めて4点のビッグエンド。ガードをギリギリかわしてヒットステイで5点という手もあったが、余裕を持ってガードをかわしてピールして4点取る安心ショットの選択だった。6エンド終わって7-2の5点リードと日本大優勢となりました。

8エンド 織り込み済みの1点スチール

 しかし、なんとこの試合はこのあと接戦になります。7エンドはイタリアが2点取って、それでも日本3点リードの8エンド後攻。まだ日本大優勢。

日本(赤)-イタリア(黄) 8エンド 後攻日本スキップ小穴2投目前

 相手の石を3つ見てのラストストーン。赤日本、黄イタリア。解説は石崎琴美

小穴「1点スチールされても」
小野寺「あーOKOK。ドローは厳しいかい?」
小穴「ん?」
小野寺「ドローは厳しいかい?」
小穴「ドローでもいいけど、3点スチールがあるからテイクしておいた方がいいかなって思う」
石崎「そういうことですね。ドローするコースとしてはあると思うんですけど、相手の石を3個見てのドローって、かなりのプレッシャーがあるんですよ。スルーしたら相手3点、ショートしても相手3点。なので、ここは1点スチールされてもいいから、はじきにいくという作戦にしてきました。そっちの方がスキップが気持ちよく投げられるのでいいと思いますね」

 結果は、ダブルテイクは成功。黄が1つ中央に残り、織り込み済みの1点スチールとなりました。

 この作戦はどうなんでしょう? 戦術的には正解なのかもしれないけど、白い円に半分かかれば1点スチールで済むし、1点取るチャンスで、1点取って4点差になればさらに優勢だし。この局面で1点スチールさせて9エンド2点差にするというのは、作戦として消極的すぎるのでは?と自分は思いました。

9エンド 忠言

日本(赤)-イタリア(黄) 9エンド 後攻日本スキップ小穴1投目前

 7-5で日本2点リードで9エンド後攻。このエンドはイタリアのショットも、ホッグラインを越えなかったり、カムアラウンドを狙ったのにハウスまで届かないショットがあったりと決まっていなかった。日本十分な形でスキップ小穴1投目を迎える。赤日本、黄イタリア。

石崎「もう、こっち(左側)に振ってナンバー1を作っておけばいいかなと思うんですが、いまこっち(右側)という話もあるんですけど、これが深くなりすぎると相手に付けられる形にもなって、最後にドローはできますけれども、振っておいてきれいにしておいてもいいのかなと思いますね」

 小野寺はハウス左側にドローして左右に広くナンバー1・2を作る手を提案するが、小穴は別のラインに投げたい。ここでタイムアウトを取る。

(この会話は聞き取れない部分が多かったので断片的です)
小穴「センターにドローしたい。ウェイトがわかんないから。できれば」
西室コーチ「できればこっちに置いた(?)方が、相手にヒットさせて。こっちに行ったら短くても長くても、相手に付けられちゃう」
小穴「バック4ダメですかね?」
小野寺「バック4に置いたらたぶんフリーズしてくると思うんですよね」

 西室コーチも小野寺も左側へのドローを提案するが、小穴は投げたいラインをなかなか譲らない。時間いっぱい使って、結局センター後方へのドローを選択する。

石崎「ただ、やっぱりセンターにいくよりも私はサイドに振っておく方が好きでした。センターにいってこれに付けられてしまったら、最後にTラインの奥ですけど使える円が狭まってしまっているので」

 何をしても「ナイスショット」しか言わない石崎にしては珍しい強い否定のコメントだった。

日本(赤)-イタリア(黄) 9エンド 後攻日本スキップ小穴2投目

 イタリアのスキップ、ガスパリ2投目はその石の前にフリーズがピタリ。

 小穴2投目はその石の手前へドローしてナンバー1を取るはずだったが、ウェイトもラインもまるで合わず、石1個分以上外れてスルーする大失投。イタリア1点スチール。9エンド終わって7-6で日本1点リード。10エンドは日本後攻だからまだ有利だが、6エンド終了時からは信じられない接戦になってしまいました。

石崎「最後はドローするっていうのわかっていて、1投目で自分の投げたいラインで投げてますので、最後あれは決めなければいけない」

 10エンドは、イタリアのスキップ、ガスパリ2投目、左側の4フット外のナンバー1の赤にフリーズにいくが、曲がりすぎてナンバー1を取れず。小穴のラストストーンを待たずにコンシードとなりました。もし、このガスパリのフリーズが決まっていて、小穴がラストストーンを投げる展開になっていたらどうなっていたか。

予選 日本-イタリア
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日本   0 2 0 1 0 4 0 0 0 1 8
イタリア 1 0 0 0 1 0 2 1 1 0 6

韓国-日本

7エンド あの形のままだったら

 日本の10試合目。韓国は“メガネ先輩”の愛称で日本でもおなじみのキム・ウンジョン率いる、平昌五輪銀メダルチームが参戦。日本2点ビハインドで7エンド先攻。赤韓国、黄日本。

韓国(赤)-日本(黄) 3エンド 先攻日本スキップ小穴2投目

 この投球前までボタンの黄と赤のどちらがナンバー1か微妙だった。日本スキップ小穴2投目はハウス内の黄をわずかに押して確実に1を取ったが、横に開いてダブルテイクがある角度を残してしまった。

 このあと、韓国スキップ、キム・ウンジョン2投目はダブルテイクを決める。黄を2つテイクして、赤には触らずそのまま。韓国1点。解説は敦賀信人

敦賀「日本のストーンがナンバー1の可能性もあったので。最後本当に惜しかったんですけど、小穴選手の1投が少しだけ横に開いたというのが、もったいなかったですね」

 小穴の2投目は、ガードに当たっててもいいくらいの気持ちで投げてほしかったな。縦にまっすぐ押せれば一番いいし、むしろガードに当たって、中はあの形のままでキム・ウンジョンがラストストーンでどんな投球をするか見たかった。

 もしかしたら、選手たちはあの形は赤がナンバー1だという確信があったのかも? キム・ウンジョンの1投目もガードだったし。

予選 韓国-日本
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
韓国   3 0 1 0 2 0 1 0 2 x 9
日本 0 1 0 2 0 1 0 1 0 x 5

日本-カナダ

3エンド 予言

 日本の11試合目。同点で日本3エンド先攻。日本スキップ小穴2投目の選択。赤日本、黄カナダ。

日本(赤)-カナダ(黄) 3エンド 先攻日本スキップ小穴2投目

小穴「1点で収まると思うんだよね」
石垣「フリーズでも悪くないと思う」
小穴「芯よりちょっとこっちに当たれば引っ張って黄色だけ出ると思う。ガードね、ずれた時3点あるから」

 というわけで、小穴は縦にテイクに行くが……。

敦賀「いやこれ、打ちにいくんですけど危険だと思いますね。というのはこれ、黄色が2つ残ってしまう可能性がありますね。2・3、でですね。これは危険なショットになると思います」

 敦賀の言葉通り、黄が2つ残ってしまった。このあと、カナダのスキップ、ジェニファー・ジョーンズは2投目はヒットステイを決めてカナダ3点。

 毎度のことながら、敦賀信人の解説はコメントの精度はすごい。この試合では、8エンドでもジェニファー・ジョーンズのドローのミスを予言しています。

 ショット前。敦賀「ただ、このラインでこのターン、逆時計回りというのは、この大会見ますとミスが少し出ているショットなので……」

 ショット後。敦賀「私が見る限りではこの大会あそのコースのショットというのは、決まっていなかったので、もしかしたらチャンスはあるかなと思ってたんですけど」

予選 日本-カナダ
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
日本 0 1 0 1 0 0 1 1 1 x 5
カナダ   1 0 3 0 2 2 0 0 0 x 8

チェコ-日本

3エンド Bプランのヒットロール

チェコ(赤)-日本(黄) 3エンド 後攻日本スキップ小穴2投目

 日本の12試合目は最終戦

 2-1で1点ビハインドの日本3エンド後攻。赤チェコ、黄日本。

 チェコのスキップ2投目は左からドローしてきたが、ほんのわずかの差でナンバー1を取れず、日本に2点チャンスが来た。

 日本スキップ小穴2投目は右のラインからボタンへのドローを狙う。ややウェイトが速かったが、赤に当ててロールするBプランへの切り替えが成功した。ギリギリ1・2を取るナイスショット。ナイスコール。

9エンド 主張を通して……

 試合は進んで日本1点リードで9エンド後攻。日本としては、ブランクにして1点リード後攻のまま10エンドになれば十分有利なので、クリーンな展開を狙う。日本のスキップ小穴1投目を前にして、残る石はハウス右側にチェコの赤が1つだけという形。

小穴「残していいと思う。残していいと思う。フォースだから」
石垣「ブランクでもいいよね」
優奈「ステイして相手がミスすれば2点取れるし……」
石垣「相手、でもフリーズする気がするんだけど……」
小穴「残していいと思う。フリーズはしてこないと思うんだよね」
石垣「ブランクでいいんじゃない?」
小穴「残して相手にテイクさせた方が良くない?」
石垣「フリーズされたら2点取れるチャンスあるよ」
小穴「してこないと思う、相手は」

 しかし、小穴1投目は単純なヒットステイに失敗してピールになってしまう。どうも小穴は、自分が主張したショットをした時に失敗することが多い気がします。

10エンド 作戦会議

 結局、9エンドはブランクになり、日本は1点リード後攻で10エンド。そして局面は進んで、スキップ小穴のラストストーンを残すのみという場面で日本はタイムアウトを取る。今大会の富士急の象徴するシーンだと思う作戦会議の会話をできるだけ。赤チェコ、黄日本。

チェコ(赤)-日本(黄) 10エンド 後攻日本スキップ小穴2投目前

小穴「一応こっちからがあるんだよ」
優奈「うん」
小穴「これ外側に当たると2点だけど、こっちからだと、ダブルでこれだけ出ても、シングルになっても、前ピールアウトで出しちゃってしても、1点なんだよ。ただこれの方が簡単だけどね。これの方が簡単。これをやればいいと思う私も。ただこれは2点が一応あるっていう」
優奈「これここに当たったら……」
小穴「こっちも薄すぎてもダメだし」
優奈「こっちからの方がいいと思うんだよね」

 ここで西室コーチが到着。

西室コーチ「速いのでいくと両方出ちゃうかもしれない。それだけ気をつければ」
小穴「これで10秒くらいで行きます? 一応こっちからもあるんですけど」
西室コーチ「そっちからでも。決まりそうなら」
小穴「唯一2点があるのがこれじゃないですか。だからこっちから行ってもいいかなと思うんですけと、ちょっとはこっちの方が簡単だと思う」
石垣「そうだね、こっちの方が簡単だ」
西室コーチ「いいんじゃない」
小穴「それか、ドローするか」
優奈・有理沙「いやいやいやいや」
石垣「なら10秒で」
有理沙「テイクやってるからテイクの方がいいと思う」
優奈「11とかじゃダメかな。遅すぎる?」
石垣「いやー曲がっちゃうと思う」
小穴「これステイでワン取れる? これ跳ねて……」
石垣「内側いけば……」
有理沙「ちょっとでも芯外せば」
小穴「ウェイトダウンでこっちに当たるとすごいよくないから。9秒くらいの方がいいですか?」
西室コーチ「いや下げた方がいい」
優奈「そしたらこっちからいった方がいいんじゃない?」
石垣「いやー」
小穴「えー」
西室コーチ「いや、ワンいけばいいよ」
石垣「1点アップだから。1点アップ」
西室コーチ「決まれば勝ちだから」
優奈「OK、じゃあ行こう(ブラシを突き立てる)。10?」
石垣「9?」
西室コーチ「10でも。9はダメ。両方出ちゃう。ウェイト落として10か11か」
小穴「このラインで10でいいと思う」

 強い口調で話し合いをリードする小穴。最悪の結果を心配して弱気な作戦にいきそうな小穴を「そうだね、こっちの方が簡単だ」と優しく誘導する石垣。小谷姉妹の「いやいやいやいや」のツッコミ。西室コーチの「9はダメ。両方出ちゃう」のこどもを叱るような口調。などなど(俺的な)見所満載で大好きなシーンでした。

 そして、話し合いにはあんなに時間を掛けたのに、デリバリーは光速の小穴。ボタン右の赤に当ててシューターがボタンにロールしてナンバー1を取って日本勝ち。最終戦を白星で終えました。 

予選 チェコ-日本
チーム名 H 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
チェコ   0 2 0 1 0 1 0 1 0 0 5
日本 1 0 2 0 2 0 1 0 0 1 7

「一番印象に残っているシーンは何ですか?」

 最終戦後、NHKの中継では各選手へのインタビューが放送されました。小穴桃里のインタビューでのこの言葉が、今大会で自分が一番印象に残ったシーンです。

アナ「小穴選手の中で一番印象に残っているシーンは何ですか?」
小穴「印象に残っているシーン……。印象に残っているシーン? もう毎日めまぐるしく過ぎていったのでちょっと……。帰って録画見ます(笑)」

 端から見れば、今回の小穴のベストシーンはどう考えてもアメリカ戦のラストドローです(小穴自身も、決勝のゲスト解説のときにはそのシーンをベストショットに挙げています)。それがぱっと出てこないということは、他に印象に残る、恐らく悔しいシーンがいっぱいあったんだろうなと想像しました。

富士急プラス1

 ところで、この大会の富士急は、富士急所属の4人に加えて、北海道銀行小野寺佳歩が参戦するというチーム構成になっていました。これは自分はびっくりしました。

 富士急は長らくチームを支えていたベテランの西室淳子が産休に入って、リザーブ不在になっていました。4人しかいないチームが他のチームから選手を借りるというのはよくあることです。しかし、まさか北海道銀行から小野寺佳歩が参戦するとは。自分は、若手ばかりのチームになったので経験豊富なベテラン選手か、関東の若手か、あるいは昨シーズンまで所属していた倉光選手が臨時復帰か、くらいだと思っていました。ライバルチーム所属で地域的なつながりもない、現役バリバリで五輪出場経験もあり、今季はサードも経験して成長著しいと評判の最強選手を持ってくるとは。

 参戦にも驚いたけれど、起用法にも驚いた。まさか、初戦からサードで出場するとは。カーリングの場合、多くのチームはオーダーは固定で、試合ごとにオーダーを変えるチームもあるけれどそれほど多くはない。助っ人参戦の選手が出場する例はさらに少ないと思います。自分は、基本的にはリザーブで、序盤で負けが込んだら流れを変えるために出場もあるかも、くらいに思っていました。初戦からフル回転で使ってくるとは。

カーリング女子世界選手権2018 日本の選手起用
日時 対戦相手 勝敗 リード セカンド サード フォース
3/17 夜 ドイツ 小谷有理沙v 石垣真央 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/18 昼 デンマーク 小谷有理沙v 小谷優奈 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/18 夜 スイス 小谷有理沙v 石垣真央 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/19 昼 アメリ 小谷有理沙v 石垣真央 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/20 朝 中国 小谷有理沙v 小谷優奈 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/20 昼 ロシア 小谷有理沙v 石垣真央 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/21 朝 スコットランド 小谷有理沙v 石垣真央 小谷優奈 小穴桃里s
3/21 夜 イタリア 小谷有理沙v 小谷優奈 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/22 朝 スウェーデン 小谷有理沙v 石垣真央 小野寺佳歩 小穴桃里s
3/22 夜 韓国 小谷有理沙v 石垣真央 小谷優奈 小穴桃里s
3/23 朝 カナダ 小谷有理沙v 石垣真央 小谷優奈 小穴桃里s
3/23 昼 チェコ 小谷有理沙v 石垣真央 小谷優奈 小穴桃里s

 小野寺と言えば、どの大会だったか忘れたけれど、少し前に小野寺がリザーブに回っていた大会で、タイムアウトのときにチームメイトにしっかりとアドバイスを送っていた姿が印象に残っています。それまで作戦面に強い選手という印象がなかったので、ソチ五輪のときの姿とはずいぶん感じが変わったな、と思ったのを覚えています。

 小野寺参戦の経緯や、起用方法を決めた時期や理由などは興味深いところですが、明らかになった情報はあまりありません。今回の世界選手権は、男子と同じく、最下位回避が重要課題でした。日本の最下位の可能性が低くなってから小野寺の出場機会が減ったので、小野寺起用の主な目的は最下位回避だったとみることもできます。他に、単にそのとき調子の良い選手を使った、疲労回避のためのローテーション、小野寺にも経験を積ませたかったなどの理由も考えられます。小野寺や富士急選手のSNSなどを見ると、小野寺自身はやる気満々で、小野寺の参戦や出場は富士急の選手も納得していたことはうかがえます。

おまけ:ゲスト解説での一幕

 NHK BS1の準決勝と決勝の3試合の中継で、富士急の選手がゲスト出演しました。そこでの会話から。

 準決勝のカナダ-アメリカ戦での一幕。

石崎「チームのムードメーカーみたいな人っているんですか?」
小谷優奈「そうですね基本的には、えーと……、みんなが……、もう、結構……わがまま、じゃなくてすいません」
石崎・実況「はははははは(笑)」
小谷優奈「自分自身の良さを常に出しつつあるので、自由で、みんなで盛り上げて」

 決勝のカナダ-スウェーデンでの一幕。

敦賀「小穴さんはメガネがトレードマークになってますので。韓国のキム・ウンジョンさんがメガネ先輩ということで、小穴選手は、メガネ後輩ですか?」
小穴「はははははは……(無言)」
敦賀「…………違いますか?」
小穴「テレビの前の皆さんに考えていただければ(笑)」